2011年12月28日水曜日

ソグドからウイグルへ

森安孝夫編『ソグドからウイグルへ―シルクロード東部の民族と文化の交流―』(汲古書院、2011年12月)

森安孝夫氏の平成17~20年度科学研究費補助金基盤研究Aによって得られた成果のうち、ソグド・ウイグル関連の研究論文とシルクロード東部地域の現地調査記録をまとめたもの。

目次は以下の通り。
第1部:ソグド篇
森安孝夫「日本におけるシルクロード上のソグド人研究の回顧と近年の動向(増補版)」
荒川正晴「唐代天山東部州府の典とソグド人」
石見清裕「西安出土北周「史君墓誌」漢文部分訳注・考察」 
吉田豊「附論:西安出土北周「史君墓誌」ソグド語部分訳注」
山下将司「北朝時代後期における長安政権とソグド人―西安出土「北周・康業墓誌」の考察―」
福島恵「「安元寿墓誌」(唐・光宅元年)訳注」
森部豊「増補:7~8世紀の北アジア世界と安史の乱」
石見清裕「唐の内陸アジア系移住民対象規定とその変遷」

第2部:ウイグル篇
石附玲「唐前半期の農牧接壌地帯におけるウイグル民族―東ウイグル可汗国前史―」
田中峰人「甘州ウイグル政権の左右翼体制」
笠井幸代「古ウイグル語仏典奥書―その起源と発展―」
森安孝夫「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(後編)」

第3部:行動記録篇
はしがき
2005年度 山西北部・オルドス・寧夏・西安調査 行動記録
2006年度 内モンゴル・寧夏・陝西・甘粛調査 行動記録
2007年度 東部天山~敦煌調査 行動記録
2007年度 山西調査 行動記録
2007年度 オルドス・内モンゴル調査 行動記録
2008年度 山西・内モンゴル調査 行動記録


第1部・第2部そろって力作ぞろい。とても勉強になる。第1部では、石刻史料(ソグド人墓誌)の増加によって、研究状況が変わる様を改めて感じさせられる。第2部では、石附・田中論文が興味深かった。

しかし、なんといっても圧巻は第3部。約200頁(429頁~630頁)に及ぶ膨大な行動記録(元の原稿は、この4倍近くあったらしい)。調査範囲も広い広い。この調査についていくのは大変だ。遺跡や遺物の記録のみならず、移動ルート・景観・植生・気温など細かい情報も記している。

また、行動記録の合間に多数の小コラムが付いていて、見過ごせない情報がつまっている。例えば2007年度東部天山~敦煌調査の8月22日の項目には、【ベゼクリク出土漢文碑文に刻まれたソグド語銘とルーン文字銘】というコラムがあり、唐代後期の漢文碑文2通(既に報告済)にソグド文字ソグド語とルーン文字古代トルコ語の追刻があることが指摘されている。

なお、この行動記録では、各地の博物館・研究機関に所蔵される出土文物については、ソグド・ウイグルなどに関わるもの以外は省略してしまっている。う~ん、残念。

2011年12月26日月曜日

唐宋の変革と官僚制

礪波護『唐宋の変革と官僚制』(中公文庫、2011年12月)

礪波護『唐代政治社会史研究』(同朋舎出版、1986年)の第一部「唐宋の変革と使職」に、一般向けに書いた三篇を足したもの。『唐代の行政機構と官僚』(中公文庫、1998年)に先行する論攷。

目次は以下の通り。

「「安史の乱」前後の唐」
「黄巣と馮道」
「五代・北宋の中国―国都・開封の頃」

「三司使の成立について―唐宋の変革と使職」
「中世貴族制の崩壊と辟召制―牛李の党争を手がかりに」
「唐代使院の僚佐と辟召制」

「唐末五代の変革と官僚制」

Ⅱ・Ⅲの諸論文の初出は、1960年代であって、既に50年近くがたっているのだけども、未だに古びていない。「三司使の成立について」が、卒業論文をもとにしているとは驚き以外のなにものでもない。

2011年12月20日火曜日

汲古60

古典研究会編『汲古』60(汲古書院、2011年12月)

今号の『汲古』は、築島裕先生追悼号。訓点研究の第一人者であることは知っていたが、まさか切符マニアだったとは。複数の追悼文でそのことに触れられている。よっぽどすごかったんだなぁ。

その他にいくつか論考が載っているが、中村裕一「唐初の「祠令」と大業「祠令」」が興味深い。『汲古』としては異例なほど長文(17頁)。中村氏の『中国古代の年中行事 第四冊 冬』(汲古書院、2011年8月)のあとがき末尾で、「再校をしている途中で唐「祠令」は大業「祠令」を継受していることに気がついた」と述べていたが、それを論文化したもの。

2011年12月14日水曜日

あがり

約1年ぶりにSF小説を紹介します。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。

松崎有理『あがり』(東京創元社、2011年9月)

創元日本SF叢書01。第一回創元SF短編賞受賞作品。でも、手に取った理由は、受賞作だからではなく、「大学の研究室は、今日もSFの舞台に。」という帯を見たから。仙台とおぼしき北の街の総合大学が舞台。理系研究室の日常とちょっとしたSFが面白い。石黒達昌をソフトにした感じ。

なかでも「三年以内に一本も論文を書かない研究者は即、退職せよ」という「研究活動推進振興法第二条」、通称「出すか出されるか法」が制定されているという設定が秀逸。論文執筆の苦悩がより深刻なものとなっていて、物語が生まれてくる。

ぜひ、同じ世界観の小説を書き続けてほしい。作者が理系であることから、生命科学研究所・数学科・理学部などが主な舞台となっているけど、今後は文系バージョンも読んでみたい。

2011年12月13日火曜日

梁職貢図と倭

国際シンポジウム (國學院大學文学部共同研究)
「梁職貢図と倭―5~6世紀の東ユーラシア世界―」
日時:2012年1月21日(土)10:00~17:30
会場:國學院大學渋谷キャンパス百周年記念2号館2階2202教室

講演
王素「梁職貢図と西域」
李成市「梁職貢図の朝鮮諸国」
金子修一「中国南朝と東南諸国」
新川登亀男「梁職貢図と仏教」
廣瀬憲雄「中国王朝と倭と東部ユーラシア」
コメント:石見清裕・片山章雄・河上麻由子・赤羽目匡由
司会:佐藤長門・鈴木靖民

記憶の歴史学

金子拓『記憶の歴史学―史料に見る戦国』(講談社選書メチエ、2011年12月)

戦国時代を舞台に、「記憶」をキーワードとして、過去の出来事と史料の関係、史料から生み出される歴史について考察。日記・覚書・文書などを使って、些細な事件(信長の賀茂競馬見物や細川ガラシャの死など)を取り上げ、人間または人間集団に記憶されたできごとが、どのように歴史となっていくかに迫っている。特に第五章「覚書と記憶」で扱われている上杉家・佐竹家の「集合的記憶」の問題は、大いに参考になった。

中国化する日本

與那覇潤『中国化する日本―日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春秋、2011年11月)

タイトルと装丁と出版社を見て、手に取ることすらしてなかったのだけど、先日、本屋でなんとなく気になって少し立ち読みしたところ、なかなか面白そうなので購入。

歴史(人類の進歩)は宋代に終わっていた、という衝撃の第一章を皮切りに、中世から現代までの日本史を「中国化」・「再江戸化」で再構築している。最新の学説・定説・学界の常識(筆者が言うほど学界の常識になってないものも結構あるけど)を踏まえて、ここまで斬新な日本史・世界史解釈を展開できるとは。あちこちに見える左右両方に対する皮肉や揶揄も面白い。

違う文脈で書かれた研究を自分の都合のいいように切り貼りしただけという批判も成り立ちうるだろうけど、そもそも通史というのは、そういうものだし、これだけ面白いものに仕上がっていればいいような気がする。

2011年12月6日火曜日

久しく

そういえば猫写真を久しくアップしてませんでした。
最後にアップしたのは3月……。
あっというまに12月になってしまいました。

中国史の名君と宰相

宮崎市定著、礪波護編『中国史の名君と宰相』(中公文庫、2011年11月)

構成は文庫オリジナル。
Ⅰ大帝と名君、Ⅱ乱世の宰相
Ⅲ資本家と地方官、Ⅳ儒家と文人
の四部構成。

このうち、Ⅰ全篇(秦の始皇帝・漢の武帝・隋の煬帝・清の康熙帝・清の雍正帝)、Ⅱの李斯、Ⅳの孔子は、もともと『世界伝記大事典 日本・朝鮮・中国編』(ぽるぷ出版、1978年)に収録されていたもので、事典に執筆した文章であったため、『宮崎市定全集』に採用されなかったもの。事典の項目とはいえ、5頁以上もあって、読み応えがある。

古代日本とユーラシア

京都大学文学研究科・文学部公開講演会
「古代日本とユーラシア-ユーラシア文明の越境と架橋にむけて-」

日時:2011年12月17日(土)13時00分~17時30分
場所:京都大学法経本館第7教室

講演プログラム
井谷鋼造「ユーラシアの歴史をつなぐ刻銘文資料」
岡内三眞「シルクロード沿線の都市」
橋本義則「東アジア比較都城史研究の試み-日本から東アジアへ、そして再び日本へ-」
吉川真司「ユーラシアの変動と日本の律令制度」

2011年12月2日金曜日

第10回ザ・グレイトブッダ・シンポジウム

第10回ザ・グレイトブッダ・シンポジウム
日程:2011年12月10日(土)・11日(日)
会場:東大寺総合文化センター内 金鐘ホール 
入場:無料

大会テーマ  「華厳文化の潮流」
12月10日(土) 13:00~16:30
基調講演    
木村清孝「インド華厳から日本華厳へ」
シンポジウム 
木村清孝・伊藤瑞叡・吉津宜英

12月11日(日) 10:00~16:30
研究報告 
小林 圓照「アジアを駆け巡る善財童子―『入法界品』の思想と文化―」
堀伸一郎「『大方広仏華厳経』の梵語原典とその題名―中央アジア出土梵本断簡の研究に基づいて―」
ジラール・フレデリック「禅竹の『六輪一露之記』に於ける志玉の華厳観」
朴亨國「新羅華厳宗における造像概念―浮石寺から仏国寺・石窟庵―」
長岡龍作「蓮華蔵世界と観音―習合思想を手がかりに―」
吉川太一郎「遼代華厳教学の一考察―鮮演の断惑説を中心として―」


事前申込制で、11月30日までに
はがき、FAXで東大寺図書館まで
お申し込みくださいとのことです。
期限過ぎてからの紹介ですみません。

ザ・グレイトブッタ・シンポジウムという名前にひかれて紹介。もう10回もやっているのに知らなかった……。

2011年11月30日水曜日

平成23年度九州史学会大会

平成23年度九州史学会大会
日程:2011年12月10日(土)・11日(日)
会場:九州大学法文系講義棟

12月10日(土)シンポジウム 法文系講義棟101
「倭の五王は何を学んだか―東アジア世界と倭の変容」

12月11日
日本史部会 法文系講義棟102

東洋史部会 法文系講義棟204

朝鮮学部会 法文系講義棟202

イスラム文明学部会 法文系講義棟302
「特別企画:アジア文化研究会・若手ユーラシア研究会の時代」

報告タイトルが多いので、
詳細は九州史学会HPをご覧ください。

新しい世界史へ

羽田正『新しい世界史へ―地球市民のための構想』(岩波新書、2011年11月)

現代にふさわしい世界史を模索する試み。
目次は以下の通り
序章:歴史の力
第一章:世界史の歴史をたどる
第二章:いまの世界史のどこが問題か?
第三章:新しい世界史への道
第四章:新しい世界史の構想
終章:近代知の刷新

第一章で日本における「世界史」の成立過程を確認し、第二章で現行「世界史」の問題点を指摘(日本でのみ通用・現状追認・ヨーロッパ中心史観)。さらに第三章で、現在試みられている「新しい世界史」の有効性と問題点に言及。中心史観(ヨーロッパ・イスラーム・中国・中央ユーラシアなど)からの脱却を唱える。そして、第四章で羽田氏の「新しい世界史」の構想を示す。

第一章~第三章は、「世界史」の抱えている問題が浮かび上がってきて、大変面白い。特に第三章で、中国中心史観に対して、中央ユーラシアから見直そうという動きが出ているが、「逆に、中央ユーラシアを世界史の中心に置き、中央ユーラシアが世界史を作ったと唱えては、せっかくの提言が台無しである」という指摘に共感。

ただ、第四章の「新しい世界史」構想は、僕の頭が従来の「世界史」に染まっているせいもあって、いまいちピンとこなかった。ぜひ、この構想に基づいた新しい「世界史」概説書を読んでみたい。

2011年11月25日金曜日

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会12月例会

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会12月例会
日時:2011年12月17日(土)14:00~17:00
会場:財団法人東洋文庫2階第1・2講演室

報告
兼平充明「氐族仇池政権に関する新出史料」
井上豪「キジル第38窟壁画とインド・イラン様式の展開」

2011年11月21日月曜日

艾未来2011

牧陽一「艾未来2011」(『埼玉大学紀要. 教養学部』47-1、2011年9月)

今年4月3日に突如身柄を拘束された中国の現代アーティスト艾未未のこれまでの軌跡を簡潔にまとめたもの。

1957年に詩人の艾青の子としてうまれ、文革期の迫害を経験。1979年から現代アートの活動に参加。アメリカ滞在をへて、中国に戻りアーティスト・建築家として活躍。北京五輪の鳥巣スタジアム(通称)を建設。その一方で、四川大地震の犠牲者の名簿を作成し、政府の圧力をうける。共産党を批判する作品も作成。ブログ・ツイッターなどを駆使するも、政府によって閉鎖される。そして、4月3日拘束され、一時行方不明に。6月22日に保釈されるが、現在も活動制限中。
現代アートという枠組みをはるかに超えた活動を行っている人物。

実は2009年に森美術館で開催された個展「アイ・ウェイウェイ 何に因って」に行ったのだけど、漢代の陶器を破壊するパフォーマンス、清代の家具を解体・再構築した作品(中国の形)などをみて、正直、あまりいい印象をうけなかった。歴史・文物の破壊行為なら、文革期に大々的に行われているし、なんだかなぁ、と思ってしまった。しかも再構成された木製の中国には「ちゃんと」台湾も含まれている。「鳥巣スタジアム」を建設していたこともあって、「愛国者」なんだなぁ、と思いこんでしまった。

ところが、今年の2月に、景徳鎮でつくらせた一億個のヒマワリの種という作品に触れる機会があり、これはすごいと思い、もういちどチェックしようかなと思っていたら、拘束されてしまった。
牧陽一氏の論文と最近刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト『アイ・ウェイウェイは語る』(みすず書房、2011年11月)で、改めてアイ・ウェイウェイについて勉強させてもらった。「愛国者」と思いこんで、しっかりチェックしてこなかった不覚を恥じるばかりである。

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追記:2011年11月25日(金)21時50分
なお、この論文はSUCRAからダウンロードできます。

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

日時:2011年12月16日 (金) ~18日(日)10時~18時(18日は10時~12時)
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
 
12月16日(金)10:00~12:00、13:30~18:00
西原一幸「唐代楷書字体規範からみた『龍龕手鏡』」
池田証寿「漢字字体の実用例と字書記述」
高田智和「国研本大教王経の漢字字体」
紅林幸子「書法と書体」
岡墻裕剛「HNGにおける字種・字体の認識と異体処理」
斎木正直「HNG の利用を通して見た親鸞・明恵の字体」
賈智「『新訳華厳経音義私記』所引の楷書字書の体裁・様式及び出典について」

12月17日(土)10:00~12:00、13:30~18:00
赤尾榮慶「古写経の字すがた」
石塚晴通「字体規範と異体の歴史」(基調講演)
小助川貞次「敦煌漢文文献(漢籍)の性格とその漢字字体」
Imre Galambos「Huiyi characters seen in Dunhuang manuscripts(敦煌本に見える会意字)」
山田太造「日本史史料における翻刻データの作成支援と共有手法」
白井純「「落葉集小玉篇」の部首配属からみたキリシタン版の字体認識」

12月18日(日)10:00~12:00
笹原宏之「異体字・国字の出自と資料」
豊島正之「金属活字の製作に於ける異体字」

十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易

白玉冬「十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易」(『史学雑誌』120-10、2011年10月)

従来、空白の時代とみなされがちであった10~11世紀のモンゴル高原の歴史を再考している。敦煌文書・アラビア語文献などをもとに、11世紀に敦煌からモンゴル高原中央部の九姓タタルの支配地を経由して契丹に到る交通ルートが存在していたことを指摘し、10世紀に敦煌と通交関係を持っていたタタルは九姓タタルに属していたとする。さらに九姓タタルがウイグル商人を通じてシルクロード貿易とつながっていたとする。

2011年11月18日金曜日

円仁と石刻の史料学

鈴木靖民編『円仁と石刻の史料学―法王寺釈迦舎利蔵誌』(高志書院、2011年11月)

昨年、一部で話題になった「法王寺釈迦舎利蔵誌」をメインで取り上げた論集が出た。2011年1月23日に国学院大学文化講演会「円仁石刻と古代の日中文化交流」をもとにまとめたもの。まさか論集にするとは。

目次は以下の通り。
齊藤圓真「日中文化交流史上の円仁と天台」
第1部:石刻の史料学
酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
〈コラム〉波戸岡旭「「釈迦舎利蔵誌」の文構成と修辞」
田中史生「法王寺石刻「釈迦舎利蔵誌」の調査」
〈コラム〉佐野光一「円仁石刻の書風」
石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
〈コラム〉高丹丹「唐代石刻と史書」
葛継勇「円仁石刻をめぐる諸問題」
裴建平「石刻の真偽の鑑定分析と登封法王寺「円仁石刻」の制作時期」
〈コラム〉「フト(浮屠/浮図)について」

第2部:法王寺と円仁
呂宏軍「隋唐時代嵩山の寺院・石刻と交通」
〈コラム〉金子修一「嵩山の封禅」
趙振華「唐代武宗廃仏の物証と中日僧侶の護法活動」
〈コラム〉笹生衛「円仁と『佛頂尊勝陀羅尼経』、そして古代日本の滅罪信仰」
田凱「法王寺二号塔地下宮殿およびその関連問題」
〈コラム〉阿南ヴァージニア史代「「円仁日記―七日間の沈黙」考」
肥田路美「仏舎利の荘厳具と迦陵頻伽盒」
塩沢裕仁「東都洛陽と鄭州を結ぶ道筋」
〈コラム〉宇都宮美生「唐宋の山陽瀆と汴河」
佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
〈コラム〉河野保博「円仁の同行者たち」
鈴木靖民「円仁石刻の史料性と法王寺の沿革」

唐代説(中国人研究者)もあるけれど、鈴木氏の総論では、二通とも明清期の模刻だが、原文は唐代のものという結論をひとまず出している。
日本史研究者は、制作時期の特定に積極的だけど、中国史研究者(日本人)は、一人も制作時期に言及しておらず、消極的なのが印象的。

2011年11月11日金曜日

西域―流沙に響く仏教の調べ

能仁正顕編『西域―流沙に響く仏教の調べ』(自照社出版、2011年8月)

龍谷大学仏教学叢書②。2008年度に行われた連続講義をまとめたもの。参考文献や注釈などはついていないが、大谷探検隊・大谷コレクションなどの入門として便利。
目次は以下の通り。

第一章:大谷探検隊の足跡
入澤崇「大谷探検隊の足跡をたどって」
能仁正顕「チベットの大谷探検隊」
第二章:西域出土の仏教文献
上山大峻「シルクロード出土資料からの発言」
三谷真澄「大谷コレクションと敦煌資料」
三谷真澄「トルファン資料の意義―旅順博物館資料を中心に」
第三章:西域にひろがる宗教世界
山田明爾「仏教と異宗教」
吉田豊「ソグド人の宗教」
第四章:西域にひろがる仏教美術
能仁正顕「阿弥陀仏像の源流を求めて―ガンダーラの三尊像」
宮治昭「西域の仏教美術―涅槃の美術を中心に」
入澤崇「壁画復元―ベゼクリク「誓願図」」

2011年11月8日火曜日

第43回中央アジア学フォーラム

第43回中央アジア学フォーラム
日時:2011年12月3日(土) 13時半~18時
場所:大阪大学・豊中キャンパス 文法経本館2階大会議室

報告
門司尚之「“随葬衣物疏”研究の現状と課題 ―その呼称問題を中心として」
室山留美子「古代中国の地域文化 ―西安北魏墓・十六国墓と後漢六朝期の鎮墓獣を手がかりに」
旗手瞳「吐蕃後期におけるアシャ人千戸長の一族について」
赤木崇敏「敦煌王国の終焉と「沙州ウイグル」の台頭 ――11世紀中央ユーラシア東部地域の国際情勢」

古代アジア世界の対外交渉と仏教

河上麻由子『古代アジア世界の対外交渉と仏教』(山川出版社、2011年11月)

「遣隋使と仏教」(『日本歴史』717、2008年)などで、中国を中心とするアジア世界における仏教と対外交渉について研究を重ねてきた河上氏の著書がでた。
目次は次の通り。

第一部:遣隋使と仏教
第一章:南北朝~隋代における仏教と対中国交渉
第二章:中国南朝の対外関係において仏教が果たした役割について―南海諸国の上表文の検討を中心に
第三章:隋代仏教の系譜―菩薩戒を中心として
第四章:遣隋使と仏教

第二部:唐の皇帝と天皇の受菩薩戒
第一章:唐の皇帝の受菩薩戒―第一期を中心に
第二章:唐の皇帝の受菩薩戒―第二期を中心に
第三章:唐の皇帝の受菩薩戒―第三期を中心に
第四章:唐代における仏教と対中国交渉
第五章:聖武・孝謙・称徳朝における仏教の政治的意義―鑑真の招請と天皇への受戒からみた

南北朝~唐代における仏教的朝貢の流行・皇帝の受菩薩戒の政治的意味を明らかにし、日本の対中国交渉の意義について再検討している。

2011年11月5日土曜日

日本道教学会第62回大会

日本道教学会第62回大会

日程:2011年11月12日(土)
会場:筑波大学春日キャンパス メディアユニオン・メディアホール

研究発表 10:10~
馮暁暁「『道法会元』データベースの作成と計量的分析」
水野杏紀「江戸時代中期以降の明清の術数書受容の特徴―『元経』・『八宅明鏡』救貧竈掛を中心として」
江波戸亙「『悟真篇注疏』の外丹理論について」
三田村圭子「唐末五代における宗教活動―『広成集』所収の青詞を中心に」
武田時昌「道教文化研究の術数学的アプローチ」

特別表演 14:30~ 春日キャンパス7B205教室
陳儷瓊「台湾・道法二門の小普」

総会 16:00~

東洋文庫ミュージアム&東京人

先日、東洋文庫ミュージアムに行ってきました。
展示内容は既にブログで紹介したので省略しますが、
ものすごく楽しめる内容でした。
東洋文庫のすごさを改めて体感しました。

入場料(一般880円・大学生680円)を
高いとみるかどうかは微妙なところですが、
あっというまに時間がすぎてしまうし、
写真OK(一部除く)なことを考えると、
まあまあなんじゃないでしょうか。
国宝『史記』も、モリソン文庫の威容も撮り放題です。


東洋文庫とミュージアムの魅力は、
このブログの拙い文章よりも、
『東京人』2011年12月号通巻303(都市出版、2011年12月)を読むと伝わってきます。

『東京人』12月号は、特集「東洋文庫の世界」。
目次は以下の通り。
ドナルド・キーン「初めて触れた、江戸期の『百合若大臣野守鏡』に興奮しました」
張競「文字と書物の旅をめぐる綺想」
堀江敏幸「あやしうこそ、ものぐるほしけれ―東洋文庫の午後」
樺山紘一・亀山郁夫・池内恵・斯波義信・牧野元紀「座談会 「アジアの世紀」の今だから、「東洋の知恵」を見直そう。」
ウッドハウス暎子「G・E・モリソンの実像」
森まゆみ「岩崎久彌が見た夢」
槇原稔「日本人のアイデンティティーを、東洋文庫で育ててほしい」
野嶋剛「内藤湖南をめぐる中国美術品流入のネットワーク」
研究者に聞く「この一冊からはじまった」
森本公誠「『アラビア語文献目録補遺』 時宜を得たアラビア語文献蒐集に感謝」
石澤良昭「『インドシナとインドネシアのインド化した国々』 セデスの不朽の名著」
坪井善明「越南『欽定大南会典事例』の礼部 「邦交」や「柔遠」に入れ込んだ日々」
木奥恵三「非日常の空間へ誘うミュージアム 建築も、すごい」

他にも『史記』・『東方見聞録』・『諸国瀧廻り』・『アヘン戦争図』などの鮮明な写真も掲載しています。

日本中国考古学会2011年度大会(第22回大会)

日本中国考古学会2011年度大会(第22回大会)

日中関東部会

日程:2011年12月3日(土)・4日(日)

会場:大会・総会:東京大学本郷キャンパス 法文2号館一番大教室

12月3日(土)
一般研究発表(13:10~15:50)
13:10~13:40 松本圭太「中央ユーラシアにおける青銅器様式の展開―長城地帯とミヌシンスクの青銅器製作技法の比較を通じて」
13:40~14:10 佐々木正治 「出土鉄器からみる河南省の鉄器生産について―漢代~魏晋南北朝を中心に」
14:10~14:40 ラプチェフ・セルゲイ「中国南部と東南アジアの青銅器における水牛像とその役割」
14:50~15:20 江介也「東アジアの鋏―用途・表象・ジェンダー副葬」
15:20~15:50 丹羽崇史 「窯道具から見た唐三彩窯成立過程」
16:00~17:00 ポスターセッション
17:00~17:30 総会

12月4日(日)
シンポジウム「モノの拡散」(9:20~15:50)
9:30~10:10 久保田慎二「新石器時代における空三足器からみたモノの拡散」
10:10~10:50 長尾宗史「二里頭文化期の中央と辺縁―青銅器・玉器・精製土器を中心に」
11:00~11:40 角道亮介「西周青銅器銘文の広がり」
11:40~12:20 田畑潤「西周時代後期における青銅礼器葬制の変化と拡散」
12:20~13:20 昼食・ポスターセッション
13:20~14:00 田中裕子「新疆ウイグル自治区における青銅容器の展開」
14:00~14:40 中村亜希子 「瓦の東方伝播―楽浪瓦を考える」
14:50~15:50 討論
15:50~16:00 閉会式

ポスターセッション
掲示:12月3日(土)12:30~、12月4日(日)16:00
質疑応答:12月3日(土)16:00~17:00、12月4日(日)12:20~13:20

久慈大介「二里頭遺跡出土土器の製作技術研究」
茶谷満「後漢皇帝陵再考」
鈴木舞「笄類から見た殷周時代―鳥形笄を中心に」
岸本泰緒子「秦漢期嶺南地区における銅鏡の地方生産」
小林青樹・李新全・宮本一夫・春成秀爾・宮里修・石川岳彦・金想民 「近年の遼寧地域における青銅器・鉄器研究の現状」

2011年10月28日金曜日

2011年度公開講演会「資料学の方法を探る」

愛媛大学「資料学」研究会主催2011年度公開講演会「資料学の方法を探る」
日時:2011年11月26日(土)10時~17時30分

会場:愛媛大学城北キャンパス,法文学部8階大会議室

プログラム
10時~12時
藤田勝久「漢代エチナ河流域の交通と肩水金関」
畑野吉則「居延漢簡にみえる郵書記録と文書逓伝」

14時~17時30分
侯旭東氏「後漢《乙暎碑》の卒吏増員にみえる君臣関係」
關尾史郎「『最後の簡牘群』考―長沙呉簡を例として―」
 コメント:金秉駿氏(韓国・ソウル大学校人文大学)
西尾和美「『伊予国神社仏閣等免田注進状写』を読む」

第3回日・韓訓読シンポジウム

第3回日・韓訓読シンポジウム
日時:2011年10月29日(土)13:00~18:00
会場:麗澤大学廣池千九郎記念講堂2階大会議室

基調講演
南豊鉉「韓国の借字表記の発達と日本訓点の起源について」

講演
金文京「日韓訓読史の比較―その共通点と相違点」
庄垣内正弘「ウイグル漢字音と漢文訓読」
鄭光「朝鮮吏文の形成と吏読―口訣の起源を模索しながら」
小林芳規「日本所在の八・九世紀の『華厳経』とその注釈書の加点」

参加費無料 定員100名
申込方法:FAXまたはメールで申し込み
詳細はHP参照。

2011年10月21日金曜日

古代東アジアの国際情勢と人流

古代東アジアの国際情勢と人流

日時: 2011年11月19日(土)13:00~17: 00、11月20日(日)10:00~17:30
場所: 専修大学神田校舎1号館3階303教室
定員: 300名( 聴講無料・申込者多数の場合抽選)

講演 11月19日(土)
13:15~14:15 高兵兵「菅原道真と九世紀の日本外交」
14:30~15:30 浜田久美子「日本と渤海の文化交流― 承和年間の『白氏文集』の受容を中心に―」

講演 11月20日(日)
10:00~11:00 山内晋次「9~12世紀の日本とアジア― ヒトの移動の視点から―」
11:10~12:10 矢野建一「遣唐使と来日『唐人』― 皇甫東朝を中心として― 」
13:30~13:50 窪田藍「『古代東アジア世界史年表』の活用― 『白村江の戦い』を事例として」
14:00~15:00 鈴木靖民「東アジア世界史と東部ユーラシア世界史」
15:20~17:30 討論 司会・進行:飯尾秀幸
 討論に先立って 荒木敏夫「古代東アジア世界史と留学生―五年間の取り組みと課題―」

申し込み・お問い合わせは、往復はがきまたはメールにて。
詳細は専修大学社会知性開発研究センターのHP
参照してください。

2011年10月14日金曜日

東洋文庫ミュージアム

東洋文庫ミュージアムが10月20日に開館します。
そこで、牧野元紀「東洋文庫ミュージアムぐるり探訪―時空をこえる本の旅」(『東方』368、2011年10月)および東洋文庫ミュージアムのチラシ・HPをもとにその概要を紹介したいと思います。

まず、基本情報です。
名称:東洋文庫ミュージアム
アクセス:JR・東京メトロ南北線「駒込駅」から徒歩8分または都営地下鉄三田線「千石駅」から徒歩7分
休館日:毎週火曜日(ただし、火曜日が祝日の場合は開館し、水曜日が休館)年末年始、その他、臨時に開館・休館することもある。
開館時間:10:00〜20:00(入館は19:30まで)
ショップ:マルコ・ポーロ 10:00~20:00
レストラン:オリエント・カフェ11:30~21:30(ラストオーダーは20:30まで)
入場料:一般880円、65歳以上、780円、大学生680円中・高校生580円、小学生280円

フロアは五つ。
オリエントホール:東洋文庫の歴史を紹介
モリソン書庫:24000点のモリソン文庫を展示
ディスカバリー・ルーム:東西の出会い・発見を軸とした企画展示
回顧の路:時空を超える旅のゾーン(百万塔陀羅尼・甲骨文字など)
国宝の間:国宝を毎月展示替え&『東方見聞録』コレクション


開館記念展示は、時空をこえる本の旅。
東洋文庫の名品100点が勢ぞろい。
モリソン書庫では、『ラフカディオ・ハーン書簡集』・チベット経典・嵯峨本など。
ディスカバリー・ルームでは、
企画1「キリスト教と東アジア」として、キリシタン版『サクラメンタ提要』(展示期間:10月20日~12月18日)、マリー・アントワネット旧蔵『イエズス会士書簡集』、『ドチリーナ・キリシタン』(展示期間12月20日~2月26日)など。
企画2「激動の近代東アジア」として、孫文自筆書軸、『アヘン戦争図』、『ペリー久里浜上陸図』など。
国宝の間では、国宝『史記』(夏本紀:10月20日~11月21日、秦本紀:11月23日~12月26日)、国宝『文選集注』(巻48残巻:12月28日~1月23日、巻59:1月25日~2月26日)など。
そのほか浮世絵コレクション(葛飾北斎『諸国瀧廻り』)も出す模様。

まさに、すごいの一言。
年に何回も通うことになりそうです。

2011年10月13日木曜日

関羽と諸葛亮

偶然(?)にも三国蜀漢政権に関わる概説書が二冊刊行された。

宮川尚志『諸葛孔明―「三国志」とその時代―』(講談社学術文庫、2011年10月)
渡邉義浩『関羽―神になった「三国志」の英雄―』(筑摩選書、2011年10月)

『諸葛孔明』は言わずと知れた名著。1940年に刊行された後、複数の出版社から復刊された。今回の底本は光風社版(1984年)。解説は渡邉義浩氏。
『関羽』は、8章構成。前半4章では正史と演義を比較し、関羽像の違いを示す。後半4章では関羽が神となった過程と背景をまとめている。

諸葛亮については、何冊も日本人研究者による伝記がでており、今回関羽も刊行された。でも、なぜだか日本人研究者による劉備の伝記は出ていない。軍師とあがめられた諸葛亮と神になった関羽のせいで、なんだか割を食ってる気がしないでもない。おもしろいと思うのだけどなぁ。

2011年10月11日火曜日

内陸アジア史学会2011年度大会

内陸アジア史学会2011年度大会

日程:2011年11月12日(土)
会場:富山大学人文学部(五福キャンパス)

公開講演(13:00~14:00)人文学部 第四講義室
小谷仲男「遊牧民族の右臂を断つ理論―中国正史西域伝の訳注序説― 」

研究発表(14:15~17:10) 同会場
三船温尚「アジアの高錫青銅器―鋳造・鍛造・熱処理技術について―」
岩尾一史「古代チベット支配下敦煌における写経事業とその経費処理」 
清水由里子「『東トルキスタン史』の叙述傾向と史料的価値について」

2011年10月10日月曜日

西魏・北周の二十四軍と「府兵制」

平田陽一郎「西魏・北周の二十四軍と「府兵制」」(『東洋史研究』70-2、2011年9月)

西魏・北周の軍制について、前期府兵制という枠組みから解き放ち、二十四軍を中心に再考した論文。二十四軍の集団構成や親信・庫真といった制度を分析し、二十四軍は擬制的部落兵制であり、遊牧軍制の系譜を継ぐものとする。
賛否両論とあると思うが、北朝隋唐研究に一石を投ずる研究であることは間違いない。

特集:五山文学

『文学』12-5(岩波書店、2011年9月)は、「特集:五山文学」。

目次は以下の通り
島尾新・住吉朋彦・中本大・堀川貴司(司会) 「《座談会》五山文学研究の新段階」
堀川貴司「『覆簣集』について―室町時代後期の注釈付き五山詩総集―」
金文京「中巌円月の中国体験―科挙との関係を中心として―」
樹下文隆「能〈龍虎〉の背景―禅林の周易受容と神仙趣味―」
楊昆鵬「五山文学と和漢聯句」 
中本大「菊隠慧叢について―『名庸集』研究序説―」
住吉朋彦「高峰東晙の学績」
島尾新「室町時代の画賛について―「禅林画賛」と「文人画賛」の関係から―」
綿田稔「足利将軍邸の障子画賛」 
岩山泰三「引き裂かれた臥遊世界―一休八景詩素描―」
芳澤元「慶長期の絵画・漢詩の製作過程―前田利家夫人・芳春院の女人図―」
太田亨「五山版『新刊五百家註音辯唐柳先生文集』について―五山版の再検討をめぐって―」
朝倉和「五山文学版『百人一首』と『花上集』の基礎的研究―伝本とその周辺―」
【文学のひろば】 川合康三「五山文学臆見」 

なんとなく、興味を持って購入。
座談会は、五山文学研究の現状と課題がわかりやすく述べられていておもしろかった。
しかし、専門論文になると素人ではついていけず……。
基礎知識を得てから再チャレンジしたいと思います。

素人の僕でもついていけて、興味深かったのは以下の論文。
入元経験から中巖円月の背景を追った金文京論文。
和漢聯句の面白さを味わえた楊昆鵬論文。
「画賛とは何か」をまとめた島尾論文。
前田利家夫人(まつ=芳春院)が作らせた女人図の賛の意味と制作過程・時代背景を明らかにした芳澤論文。

たまには書評も紹介

津田資久「書評・新刊紹介 渡邉義浩著『西晋「儒教国家」と貴族制』」(『唐代史研究』14、2011年8月)
井ノ口哲也「書評 渡邉義浩著『後漢における「儒教國家」の成立』」(『史学雑誌』120-9、2011年9月)

立て続けに書評が出た。

2011年10月9日日曜日

第62回佛教史学会学術大会

第62回佛教史学会学術大会
日時:2011年11月12日(土)午前10:00~
会場:花園大学 拈花館
大会参加費500円

研究発表 午前の部(10:00~12:00) 《東洋部会》拈花館104教室
米田健志「唐宋時代の宮中における仏教儀礼について」
師茂樹「新羅・真表伝の再検討」
馬場久幸「高麗時代の大蔵経に対する信仰-高麗版大蔵経を中心として-」

日本部会・合同部会は省略

記念講演(15:15~16:45)拈花館202教室
末木文美士「思想史の視点からみた日本仏教」 

第105回訓点語学会研究発表会

第105回 訓点語学会研究発表会

日程:2011年10月16日(日)
場所:東京大学山上会館

報告:午前10時~
中澤光平「『日本書紀』α群の万葉仮名における去声字の特異な分布」
平井吾門「自筆本『倭訓栞』の排列について―シソーラスから辞書へ―」
藤本灯「先行国書と『色葉字類抄』収録語彙との関係について」           
午後1時15分~
石山裕慈「室町時代における漢字音の清濁―『論語』古写本を題材として―」
柳原恵津子「記録体における動詞の用法について」
鈴木功眞「倭玉篇類字韻永禄六年写本の構成ならびに詩作との関連性に就いて」   
午後3時~
佐々木勇「親鸞使用の声点加点形式について―坂東本『教行信証』声点の位置づけ―」
渡辺さゆり「「文選読み」を考察する際の問題点―『文選』の場合―」
小助川貞次「古写本・古刊本における巻末字数注記について」

2011年度東洋史研究会大会

2011年度 東洋史研究会大会

日時:2011年11月3日(木・祝)9時~17時
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)

発表題目
午前の部
二宮文子「前近代北インドのスーフィー教団」
上田新也「ベトナム・フエ近郊村落における家譜編纂―一八~一九世紀タインフオック村の事例―」
大櫛敦弘「使者の越えた「境界」―秦漢統一国家形成の一こま―」
石井仁「赤壁地名考―孫呉政権と江南の在地勢力」

午後の部
村井恭子「九世紀における唐朝の辺境政策―八四○年を画期として―」
平田茂樹「宋代の御前会議について」
舩田善之「ダーリタイ後裔諸王とモンゴル時代寧海州の社会―令旨とその刻石の意義をめぐって―」
谷井陽子「入関前清朝における政治的意思決定」
本野英一「一九二○年代中国に於ける商標権保護体制の確立―在華日英企業商標を中心に―」
宮嶋博史「朝鮮時代の戸籍大帳と身分制研究」

2011年10月6日木曜日

東日本大震災・原発事故と歴史学

『歴史学研究』884号(青木書店、2011年10月)は、
「緊急特集 東日本大震災・原発事故と歴史学」。

目次は以下の通り
平川新「東日本大震災と歴史の見方」
保立道久「地震・原発と歴史環境学―9世紀史研究の立場から」
矢田俊文「東日本大震災と前近代史研究」
北原糸子「災害にみる救援の歴史―災害社会史の可能性」
奥村弘「東日本大震災と歴史学―歴史研究者として何ができるのか」

史資料ネットワークから
佐藤大介「歴史遺産に未来を―東日本大震災後の歴史資料レスキュー活動」
白井哲哉「「茨城史料ネット」の資料救出活動―3・11から7・2へ」
阿部浩一「ふくしま歴史資料保存ネットワークの現況と課題」

論文
中嶋久人「原発と地域社会―福島第一原発事故の歴史的前提」
平田光司「マンハッタン計画の現在」
石山徳子「原子力発電と差別の再生産―ミネソタ州プレイリー・アイランド原子力発電所と先住民」
三宅明正「記録を創り,残すということ」
安村直己「言論の自由がメルトダウンするとき―原発事故をめぐる言説の政治経済学」
史料文献紹介(緊急特集関連)

史資料ネットワークの活動の意義も述べられている。佐藤大介氏は、史資料の保全に対し、被災者からの批判(そんなことしてる場合か!という批判)をうけるかもしれないと逡巡されるかもしれないが、「地域歴史遺産を保存し、それを未来に引き継ぐための被災地支援活動であることが理解されていれば、被災された方々は」活動に期待してくれるとする。
中嶋論文は、開沼博『「フクシマ」論―原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社、2011年6月)と内容が類似しているが、開沼書の刊行以前に執筆されている(脱稿後に読んだことを明記している)。

1923年の関東大震災直後、歴史学界が特集を組むなどの反応を示した様子がない(そもそも雑誌の編集後記で被災者に言及することすらしていない)ことに比べると、歴史学の在り方が大きく変化したことがわかる。

2011年9月25日日曜日

足利義満と禅宗

上田純一『足利義満と禅宗』(法蔵館、2011年9月)

シリーズ権力者と仏教の3。目次は次の通り。
第一章:日明国交回復への道
第二章:国交樹立
第三章:明朝の禅宗
第四章:日明両国を結ぶ禅僧たち
第五章:博多・兵庫における禅宗の展開
終章:国交断絶

足利義満の信仰の話かと思いきや、義満の対外政策(日明外交)に禅宗・禅僧が果たした役割に迫っている。先日ブログで紹介した『モノが語る日本対外交易史』や橋本雄『中華幻想―唐物と外交の室町時代史―』(勉誠出版、2011年3月)を読んでいたこともあって、興味深く読むことができた。
禅僧は外交事務能力や漢詩作成能力によって外交に関わったとする通説に対し、より積極的な意義があったのではないかとし、足利義満は明朝と太いパイプを持つ禅僧ネットワークの活用を企図したのではないかとする。明朝における禅宗の状況や日明間の禅僧の交流についても詳細に紹介している。

戦後日本の歴史学の流れ

『思想』No.2048(岩波書店、2011年8月)は、「戦後日本の歴史学の流れ―史学史の語り直しのために―」。

目次は以下の通り。
鹿野政直「思想の言葉」
成田龍一・小沢弘明・戸邉秀明「【座談会】戦後日本の歴史学の流れ」
安丸良夫/聞き手:成田龍一「〈インタビュー〉戦後日本の歴史学を振り返る―安丸良夫に聞く―」
成田龍一「違和感をかざす歴史学―史学史のなかの民衆思想史研究(前期および中期)―」
飯島渉「「中国史」が亡びるとき」
高澤紀恵「高橋・ルフェーブル・二宮―「社会史誕生」の歴史的位相―」
大串潤児「史学史としての教科書裁判」

いずれも興味深く読んだ。ただ、飯島論文は、やや毛色が違っていたような気がする。むしろ、文中でも言及しているように、「「戦後歴史学」の中国史版」・「学問史ないしは史学史にもとづく自己省察」をやってほしかったのだが。
成田論文では、色川大吉・安丸良夫・鹿野政直らによる「民衆思想史研究」の成立と転回について論じている。
高澤論文では、高橋幸八郎と二宮宏之のルフェーブルとの邂逅(二宮の場合は間接的に)・フランス留学経験の差異と「社会史」の誕生について論じている。

2011年9月23日金曜日

曹操墓の真相

河南省文物考古研究所編著・渡邉義浩監訳&解説・谷口建速訳『曹操墓の真相』(国書刊行会、2011年9月)

昨年出版された『曹操墓真相』(科学出版社、2010年5月)の日本語訳。2009年末に曹操墓として報告された西高穴二号墓発見の経緯、被葬者の特定過程などがまとめられている。カラー図版が多く、授業などで使いやすそう。ただ、原著出版以後の情報は追加されていないようだ。
渡邉義浩氏の解説では西高穴二号墓が夏侯惇墓である可能性に言及し、曹操墓ではないのではないか、という疑問は完全に払拭されていないとする。なお、解説などによくみられる原著の書誌解題や翻訳に至った経緯には全く触れていない。

平成23年度筑波大学附属図書館特別展

平成23年度筑波大学附属図書館特別展

「日本人のよんだ漢籍 貴重書と和刻本と」
会期:2011年9月22日(木)~10月21日(金)
時間:平日 9:00~17:00, 土日祝 10:00~17:00
 ※10/15(土),10/16(日)は閉室

三部門で30強の典籍を展示。
1.聖賢のことば

◦『論語集解』(室町時代写)
◦『論語集解』(慶長年中要法寺刊本)
◦『論語集註』(1573年写)ほか

2.文は「文集」、「文選」
◦『文選』(明版 1552年刊)
◦『白氏文集』(1618年刊)
◦『和漢朗詠集』(1572年写)
◦『蒙求』(室町後期写)ほか

3.日本漢文学一斑
◦『歴聖大儒像』
◦『鵞峰先生林学士全集』(1689刊)
◦鈴木虎雄関係史料より「杜詩訳解成題後二首」ほか

2011年9月21日水曜日

中国と日本の現代アートを比較する

牧陽一「中国と日本の現代アートを比較する」(『埼玉大学紀要 教養学部』46-1、2010年9月)

中国現代アート(主にパフォーマンス)と日本の前衛芸術(主に1960年代)との類似と相違を論じている。北京東村の「無名の山のために1メートル高くする」とゼロ次元のパフォーマンス、新歴史グループ「太陽100」とハイレッドセンター(赤瀬川源平など)の「首都圏清掃整理促進運動」、趙半狄とダダカン・秋山祐徳太子などなど。

情報が伝わったとは考えにくく、収斂進化のように類似のパフォーマンスが生み出されたようだ。しかし、外形は類似しているものの、状況・環境に応じて、意味合いは異なっている。

大変、興味深かった。日本の現代アート評論には、こうした視線が抜け落ちているように思える。牧陽一氏は、「商品化」した作品や、問題意識の希薄な作品にやや辛めなので、日本の現代アートにも物足りなさを感じているかもしれないけれど、ぜひとも今後、現在の日本現代アートとの比較をやってほしいと思った。

と思って、牧氏のブログを拝見してみたら、2011年8月8日の日記Chim↑Pomに言及していた。Chim↑Pomは毀誉褒貶ある作家だけど、是非、中国現代アートとの比較の文脈から論じてほしいなぁ。

なお、この論文は、埼玉県内の大学の機関リポジトリであるSUCRAでダウンロードできます。

2011年9月19日月曜日

中唐文学会第22回大会

中唐文学会第22回大会

日時:2011年10月7日(金)13:30~
会場:九州大学箱崎キャンパス 21世紀交流プラザ
研究報告
13時30分~ 高芝麻子「唐詩に見える夏の諸相―冷涼感を中心として」
14時30分~ 紺野達也「友を待つ詩人―唐代園林における詩人の交遊を中心に」
15時30分~ 沈文凡「白居易及“長慶体”詩的明代接受文献輯考」
17時00分~ 総会

蝋人形・銅像・肖像画

遊佐徹『蠟人形・銅像・肖像画―近代中国人の身体と政治』(白帝社、2011年8月)

「身体」に焦点をあてて、
林則徐・李鴻章・郭嵩燾・西太后らの
蝋人形・銅像・肖像画などを通して、
中国近代を見直す試み。

2011年9月18日日曜日

モノが語る日本対外交易史

シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア著、河内春人訳『モノが語る日本対外交易史 七-一六世紀』(藤原書店、2011年7月)

序 章 ヨーロッパから見た東アジア世界
〈コラム序〉 多国間比較研究への展望
第一章 朝貢交易 7 ― 9世紀
〈コラム1〉 新羅物への憧憬
第二章 唐物への殺到 9 ― 12世紀
〈コラム2〉 東アジアの錬金術と日本の水銀
第三章 海を渡ったモノ
〈コラム3〉唐物への憧憬
第四章 自由貿易の高まり 12 ― 14世紀
〈コラム4〉 倭物に対する称賛
第五章 増大する輸出 14世紀後半 ― 16世紀
〈コラム5〉 東アジアを廻りまわる国際特産品 ―― 紙と扇
終章 唐物輸入から倭物輸出へ
解説 (鈴木靖民)

近年、モノからみた東アジア世界に注目が集まっていて、多くの成果が出てきている。本書はそのはるか昔の1988年にフランスで出版され、その後2006年に出た英語版を増補翻訳したもの。
朝貢貿易(遣唐使)の時代から遣明使の時代まで、日本対外交易(主に中国大陸)をモノを中心に平易に描いている。日本の対外貿易の傾向の変化だけでなく、輸出物が天然原料(金属・硫黄・木材)から高級工芸品(漆器・扇子・刀剣など)にかわっていくさまが描かれていて面白かった。特に刀剣の輸出が興味深い。

内陸アジア言語の研究26

『内陸アジア言語の研究』26(中央ユーラシア学研究会、2011年8月)

齊藤茂雄「突厥「阿史那感徳墓誌」訳注考―唐羈縻支配下における突厥集団の性格」
岩尾一史「古代チベット帝国支配下の敦煌における穀物倉会計―S.10647+Pelliot tibetain1111の検討を中心に」
西田祐子「『新唐書』回鶻伝の再検討―唐前半期の鉄勒研究に向けて」
松井大「古ウイグル語文献にみえる「寧戎」とベゼクリク」
趙振華著、中田裕子訳「唐代少府監鄭巖とそのソグド人祖先」

今号は唐代に関する論文が殆ど。いずれも大変興味深い。
齊藤論文は、墓誌を詳細に読み解いたうえで、
唐朝支配下の突厥遺民の様相について明らかにしている。
西田論文は、『新唐書』回鶻伝前半部(8世紀半ばまで)と先行記事とを詳細に比較し、回鶻伝前半部の編纂方針(先行記事の切り貼り)を明らかにし、編者に「鉄勒=ウイグル」という前提が存在したことを確認。『新唐書』回鶻伝前半部は、「歴史学的考察の根拠として用いることができない」とする。
趙論文は、墓誌を用いて、ソグド人でありながら、
漢姓(鄭)を名乗った鄭氏の存在を明らかにした。

2011年度史学会大会東洋史部会

2011年度史学会大会東洋史部会   日時:2011年11月6日(日)
場所:東京大学法文1号館113番教室
 

研究発表 午前の部 9:30~12:00
山下真吾「在イスタンブル写本コレクションにおける歴史書の位置づけ」

佐々木紳「1870年代オスマン帝国の憲政論議―『統一』(イッティハード)紙上の議論を中心に―」
片倉鎮郎「19世紀前半の英領インドにおけるブー・サイード朝代理人」

秋山徹「混成村落の創設にみる20世紀初頭のクルグズーロシア関係」
植田暁「1916年反乱におけるクルグズ―地域間比較の試み―」

研究発表  午後の部12:30~17:30
植松慎悟「王倚新と光武帝期の正統観について」

三田辰彦「東晋中葉の尊号問題―皇太妃号の議論を中心に―」
角山典幸「北魏洛陽城再考―金墉城の機能を中心として―」
江川式部「唐代の家廟―とくに唐後半期における立廟とその意義について―」
王博「唐・宋「軍礼」の構造とその変容」
小二田章「茶樹を抜いてはいけないか?―北宋期地方統治と治績記述の形成をめぐって―」 
伊藤一馬「南宋成立直後の陝西地域と中央政府」
陳永福「明末復社における人的結合とその活動」
豊岡康史「珠江河口の海賊問題と“ヨーロッパ人”(1780-1820)」
北村祐子「南京政府時期における南京市の土地登記事業」

2011年9月7日水曜日

日本中国学会第63回大会

日本中国学会第63回大会
日時:2011年10月8日(土)・ 9日(日)
場所:九州大学箱崎キャンパス旧工学部本館
諸会費
 大会参加費 2,000円
 昼食弁当代 1,000円/一食
 写真代    1,000円

報告 ※報告多数のため、一部にとどめます。
【哲学思想部会】(3階10番講義室)
10月8日(土)
10時~10時30分:荒木 雪葉「磬から考察する「子撃磬於衛」章」
10時35分~11時5分:吉永慎二郎「春秋経(左氏経)の作経メカニズムとその成立の構図について」
11時10分~11時40分:重信 あゆみ「古代中国の神の造形とベス」
13時30分~14時:前原あやの「張衡『霊憲』の科学思想」 
14時5分~14時35分:梁音「二十四孝の成立における『晋書』の位置づけ」
14時40分~15時10分:佐々木聡「中国近世以降における『開元占經』の流傳と受容について」
15時15分~15時45分:野村英登「佐藤一斎の静坐説とその思想史的考察」
10月9日(日)略

【文学語学Ⅰ部会】
10月8日・9日略

【文学語学Ⅱ部会】(大講義室 旧工学部本館1階)
10月8日(土)
10時~10時30分:石川三佐男「古代楚王國の國策から見た楚辭文學の發生と展開」
10時35分~11時5分:田中郁也「李登・呂静の用いた五音について―五姓法からのアプローチ―」
11時10分~11時40分:中村友香「六朝志怪「再生譚」に見られる死の「境界性」」
13時30分~14時:種村由季子「則天武后の洛陽駐輦と駱賓王「帝京篇」」
14時5分~14時35分:陳翀「旧鈔本「長恨歌序」の真偽」
14時40分~15時10分:陳文佳「韓偓『香奩集』の版本について」
15時15分~15時45分:東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇の発見について」
10月9日(日)略

【漢文教育部会】
10月8日・9日略

【特別講演】:1階中央 大講義室
10月8日(土) 16時〜17時
町田三郎「九州の漢学者たち」
10月9日(日) 11時10分〜12時10分
金文京「韓国の中国学研究の現状紹介」

プログラムの詳細は
日本中国学会のHP参照。

2011年8月21日日曜日

東京古典会創立100周年記念 貴重書展

東京古典会創立100周年記念

貴重書展 -和本の世界-
日時:2011年10月2日(日)12:00~18:00  
 10月3日(月)11:00~16:30
場所:東京古書会館地下

斯道文庫蔵和漢古典籍集覧
江戸川乱歩と東京古典会-購入記録にみる和本蒐集の軌跡
※慶應義塾大学附属研究所斯道文庫の蔵書より、和本と漢籍の優品40点を展示。

展示品解説 (※10月2日のみ開催)
13:30~/16:10~ 2 回実施(各回30 分程度)
和書の部解説:佐々木 孝浩
漢籍の部解説:高橋 智

2011年8月20日土曜日

唐代史研究会夏期シンポジウム

2011年唐代史研究会夏期シンポジウム
日程:2011年8月22日(月)・23日(火)
場所:文部科学省共済組合箱根宿泊所 四季の湯強羅静雲荘

シンポジウム「「隋唐帝国」論―形成・影響・本質」
8月22日(月)
14:00~15:30 川合安「南朝史からみた隋唐帝国の形成」
15:30~17:00 前島佳孝「西魏・北周・隋初時期における領域統治体制について」
8月23日(火)
10:00~12:00 堀井裕之「唐朝政権の形成と太宗の氏族政策」
13:30~15:00 赤羽目匡由「新羅真徳王五(651)年中央官制改革の意義(仮)」
15:00~16:30 榎本淳一「隋唐朝の朝貢体制の構造と展開(仮)」

居酒屋の世界史

やっと涼しくなり、調子ももどりそう。
遅れた分をなんとか取り戻したい……。
けど、ここで無理するとよくないという気もする。
まぁ、ぼちぼちやっていきます。

下田淳『居酒屋の世界史』(講談社現代新書、2011年8月)

西欧を中心としながらも、非西欧圏(イスラム・中国・日本)の居酒屋も取り上げ、居酒屋を通じた比較文化論を展開。西欧中世~近現代の居酒屋については、「居酒屋の多機能性」(銀行・裁判・集会所・演芸場・売春など)が徐々に専業化していく過程(「棲み分け」)が描かれていて参考になった。
しかし、中国の居酒屋を述べた際に、農村部には居酒屋が存在せず、その原因を「中国農村が現物経済から貨幣経済に移行しはじめたのは、一九世紀になってからであった」とするのは理解できなかった。同様の記述は、イスラム圏や日本の箇所でもみられる。

2011年8月13日土曜日

2011年度魏晋南北朝史研究会大会

2011年度魏晋南北朝史研究会大会
日時:2011年9月17日(土)午後1時~
会場:日本女子大学目白キャンパス,新泉山館大会議室
プログラム
友田真理「墓誌の誕生前夜―漢末魏晋期における葬俗の転換と薄葬令」
 コメンテーター 安部聡一郎
松下憲一「北魏墓誌の研究」
 コメンテーター 東賢司
阿部幸信「学会報告 「第5届中国中古史青年学者聯誼会」参加報告」

2011年8月1日月曜日

ふたつの故宮博物院

野嶋剛『ふたつの故宮博物院』(新潮選書、2011年6月)

北京と台北に存在するふたつの故宮。
清末の文物流失、抗日戦争による文物移動、
そして国共内戦を経て、二つの故宮が成立し、
現在に至る過程を描く。

前近代中国史に関する凡ミス(例:曹操を宦官の息子とする)がけっこうあるし、第2章~第4章(故宮の歴史的経緯)が先行書籍をまとめただけで、物足りなかったけれど、現代の故宮をめぐる諸問題を扱った第1章・第6章・第7章はかなりおもしろかった。

一番よみごたえがあったのは、
陳水扁期の故宮改革とその挫折を述べた第1章。
院長などへのインタビューを通じて、
生々しく故宮改革の様子について描いている。

2011年7月31日日曜日

外邦図

小林茂『外邦図―帝国日本のアジア地図』(中公新書、2011年7月)

第二次世界大戦終結まで、日本がアジア・太平洋地域について作成した「外邦図」の歴史についてまとめたもの。陸軍が中心となって、戦争・植民地支配のために、朝鮮・台湾・中国・東南アジアで作成されていく様子がえかがれている。

外邦図は、未だ積極的に活用されているとはいえないそうだが、環境史にとって意義ある資料であるとする。確かに口絵にのっている中国安徽省の空中写真をみると、ずいぶん景観が変化していることがわかる。また、広開土王碑との関係で有名な酒匂景信の手描き地図(洞溝周辺)にも言及している。前近代の遺構・遺跡を研究する際にも活用できそう。

韋昭研究

高橋康浩『韋昭研究』(汲古書院、2011年7月)

三国時代の呉に仕えた韋昭の専門書。
第一篇「学者としての韋昭」(4章構成)では、
『国語解』(『国語』の注釈)と『漢書音義』を中心に、
韋昭の学問の特徴を述べる。
鄭玄の学問との関係が興味深い。
後漢から三国期の学問状況がうかがえる。

第二篇「孫呉人士としての韋昭」(3章構成)では、
「博奕論」・「呉鼓吹曲」・『呉書』を取り上げ、
韋昭と呉政権、特に孫呉正統論との関係を述べている。
第二篇はやや特定の先行研究に
よりかかっているように感じてしまった。

2011年7月27日水曜日

これから出る(出回る?)本2

東洋文庫から2011年3月に
 東洋文庫中国古代地域史研究班編『水経注疏訳注(渭水編 下)』が出た模様。
書店にもそろそろ出回るのではなかろうか。
(もしかしたら、既に出回ってるかも)  
『水経注』渭水編の訳注だけでなく、
『水経注疏』関係の檔案を調査しているのもおもしろそう。


目次は以下の通り
序言  東洋文庫中国古代地域史研究班(太田幸男)
窪添慶文「魏晋南北朝時期の長安」
池田雄一「『水経注疏』関係檔案と同書稿本」 
池田雄一・多田狷介・石黒ひさ子・山元貴尚「傳斯年図書館所蔵『水経注疏』関係の檔案」
太田幸男「陳橋駅先生との会見記 附:陳橋駅先生『水経注』研究著作目録」
多田狷介「西安考古訪問記」
『水経注疏』訳注凡例 
『水経注疏』巻十九 渭水下 
『水経注疏』影印 
索引       

これから出る本

8月に勉誠出版から刊行されるアジア遊学 144は、
田村義也・松居竜五編「南方熊楠とアジア」。
これはおもしろそう。

巨人熊楠における古典・西欧近代学問・近代東アジアとの
関係・まなざしを解き明かしてくれそう。
目次を読むだけでわくわくしてくる。

目次は以下の通り
◆緒言
田村義也「南方熊楠の現在―資料刊行の進行と南方像の変遷」
◆座談会 
飯倉照平、小峯和明、奥山直司、田村義也(司会)「南方熊楠とアジア」
◆東アジア的「知」と学問
小峯和明「南方熊楠・東アジアへのまなざし」
武内善信「「都会っ子」としての南方熊楠 ―東アジア的「知」との邂逅」
飯倉照平「南方熊楠と中国書」
コラム 池田 宏「南方熊楠と漢籍―南方熊楠邸での漢籍調査に従事して」
高陽「南方熊楠の比較説話をめぐる書き込み―『太平広記』、『夷堅志』と『今昔物語集』とのかかわりを中心に」
 平川恵実子「『沙石集』と南方熊楠」
◆西欧近代学問との邂逅
小山騰「南方熊楠と英国の日本学」
田村義也「『ネイチャー』誌論考の中のアジア―南方熊楠の最初期英文論考」
志村真幸「『ノーツ・アンド・クエリーズ』誌掲載論文の中のアジア」
松居竜五「図書館の中のユーラシア大陸――南方熊楠「ロンドン抜書」における旅行書」
神田英昭「南方熊楠・土宜法龍とチベット―一八九三年~一八九四年における往復書簡を中心に」
奥山直司「南方熊楠と十九世紀ヨーロッパのインド学」
唐澤太輔「南方熊楠の夢の世界」
杉田英明「知識の泉としての『アラビアン・ナイト』― バートン版と南方熊楠」
増尾伸一郎「南方熊楠の比較説話研究とW・A・クラウストン―”Popular Tales and Fictions”の受容をめぐって」
◆近代東アジアへのまなざし
ブリジ・タンカ「アジアにおける普遍性―南方熊楠とベノイ・サルカル」
武上真理子「南方熊楠と孫文―交錯するアジアへのまなざし」
橋爪博幸「南方熊楠の朝鮮半島へのまなざし」
岸本昌也「在英日本人表誠金献納始末―日清戦争と南方熊楠」
千本英史「新聞「日本」と南方熊楠 附・全集未収録論考「神前女子不脱帽一件」」
◆熊楠の思想と生活
コラム 辻 晶子「南方熊楠の稚児論」
コラム 広川英一郎「南方熊楠とその門弟」
コラム 安田忠典「南方熊楠と温泉」
◆博物館紹介
田村義也「南方熊楠記念館/南方熊楠顕彰館―一次資料を所蔵・展示する二施設」
◆書籍紹介
松居竜五「新しい『南方熊楠大事典』から始まる新しい南方熊楠研究」

2011年7月23日土曜日

古代東アジアの道路と交通

鈴木靖民・荒井秀規編『古代東アジアの道路と交通』(勉誠出版、2011年7月)

2010年6月に國學院大学で開催された古代交通研究会大会のシンポジウムがもとになった論文集。四部構成で、日本・中国・東アジア諸国の古代の道路が検討されている。

鈴木靖民「序言 古代東アジアの道路と交通」 
第Ⅰ部 古代の直線道路・東アジアの視角
木下良「東アジアの古代道路―世界的視圏から」
武部健一「中国古代道路史概観」
張在明「中国陝西省富県における秦の直道遺跡の発掘」
小鹿野亮「入唐求道巡礼行記―山越えの軍用道・始皇帝の直道を歩く」
早川泉「秦の「直道」と道路構造」
 
第Ⅱ部 中国唐代の道路・交通
中大輔「北宋天聖令からみる唐の駅伝制」
永田英明「唐日伝馬制小考」   
塩沢裕仁「洛陽から四方に通じる大道とその遺跡」
河野保博「長安と洛陽を結ぶ二つの道―「臨泉駅」銘石刻を中心に」
荒川正晴「唐代の交通と商人の交易活動」
桜田真理絵「唐代の通行証―標準型・簡易型による区別」
 
第Ⅲ部 諸国の交流と道
小嶋芳孝「渤海の交通路」
山本孝文「古代韓半島の道路と国家」
澤本光弘「契丹(遼)の交通路と往来する人」
田中史生「海上のクロスロード―舟山群島と東アジア」
河内春人「古代国際交通における送使」
 
第Ⅳ部 古代日本の道と制度

中国語の歴史

大島正二『中国語の歴史―ことばの変遷・探究の歩み』(大修館書店、2011年7月)

あじあブックス072。
漢字があらわす形・音・義、
そして中国語文法の変遷とともに、
どのように研究されてきたかも紹介している。

第一章「漢字の〈形〉のはなし」では、
漢字の変遷・字書編纂、
第二章「漢字の〈音〉のはなし」では、
音韻学・韻書・中古音、
第三章「漢字の〈義〉のはなし」では、
義書(『爾雅』・『方言』・『釈名』)・語彙、
第四章「中国語の〈文法〉のはなし」では、
文法研究について取り上げている。

2011年7月17日日曜日

UP40-7

東京大学出版会が発行している『UP』は、
毎号読んでいるわけではないけれど、
山口晃「すずしろ日記」が連載されていることもあって、
時々読んでいる。

なにげなく手に取った今月の
『UP』40-7(通巻465号、2011年7月)は、
かなり読み応えがあった。目次の一部をあげます。

宮地正人「60年をよむ⑦[歴史学] 時代と理論」
川島真「[中国のフロンティア]1 アフリカの「保定村」物語―中国人農業移民」
駒込武「天皇機関説事件以後の学問空間」
中村高康「〈能力不安〉の時代」
池内恵「[「アラブの春」は夏を越えるか]1 中東の政変は「想定外」だったか―「カッサンドラの予言」を読み返す」
齊藤希史「[漢文ノート]19 悼亡」
山口晃「すずしろ日記 第76回」

なかでも一番おもしろかったのが、
川島真「アフリカの「保定村」物語」。
アフリカ(ザンビアなど)に行った出稼ぎ農民が、
現地に築いた移民村に関する「物語」の虚実。

2011年7月16日土曜日

三国志学会第六回大会

三国志学会 第六回大会
日時:2011年8月27日(土)
会場:京都大学人文科学研究所 大会議室

研究報告 (10:00~12:40)
佐々木正治 「曹操高陵発掘調査の最新成果と考古学的意義」
葉口英子 「日本のサブカルチャーにみる三国志の流用―近年のゲームやマンガを事例として―」
金文京「韓国発見の『三国志演義』テキスト二種について」

講演 (14:00~17:00)
金相燁「朝鮮王朝時代の三国志絵画について」
堀池信夫「鄭玄学の展開」

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会7月例会

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会7月例会
日時:2011年7月23日(土) 午後2:00~5:00
場 所:財団法人東洋文庫7階 第2会議室
報告
西尾亜希子「チベット・新疆旅行談」
吉田豊「トルファン出土ソグド語文書断片の接合-Dx文書の整理によ せて-;(付)新出の江南マニ教絵画と敦煌漢文文献」

2011年7月9日土曜日

第4回中国石刻合同研究会

第4回 中国石刻合同研究会
日時: 2011年7月30日(土) 10時~18時
場所: 明治大学アカデミーコモン 地階 博物館教室
報告
10:10~10:50 梶山 智史「北朝の東清河崔氏に関する石刻史料」
10:50~11:30 小笠原 好彦「日本古代の墓誌」
11:30~12:10 橋本 栄一「北魏龍門造像記における書様式の生成について」
 休憩
13:00~14:00 毛陽光「新見流散唐代墓誌与唐史研究―以唐懿宗宰相楊収墓誌為中心」
14:00~14:40 村井 恭子「唐・南遷ウイグル抗争関連墓誌とその情況について」
14:40~15:20 古松 崇志「仏教石刻よりみた契丹燕京地方の塩政と商業」
15:40~16:20 渡辺 健哉「東北大学附属図書館蔵 常盤大定旧蔵拓本について」
16:20~17:00 堤 一昭「大阪大学所蔵石濱純太郎収集拓本の整理状況」

第42回中央アジア学フォーラム

第42回中央アジア学フォーラム

日時:2011年7月30日(土)13:30〜18:00
場所:大阪大学文学部本館1階・大会議室

報告
荒木陸「書評:Johan Elverskog, Our Great Qing. The Mongols, Buddhism and the State in Late Imperial China Honolulu, University of Hawaii Press. 2006」
石川禎仁「「転帖」の運用形態に見える帰義軍期敦煌の土地利用」
荒川正晴「トゥルファンの城邑問題について:科研調査報告を兼ねて」
白須浄真「シルクロードの古墳壁画の大シンフォニ--4~5世紀の来迎・昇天壁画の図像学(イコノグラフィー)-」

汲古59

なかなか思うように更新できませんでした。
なにかと三歩進んで二歩下がる感じですが、
今月もぼちぼちやっていきたいと思います。

古典研究会編『汲古』59号(汲古書院、2011年6月)
中国関係のみをあげます。
高木浩明「古活字版調査余録(二)―『後漢書』の刊行年時を考える」
小沢賢二「蔡邕『天文志』佚文に見られる渾天儀の構造―円周率の認識と渾天儀の造立」
塩卓悟「国立公文書館蔵『太平広記』諸版本の所蔵系統」
竹越孝「『一百条』系の漢語鈔本について」
池田恭哉「稿本『語石』について」

池田論文は、京都大学文学部中国哲学史研究室所管の『語石』鈔本について分析し、光緒27年の葉昌熾の脱稿後、宣統元年の『語石』刊行以前に、協力者によって増補・校訂が加えられたものとする。

2011年6月18日土曜日

美術史学会西支部例会

美術史学会西支部例会

日時:2011年7月16日(土)13:30~
場所: 大和文華館講堂

研究発表
井面舞「物語の絵画化の一様相について―『釈迦堂縁起絵巻』の場合―」
河野道房「北斉徐穎(徐顕秀)墓壁画の造形的特徴―北朝人物画様式の一典型―」

2011年6月12日日曜日

朝鮮史研究入門

朝鮮史研究会編『朝鮮史研究入門』(名古屋大学出版会、2011年6月)

35名の執筆者による朝鮮史研究入門。
本文333頁、文献目録&研究の手引き156頁。
日本の研究動向だけでなく、
韓国の研究動向もかなり詳しく紹介している。
日本と韓国での研究状況の違いもうかがえる。

目次は以下の通り
緒論:朝鮮史研究の課題と現況
第1章:先史時代の朝鮮半島
第2章:国家形成と三国
第3章:統一新羅と渤海
第4章:高麗
第5章:朝鮮
第6章:開港期・大韓帝国期
第7章:植民地期
第8章:現代史

2011年6月6日月曜日

モンゴル帝国の覇権と朝鮮半島

森平雅彦『モンゴル帝国の覇権と朝鮮半島』(山川出版社、2011年5月)

抵抗か服従か、といった二分法でとらえられがちな、
モンゴル帝国時期の朝鮮半島(高麗)について、
対モンゴル関係の変化や、
モンゴル帝国内の駙馬高麗国王としての側面、
モンゴルとの密接な関係がもたらした国内政治の変容など、
複雑で多様な朝鮮半島(高麗)の状況を述べている。

日中国交正常化

服部龍二『日中国交正常化―田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦―』(中公新書、2011年5月)

1972年の日中国交正常化について、
外交記録・インタビュー・日記などを用いて、
田中角栄・大平正芳・外務官僚の動きをひもとき、
国交正常化にいたる過程(主に日本側)を解き明かしている。

田中角栄には金権政治のイメージばかりが
先行していたけれど、日中国交正常化に関しては、
アメリカ・台湾・中国、そして日本の政治家の思惑が交錯する中で、
上手に官僚を操縦し、成果を上げていたことがわかる。

2011年6月5日日曜日

逸周書研究序説

高野義弘「逸周書研究序説―「声の文化」の観点から―」(『東洋文化』復刊106、2011年4月)

西周時代の事績を記した書籍であるにも関わらず、
これまで関心が低かった『逸周書』について分析。
中国で用いられている二重証拠法の危うさを指摘した上で、文章構造から『逸周書』の一部は、殷・西周の記憶をとどめており、最終的にまとめられた時期は春秋期以降であるとする。
そして、殷周史を「声の文化」の視点から考察した松井嘉徳氏の見解を紹介し、『逸周書』の内容も王朝内の口頭伝承で伝えられた可能性を指摘している。
また、中国人研究者に顕著にみられる殷周時代に既に史官が存在し、史書を編纂していたという認識の危うさを指摘している。

はじめての漢籍

東京大学東洋文化研究所図書室編『はじめての漢籍』(汲古書院、2011年5月)

東洋文化研究所図書室が2009年・2010年に行なった
「はじめての漢籍」講演会を書籍化したもの。
目次は以下のとおり。
大木康「漢籍とは?」
齋藤希史「漢籍を読む」
橋本秀美「初心者向け四部分類解説」
平勢隆郎「工具書について」
大木康「東京大学総合図書館の漢籍について」
石川洋「東京大学文学部漢籍コーナーの漢籍について」
小寺敦「東京大学東洋文化研究所の漢籍について」

個人的には石川洋氏の文学部漢籍コーナーの紹介がおもしろかった。文学部の組織の中での位置づけがよくわからないまま、現在までちゃんと機能している漢籍コーナーの実状が述べられている。

歴史の争奪

諸般の事情で五月は更新が滞ってしまいました……。
これからは、ぼちぼち更新していきたいと思います。

古畑徹「歴史の争奪―中韓高句麗歴史論争を例に―」(『メトロポリタン史学』6、2010年12月)

中国と韓国の学者・マスコミの間で論争になっている
高句麗の「帰属」問題の経緯をまとめている。
「中韓高句麗歴史論争のゆくえ」(弁納才一・鶴園裕編『東アジア共生の歴史的基礎』御茶の水書房、2008年)の続編。

中国で2002年にはじまった「東北工程」の経緯や、
韓国側の学者・マスコミ・研究組織の反応・状況を述べ、
韓国側には「中国側の領土分割・民族分裂への警戒感に対する理解と配慮がないこと」、中国側には「高句麗が民族アイデンティティの根幹にかかわるという認識が欠如していること」を指摘。「民族感情に火がついた韓国側の方が明らかにヒートアップしている」とする。
そして、中国では両属論が台頭し、高句麗「争奪」から後退しているのにたいし、韓国では高句麗の「独占」をめざす方向に進んでいるとする。

現在の国民国家の枠組みに属さない存在の歴史を
どのように描くかということを考えさせる。

2011年5月7日土曜日

第2回国文研フォーラム

第2回国文研フォーラム
日時:2011年5月18日(水)15:30~16:30
場所:国文学研究資料館 2階オリエンテーション室

報告
陳捷「十九世紀後半における日中間の古典籍の移動について」

事前申し込み不要。
会場の関係で、先着20名まで。
報告要旨などは国文学研究資料館のHPをご参照ください。

2011年5月2日月曜日

西魏宇文泰政権の官制構造について

前島佳孝「西魏宇文泰政権の官制構造について」(『東洋史研究』69-4、2011年3月)

西魏の権力者であった宇文泰の官歴を詳細に分析し、従来等閑視されてきた西魏政権の官制構造に迫ったもの。宇文泰の官歴については、史料上の矛盾のため、諸説存在していましたが、本論文で解決されたと思います。

東アジアの記憶の場

板垣竜太・鄭智泳・岩崎稔編著『東アジアの記憶の場』(河出書房新社、2011年4月)

1990年代以降の「記憶論的転回」(「記憶」を手がかりとした「歴史」叙述)を受け、ピエール・ノラ編『記憶の場』の理論的限界(特に植民地主義の問題)を踏まえた上で、「批判と連帯のための東アジア歴史フォーラム」の第二期で扱った〈東アジアの記憶の場〉をまとめたもの(パイロット版)。

目次は以下の通り
板垣竜太・鄭智泳・岩崎稔「序文〈東アジアの記憶の場〉を探して」
〈古典古代の空間〉
李成市「三韓征伐」
金錫佑「関羽」
柳美那「孔子廟」
〈物語のダイナミクス〉
鄭智泳「孝女沈清」
三ツ井崇「三年峠」
〈ペルソナの断裂〉
金信貞「尹東柱」
板垣竜太「力道山」
〈風景の複層〉
駒込武「芝山岩」
テッサ・モーリス-スズキ「金剛山」
高木博志「桜」
〈身震いの経験〉
岩崎稔「アカ」
崔真磧「朝鮮人」
〈規律の反転〉
呉成哲「運動会」
板垣竜太「指紋」

序文でも書いてある通り、「東アジア」を銘打っておきながら、その殆どが日本・朝鮮半島の「記憶」に留まっているけれど、それをさしひいても、かなり面白かったです。単なる研究論文集ではなく、「記憶」と向き合った様子がうかがえました。今後も同様の試みが続いてほしいです。

2011年4月29日金曜日

内陸アジア出土古文献研究会6月例会

内陸アジア出土古文献研究会6月例会

日時:2011年6月4日(土) 14:00~18:00
場所:財団法人東洋文庫7階 第1・2会議室

報告
菊地淑子 「敦煌の陰氏をめぐる一考察」
中川原育子「キジル壁画における箔の使用とその意味-キジル摩耶窟の事例を中心に-」

2011年4月24日日曜日

第104回訓点語学会研究発表会

第104回 訓点語学会研究発表会
日時:2011年5月22日(日)
場所:京都大学文学部(第3講義室)

報告:午前の部 10時30分~
賈智「『新訳華厳経音義私記』所引の楷書字書について― 用例の採集と考察 ―」
アルベリッツィ、ヴァレリオ・ルイジ「書記言語の観点から見た文体記述研究の可能性について―興福寺本『日本国現報善悪霊異記』の場合―」

報告:午後の部 13時30分~
大坪併治「古訓三題「〓カタヒラ・依ヨスキ・逮ウ」について」
是澤範三「台湾大学図書館蔵圓威本『日本書紀』の声点と資料的位置づけについて」
土居文人「語源辞書『和句解』見出し語の依拠資料― 易林本系節用集との比較 ―」
稲垣信子「北大津「音義木簡」成立年代存疑」
石井行雄・當山日出夫「園城寺『弥勒経疏』の訓点について―角筆・白点・朱点をめぐって―」
小助川貞次「漢文文献の階層構造(注釈構造)と朱点との関係について」

2011年4月23日土曜日

魏晋南北朝時代の服飾制度

小林聡「漢唐間の礼制と公的服飾制度に関する研究序説」(『埼玉大学紀要教育学部』58-2、2009年9月)
小林聡「朝服制度の行方―曹魏~五胡東晋時代における出土文物を中心として―」(『埼玉大学紀要教育学部』別冊(1)59-1、2010年3月)
小林聡「北朝時代における公的服飾制度の諸相―朝服制度を中心に―」(『大正大学東洋史研究』3、2010年4月)

今まで見落としていたので、3本一気に読みました
「漢唐間の~」は、文献史料と出土史料を用いて、魏晋南北朝隋唐の服飾制度変容のアウトラインを描き、さらに東アジア(高句麗・倭)への服飾制度の伝播も視野に入れています。
「朝服制度の行方」では、曹魏から五胡東晋期の朝服制度の変容を明らかにし、「北朝時代における~」では、北魏の服制改革や北朝独自の服制について検討しています。

なお、「漢唐間の~」と「朝服制度の行方」は、
学術情報発信システムSUCRAからダウンロードできます。

2011年4月20日水曜日

六朝学術学会第23回例会

六朝学術学会・第23回例会

日時:2011年5月21日(土)午後1時~5時
場所:二松学舎大学九段校舎11階会議室
会場費:500円

発表(報告)
冨田絵美「正月十五日の行事について」
栗山雅央「「魏都賦」旧注に見える特徴について―「三都賦」劉逵注との比較を通して」
齋藤希史「遠望と遐想──六朝文学の主題として」

2011年4月18日月曜日

第60回東北中国学会大会

第60回東北中国学会大会

日時:2011年5月28日(土)・29日(日)
場所:28日は秋田大学教育文化学部六十周年記念ホール(三号館145教室)
 29日は男鹿観光ホテル

大会プログラム
5月28日 研究発表会 13時~
石川三佐男「地域文化の鑛脈「秋田漢詩文」について」
氣賀澤保規「唐「鴻臚井碑」の歴史的意義と内藤湖南」
公開講演 14時30~
加地伸行「中国学研究の過去と未来」

5月29日 9時~
第一分科会(哲学・文学部会)
高田哲太郎「『管子』の「聖人」について」
薪塩悠「詩律に対する唐代の意識について―試帖詩からのアプローチ」
菅原尚樹「地理叙述よりみる「全相平話」と明代歴史小説の継承関係について―『新刊全相平話楽毅図斉七国春秋後集』『新刊全相平話前漢書続集』を中心に」
尾崎順一郎「程瑤田の学問観について」
藤居岳人「中井竹山の儒者意識―その経学研究を中心として」
金澤文三「「禹域の神明」―昭和三年、満州国建国に奔走した鄭孝胥と内藤湖南の漢詩の風景」

第二分科会(史学部会)
塩野貴啓「前漢の郎官と郎将」
小尾孝夫「東晋南朝の「軍郡」―義煕土断と劉裕の対州鎮政策」
兼平雅子「唐文宗の宦官誅殺計画と宦官権勢の様相についての一考察―甘露の変再考」
進藤尊信「明代における二十四衙門及び王府の宦官の出自と異動に関する考察」
釆沢匡俊「清末における科挙受験生の「科挙観」の変遷について」

2011年4月10日日曜日

中国古代貨幣経済史研究

柿沼陽平『中国古代貨幣経済史研究』(汲古書院、2011年1月)

中国古代史のみならず、中国史全体(ひいては世界史)を視野に入れて、“交換史観”を提唱し、中国古代貨幣経済の解明を試みた意欲的な論著。経済人類学などの近接諸分野の成果を取り入れるのみならず、中国古代史では殆ど言及されることのない言語論的転回も視野に入れている。
いずれも既出論文に改稿を加えている。なお、近年刊行された後漢・三国・晋代に関する論文は収録されていない。

目次は以下の通り
序 章 中国古代貨幣経済史研究の意義と分析の視角
第一章 殷周宝貝文化とその「記憶」―中国古代貨幣経済史の始源に関する「記憶」の形成―
第二章 文字よりみた中国古代における貨幣経済の展開
第三章 戦国秦漢時代における物価制度と貨幣経済の基本的構造
第四章 戦国秦漢時代における「半両」銭の国家的管理
第五章 戦国秦漢時代における盗鋳銭と盗鋳組織
第六章 戦国秦漢時代における銭と黄金の機能的差異
第七章 戦国秦漢時代における布帛の流通と生産
第八章 戦国秦漢時代における塩鉄政策と国家的専制支配の機制―男耕女織政策・塩鉄専売制・均輸平準による三位一体的支配体制の確立―
終章 中国古代貨幣経済の特質とその時代的変化

2011年4月9日土曜日

ハウス・オブ・ヤマナカ

朽木ゆり子『ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商―』(新潮社、2011年3月)

戦前に日本・中国の美術品を欧米に輸出して世界に名を馳せた山中商会を取り上げたノンフィクション。副題が新潮社っぽく、あおり口調だけど、研究書といってもよさそうな内容。主にアメリカの公文書館で発見した資料を用いて、アメリカ支店を中心に山中商会の盛衰を描いている。闇商人的なイメージが強かったけれど、アメリカでは信頼できる美術商として活躍していたようだ。残念ながら日本での活動については、資料的制約から殆ど触れられていない。

アメリカ支店設立当初は、日本美術を中心としていたが、徐々に中国美術を扱うようになり、1910年代以降は中国美術が主要商品となったらしい。日本でも山中商会は活発に中国美術を売買していた。例えば、根津美術館にある天龍山石窟の仏頭は、山中商会が取り扱ったものである。山中商会の研究が進むことで、発見地・出土時期・流通経路などが明らかになる中国美術品も出てくるのではないだろうか。

実際、本書157~165頁によれば、現メトロポリタン美術館蔵の北魏の金銅仏(524年製)は、メトロポリタン美術館の1944年のカタログでは1924年に河北省の小さな村で発見されたとあるそうだが、山中商会の請求書から1918年に河北省正定で発見され、日本に入った後、アメリカにいったことがわかるそうだ。今後、是非とも山中商会研究が活発化してほしい。

2011年4月5日火曜日

第56回東方学者会議

第56回東方学者会議
日程:2011年5月20日(金)
場所:日本教育会館7階・8階

シンポジウム1 東南アジア港市国家論
シンポジウム2 中国宋代における「地域」像―中央集権的文臣官僚支配国家下における「地域」史研究
シンポジウム3 16~18世紀モンゴル語文献資料への探求
シンポジウム4 仏教と論争―大乗仏教の展開とその宗教思想史的背景
シンポジウム5 注釈の未来―日本文学研究から
美術史部会

詳細は東方学会HP掲載のプログラムをご覧ください。

もうひとつの敦煌

關尾史郎『もうひとつの敦煌―鎮墓瓶と画像磚の世界―』(高志書院、2011年3月)

新潟大学人文学部の新大人文選書7。
本邦初の鎮墓瓶・画像磚の一般向け専門書。
敦煌といえば、シルクロード、敦煌文書、壁画などで有名ですが、本書では魏晋十六国期の敦煌で主に作成された鎮墓瓶・画像磚を中心に取り上げています。一見、些細な史料にみえる鎮墓瓶や画像磚から、敦煌地域社会を浮かび上がらせていて興味深いです。

2011年4月2日土曜日

三国志関連書籍

渡邊義浩『三国志―演義から正史、そして史実へ―』(中公新書、2011年3月)
愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター編『曹操高陵の発見とその意義―三国志 魏の世界―』(汲古書院、2011年3月)


『三国志―演義から正史、そして史実へ』は、
各章で演義と正史を比較し、そのイメージの違いを確認。
さらに正史のフィルターを払って、史実に迫るとしている。
これまでの著者の研究のエッセンスを凝縮している。


『曹操高陵の発見とその意義』は、2010年11月27日・28日に愛媛大学で開催されたシンポジウム「三国志 魏の世界―曹操高陵の発見とその意義」の講演録。目次は以下の通り。
村上恭通「『三国志 魏の世界』開催にあたって―経緯と趣旨―」
白雲翔「漢末・三国時代考古およびその新展開―北方曹魏を中心に―」
潘偉斌「曹操高陵の発見と発掘および初歩研究」
郝本性「曹操高陵出土文物の研究―安陽高陵出土石牌刻銘にみる曹操のすがた―」
張志清「漢代陵墓考古と曹操高陵」
討論会
付録一 河南省文物考古研究所・安陽県文化局「河南安陽市西高穴曹操高陵」
付録二 曹操高陵に関する中国人研究者の見解について
付録三 曹操高陵発見前後の経緯

曹操高陵の発掘経緯・発掘状況・出土物などについて紹介。漢代(前漢・後漢)陵墓との比較もある。付録一は、『考古』2010-8に掲載された発掘報告の翻訳。付録二は、『中国文物報』(2010年10月1日)に掲載された「曹操高陵考古発現専家座談会発言適要」をもとに、各研究者の見解の要点をまとめたもの。付録三は、『曹操墓真相』(科学出版社、2010年)掲載の発見経緯年表に加筆したもの。

2011年3月25日金曜日

日本中国学会若手シンポジウム情報2

日本中国学会若手シンポジウムのプログラム最終版が日本中国学会HPに掲載されていました。

これを見る限り、第一・第二部会に変更はないようです。また、第四部会は10時40分からの許時嘉氏の報告がなくなっています。そのため、10時40分から洲脇武志氏の報告がはじまります。

問題の第三部会ですが、プログラムを見る限り、中止とはなっていません。ただ、裴亮氏・徐暁紅氏・福嶋亮大氏の報告がなくなったため、第三部会自体は13時開始となっています。

なんとなく、狐につままれたような感じです。中途半端な情報を流してしまい申し訳ありませんでした。

2011年3月24日木曜日

東京大学附属図書館

九州大学附属図書館に続き、東京大学附属図書館でも、被災地域(東北・茨城)の大学・短大の学生・教職員に、臨時入館証の発行、館内史料の閲覧・複写サービスを開始。期間は4月28日(木)までだそうです。詳細は東京大学附属図書館HPを参照してください。

「関野貞資料と都城の世界」日時変更

3月29日(火)に開催予定だった関野貞 プロジェクト 「関野貞資料と都城の世界」ですが、日時・会場が変更になりました。

日時:2011年4月21日(木)10:00 から
場所:東京大学総合図書館3階大会議室
ということだそうです。

日本中国学会若手シンポジウム情報

3月26日(土)開催予定の日本中国学会若手シンポジウムですが、ちょっとバタバタしているようです。まだ確定情報ではありませんが、第3部会(近現代)は中止の可能性が高いようです。
昨日、一部研究者が第3部会中止の連絡をうけたとツイッターでつぶやいていました。ただ、日本中国学会のHPにはまだ出ていません。他の部会はどうなんでしょうか。開催直前まで日本中国学会HPのチェックが欠かせないようです。

2011年3月22日火曜日

時代の奔流と向かい合って生きた歴史家たち

『歴史評論』No.732(校倉書房、2011年4月)

特集は「時代の奔流と向かい合って生きた歴史家たち」
目次は以下の通り。
竹内光浩「久米邦武事件」
佐藤雄基「朝河貫一と比較封建制論 序説」
今井修「西岡虎之助と『新日本史叢書』」
久野修義「清水三男の学問」
高橋昌明「石母田正の一九五〇年代」
盛本昌広「網野善彦の転換」

取り上げられている人物に新味はないし、日本史研究者しかいないけれど、ちょうど永原慶二・鹿野政直編著『日本の歴史家』(日本評論社、1976年5月)を読んでいたので購入。佐藤氏が「文学者・文化人に比べたとき、歴史研究者の草稿・書簡などが保管・整理される環境が必ずしも整備されていない」というとおり、個人資料を用いた史学史研究というのは難しいが、それだけに面白そうな気もします。

今後は著名な研究者だけでなく、ちょっとマイナーな研究者も取り上げてほしいです。自分でやれと言われそうですが、例えば東洋史でいえば、小嶋茂稔「戦前期東洋史学史のための初歩的ノート―志田不動麿論のための前提」(『史海』54、2007年5月)みたいなのが必要な気がします。

2011年3月21日月曜日

シンポジウム関野貞資料と都城の世界

関野貞 プロジェクト 「関野貞資料と都城の世界」
日時:2011年3月29日(火)10時~

場所:東京大学薬学系総合研究棟講堂
主催:東京大学東洋文化研究所

報告
午前の部(10時~)
愛宕元「中国の都城」
焦南峰「西安調査の近況」

午後の部(13時~)
劉富良「洛陽調査の近況」
王志高「南京調査の近況」

保護色

3月14日(月)、計画停電初日の散歩中に撮影。
まるで保護色のよう。

2011年3月20日日曜日

日本中国学会若手シンポジウム会場変更

2011年3月26日(土) 9時~18時に開催予定の日本中国学会主催の第一回若手シンポジウム 「中国学の新局面」の会場が東京大学 本郷キャンパス 法文1号館2階に変更になったようです。
プログラムについては、日本中国学会が作成した一覧表(PDFファイル)参照。
また、計画停電の影響で、日によって従来のHPの閲覧ができなくなるため、新しいHPを作成したそうです。

2011年3月17日木曜日

九州大学附属図書館

九州大学附属図書館HPより抜粋

---------------------
九州大学附属図書館では、関東・東北地方の大学に在学中の学生及び入学予定者で、緊急帰省等、震災のため福岡県(近隣)に滞在せざるをえなくなった方を対象に、本学学生と同等のサービスを利用できるようにいたします。
---------------------

詳しくは九州大学附属図書館HP参照。

学会HP・論文検索などのサービス休止

学会HP・論文検索などのサービス休止

史学会・東洋史研究会・日本中国学会HP、GeNii・Webcat・KAKENは、東北・関東大地震の影響でサービス休止になっています。

詳細は次のようになっています。
・CAT/国内向けILL(業務用), Webcat ,検索専用
3月17日及び3月18日はすべてのサービスを休止
・CAT/ILL(教育用)
3月16日~3月18日はすべてのサービスを休止
・コンテンツサービス(CiNii, KAKEN)
3月17日及び3月18日はすべてのサービスを休止
・コンテンツサービス(Webcat Plus, NII-DBR, JAIRO, REO)
3月16日~3月18日はすべてのサービスを休止

3月19日以降は、またHPで連絡するようです。


なお、国立国会図書館の雑誌検索は、
通常通り機能しているようです。 

2011年3月15日火曜日

第11回遼金西夏研究会予定一部変更

第11回遼金西夏研究会予定一部変更
遼金西夏研究会HPより一部抜粋。

---------------------
今回の大地震の被害に遭われた皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。さて、東日本大震災に伴い、今週末予定の第11回遼金西夏史研究会は予定を一部変更して開催することとなりました。
 (中略)
既に交通機関等の予約をされている方もおられることに鑑み、開催日・開始時刻等は予定通りといたします。ただし、19日予定のミニシンポジウム「遼・金・西夏研究の現状と展望」は諸般の事情により開催を延期し、別プログラムに変更いたします。代替の内容につきましては、16日水曜日以降にお知らせいたします。 (中略) 懇親会(一次会)は「情報交換会」という形で開催いたします。ただし二次会は主催者側として案配・案内はいたしません。

 「情報交換会」や2日目弁当手配など実務上の都合もございますので、もしも大会出欠・1日目夜の「情報交換会」出欠・2日目弁当手配にご変更がある方は、可能な範囲で実行委員会の赤木宛までご連絡をいただければありがたく存じます。新しい大会プログラムや参加費、「情報交換会」参加費などにつきましては、16日以降に再度ご連絡いたします。

---------------------
詳細は16日以降に遼金西夏研究会HPをご参照ください。

東京大学東洋文化研究所図書室臨時休館

3月11日の大地震の復旧作業等のため、
東京大学東洋文化研究所図書室臨時休館
閉室:3月14日(月)~3月18日(金)
※ 3月22日(火)以降の再開も未定
詳細は図書室ホームページ参照


東京電力の計画停電・節電に伴うサービスの停止

1.計画停電に伴うもの
東京電力の計画停電(輪番停電)の実施状況に伴い、以下のサービスについては、予告なく停止することがありますので、予めご承知置きください。   
OPAC
その他図書館による電子的サービス

2.節電協力によるもの   
東北地方太平洋沖地震に伴う電力使用抑制への協力のため、以下のサービスについては、3月14日(月)より当分の間、休止とさせていただきます。ご迷惑 をおかけいたしますが、ご了解ください。   
「東京大学で利用できる電子ジャーナル検索」
これに代わり、以下のサービスをご利用ください。
E-Journal Portal http://vs2ga4mq9g.search.serialssolutions.com/

3.「貴重書等画像データベース」
以下のデータベース類が使用できません。
鴎外文庫書入本画像データベース、平賀譲デジタルアーカイブ、電子版自然真営道、電子版貴重書コレクション、電子版霞亭文庫、電子版黒木文庫、電子版『甲州法度之次第』、朝鮮王朝実録画像データベース、写真帖『東京帝国 大学』電子版、電子版『地震火災版画張交帖』、電子版『直江状』、電子版『明・弘治十八年八月二十日勅命』、電子版『三十六歌撰』絵巻、電子版『百鬼 夜行』絵巻、大日本海志編纂資料、観世アーカイブ、チベット大蔵経カード目録データベース、電子版東京大学総合図書館漢籍目録、第一高等学校旧蔵資料、教育用掛図、スタニスラス・プチ『産業実務家

地震の後に

出先で地震に遭遇。
家族と連絡し、電車が運休していることを確認した後、
まずしたことといえば、本屋に行くこと。
電車が動き出すまでの時間つぶしのつもりだったのだけど、
無意識のうちに、日常的な行動をとって落ち着きたかったのかもしれない。


石井仁『魏の武帝 曹操』(新人物文庫、2010年8月)
渡邉義浩『諸葛孔明伝 その虚と実』(新人物文庫、2011年3月)

新人物往来社から刊行された『曹操―魏の武帝』(2000年)と
『諸葛亮孔明 その虚像と実像』(1998年)の文庫化。
単行本はもっているけど、加筆・訂正したそうなので購入。
他にも小説2冊(神林長平『アンブロークアロー戦闘妖精・雪風』、ル=グウィン『ヴォイス』)を買った。

ただ、冷静になって考えると、地震の直後に急いで買わなきゃいけない本だったかどうかというと、全くもってそんなことはない。後日買っても問題なかったはずだ。やっぱり動揺していたのだろう。


当日は、TVを見るまで事態の深刻さがわかっていなかった。
連日連夜の報道で、被害の甚大さが明らかになってきた。

今はまだ論文や授業準備に十分集中できないけど、
できる限り自分にできることをしようと思う。
本を買おう。

2011年3月9日水曜日

第41回中央アジア学フォーラム

第41回中央アジア学フォーラム

日時:2011年4月2日(土)13:30~
場所:大阪大学・豊中キャンパス 文法経本館 1階 中庭会議室
発表予定者:
田村健「9世紀ユーラシアのヒトの移動 ―中央ユーラシアからのインパクト」
山本明志「モンゴル時代に漢地へ赴いたチベット人をめぐって ―チベット語文献の検討を中心に」
荻原裕敏「ドイツ所蔵トカラ語B断片THT590をめぐって」

術数学東京ワーキング

術数学東京ワーキング・プログラム

日時:3月13日(日)12:00~17:00(終了後に懇親会)
場所:大正大学(巣鴨校舎)1号館2F 第2会議室

プログラム
第一部:研究発表
12:10~12:50 武田時昌「納音数理考」
12:50~13:30 小澤賢二「渾天儀の構造をめぐる新考察」(仮題)
13:30~14:10 尾鍋智子「西洋光学と気の思想」
14:25~15:05 熊野弘子「江戸時代における注釈本・和刻本注に見える解釈と医者像」
15:05~15:45 多田伊織「流転する書物―小島寶素堂始末」

第二部:特別講演
16:00~17:00 宮川浩也「馬王堆出土医書『雑療方』の復元試案例」

2011年3月1日火曜日

パンダ外交

家永真幸『パンダ外交』(メディアファクトリー新書、2011年2月)

タイムリーな新書。平易な文章でさらっと読めます。
パンダの発見から、抗日戦争期~現在(2011年)までのパンダ外交の流れがわかりやすくまとめられている。中国におけるパンダ認識の変化にも言及している。台湾へのパンダ贈呈をめぐるかけひきもおもしろい。

著者は昨年の東方学者会議で民国期のパンダ外交について報告しています。また、原型となった『アジア研究』55-3(2009年)掲載の論文はPDFで公開されています。現在、執筆中の博士論文では、「清朝皇室の美術コレクション」や「考古出土物」などが中国の内政・外交に果たした役割を通して、中国政府の統治の正統性について考察しているようです。こちらも読んでみたいです。

東アジア宗教文献国際研究集会

東アジア宗教文献国際研究集会
日程:2011年3月9日(水)・10日(木)
会場:筑波大学 総合研究棟A 公開講義室A110
3月9日特別講義
14:00~18:00 荒見泰史「敦煌変文写本の研究の現状について」

3月10日
基調講演 10:00~ 遊佐昇「道教の講経」

研究発表・報告 10:45~12:15
高井龍「変文・縁起・経典」
徐銘「敦煌唱導資料目録作成について」

シンポジウム 13:30~17:30
谷口孝介「菅家の吉祥悔過」
荒見泰史「敦煌本『斎琬文』写本の研究」
楊明璋「論敦煌文學中的善惠故事」
本井牧子「『金蔵論』とその構成

2011年2月25日金曜日

『全経大意』と藤原頼長の学問

後藤昭雄「『全経大意』と藤原頼長の学問」(『成城国文学論集』33、2010年3月)

近年、大阪府河内長野市の金剛寺で発見された、十三種の経書の解題である『全経大意』(日本で撰述)の内容と、藤原頼長の学問を比較し、その類似性を指摘。史書の引用は『南史』・『漢書』・『史記』しかないのが少し残念。それにしても、日本(特に寺院)にはまだまだ面白そうな史料が眠っているのだなぁ。

2011年2月23日水曜日

関野貞資料と墳墓の世界

東京大学東洋文化研究所関野貞プロジェクト国際シンポジウム 「関野貞資料と墳墓の世界」
日時:3月2日(水)13:00~
場所:東京大学総合図書館三階大会議室

プログラム
王其亨 「関野貞調査と明陵」
青木信夫・徐蘇斌  「関野貞調査と清陵」
韓昇 「鮮卑族の系譜(墓葬のDNA鑑定 付:曹操一族の検討)」

2011年2月21日月曜日

近々出る本

今月末から来月にかけて、
ちょっと気になる本が出るのでメモ。

まず、臨川書店から、2月下旬(もう出てるかも)に、
曽布川 寛・吉田豊編『ソグド人の美術と言語』が出る。
A5判上製・320頁で、定価3,780円(本体3,600円)
目次は以下の通り
第1章 ソグド人とソグドの歴史(吉田豊)
第2章 ソグド人の壁画(影山悦子)
第3章 ソグド人の言語(吉田豊)
第4章 中国文化におけるソグドとその銀器(斉東方 *訳:古田真一)
第5章 中国出土ソグド石刻画像の図像学(曽布川寛)
あとがき (曽布川寛)


三月には汲古書院より、
愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター編
『曹操高陵の発見とその意義』が出るもよう。
A5判・170頁で、定価3150円。
目次は以下の通り
孫新民「国際シンポジウム『三国志 魏の世界』開催によせて」 
シンポジウム講演録
一 村上恭通「『三国志 魏の世界』開催にあたって―経緯と趣旨―」 
二 白雲翔「漢末・三国時代考古およびその新展開―北方曹魏を中心に―」 
三 潘偉斌「曹操高陵の発見と発掘および初歩研究」
四 郝本性「曹操高陵出土文物の研究―安陽高陵出土石牌刻銘にみる曹操のすがた―」 
五 張志清「漢代陵墓考古と曹操高陵
六 討 論 会
付録一 河南省文物考古研究所・安陽県文化局「河南安陽市西高穴曹操高陵」
付録二 曹操高陵に関する中国人研究者の見解について
付録三 曹操高陵発見前後の経緯

昨年11月27日(土)・28日(日)に開催された
シンポジウムの講演録らしい。はやいなぁ。


続いて京都大学学術出版会より、
橋本義則編『東アジア比較都城研究』
B5上製・360頁・税込 8,820円 三月初旬発売予定。

2011年2月18日金曜日

名だたる蔵書家、隠れたる蔵書家

佐藤道生編『名だたる蔵書家、隠れたる蔵書家』(慶應義塾大学出版会、2010年11月)

慶應義塾大学文学部に開設されている極東証券寄附講座「文献学の世界」の2009年度の講義内容をまとめたもの。

目次は以下の通り
松原秀一「在塾の諸文庫」
佐藤道生「藤原道長の漢籍蒐集」
住吉朋彦「藤原頼長の学問と蔵書」
佐々木孝浩「蔵書家大内政弘をめぐって」
川上新一郎「慶應義塾図書館渡辺刀水文庫について」
井上修一「マリー・アントワネットの伝記と資料」
高橋勇「「書物狂」リチャード・ヒーバーとその蔵書」
高宮利行「ブリットウェル・コート蔵書の構築とその後」
石川透「赤木文庫・横山重について」
松田隆美「Derek Brewer旧蔵「神話学」コレクション」

講義内容がもとになっているということで、人によって気合いにずいぶん差がある。「藤原道長の漢籍蒐集」や「藤原頼長の学問と蔵書」が目当てだったのだけど、その他の渡辺刀水、ヒーバーといった「隠れた蔵書家」の話もおもしろかった。

内陸アジア出土古文献研究会3月例会

内陸アジア出土古文献研究会3月例会
日時:2011年3月12日(土)15:00~18:00
場所:財団法人東洋文庫7F 第1・2会議室

報告
片山章雄「大谷文書中の3種9層の霊芝雲の問題」
速水大・十時淳一・吉田章人「東洋文庫にて整理確認済みのマイクロフィルム中の胡漢文書について」

2011年2月10日木曜日

文化庁芸術メディア祭

先日、国立新美術館で開催されている
平成22年度[第14回]文化庁メディア芸術祭に行ってきました。

とりあえず、初台のNTTコミュニケーションセンターで見たクワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》がアート部門の優秀賞に選ばれていて、嬉しくなった。

あと、マンガ部門の大賞が、岩明均『ヒストリエ』だったのもテンションあがった。最近、『アフターヌーン』読んでないけど、多分、あまり進んでないんだろうなぁ。早く新刊が読みたい。

休日に行ったせいか、かなりの人出で、作品を見るのも一苦労。アート部門とマンガ部門をじっくり見たので、エンターテイメント部門を見る時間が足りなくなってしまった……。残念。

そういえば、クワクボリョウタ《ニコダマ》も、エンターテイメント部門の審査委員会推薦作品になっていた。一人で2ジャンルでノミネートされるなんてすごいなぁ。

2011年2月9日水曜日

アジアが見た日本美術

東文研シンポジウム「アジアが見た日本美術」
日時:2月16日(水)
会場 東洋文化研究所第一会議室
報告
3時00分~3時25分 塚本麿充「皇帝の文物と北宋の社会―日本文物の交流からの視点」
3時25分~3時50分 板倉聖哲「15世紀寧波が見た東アジア絵画-金湜をめぐって」
3時50分~4時10分 質疑
4時10分~4時20分 休憩
4時20分~4時50分 頼毓芝「日本美術在中國: 從任伯年到吳昌碩」
4時50分~5時15分 大野公賀「豊子愷の「生活の芸術」論について」
5時15分~5時40分 質疑及び討論

第11回遼金西夏史研究会大会


第11回遼金西夏史研究会大会
日時:2011年3月19日(土)・20日(日)場所:大阪大学文学部豊中キャンパス

報告内容
(1)ミニシンポジウム「遼・金・西夏研究の現状と展望」 報告者:飯山知保・佐藤貴保・高井康典行

(2)研究報告
荒川慎太郎「2010年度内蒙古自治区文物考古研究所文献調査報告(西夏文文献編)」
田先千春「敦煌・トゥルファンの仏教絵画に用いられた基底材について」
藤野月子「中国における和蕃公主の降嫁について」
藤本匡「西夏法典中に見られる宗教規程について」
山内晋次「「東アジア史」再考 ──7~13世紀を中心に──」

磚画・壁画の環東アジア

国際ワークショップ:磚画・壁画の環東アジア

日時:2011年3月5日(土)午前10時~午後5時
会場:新潟大学五十嵐キャンパス総合教育研究棟D棟1階大会議室
内容
午前10時~ 趣旨説明:關尾史郎
午前10時20分~ 佐々木正治「四川農業画像磚から見る漢代墓葬画像の発展と系譜―四川と甘粛の比較から」
午前11時10分~ 三崎良章「甘粛の磚画と遼寧の壁画―墓主像の比較を中心として」
 昼休
午後1時~ 高橋秀樹「中国古代墓壁画に見られる西方的要素について―河西地域を中心として」
午後1時50分~ 内田宏美「画像資料に見る魏晋時代の武器―河西地域を中心として」
午後2時40分~ 荻美津夫「河西地域の磚画・壁画にみられる魏晋南北朝時代の楽器」
 休憩
午後3時45分~ 徐永大「講演:高句麗壁画に与えた遼寧壁画の影響について」
午後4時55分~ 閉会の挨拶

2011年2月7日月曜日

『集注文選』の成立過程について

陳翀「『集注文選』の成立過程について―平安の史料を手掛かりとして―」(『中国文学論集』38 、2009年12月)

昨年の「三菱が夢見た美術館」展に東洋文庫所蔵『集注文選』が出点されていたのだけど、図録の解説には、日本人によって作られたが撰者不明であるとあった。
この従来不明とされてきた国宝『集注文選』(旧抄本)の撰者を特定した論文。日本の古記録を丹念に見ていくことで、大江匡衡(952~1012)が一条天皇のために編纂したことを明らかにしている。

2011年2月6日日曜日

沈没船が教える世界史

ランドール・ササキ『沈没船が教える世界史』(メディアファクトリー新書、2010年12月)

水中考古学の概説書。欧米で盛んな学問であるため、アジアについてはちょっと薄め。ただ、第1章「大航海時代とカリブの海賊」、第2章「ヨーロッパを作った船たち」もおもしろい。キャプテン・キッドや「黒ひげ」の海賊船、アルマダ艦隊なども発見されているとは。

第3章は「沈没船が塗り替えるアジアの歴史」。泉州沈没船・新安沈没船にはあっさりふれるのみだが、日本の鷹島の元寇船についてはやや詳しく紹介している。ただ、元に関する記述が、やや古めかしいのが残念。
最も興味深かったのは、陳朝(大越・ヴェトナム)の陳興道が、元軍を撃退した白藤江の戦い跡から、戦いに用いた木杭が発見されたという記事。さらに現在、沈没船を探査中らしい。

水中考古学の魅力については第1章~第3章で思う存分伝わってきたのだが、現実をみせつけられるのが、第4章「沈没船発見マニュアル」と第5章「新しい真実を探して」。調査が難しいだけでなく、多額の費用もかかるし、保存処理も大変。しかも、民間業者による盗掘も多いし、開発で破壊されることもあるらしい。日本は行政的にも立ち遅れているようだ。

2011年2月5日土曜日

楊門女将「宜娘」考

松浦智子「楊門女将「宜娘」考―楊家将故事と播州楊氏―」(『東方学』121、2011年1月)

楊家将小説に登場する楊「宣娘」に着目し、その話柄の出自と形成過程を探っている。「宣娘」≒「宜娘」の考証を出発点に、元代の播州土司の楊氏の伝承との関連を指摘しています。

楊家将小説の形成に、まさか西南中国の播州楊氏が影響していたとは。また、播州の土司であった楊氏が、先祖を「楊家将」に仮託していたことも興味深かったです。楊家将小説の形成過程を追うことで、西南中国の土司の自己意識の変容過程も明らかにしていて、小説史であると同時に民族史の論文であるともいえます。とても面白くて勉強になりました。

2011年2月4日金曜日

図説書誌学

慶應義塾大学附属研究所斯道文庫編『図説 書誌学―古典籍を学ぶ―』(勉誠出版、2010年12月)

昨年11月29日(月)から12月4日(土)まで慶應義塾大学三田キャンパスで開催された「斯道文庫開設50年記念事業 書誌学展」の図録を出版したもの。

「Ⅰ書物との対話―書誌学研究の視点」と「Ⅱ斯道文庫の五十年―これまでとこれから」で構成されている。第Ⅰ部を読めば、書誌学の大まかな内容がわかる仕組み。コラムも充実しているし、フルカラーで図版がきれい。眺めているだけでも楽しめます。

2011年2月3日木曜日

崩壊する大学と「若手研究者問題」

崎山直樹「崩壊する大学と「若手研究者問題」―現状分析と展望―」(『歴史学研究』876、2011年2月)

近年、話題になっている若手研究者問題を正面から取り上げた時評。「Ⅰ 中期財政フレームの衝撃」と「Ⅱ 若手研究者問題の現在」の二部構成。

若手研究者問題に焦点をしぼったⅡでは、大学院生・非常勤講師・ポストドクターをとりあげ、1970年代~80年代にかけて発生した「オーバードクター問題」との違いも示しています。

自己責任論の立場をとる研究者も多いでしょうが、それはそれとして、的確な進路指導をするためにも、「歴史学領域における若手研究者の実態調査と情報共有は必須である」と思います。文中で紹介されていた日本社会学会のアンケート調査報告(2009年実施)は、かなり参考になります。

東方学121

『東方學』第121輯(東方學會、2011年1月)

学会・研究会のHPは、なかなか新刊情報を更新してくれないところが多いのですが、東方学会のHPは、すぐに東方学の新刊の目次をアップしてくれます。地味だけど嬉しいサービスです。

【論文】
池田雄一「中国古代の律令と習俗」
鈴木直美「「収帑諸相坐律令」撤廃考―文帝の即位事情と賜爵を中心にして―」
十川陽一「日唐における「散位」と「散官」」
徳永洋介「景迹と警跡―宋元時代の治安措置―」
福田素子「雑劇『崔府君断冤家債主』と討債鬼故事」
松浦智子「楊門女将「宜娘」考―楊家将故事と播州楊氏―」
荒木達雄「岡島冠山『太平記演義』に見る「水滸伝」の影響」
謝恵貞「中国新感覚派の誕生―劉吶鴎による横光利一作品の翻訳と模作創造―」

【翻訳】
黄正建著、河上麻由子訳「唐代衣食住行の研究と日本の資料」

平成22年度第29回東方学会賞発表
第60回全国会員総会講演・研究発表要旨

【座談会】
「先学を語る」―山本達郎博士―
  〔出席〕池田 温、池端雪浦、石沢良昭、辛島 昇、桃木至朗

【追悼文】
小島毅「溝口雄三教授追悼文」
戸川芳郎「溝口雄三君を悼む」
池田温「窪徳忠博士追悼文」
田辺和子「前田恵學先生を悼む」

2011年2月1日火曜日

墨宝&思わぬ収穫

先日、ちょっと、背伸びをして、根津美術館で開催中の特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」を見に行ってきました。
今回の展覧会では、主に13世紀以降の日中間の禅僧の往来の中から生み出された、禅僧の墨蹟や水墨画、茶碗などを展示しています。蘭渓道隆とか無学祖元とか虎関師錬といった有名人の墨蹟もあります。

……でも、やっぱり僕にはまだ早かったみたいです。一級品ばかりなのに、いまいちピンと来ず……。いつの日か墨蹟や水墨画の良さがわかるようになりたいものです。

他にも「仏教彫刻の魅力」、「古代中国の青銅器」、「鍋島と四季の草花」、「初春を祝う茶」が同時開催されています。このなかでは、ホールに展示してある北魏・北斉時代の仏像(山西省の天龍山石窟の仏像頭部など)に興味惹かれました。銘文がなかったのがちょっと残念。


と、そんなこんなで、ミュージアムショップに行くと、以下の書籍を発見。
根津美術館編集『鑑賞シリーズ11 中国の石仏 北斉仏の魅力』(根津美術館、2009年10月)、
常盤山文庫中国陶磁研究会『北斉の陶磁』(財団法人常盤山文庫©、2010年12月)

『中国の石仏』は、根津美術館所蔵の南北朝隋唐時代の石仏がカラー図版で紹介されています。さらに八木春生氏による「北斉時代の石仏」(45~80頁)、「作品解説」(81~89頁)、「コラム北斉の陶俑」(90~91頁)もあります。北斉時代の仏教美術をおさえるのにちょうどいい感じです。

『北斉の陶磁』は、近年、常盤山文庫が購入した北斉の陶磁のカラー図版・解説(41~58頁)と、矢島律子「北朝の白いやきもの」(27~40頁)、佐藤サアラ編「出土資料集」(128~59頁)が収録されています。「北朝の白いやきもの」は、北朝~隋の陶磁の変遷をまとめ、隋代に白磁が出現した背景に迫っています。これまた北朝の陶磁器をおさえるのにちょうどいい感じです。


というわけで、展覧会の方はいまいち味わいきれませんでしたが、根津美術館の建物自体がいい感じでしたし、ミュージアムショップで思わぬ収穫もあったので、行った甲斐がありました。

特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」
会期:2011年1月8日(土)~2月13日(日)
開館時間:10時~17時 休館日:月曜日
入館料:一般1200円、学生1000円

2011年1月30日日曜日

みえないちから&OPEN SPACE2010

先日、曽根裕展の感想を書きましたが、
東京オペラシティでは、あと二つ展覧会がやってました。
今日はその感想を。

「みえないちから」は、東京オペラシティタワー四階のNTTインターコミュニケーションセンター[ICC]ギャラリーAで開催中。一般500円。コンセプトは「さまざまなエネルギーや現象としての振動を」めぐる多様に解釈されうる「みえないちから」を表現する作品を紹介」するというもの。

作品数は全部で7点。そのうち、大半が映像作品。
正直いって、あまりピンときませんでした。
身近なものを電気コードなどで組み合わせ、
微細な空気の流れなどに連動して動く
堀尾寛太の《スピードスイッチング》は、
愛知トリエンナーレで見た梅田哲也の作品に似ているような気が……。
違いがよくわからなかったなぁ。


「みえないちから」よりも、ずっとおもしろかったのが、NTTコミュニケーションセンターで開催中の「OPEN SPACE2010」。こちらは無料。「メディア・テクノロジーと芸術文化の関係をわかりやすく紹介」しています。

作品数は合計14点。大半が最新テクノロジーを使った作品。
イェンス・ブラントの《G-G-Gストア東京:ひとつの世界 3つのプレーヤー》は、地球をレコード盤に見立てた作品。人工衛星の軌道下の地点の標高が音に置き換えられている。地球の音を聞くことができる。
ゲープハルト・ゼンクミュラー+フランツ・ビュッヒンガー《パラレル・イメージ》は、テレビになり得たかもしれないもうひとつの技術を紹介。雰囲気は全然違うけど、蒸気駆動歯車式コンピュータが実用化された世界を描いたSF『ディファレンス・エンジン』を思わせる設定。


しかし、なんといっても一番良かったのは、
クワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》。
真っ暗な部屋。床に置かれた小さな日用品の間をぬって、
小さな照明のついた鉄道模型が走っていく。
壁や天井に次々にうつる影。
なんだか、妙にノスタルジーかき立てられる作品。
「千と千尋の神隠し」の電車のシーンを思い出してしまった。
他の作品がメディア・テクノロジーを駆使しているのに対し、
鉄道模型と日用品だけを用いているのもいい感じ。

クワクボリョウタは、「デバイス・アーティスト」と称されることが多いみたいで、デジタルとアナログの境界線上の作品を作ってるのだけど、今回はあくまでローテクでせめている。メディアアートの展覧会で、一押しがローテク作品。やっぱりアートで最も大事なのは、テクノロジーじゃないんだな、と改めて実感。

ちなみに下はクワクボリョウタの商品化された作品《ニコダマ》。

それから、疑似しっぽの《シリフリン》。



「みえないちから」も「OPEN SPACE2010」も2011年2月27日まで。
休館日は月曜日。開館時間は11時~18時。

世界史史料3・4

歴史学研究会編『世界史史料3 東アジア・内陸アジア・東南アジアⅠ 10世紀まで』(岩波書店、2009年12月)
歴史学研究会編『世界史史料4 東アジア・内陸アジア・東南アジアⅡ 10-18世紀』(岩波書店、2010年11月)

参考書として購入。まだ拾い読みしかしてないけど、各史料の解説がとても参考になります。ただ、史料については、3では漢文の場合は基本的に書き下しだったのだけど、4では担当者によって、書き下しだったり、翻訳だったりとバラバラなのが少し気にかかりました。

また、執筆者紹介の欄はないので、詳細はわかりませんが、
どうやら執筆者選定の方針に少し違いがありそうです。
主に中国史部分を比較してみようと思います。

世界史史料3
第1章(中国古代:殷周・秦・漢):鶴間和幸・平勢隆郎・濱川栄
第2章(魏・晋・南北朝):金子修一・關尾史郎
第3章(隋・唐):金子修一・關尾史郎・妹尾達彦・荒川正晴
第5章(内陸アジア):關尾史郎・荒川正晴・吉田豊・石川巖
合計9人。

世界史史料4
第1章(宋代中国と近隣諸国家):岸本美緒・須江隆・平田茂樹・高井康行・梅村坦・矢澤知行・久保田和男・土肥祐子・松井太・鈴木弘一郎
第2章(モンゴル帝国):岸本美緒・宇野伸浩・赤坂恒明・矢澤知行・四日市康博・中村淳・新宮学・石濱裕美子・平田茂樹
第3章(明清時代の中国):岸本美緒・新宮学・楠木賢道・黨武彦・柳澤明・則松彰文・村上衛・中島楽章・林文孝
第5章(内陸アジア):柳澤明・赤坂恒明・澤田稔・小沼孝博・久保一之・野田仁・井上治・岡洋樹・岸本美緒・中村篤志・ブレンサイン・萩原守・石濱裕美子・小松原ゆり・玉井陽子
合計34人。

ぱっと見て3より4の方が、執筆者多そうだなと思ったのですが、まさかここまでとは。打ち込み始めてから、やらなきゃよかったと思いました。史料・分野の多様化のためなのか、それとも別の要因なのか、よくわかりませんが、とりあえず平均年齢は世界史史料4のほうが低そうです。

古代の都はどうつくられたか

吉田歓『古代の都はどうつくられたか―中国・日本・朝鮮・渤海』(吉川弘文館、2011年2月)

歴史文化ライブラリー313。東アジアの都城についての概説書。
漢代から隋唐代の都城の変遷を述べた後、
日本・朝鮮・渤海の都城を紹介し、
隋唐長安城が与えた影響の違いを述べている。

ここ最近ブログで紹介した三国時代の都城についていえば、
後漢の北宮に太極殿が建造されたとする近年の説に従っている。
ただ、この問題には深入りせず、
明帝による太極殿(東堂・西堂の付設)建造、
曹操期の鄴城における官庁配置と宮殿の機能分化に、
より深い関心をよせている。

2011年1月26日水曜日

後漢洛陽城における皇帝・諸官の政治空間

渡邉将智「後漢洛陽城における皇帝・諸官の政治空間」(『史学雑誌』119-12、2010年12月)

両漢の皇帝支配体制について、政治空間面から検討。
皇帝の執務場所・生活空間と諸官の執務場所の位置関係を明らかにし、後漢の政治制度の基本的構造・形成過程に迫っている。
その結果、後漢は、前漢の政治制度を大幅に改編し、
新たな支配体制の構築を図っていたとする。
唐代長安や南朝の建康の政治空間については、
検討が進められているが、後漢洛陽城ではほぼ初の試み。
大変、興味深く、参考になった。

また、後漢和帝期以降の洛陽城の宮殿配置の概念図も示してあり、魏晋洛陽城との関係を検討する際に、大いに参考になるものと思われる。中国都城史の視点からみても、注目すべき研究なのではないだろうか。

2011年1月17日月曜日

魏晋洛陽都城制度攷

佐川論文のあとに読んだのが、
外村中「魏晋洛陽都城制度攷」(『人文学報』99、2010年12月)。

魏晋期の洛陽城について、主に文献史料を使って、
従来の「後漢南宮―曹魏太極殿」説を否定し、
近年、有力になってきた「後漢北宮―曹魏太極殿説」を主張。
また、太極殿だけではなく、曹魏時代の宮殿配置について、
詳細に史料を示し、復元図を作成している。

それを踏まえた上で、魏晋洛陽の主要部は、
後漢の洛陽とも隋唐の長安とも異なっており、
魏晋南北朝期の帝都の規範となっていたとする。

ただ、後記に原型は2003年以前にできており、
2003年に出た銭国祥氏の新説(「後漢北宮―曹魏太極殿説」)を
踏まえて2007年に書き改めたとあり、
刊行までに若干のタイムラグがあるようだ。

都城史の理解をめぐって、佐川氏とかなり違いがあります。
今後、議論が深まってほしいです。

―――――――――――――――――
追記:2011年2月18日(金)
上記の論文は、京都大学学術リポジトリ
読むことができます。

曹魏太極殿の所在について

最近、期せずして、立て続けに魏晋洛陽城に関する論文を読みました。

まずは、佐川英治「曹魏太極殿の所在について」(岡山大学文学部プロジェクト研究報告書『六朝・唐代の知識人と洛陽文化』2010年1月)。

曹魏時代の太極殿については、
従来、後漢の南宮に建造されたと理解されてきたが、
近年では、考古学の成果などにより、後漢の北宮に
曹魏明帝の太極殿があったという説が有力になってきている。

しかし、佐川氏は「後漢北宮―魏明帝太極殿」説の
根拠となっている「魏曹植毀鄄城故殿令」を詳細に分析し、
「後漢北宮―魏明帝太極殿」説を証明する史料に
なりえないことを指摘。
また、考古成果によって、北魏の閶闔門が
魏晋期の宮門を継承していることが明らかとなったが、
その宮門を曹魏明帝期の闔閶門に
比定してよいか疑問が残るとする。

これらのことから佐川氏は、近年の研究動向と異なり、
後漢の南宮に曹魏明帝の太極殿があったという従来説が
正しいのではないかとする。

曹魏洛陽城を積極的に評価する近年の研究動向と
かなり異なった評価をしています。
中国都城史を考える上で魏晋洛陽城の研究を
深める必要があるようです。


―――――――――――――――――――
追記:2011年2月18日(金)
上記の論文は、岡山大学学術成果リポジトリ
読むことができます。

2011年1月16日日曜日

曽根裕展:Perfect Moment

先日、初台にある東京オペラシティに行ってきました。
ここでは現在、「曽根裕展:Perfect Moment」、「みえないちから」、「OPEN SPACE2010」の三つの展覧会をみることができます。

まずは、東京オペラシティアートギャラリーで開催中の
「曽根裕展:Perfect Moment」から見ることに。
「曽根裕展」は、現在、森美術館で開催中の「小谷元彦展:幽体の知覚」、1月21日(金)からはじまる「高嶺格展:とおくてとくみえない」との連携企画で、チケット提示で各展覧会を200円引でみることができます。


ということで、第一弾として「曽根裕展」に行ってきました。
入口は、ジャングルっぽくて雰囲気ある感じ。
展示してある大理石の「リトル・マンハッタン」も、かっこよかった。
大理石の表面に細部まで都市を再現。これはすごい。


でも……、展示作品9つ(映像作品2つ、彫刻作品など7つ)は、
あまりにも少なすぎやしないだろうか。
ちょっと大きなギャラリーの展示と変わらない気が。
正直、拍子抜けの感は否めない。

これで入場料が500円~700円くらいなら、
そんなもんかなとも思えなくもないけど、
1000円となると、ファンならともかく、
初心者の僕にはちょっと納得がいかない。

アートブログでなかなか評判のよい小谷元彦展はともかく、
果して高嶺格展は大丈夫なのだろうか。
ちょっと心配になってきてしまった。


「曽根裕展:Perfect Moment」
期間:2011年3月27日(日)まで 
開館時間:11時~19時(金・土は20時まで)
休館日:月曜日・2月13日
入場料:一般1000円・学生800円

2011年1月14日金曜日

第7回TOKYO漢籍SEMINAR

人文科学研究所第7回TOKYO漢籍SEMINAR「俗書の啓蒙力」
日時:2011年3月12日(土) 10時30分~16時00分
場所:学術総合センター 一橋記念講堂
定員:500名

講演
10:45~12:00 永田知之「書儀-中世の文章作成マニュアル」
13:10~14:25 山崎岳「善書-華僑・華人の人生訓」
14:40~15:55 武田時昌「日用類書-庶民生活の科学知識」

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター事務掛に要申込

2011年1月12日水曜日

国際シンポジウム「文化財保護と石碑の世界」

東京大学東洋文化研究所国際シンポジウム
世界遺産に向き合い価値の共有を夢見た男 関野貞プロジェクト 「文化財保護と石碑の世界」
日時:2011年1月25日(火)10:30~
場所:東京大学薬学系総合研究棟講堂

【午前の部】:10時30分~
 藤井恵介「関野調査の概要」
 昼休み
【午後の部】:13時~
 氣賀澤保規「石碑と歴史学」
 小川博章「石碑と書学」
 趙振華「洛陽の石碑資料」
 裴建平「石碑資料の真偽」
 酒寄雅志「円仁銘の石碑」

2011年1月11日火曜日

趙振華氏講演会

趙振華氏講演会
日時:2011年1月22日(土)午後2時~5時
会場:立正大学大崎キャンパス9B13教室(9号館1階)
題目:近年の洛陽北魏墓誌の発見と研究―発表済みの墓誌の真偽に関する分析と、馮煕墓誌について

2011年1月10日月曜日

『藝文類聚』編纂考

大渕貴之「『藝文類聚』編纂考」(『日本中国学会報』62、2010年10月)

『藝文類聚』の編纂者について分析し、
祖先・本人を顕彰する文章が収録されている
欧陽詢・袁朗が中心的役割を果たしたとする。
また、『藝文類聚』編纂に、武徳年間の太子建成と
李世民の対立が深く関係しているとする。
類書編纂の政治的背景を分析していて興味深い。

2011年1月6日木曜日

若手シンポジウム「中国学の新局面」第三部会・第四部会

日本中国学会 第一回若手シンポジム「中国学の新局面」
日時:2011年3月26日(土) 午前9時~午後6時
場所:二松学舎大学九段校舎三号館

第三部会:近現代
9:40~10:20 裴亮「歴史に埋もれた「詩人」の交わり ―劉思慕と草野心平の文学往来の軌跡」
10:40~11:20 阿部幹雄「『自由人』論争、『第三種人』論争再考」
11:20~12:00 楊韜「近代中国におけるセクシュアリティの言説空間―雑誌『生活』の投書欄における「恋愛と貞操」をめぐる論争を中心に」
 昼休み(12時~13時)
13:00~13:40 徐暁紅「一九二〇年代における施蟄存の文学社団活動をめぐって―蘭社から水沫社まで」
13:40~14:20 福島亮大「歴史小説における不能性― 一九三〇年前後における魯迅と施蟄存の作品を中心に」
14:40~15:20 王艶珍「夢と詩を織り成す嘗試者 ―『嘗試集』、『新体詩抄』を中心に」
15:20~16:00 津守陽「「田舎の人間」を描出する文体 ―沈従文の〈郷土〉表象を定位する試み」 
16:20~17:00 劉海燕「台湾新文学における中国新文学の代弁者張我軍―『台湾民報』時期の文学活動を中心に」
17:00~17:40 王閏梅「梁啓超の経世済民理念 ―「経済」という用語への拘泥をめぐって」 

第四部会:日本漢学・中国史学
9:40~10:20 洲脇武志「『漢書』顔師古注と敦煌本『漢書集解』」
10:40~11:20 許時嘉「揚文会における〈文〉と〈文明〉の乖離―後藤新平の演説と呉徳功の感想をめぐって」
11:20~12:00 山田明広「台湾道教の異常死者救済儀礼で使用される文書について」
 昼休み(12時~13時)
13:00~13:40 島田悠「魏晋南北朝の都督と将軍」
13:40~14:20 高山大毅「礼の「遊芸」化―田中江南の思想」
14:40~15:20 阿部光麿「江戸時代前期に於ける「聖人可学」の諸展開」
15:20~16:00 姜智恩「17世紀経学に見る朱子学批判 ―東アジア各国の比較研究」
16:20~17:00 川邉雄大「『東瀛詩選』編纂に関する一考察 ―松本白華・北方心泉の関与を中心に」
17:00~17:40 佐藤浩一「吉川幸次郎という課題」

若手の報告を聞ける得難いチャンス。いい企画だと思います。
日本中国学会のシンポジウムなので、文学・思想が多いけれど、
第四部会には中国史学も含まれているし、
第一部会・第二部会にも興味深い報告がたくさんある。
是非聞きに行きたい。 

若手シンポジウム「中国学の新局面」第一部会・第二部会

日本中国学会 第一回若手シンポジム「中国学の新局面」
日時:2011年3月26日(土) 午前9時~午後6時
場所:二松学舎大学九段校舎三号館

第一部会:先秦~唐
9:00~9:40 平澤歩「洪範五行伝と時令思想」
9:40~10:20 城山陽宣「董仲舒対策とその周辺」
10:40~11:20 和久希「 「辞人」の位置──沈約『宋書』謝霊運伝論考」
11:20~12:00 池田恭哉「北朝における隠逸」
 昼休み(12時~13時)
13:00~13:40 土屋聡「司馬相如の駢文とその創作意識」
13:40~14:20 渡邊登紀「陶淵明のトポス―「桃花源」と「田園」」
14:40~15:20 二宮美那子「唐代における景物連作詩の展開について」
15:20~16:00 鈴木達明「『六韜』における兵書の「黄老」化の様相」
16:20~17:00 佐々木聡「『白澤圖』をめぐる辟邪文化の広がりとその鬼神観」
17:00~17:40 村田みお「六朝隋唐期の仏典書写をめぐる思想的考察」

第二部会:宋~清
9:00~9:40 中嶋諒「陳亮の思想における「道」と「心」について」
9:40~10:20 新田元規「宋元春秋学における「以夏時冠周月」説」
10:40~11:20 川浩二「天一閣博物館蔵『国朝英烈伝』と歴史小説『皇明英烈伝』の制作」
11:20~12:00 馬場昭佳「明清時代における白話小説読解の一面―『水滸伝』とその関連作品に見られる「要素の越境」を軸に」
 昼休み(12時~13時)
13:00~13:40 田中有紀「明代楽論の考察―楽制と音楽理論書の分析を通して」
13:40~14:20 小野泰教「清末期官僚郭嵩燾(1818-1891)の『荘子』解釈―その政治秩序観を中心に」
14:40~15:20 大渕貴之「宋刊唐代三類書間に見えるテキスト移入について―『藝文類聚』・『初学記』・『白氏六帖事類集』を対象として」
15:20~16:00 原田信「王安石の『字説』と蔡卞の『毛詩名物解』―名物考証学の影響と方法について」 
16:20~17:00 森中美樹「『紅楼夢』における枠の設定と「無能」」
17:00~17:40 稲澤夕子「反転する「江湖」―黄天覇劇にみられる盗賊と王法」

長くなったので、第三部会と第四部会は次に掲げます。

2011年1月5日水曜日

新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝

沖本克己編集委員・菅野博史編集協力『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝―仏教の東伝と受容―』(佼成出版社、2010年12月)

表紙は根津美術館所蔵「釈迦多宝二仏並坐像」(北魏・重文)。
ボケにツッコミ入れてるように見えるのは、僕だけでしょうか。

目次は以下の通り。
第一章「中国の仏教」木村清孝
第二章「仏教伝来」釆澤晃
第三章「東晋・南北朝の仏教の思想と実践―仏教受容初期の具体像―」菅野博史
第四章「三教の衝突と融合」河野訓
第五章「仏典漢訳史要略」船山徹
第六章「経録と疑経」沖本克己
第七章「王法と仏法」横井克信

中国シリーズの第一弾ということで、
魏晋南北朝時代に限定しているのは第二章と第三章だけで、
その他は中国仏教全体(とはいえ宋代ぐらいまで)の概説的要素が強いです。

個人的には、第五章と第六章が面白かったです。
第五章では、時代ごとの仏典漢訳の違いや
漢訳の方法などがまとめられていて興味深かったです。
第六章では、特に疑経の利用姿勢に関する記述が参考になりました。

2011年1月4日火曜日

東京旅ノ介

銀座三越8階催物会場で開催中の
山口晃展「東京旅ノ介」に行ってきました。
さすが銀座三越。人であふれかえってます。
でも、8階催物会場にたどりつくと、中はガラガラ。
みんな新年の買い物に忙しいのだろうか。

でも、この山口晃展、現代アートに興味なくても
楽しめること間違いなしです。
実際、ふらりと入ったお客さん(明らかに時間つぶし目的)も、
相当面白がって見てました。

山口晃氏の作品は、なんといっても「ダイナミックかつ緻密」。
大画面の隅々まで書き込んでいて、みればみるほど発見がある。
そして、かっこいい。

チラシは作品の特徴を次のように紹介しています。
「古今東西の事象が時空を超えて絡み合う異時同図」
「洛中洛外図的な構成……といった古典的な大和絵の手法」
「人間と動植物……機械などの無機的な物の融合」
「様々な技法を駆使しながら、奇をてらっていると思わせないような精神的密度の高い作品が特徴」

今回の展覧会は、新作と代表作が並んでいて、
山口晃氏の軌跡をざっと追うことができます。
東京や三越などを題材にした大作や、
日清日露戦争をモチーフにした版画、
電柱と華道の融合や路地裏を走る「露電」といった
身近なものをひねった作品などなど。
要所要所に挟まれた自画像もいい感じ。
これで500円は本当に安い。

帰りに『山口晃作品集』(東京大学出版会、2004年)を買ったのだけど、
図録で見ても、細部が分からないし、迫力が伝わらない。
もう一回、見に行こうかなぁ。


ちなみに東京大学出版会のPR誌『UP』に、
山口晃氏のエッセイマンガ「すずしろ日記」が連載中。
こちらは、ゆる~い内容と絵がいい感じ。
『すずしろ日記』(羽鳥書店、2009年)、かなりおススメです。
山口晃展「東京旅ノ介」
2010年12月28日~2011年1月10日
銀座三越8階催物会場 午前10時~午後7時半
入場料:500円

2011年1月3日月曜日

あっという間に新年

あっという間に2010年も終わり、2011年が始まりました。
昨年見に行ったギャラリー・展覧会をつらつら数えてみたら、
いつの間にか54に達してました。

アートブログなんかをみると、
年間400くらいいってるみたいですから、
まだまだひよっこもいいとこです。

まぁ、これから徐々に時間もとれなくなるし、
無理してもしょうがないので、
マイペースで見に行きたいと思います。

というか、研究しろって話ですね。

それにしても、本来だったら、アートならアート、
研究なら研究、猫なら猫、とブログの内容を
しぼったほうがいいんでしょうが、
幾つもブログやるのは大変だし、メモがわりなとこもあるので、
このまま鵺(またはカフカの雑種(半分猫で半分羊))みたいな
状態で続けていくことにします。

というわけで、まとまりのないブログですが、
今年もよろしくお願いいたします。