2013年1月29日火曜日

海から見た歴史

羽田正編・小島毅監修『東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史』(東京大学出版会、2013年1月)

共同研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成(にんぷろ)」のなかの「東アジア海域史研究会」が母体となって書かれた「東アジア海域」の概説書。分担執筆ではなく、真の意味での共著の形式をとっている。

目次は以下の通り。
プロローグ 海から見た歴史へのいざない
第I部 ひらかれた海 一二五〇―一三五〇年
一 時代の構図
二 海域交流の舞台背景と担い手たち
三 海商がおしひろげる海域交流――開放性の拡大
四 モンゴルの衝撃がもたらしたもの――開放のなかの閉鎖性
五 モノと技術の往来――すそ野の拡大と双方向性
第II部 せめぎあう海 一五〇〇―一六〇〇年
一 時代の構図
二 大倭寇時代――東アジア貿易秩序の変動
三 海商たちの時代
四 多様で混沌とした文化の展開
第III部 すみわける海 一七〇〇―一八〇〇年
一 時代の構図
二 海商たちと「近世国家」の“すみわけ”
三 交流と居留の圧縮と集中
四 海をまたぐモノと情報

それぞれの内容の衝撃度はそれほど大きくないけど、全体でみるととても新鮮。なんといっても読みやすい。『新しい世界史へ』の著者羽田氏が編者であることもあってか、同時代の別の地域(中国・朝鮮半島・日本列島・琉球諸島・東南アジアなど)が自然な形で並列的に扱われている。第Ⅰ部~第Ⅲ部の時代ごとの変化と、横の地域ごとの違いや共通点がすんなり入ってくる。

似た試みをユーラシア大陸(中国・チベット高原・モンゴル高原・中央アジアなど)でもできたら面白いのになぁ。