2010年4月22日木曜日

日中歴史認識

服部龍二『日中歴史認識―「田中上奏文」をめぐる相剋一九二七―二〇一〇』(東京大学出版会、2010年2月)

中国侵略の青写真を描いたとされる「田中上奏文」について、
従来の研究が偽造と断定するのみであったのに対し、
いつ・どこで作られたのか、どのような国際的影響を与えたのか、
米・ソ・中・台において、どのように認識されてきたのか、
そして今現在、どのように認識されているのかに迫ったもの。

「田中上奏文」の真偽問題を超えて、
その影響力について本格的に研究した研究書。
「田中上奏文」の形成過程から、近年の外務省の対応、
さらには日中歴史共同研究における議論まで論じられていて、
大変面白く、一気に読んでしまった。

中国古代貨幣経済史研究の諸潮流とその展開過程

柿沼陽平「中国古代貨幣経済史研究の諸潮流とその展開過程」(『中国史学』19、2009年10月)

近年、中国古代貨幣経済史の研究成果を続々発表している柿沼氏による学説史整理。
主に中国古代経済史の大まかな流れをつかもうとする
「マクロ歴史学的研究」について研究整理をしている。
戦前に登場した「中国古代貨幣経済史盛衰論」から、
経済人類学の成果を踏まえた最新の研究(特に佐原康夫氏)まで丁寧に跡付け、
柿沼氏の一連の論稿の「学説史的土壌の史的変遷とその現状と」を確認している。