2011年11月30日水曜日

平成23年度九州史学会大会

平成23年度九州史学会大会
日程:2011年12月10日(土)・11日(日)
会場:九州大学法文系講義棟

12月10日(土)シンポジウム 法文系講義棟101
「倭の五王は何を学んだか―東アジア世界と倭の変容」

12月11日
日本史部会 法文系講義棟102

東洋史部会 法文系講義棟204

朝鮮学部会 法文系講義棟202

イスラム文明学部会 法文系講義棟302
「特別企画:アジア文化研究会・若手ユーラシア研究会の時代」

報告タイトルが多いので、
詳細は九州史学会HPをご覧ください。

新しい世界史へ

羽田正『新しい世界史へ―地球市民のための構想』(岩波新書、2011年11月)

現代にふさわしい世界史を模索する試み。
目次は以下の通り
序章:歴史の力
第一章:世界史の歴史をたどる
第二章:いまの世界史のどこが問題か?
第三章:新しい世界史への道
第四章:新しい世界史の構想
終章:近代知の刷新

第一章で日本における「世界史」の成立過程を確認し、第二章で現行「世界史」の問題点を指摘(日本でのみ通用・現状追認・ヨーロッパ中心史観)。さらに第三章で、現在試みられている「新しい世界史」の有効性と問題点に言及。中心史観(ヨーロッパ・イスラーム・中国・中央ユーラシアなど)からの脱却を唱える。そして、第四章で羽田氏の「新しい世界史」の構想を示す。

第一章~第三章は、「世界史」の抱えている問題が浮かび上がってきて、大変面白い。特に第三章で、中国中心史観に対して、中央ユーラシアから見直そうという動きが出ているが、「逆に、中央ユーラシアを世界史の中心に置き、中央ユーラシアが世界史を作ったと唱えては、せっかくの提言が台無しである」という指摘に共感。

ただ、第四章の「新しい世界史」構想は、僕の頭が従来の「世界史」に染まっているせいもあって、いまいちピンとこなかった。ぜひ、この構想に基づいた新しい「世界史」概説書を読んでみたい。

2011年11月25日金曜日

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会12月例会

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会12月例会
日時:2011年12月17日(土)14:00~17:00
会場:財団法人東洋文庫2階第1・2講演室

報告
兼平充明「氐族仇池政権に関する新出史料」
井上豪「キジル第38窟壁画とインド・イラン様式の展開」

2011年11月21日月曜日

艾未来2011

牧陽一「艾未来2011」(『埼玉大学紀要. 教養学部』47-1、2011年9月)

今年4月3日に突如身柄を拘束された中国の現代アーティスト艾未未のこれまでの軌跡を簡潔にまとめたもの。

1957年に詩人の艾青の子としてうまれ、文革期の迫害を経験。1979年から現代アートの活動に参加。アメリカ滞在をへて、中国に戻りアーティスト・建築家として活躍。北京五輪の鳥巣スタジアム(通称)を建設。その一方で、四川大地震の犠牲者の名簿を作成し、政府の圧力をうける。共産党を批判する作品も作成。ブログ・ツイッターなどを駆使するも、政府によって閉鎖される。そして、4月3日拘束され、一時行方不明に。6月22日に保釈されるが、現在も活動制限中。
現代アートという枠組みをはるかに超えた活動を行っている人物。

実は2009年に森美術館で開催された個展「アイ・ウェイウェイ 何に因って」に行ったのだけど、漢代の陶器を破壊するパフォーマンス、清代の家具を解体・再構築した作品(中国の形)などをみて、正直、あまりいい印象をうけなかった。歴史・文物の破壊行為なら、文革期に大々的に行われているし、なんだかなぁ、と思ってしまった。しかも再構成された木製の中国には「ちゃんと」台湾も含まれている。「鳥巣スタジアム」を建設していたこともあって、「愛国者」なんだなぁ、と思いこんでしまった。

ところが、今年の2月に、景徳鎮でつくらせた一億個のヒマワリの種という作品に触れる機会があり、これはすごいと思い、もういちどチェックしようかなと思っていたら、拘束されてしまった。
牧陽一氏の論文と最近刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト『アイ・ウェイウェイは語る』(みすず書房、2011年11月)で、改めてアイ・ウェイウェイについて勉強させてもらった。「愛国者」と思いこんで、しっかりチェックしてこなかった不覚を恥じるばかりである。

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追記:2011年11月25日(金)21時50分
なお、この論文はSUCRAからダウンロードできます。

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

日時:2011年12月16日 (金) ~18日(日)10時~18時(18日は10時~12時)
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
 
12月16日(金)10:00~12:00、13:30~18:00
西原一幸「唐代楷書字体規範からみた『龍龕手鏡』」
池田証寿「漢字字体の実用例と字書記述」
高田智和「国研本大教王経の漢字字体」
紅林幸子「書法と書体」
岡墻裕剛「HNGにおける字種・字体の認識と異体処理」
斎木正直「HNG の利用を通して見た親鸞・明恵の字体」
賈智「『新訳華厳経音義私記』所引の楷書字書の体裁・様式及び出典について」

12月17日(土)10:00~12:00、13:30~18:00
赤尾榮慶「古写経の字すがた」
石塚晴通「字体規範と異体の歴史」(基調講演)
小助川貞次「敦煌漢文文献(漢籍)の性格とその漢字字体」
Imre Galambos「Huiyi characters seen in Dunhuang manuscripts(敦煌本に見える会意字)」
山田太造「日本史史料における翻刻データの作成支援と共有手法」
白井純「「落葉集小玉篇」の部首配属からみたキリシタン版の字体認識」

12月18日(日)10:00~12:00
笹原宏之「異体字・国字の出自と資料」
豊島正之「金属活字の製作に於ける異体字」

十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易

白玉冬「十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易」(『史学雑誌』120-10、2011年10月)

従来、空白の時代とみなされがちであった10~11世紀のモンゴル高原の歴史を再考している。敦煌文書・アラビア語文献などをもとに、11世紀に敦煌からモンゴル高原中央部の九姓タタルの支配地を経由して契丹に到る交通ルートが存在していたことを指摘し、10世紀に敦煌と通交関係を持っていたタタルは九姓タタルに属していたとする。さらに九姓タタルがウイグル商人を通じてシルクロード貿易とつながっていたとする。

2011年11月18日金曜日

円仁と石刻の史料学

鈴木靖民編『円仁と石刻の史料学―法王寺釈迦舎利蔵誌』(高志書院、2011年11月)

昨年、一部で話題になった「法王寺釈迦舎利蔵誌」をメインで取り上げた論集が出た。2011年1月23日に国学院大学文化講演会「円仁石刻と古代の日中文化交流」をもとにまとめたもの。まさか論集にするとは。

目次は以下の通り。
齊藤圓真「日中文化交流史上の円仁と天台」
第1部:石刻の史料学
酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
〈コラム〉波戸岡旭「「釈迦舎利蔵誌」の文構成と修辞」
田中史生「法王寺石刻「釈迦舎利蔵誌」の調査」
〈コラム〉佐野光一「円仁石刻の書風」
石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
〈コラム〉高丹丹「唐代石刻と史書」
葛継勇「円仁石刻をめぐる諸問題」
裴建平「石刻の真偽の鑑定分析と登封法王寺「円仁石刻」の制作時期」
〈コラム〉「フト(浮屠/浮図)について」

第2部:法王寺と円仁
呂宏軍「隋唐時代嵩山の寺院・石刻と交通」
〈コラム〉金子修一「嵩山の封禅」
趙振華「唐代武宗廃仏の物証と中日僧侶の護法活動」
〈コラム〉笹生衛「円仁と『佛頂尊勝陀羅尼経』、そして古代日本の滅罪信仰」
田凱「法王寺二号塔地下宮殿およびその関連問題」
〈コラム〉阿南ヴァージニア史代「「円仁日記―七日間の沈黙」考」
肥田路美「仏舎利の荘厳具と迦陵頻伽盒」
塩沢裕仁「東都洛陽と鄭州を結ぶ道筋」
〈コラム〉宇都宮美生「唐宋の山陽瀆と汴河」
佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
〈コラム〉河野保博「円仁の同行者たち」
鈴木靖民「円仁石刻の史料性と法王寺の沿革」

唐代説(中国人研究者)もあるけれど、鈴木氏の総論では、二通とも明清期の模刻だが、原文は唐代のものという結論をひとまず出している。
日本史研究者は、制作時期の特定に積極的だけど、中国史研究者(日本人)は、一人も制作時期に言及しておらず、消極的なのが印象的。

2011年11月11日金曜日

西域―流沙に響く仏教の調べ

能仁正顕編『西域―流沙に響く仏教の調べ』(自照社出版、2011年8月)

龍谷大学仏教学叢書②。2008年度に行われた連続講義をまとめたもの。参考文献や注釈などはついていないが、大谷探検隊・大谷コレクションなどの入門として便利。
目次は以下の通り。

第一章:大谷探検隊の足跡
入澤崇「大谷探検隊の足跡をたどって」
能仁正顕「チベットの大谷探検隊」
第二章:西域出土の仏教文献
上山大峻「シルクロード出土資料からの発言」
三谷真澄「大谷コレクションと敦煌資料」
三谷真澄「トルファン資料の意義―旅順博物館資料を中心に」
第三章:西域にひろがる宗教世界
山田明爾「仏教と異宗教」
吉田豊「ソグド人の宗教」
第四章:西域にひろがる仏教美術
能仁正顕「阿弥陀仏像の源流を求めて―ガンダーラの三尊像」
宮治昭「西域の仏教美術―涅槃の美術を中心に」
入澤崇「壁画復元―ベゼクリク「誓願図」」

2011年11月8日火曜日

第43回中央アジア学フォーラム

第43回中央アジア学フォーラム
日時:2011年12月3日(土) 13時半~18時
場所:大阪大学・豊中キャンパス 文法経本館2階大会議室

報告
門司尚之「“随葬衣物疏”研究の現状と課題 ―その呼称問題を中心として」
室山留美子「古代中国の地域文化 ―西安北魏墓・十六国墓と後漢六朝期の鎮墓獣を手がかりに」
旗手瞳「吐蕃後期におけるアシャ人千戸長の一族について」
赤木崇敏「敦煌王国の終焉と「沙州ウイグル」の台頭 ――11世紀中央ユーラシア東部地域の国際情勢」

古代アジア世界の対外交渉と仏教

河上麻由子『古代アジア世界の対外交渉と仏教』(山川出版社、2011年11月)

「遣隋使と仏教」(『日本歴史』717、2008年)などで、中国を中心とするアジア世界における仏教と対外交渉について研究を重ねてきた河上氏の著書がでた。
目次は次の通り。

第一部:遣隋使と仏教
第一章:南北朝~隋代における仏教と対中国交渉
第二章:中国南朝の対外関係において仏教が果たした役割について―南海諸国の上表文の検討を中心に
第三章:隋代仏教の系譜―菩薩戒を中心として
第四章:遣隋使と仏教

第二部:唐の皇帝と天皇の受菩薩戒
第一章:唐の皇帝の受菩薩戒―第一期を中心に
第二章:唐の皇帝の受菩薩戒―第二期を中心に
第三章:唐の皇帝の受菩薩戒―第三期を中心に
第四章:唐代における仏教と対中国交渉
第五章:聖武・孝謙・称徳朝における仏教の政治的意義―鑑真の招請と天皇への受戒からみた

南北朝~唐代における仏教的朝貢の流行・皇帝の受菩薩戒の政治的意味を明らかにし、日本の対中国交渉の意義について再検討している。

2011年11月5日土曜日

日本道教学会第62回大会

日本道教学会第62回大会

日程:2011年11月12日(土)
会場:筑波大学春日キャンパス メディアユニオン・メディアホール

研究発表 10:10~
馮暁暁「『道法会元』データベースの作成と計量的分析」
水野杏紀「江戸時代中期以降の明清の術数書受容の特徴―『元経』・『八宅明鏡』救貧竈掛を中心として」
江波戸亙「『悟真篇注疏』の外丹理論について」
三田村圭子「唐末五代における宗教活動―『広成集』所収の青詞を中心に」
武田時昌「道教文化研究の術数学的アプローチ」

特別表演 14:30~ 春日キャンパス7B205教室
陳儷瓊「台湾・道法二門の小普」

総会 16:00~

東洋文庫ミュージアム&東京人

先日、東洋文庫ミュージアムに行ってきました。
展示内容は既にブログで紹介したので省略しますが、
ものすごく楽しめる内容でした。
東洋文庫のすごさを改めて体感しました。

入場料(一般880円・大学生680円)を
高いとみるかどうかは微妙なところですが、
あっというまに時間がすぎてしまうし、
写真OK(一部除く)なことを考えると、
まあまあなんじゃないでしょうか。
国宝『史記』も、モリソン文庫の威容も撮り放題です。


東洋文庫とミュージアムの魅力は、
このブログの拙い文章よりも、
『東京人』2011年12月号通巻303(都市出版、2011年12月)を読むと伝わってきます。

『東京人』12月号は、特集「東洋文庫の世界」。
目次は以下の通り。
ドナルド・キーン「初めて触れた、江戸期の『百合若大臣野守鏡』に興奮しました」
張競「文字と書物の旅をめぐる綺想」
堀江敏幸「あやしうこそ、ものぐるほしけれ―東洋文庫の午後」
樺山紘一・亀山郁夫・池内恵・斯波義信・牧野元紀「座談会 「アジアの世紀」の今だから、「東洋の知恵」を見直そう。」
ウッドハウス暎子「G・E・モリソンの実像」
森まゆみ「岩崎久彌が見た夢」
槇原稔「日本人のアイデンティティーを、東洋文庫で育ててほしい」
野嶋剛「内藤湖南をめぐる中国美術品流入のネットワーク」
研究者に聞く「この一冊からはじまった」
森本公誠「『アラビア語文献目録補遺』 時宜を得たアラビア語文献蒐集に感謝」
石澤良昭「『インドシナとインドネシアのインド化した国々』 セデスの不朽の名著」
坪井善明「越南『欽定大南会典事例』の礼部 「邦交」や「柔遠」に入れ込んだ日々」
木奥恵三「非日常の空間へ誘うミュージアム 建築も、すごい」

他にも『史記』・『東方見聞録』・『諸国瀧廻り』・『アヘン戦争図』などの鮮明な写真も掲載しています。

日本中国考古学会2011年度大会(第22回大会)

日本中国考古学会2011年度大会(第22回大会)

日中関東部会

日程:2011年12月3日(土)・4日(日)

会場:大会・総会:東京大学本郷キャンパス 法文2号館一番大教室

12月3日(土)
一般研究発表(13:10~15:50)
13:10~13:40 松本圭太「中央ユーラシアにおける青銅器様式の展開―長城地帯とミヌシンスクの青銅器製作技法の比較を通じて」
13:40~14:10 佐々木正治 「出土鉄器からみる河南省の鉄器生産について―漢代~魏晋南北朝を中心に」
14:10~14:40 ラプチェフ・セルゲイ「中国南部と東南アジアの青銅器における水牛像とその役割」
14:50~15:20 江介也「東アジアの鋏―用途・表象・ジェンダー副葬」
15:20~15:50 丹羽崇史 「窯道具から見た唐三彩窯成立過程」
16:00~17:00 ポスターセッション
17:00~17:30 総会

12月4日(日)
シンポジウム「モノの拡散」(9:20~15:50)
9:30~10:10 久保田慎二「新石器時代における空三足器からみたモノの拡散」
10:10~10:50 長尾宗史「二里頭文化期の中央と辺縁―青銅器・玉器・精製土器を中心に」
11:00~11:40 角道亮介「西周青銅器銘文の広がり」
11:40~12:20 田畑潤「西周時代後期における青銅礼器葬制の変化と拡散」
12:20~13:20 昼食・ポスターセッション
13:20~14:00 田中裕子「新疆ウイグル自治区における青銅容器の展開」
14:00~14:40 中村亜希子 「瓦の東方伝播―楽浪瓦を考える」
14:50~15:50 討論
15:50~16:00 閉会式

ポスターセッション
掲示:12月3日(土)12:30~、12月4日(日)16:00
質疑応答:12月3日(土)16:00~17:00、12月4日(日)12:20~13:20

久慈大介「二里頭遺跡出土土器の製作技術研究」
茶谷満「後漢皇帝陵再考」
鈴木舞「笄類から見た殷周時代―鳥形笄を中心に」
岸本泰緒子「秦漢期嶺南地区における銅鏡の地方生産」
小林青樹・李新全・宮本一夫・春成秀爾・宮里修・石川岳彦・金想民 「近年の遼寧地域における青銅器・鉄器研究の現状」