2009年12月31日木曜日

振り返ると

振り返ると今年も色々ありました。
楽しいことも、嬉しいこともありましたが、
反省すべきことも多々ありました。

とりあえず、年が明けたら、前を向いて
振り返らないようにしたいと思います。
ま、時には振り返ってしまうでしょうけど。

2009年12月30日水曜日

曹操墓発見か

年末になって曹操墓(魏武王高陵)発見というニュースが飛び込んできましたね。
毎日新聞では小さいながらも一面にあげていました。
河南省文物局のホームページで詳細が紹介されています。
http://www.haww.gov.cn/html/20091227/153670.html

第一報を聞いて「本当かな?」と思った人は多いはずです。
かくいう私もそう思いました。
ただ、河南省文物局の情報によると、墓道と前室・後室と四つの側室があり、
墓道と墓室の合計の長さが60m近くもある相当大型の墓だそうです。
石牌には一抹の不安を感じますが、これだけの規模の墓となれば、
まぁ、間違いないような気がします。
ま、正式な報告書が出るまで、確実なことは言えませんが。

台湾の趙立新氏のブログ「 南國島夷:古代東亞與中國中古研究」では、
各種報道機関(中国・香港・日本・韓国・欧米)の記事とリンクしています。
さらに「高陵剖視圖」も掲載されています。

多分、万一、石牌が出なかったとしても、河南省文物局は、
曹操墓の可能性が高いとしたんじゃないですかね。
河北省磁県湾北朝墓が、文字資料がないにも関わらず、
規模や副葬品・文献の記載から北斉の文宣帝墓と
推定されている前例もありますし。
どっちに転ぶにせよ、報告書が楽しみです。

大阪大学歴史教育研究会39回例会

大阪大学歴史教育研究会・第39回例会
日時:2010年1月16日(土) 午後1時30分~5時30分
会場:大阪大学豊中キャンパス文法経本館2階大会議室

大阪大学歴史教育研究会・中央ユーラシア史部会報告
「中央ユーラシア史上の分水嶺―世界史教材のための時代区分と類型化の試み」

第1部 中央ユーラシア史の経糸と緯糸
向正樹「中央ユーラシアという世界―空間的考察・用語―」
伊藤一馬「中央ユーラシアにおける国家の形成と展開」

第2部 中央ユーラシアにおける国家の諸相
入野恵理子「4~6世紀 北魏」
旗手瞳「7~9世紀 吐蕃」
赤木崇敏「9~10世紀 敦煌王国」

『日本歴史』740号

『日本歴史』第740号(吉川弘文館、2010年1月)は、
「日本史研究とデータベース」という新年特集号。

分野別現況には、
小口雅史「日本古代史研究のためのオンラインデータベース」
田良島哲「中世研究資源としてのウェブデータベース」
江川式部「中国・台湾史に関するデータベース」
長森美信「朝鮮前近代史に関するデータベース」
荒木浩「ぞんざいな検索、丁寧な検索」
岡本真「日本史研究におけるインターネットの学術利用」などがある。
そのほかに「提供者の立場から」、「利用者の立場から」の項目もあり、
全体合計で、47人が各種データベースを紹介している。

工具書としてとても便利。
いつもならそんなにすぐには売れないはずなのに、
今回はあっという間に店頭からなくなってしまっていた。

2009年12月28日月曜日

中世の書物と学問

小川剛生『中世の書物と学問』(山川出版社、2009年12月)

山川出版社の日本史リブレット78。
書写・校勘、読書、蒐書、引用・利用、註釈書などのテーマから、
中世の日本の人々が、どのように書物を利用していたか、
当時の学問とはどのようなものかを平易にまとめている。

日本中世における中国の書物・学問の受容については、
「「東アジア世界」という見取り図を持ち出して」終わりとするのではなく、
「受容した側が何をどのように消化した結果、
いかなる果実が稔ったかを具体的に追跡するべきである」と述べている。
以前読んだ水口幹記『日本古代漢籍受容の史的研究』(2005年9月)の序章と
ある意味共通の問題意識を感じた。

2009年12月27日日曜日

寧波プロジェクト科挙班研究総括集会

研究総括集会「寧波士人社会の形成と展開―宋元明の通時的考察」
主催:科挙班
日時:2010年1月24日(火)午後1時~午後5時
会場:明治大学駿河台校舎研究棟4F第6会議室
報告者:科挙班構成員(近藤一成、森田憲司、櫻井智美、鶴成久章、飯山知保)
各分担者が現段階での結論を20分間程度報告。
課題と今後の展望について、討論を行う予定。 

冬の夜道


冬の夜道にて。
中途半端にあがった足は愛嬌あるけど、
ビームが出そうな左目がちょっと怖い。

2009年12月26日土曜日

陳元靚の『博聞録』について

宮紀子「陳元靚の『博聞録』について 」(『汲古』56、2009年12月)

これまでの宮氏の陳元靚撰『博聞録』(『事林広記』のもとになった類書)に
関する研究によると、 現在、『博聞録』自体の伝来は知られていないが、
佚文や版式から、『事林広記』のどの部分が『博聞録』であるか判明しつつある。
今回の論文では、日本で作られた仏典の注釈や『三体詩』の抄物などを中心に
その後発見した『博聞録』関係資料や佚文を紹介。
『博聞録』自体の研究もさることながら、
13~15世紀の日本における漢籍受容の様子も窺えて、とても面白かった。

また、本題とはずれるが、南北朝~室町時代の「管領」・「都元帥」・「総管府」等の
肩書きが、 モンゴル時代の制度を踏まえているという注12の指摘も興味深かった。

新発見隋代陰寿の墓誌

韓昇「新発見隋代陰寿の墓誌」(『汲古』56、2009年12月)

近年発見された北周・隋初に活躍した陰寿(墓誌中では陰雲)の墓誌を紹介。
冒頭の墓誌概述で、「未公開の墓誌」と述べているが、
すでに王其褘・周暁薇主編『隋代墓誌銘彙考』第一冊(線装書局、2007年)と、
楊宏毅「隋《陰雲墓誌》考」(『碑林集刊』13、2008年)に、
拓本・録文・解説が掲載されている。
陰雲(陰寿)の事績についても、楊宏毅氏の論文の方が正確。

国文学研究資料館 公開講演会

国文学研究資料館 公開講演会
日時:2010年1月14日(木)13時00分
場所:国文学研究資料館第1会議室
講師:陳先行
題目:上海図書館の古典籍の収蔵について

2009年12月23日水曜日

感染症の中国史

飯島渉『感染症の中国史―公衆衛生と東アジア―』(中公新書、2009年12月)

『ペストと近代中国』や『マラリアの帝国』の著者のはじめての新書。
新書とか出ないかなぁ、と思っていた研究者の一人。
専門書のエッセンスが凝縮されている感じ。

19世紀末、ペスト・コレラなどの感染症の流行を契機に、
公衆衛生の確立を迫られた中国の苦闘を描く。
中国と帝国日本(植民地)の公衆衛生の関係も指摘。
列強諸国・帝国日本が植民地に行った公衆衛生事業について、
単なる「善政」ととらえるのではなく、植民地化の過程としてとらえる必要性を述べる。

2009年12月20日日曜日

手も足も

最近の寒さに手も足も出ません……。

なお、写真は秋に撮影したもの。猫はぬくぬくしてるはずです。
野良なのにこのフォルム。猫というより芋虫に近い気が……。

EurAsia3000年

もう、かなり今さらですが、まだ間に合うはず、
ということで紹介します。

「EurAsia3000年 海と陸のシルクロード」
会場:横浜ユーラシア文化館
会期:2009年9月19日~2010年1月11日
休館日:月曜日・年末年始(12月28日~1月4日)
開館時間:9時30分~17時
入館料:一般500円 小中学生250円

展示構成:Ⅵ部構成で、陶磁器・青銅器・ガラス碗・地図などを展示。
Ⅰプロローグ(6世紀以前のシルクロード)、Ⅱ唐とイスラーム世界、
Ⅲモンゴル帝国の出現、Ⅳ大航海時代前夜 
Ⅴ大航海時代、Ⅵエピローグ(横浜を通過したシルクロード研究者)

2009年12月18日金曜日

オブジェの方へ―変貌する「本」の世界


先日、うらわ美術館で開催中の「オブジェの方へ―変貌する「本」の世界」展に行ってきました。
うらわ美術館は、「本」のアートをコレクションの柱にしている美術館で、
現在、1180点収蔵しているそうです。
今回は開館10周年記念ということで、コレクションの一部(67点)を展示中。

うらわ美術館は、シンプルでこじんまりとしていて、
客もあまり多くない感じ。今回の展覧会もちょっと地味目。
でも、国外・国内の様々な「本」に関する現代アートが並べてあって、
とても面白かった。


針で聖書を丹念にほぐした
イー・ジヒョン「007SE0711(聖書)」。

福田尚代の「佇む人たち」は、
小口を削った文庫本をずらりと並べて羅漢に見立てた作品。
まるで木製の彫刻みたい。

中村宏「機甲本 Ιχαρος(イカルス)」は、
稲垣足穂の短編小説を銅版にしたもの。総重量23kg。
外観と小説の内容が密接にリンクしている。
というか、単純にかっこいい。

西村陽平と遠藤利克は、焼いた本を展示。
西村作品は、鮮やかな白が奇妙に美しく、
遠藤作品は、2000冊の黒ずんだ本が重厚で圧巻。

柄澤齊の「書物標本Susanna」は、
まるで化石を見ているよう。


今回の展示で、ほぼ共通していることは、
本なのに、「読めない」(または極めて読みにくい)ということ。
焼いたり、塗りつぶしたり、重かったり、解体したり。
大体、物理的に読めないようになっている。
「本」とは何か、「読書」とは何かを考えさせられる。

でも、「本」があると、読みたくなるのが人情というもの。
ぜひ、「読む」という行為を含んだアートも展示してほしい。

「読めない」で思い出したけど、 うらわ美術館は
徐冰の作品を持っているのだろうか。
もし持ってたら、ぜひ展示してほしいなぁ。

徐冰「天書」(1987~1991年作成)











「オブジェの方へ―変貌する「本」の世界」
会場:うらわ美術館
会期:2009年11月14日~2010年1月24日
開館時間:10時~17時(土日のみ20時まで)
休館日:月曜日・年末年始(12月27日~1月4日)・1月12日
観覧料:一般500円、大高生300円

大阪市立東洋陶磁美術館

国際交流特別展「北宋汝窯青磁 - 考古発掘成果展」
会期:2009年12月5日(土)~2010年3月28日(日)
会場:大阪市立東洋陶磁美術館
休館日:月曜日(12月14日、21日、1月11日、3月22日は開館)、
 年末年始〈12月28日(月)~1月4日(月)〉、1月12日(火)、2月12日(金)、3月23日(火)
開館時間:午前9時30分~午後5時
 *12月12 日(土)~25日(金)は午後9時まで
主催:大阪市立東洋陶磁美術館、河南省文物管理局、読売新聞大阪本社
特別協力:河南省文物考古研究所
料金:一般900円(750円)、高大生600円(450円)
展示内容:近年、河南省文物考古研究所が進めてきた
 河南省宝豊県清凉寺の北宋汝窯青磁窯址の出土資料約80点を展示


講演会・シンポジウム
国際シンポジウム「北宋汝窯青磁の謎にせまる(仮題)」
日時:2010年3月13日(土)、14日(日)
場所:大阪歴史博物館・講堂
定員:250名(参加費無料・先着順)
内容:中国、台湾、韓国、日本の研究者が汝窯に関する最新の研究成果を発表
詳細については後日別途広報。大阪市立東洋陶磁美術館ホームページ参照。

2009年12月16日水曜日

講演会

研究会「中央アジア・ソグディアナにおける仏教遺跡と美術」
日時:2009年12月21日(月) 午後3:30〜5:00
場所:京都・国際日本文化研究センター第5共同研究室
http://www.nichibun.ac.jp/info/access.html
発表者:Abdullaev Kazim(ウズベキスタン考古研究所研究指導員)
参加費:無料

2009年12月13日日曜日

医学と芸術

現在、森美術館で開催中の「医学と芸術:生命と愛の未来を探る~ダ・ヴィンチ、応挙、デミアン・ハースト」に行ってきました。

今回の展覧会は、「医学と芸術」をテーマに、
イギリス最大の医療助成団体のウェルカム財団所蔵品を中心に、
第1部:身体の発見、第2部:病と死との戦い、第3部:永遠の生と愛に向かって
という三部構成で、医療用品・解剖図・日本画・現代アートなどなど、
約180点を展示している。

多分、目玉はダ・ヴィンチの解剖図なのですが、
そこにはあまり興味が湧きませんでした。
むしろ、実用的に作られた医療用品なのに
アートに見えてしまう展示品の数々に感動。
ポール・オムニスコープ社製レントゲン機や、特注の「鉄の肺」、
様々な義手・義足・義眼、鉄製関節模型などなど。

また、一つの展示品から、連想がひろがる面白さも味わいました。
たとえば、円山応挙の「波上白骨座禅図」(1780完成)を見た時には、
南宋・李嵩の「■[骨+古]髏幻戯図」を連想。 この絵は、傀儡の骸骨をあやつる芸人(これまた骸骨)とその妻と乳飲み子、
さらに芸人に近づく幼児と、それを止めようとする母親を描いている。
正直、李嵩のほうが、円山応挙よりも、ずっとずっと怖い。

現代アートでは、
死を目前にした人とその死亡直後の顔写真を並べた
ヴァルター・シェルス「ライフ・ビフォア・デス」や、
人の頭蓋骨を紙やすりで2週間削って作った
アルヴィン・ザフラ「どこからでもない議論」、
エドワルド・カッツが遺伝子工学によって生み出した光るウサギ「GFPバニー」に、
深く考えさせられました。
年老いたアメコミヒーローを並べたジル・バルビエの「老人ホーム」は、
単純に見ているだけでも面白かった。
解説は老人医学の面にしか触れてないけど、
“正義”のアメリカ自体を皮肉っているようにも見える。


と、ここまでものすごく満足したように書いてきましたが、
実のところ、面白かったけど物足りない、というのが正直な感想。
意外な組み合わせというのが少ない上に、西洋偏重なのも気にかかる。
申し訳程度にチベット・ペルシャ・インド・中国の展示品もあったけど、
物足りなすぎる。
鍼灸や本草学、江戸時代の医学用品ですら展示されていないし。
東洋医学の世界は、もっともっと奥深く、面白いものがたくさんあるのだけどなぁ。
それに呪詛とか祈祷といったものも広義の精神医学として、
取り上げる価値はあったのではなかろうか。例えばコレラ除けのお札とか。

どうも、グロテスクでインパクトのある解剖図や肉体図に
重点を置きすぎているように感じてしまった。
ま、アートっぽいものっていうと、どうしても西洋偏重になるのは仕方ないのだけど。
でも、そこをもう一歩踏み出してほしかったなぁ。

個人的には5月29日から8月30日まで
21_21DESIGN SIGHTで開催されていた「骨」展の方が
意外な組み合わせがあって面白かった。

なお、「医学と芸術展」は、2010年2月28日(日)まで開催中です。

2009年12月10日木曜日

東アジアの仏教儀礼と表象文化

国立歴史民俗博物館共同研究2008〜2010「中世における儀礼テクストの綜合的研究」による国際研究集会「東アジアの仏教儀礼と表象文化」
日時:12月23日(水・祝日)
会場:名古屋大学文系総合館 7F カンファレンス・ホール

午前の部:影像上映(10:00〜12:00)
民俗映像「薬師寺花会式―行法を支える人々」 解説 松尾恒一

午後の部
基調講演(13:00〜14:00):洪潤植「韓国の仏教儀礼と芸能」
シンポジウム(14:15〜18:00)「東アジアの仏教儀礼と表象文化」
金慶起「韓国霊山齋の儀礼 芸能の特質とその歴史」
小島裕子「舎利会における舎利の奉迎について」
荒見泰史「敦煌文献に見られる唱導資料」
コメンテーター:松尾恒一・殷勤
司会・総括:阿部泰郎

2009年12月8日火曜日

夜道にて


エサを探しているのだろうか。
そこには落ち葉しかないよ。

王朝滅亡の予言歌

串田久治『王朝滅亡の予言歌―古代中国の童謡』(大修館書店、2009年12月)

前漢・後漢代の童謡・予言歌の内容を解説。
政治と密接な関係にあったことを紹介している。
若干、気になったのは、正史に記された予言歌の流行時期を
そのまま採用しているように見えた点。
たとえば、桓帝の最期と次の霊帝の登場を予言した歌が、
桓帝即位当初に流行したという『続漢書』の記事をそのまま引用している。
予言はたいていの場合、後付けで作られるような気がするのだけど……。

中国では王朝交代や政治が乱れた際には、
必ずと言っていいほど、童謡が流行するので、
史料にもちょくちょく登場する。
清の杜文瀾撰『古謡諺』は、明代までの童謡を列挙していて、
参照するのに便利。

2009年12月6日日曜日

『老子』―〈道〉への回帰

神塚淑子『『老子』―〈道〉への回帰』(岩波書店、2009年11月)

岩波書店の書物誕生あたらしい古典入門シリーズの一冊。
第Ⅰ部では、『老子』の成立過程(馬王堆帛書・楚簡との比較)や、
各時代の注釈書、仏教や道教との関係をまとめている。
第Ⅱ部では『老子』の思想を以下の五つのテーマに分けて読み解いている。
「道」について、「道」への復帰、文明への警告、「聖人」の治、処世訓。
『老子』の概説書として、とてもわかりやすかった。
ただ、書物誕生シリーズの『孫子』・『論語』・『『史記』と『漢書』』を読んだときほどは、目から鱗が落ちなかった。

中国儒教社会に挑んだ女性たち

李貞徳著、大原良通訳『中国儒教社会に挑んだ女性たち』(大修館書店、2009年12月)

北魏の蘭陵長公主の流産と死を起点に、
南北朝隋唐期の女性と法の関係に迫る。
政治史の側面は希薄だけど、霊太后に注目していて、
なかなか面白い。
原題翻訳は「公主の死―あなたの知らない中国法律史」。
個人的には原題のほうがいいような気がするのだけど。

2009年12月3日木曜日

『宋代中国』の相対化

やっと宋代史研究会編『『宋代中国』の相対化』(汲古書院、2009年7月)を読了した。
収録論文は12本。どれも面白く、刺激的だった。
著者は全員30~40代。山根直生氏による編集後記の中に、
「前編集委員から託された方針はただ一点、執筆陣・編集委員の双方に
……従来よりも若い世代をあてること、のみであった」とある。
そういえば、遼金西夏史研究会も若手中心の研究会だ。
内実はよくわからないけれど、この論文集を読む限り、
宋代史研究会では、若手の勢いが盛んで、
世代交代がスムーズに行われるように思えてくる。
編集後記の付記にある故津田芳郎先生の若手へのエールがまたいい。

十一世紀後半における北宋の国際的地位について

毛利英介「十一世紀後半における北宋の国際的地位について―宋麗通交再開と契丹の存在を手がかりに―」(宋代史研究会編『『宋代中国』の相対化』汲古書院、2009年7月)

北宋神宗期の宋と高麗の通交再開について再検討し、
主要因は経済面ではなく、政治面にあったとする。
すなわち、宋朝には高麗との関係を一定程度回復することで、
「中国」としての装いを整えようとしたとする。
また、遼は高麗経由で宋の文物・情報が流入することを
期待して宋と高麗の通交を黙認したのではないかとする。

個人的には、上記に続く第二章第二節の方向表現からみる国際関係が
最も興味深く、とても面白かった。
遼と北宋が相互に「北朝」・「南朝」と称呼したのみならず、
高麗や西夏にも同様の認識が存在したことを指摘。
さらに遼において、東韓(高麗)・西夏・南朝(宋)・北朝(遼)という
方向表現があったことを示す。
もちろん、北宋・遼ともに自国を「中華」とする認識が存在したことは間違いないが、
一方で北宋・遼ともに「南朝」・「北朝」という意識も持っていたことがとても面白い。
南北朝時代には、あまりそうした認識はうかがえないのではないだろうか。

2009年11月29日日曜日

石刻と法帖

福本雅一『石刻と法帖』(藝文書院、2009年6月)

石刻概論(初出は1993年)と『淳化閣帖』などの概説。
書道史からみた石刻概論としては、比較的まとまっていて読みやすい。
というか、日本では藤原楚水『書道金石学』(三省堂、1953年)や
本書のように書道史側の入門書しか作られていない。
歴史学の立場から書かれた石刻概論書を読んでみたいと思う。

通り道


不審者を見たような顔つき。
別に怪しいものではないですよ。

内陸アジア出土古文献研究会

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会12月例会
日時:12月12日(土) 午後2:00-5:30
場所:明治大学駿河台校舎研究棟4階 第一会議室  

報告
岡野誠「杏雨書屋所蔵唐開元雑律疏断簡の再検討」
山口正晃「敦煌学百年―現状と課題―」

2009年11月26日木曜日

鑑真

東野治之『鑑真』(岩波新書、2009年11月)


鑑真の渡日に関する苦心談は抑えめにし、
鑑真の師や学問の環境などの来日以前の鑑真と、
受戒や唐招提寺など来日後に鑑真が果たした役割に焦点をあてている。
鑑真のもたらした戒律は根づかなかったが、
「鑑真の心が別の形で受け継がれた」とし、天台宗や最澄に言及している。
また、これまで一部の研究者に指摘されていた
道璿・良弁と鑑真の軋轢や、鑑真の弟子間の対立などを否定している。

2009年11月23日月曜日

龍谷大学東洋史学研究会

龍谷大学東洋史学研究会第33回研究大会
日時:2009年11月27日(金),午後1時15分より
会場:龍谷大学大宮学舎,清和館3階ホール

研究発表:1時15分~
椎名知世「南唐の対外政策における一考察」
高橋亮介「後趙仏教史再考」
石本利宏「先秦時代における秦の国家的性質」
赤羽奈津子「地域史からみる朝鮮古代史」

文学部特別講義:3時~
王小甫氏「トルファンにおける吐蕃及びチベット仏教の遺跡」

2009年11月22日日曜日

四国東洋学研究者会議

2009年度四国東洋学研究者会議 
日程:2009年11月28日・29日
場所:愛媛大学

第1日 11月28日(土)14:00~17:00
会場:愛媛大学法文学部中会議室(法学部本館2階)
邢東風「フィールドワークと中国仏教史の研究について」
張子侠「《呉書》作者辨」
徐国利「徽州文書的理論研究与整理方法」
胡中生「宋明以来民間修譜面臨的血縁困境及其解決―以徽州為中心的探討」
 
第2日 11月29日(日)9:00~12:00
会場:愛媛大学 職員会館 小会議室
片岡一忠「清朝外交史と新疆問題」
牧野修二「チンギス汗の金国侵入時の軍事編制について」
 

「伝えゆく典籍の至宝」参観

五島美術館で11月29日まで開催されている
「伝えゆく典籍の至宝」を見に行ってきました。

漢籍以外、あまり興味ないので、すぐに見終わるかなぁ、
なんて思って行ったのだけど、想定外の面白さでした。
さすが五島美術館。

まず興味をひかれたのが、「金光明最勝王経」。
奈良時代の写本なのだけど、
平安時代のヲコト点(多分、博士家系統)がつけられている。
写本の作成年代と読まれた時期が違っているのが興味深い。

また、平安時代後期に作られた類書(『幼学指南鈔』)や、
『伊呂波字類抄』・『和妙類聚抄』などの古辞書の写本も面白かった。

もちろん、金沢文庫本『白氏文集』・『論語集解』・駿河版『群書治要』・
秀頼版『帝鑑図札』などなど、漢籍も非常に充実してました。
なかでも古典籍展観大入札会で手に取った直江版『文選』が、
ケースの中で鎮座しているのを見た時は妙に嬉しかったです。


でも、一番印象的だったのは、
藤原頼長の手跋のある『因明論疏』。
頼長は、政治家として、そして保元の乱の
中心人物として有名だけど、
ものすごい読書家としても名高い。
でも、彼の字はマジックペンで書いた
みたいで、お世辞にも名筆とはいえない。
なんだか親近感を覚えた。
解説には、悪筆をむしろ顕示していた、とある。
ますます、いいなぁ。


と、そんなこんなであっというまに時間が過ぎてしまい、
庭園を散歩する時間はおろか、
江戸期の写本・刊本をゆっくりみる時間もなくなってしまいました……。残念。 写真は、行く途中で見かけた日向ぼっこする猫。
満足そうにぬくそうな顔をしている。

2009年11月21日土曜日

白山史学会

2009年度 白山史学会大会
日時:2009年11月28日(土)13時30分~
会場:東洋大学白山校舎6号館2階6210教室   

研究報告 13時30分~
染井千佳「平安時代相撲節会における部領使の任命」 
浅松佑介「オスマン帝国対仏派遣使節イルミセキズ・チェレビィの使節行に見る「異文化接触のかたち」」

公開講演 15時30分頃~
谷口房男「『梁職貢図』の中の蛮使図」   
櫻井良樹「支那駐屯軍をめぐる国際関係」 

2009年11月19日木曜日

古典籍展観大入札会見学

平成21年度古典籍展観大入札会に行ってきた。
合計2000点以上の古典籍が所狭しと並んでいて、見ていて飽きない。
しかも手にとってじっくり見ることができるというのがすごい。
つい勢いで『古典籍展観大入札会目録』も購入してしまった。

色々あるなか、特に取り上げたいものが二点。

ひとつは、直江版文選(目録番号672)。
目録の説明によると、慶長12年(1607)刊、古活字版。
高木文庫・安田文庫旧蔵。
直江兼続が京都の要法寺へ依頼して開版。
元の黄土色表紙に紅色原題簽を有する。

直江版を手に取るのはもちろん、見るのもはじめて。
書誌学の知識は全くないけれど、ながめてるだけで面白い。
気になったのが、表紙に文書の裏紙を使用していること。
おそらく、ただの廃棄文書だとは思うけど、
もし、万一、直江兼続が紙を用意してたら、おもしろいのに…と妄想してみる。
でも、中身を確認するのはとてつもなく難しそうだ。

もうひとつ取り上げたいのが、
目録番号1223の安南国書幅(安南国から日本にあてた書状)。
目録には「副都堂福義侯阮粛 日本国国王座下」 光興十四年(天正十九年) 
新出資料 従来知られている、徳川家康宛慶長六年安南書は、
本状の形式・文言を踏襲したものと思われる、とある。

天正十九年は1591年。すなわち秀吉の時代。
かりにこの資料が本物なら、中近世の対外史にとって、
結構重要な資料だと思われる。 中身はうろ覚えだが、
日本国国王と象や贈答品をめぐるやりとりが書かれていた気がする。
そもそも、この日本国国王って誰なのだろうか。
かなり気になる。

2009年11月18日水曜日

歴博フォーラム

歴博フォーラム 第74回 「新春トラの巻」
日程:2010年1月16日(土)
時間:13時00分~17時00分
場所:ヤクルトホール(東京都港区東新橋1-1-19)
定員:530名(先着順)
参加費:無料
主催:国立歴史民俗博物館

プログラム
13:10~13:35  山田慎也「人生とトラ」
13:35~14:00 小池淳一「トラの昔話と芸能」
14:00~14:15 休憩
14:15~14:40  日高薫「トラを描く」
14:40~15:05 大久保純一 「寅年のトラ」
15:05~15:30 岩淵令治「江戸のトラ」
15:30~15:45 休憩
15:45~16:10 高橋一樹「“虎の威を借る”中世武士」
16:10~16:35 上野祥史「中国古代のトラ」
16:35~16:55 質疑応答

申し込み
往復ハガキまたはEメールにて、「1月16日 第74回歴博フォーラム 参加希望」と明記の上、
住所、氏名(ふりがな)、電話番号を書いてお申し込み。
お申し込み・お問い合わせ先
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117国立歴史民俗博物館 
広報サービス室 サービス・普及係


寅年だから、虎特集。
どうせだったらついでに猫特集もやればいいのに。
同じネコ科だし。

2009年11月16日月曜日

国際研討会:中国貨幣歴史再考察

国際研討会“中国貨幣歴史再考察―従多元性和互補性的観点来看” (貨幣論班第16回研究会)
主催:貨幣論班
日時:2009年12月15(火)・16日(水)
会場:東京大学東洋文化研究所大会議室 *来聴自由 
使用言語:中国語

12月15日(火)
9:30~12:00
黒田明伸「再考察中国貨幣歴史―従多元性和互補性的観点来看」
王文成「従銭刀到圜銭:中国春秋戦国時期銅鋳幣的標準化与多様性」
柿沼陽平「晋代貨幣経済的構造与其特色」

13:30~15:00
高聰明「論宋代貨幣不統一問題」
Richard von Glahn 「宋元時期紙幣制度建立和銅銭外流」

15:30~17:00
三宅俊彦「中国的窖蔵銭以及東亜的流通銭幣」
何平「従“短陌”看中国古代貨幣流通的特色—兼与日本的“撰銭”比較」
   
12月16日(水)
9:30~11:00
張瑞威「十六世紀初中国皇帝的礼儀消費与銅銭鋳造的関係」
和文凱「国家,市場与小額貨幣供応:比較視野下的清代銅銭問題」 

11:30~13:00
封越健「清代前期徽商典鋪的典当制度与経営管理—以〈文謨典條約〉為中心」
Hans Ulrich Vogel 「中国的銭之弊(1644-1850)—内含1794年四川綦江私鋳個案研究」

14:30~16:00 
総合討論  評論人:Christian Lamouroux
 

2009年11月15日日曜日

気合

さー、これからがんばるぞ!
やっぱ、休もっ。

2009年11月13日金曜日

白東史学会大会

白東史学会大会
日時:12月5日(土)14:00~17:20
場所:中央大学駿河台記念会館330号室

発表題目   
14:00~15:00 道上峰史「明朝の西南経営ー苗疆辺牆の成立とその背景ー」 
15:10~16:10 西村陽子「衛星写真を用いたスタイン地図の精度分析と考古調査への応用-Digital Excavationの試みー」(仮題)
16:20~17:20 石川厳「チベットにおける葬儀の仏教化-敦煌出土チベット語文献P.T.239表の分析を中心としてー」

宋代食羊文化と周辺国家

塩卓悟「宋代食羊文化と周辺国家」(宋代史研究会編『『宋代中国』の相対化』汲古書院、2009年7月)

北宋において大量の羊肉が消費されていた状況を確認したのち、
遼や西夏からの羊の輸入が、羊肉供給体制の一部を担っていたことを示し、
北宋と遼・西夏の経済関係に相互補完的側面もあったことを明らかにする。
不勉強ゆえ、北宋で食羊文化が発展していたこと自体、知らなかった。
食羊といった文化面から、国際関係・経済史に踏み込む研究手法が
とても面白いし、参考になる。

2009年11月12日木曜日

日本中国考古学会2009年度大会

日本中国考古学会・2009年度大会
日時:2009年11月21日(土)・22日(日)
場所:筑波大学春日キャンパス情報メディアユニオン2階メディアホール(大会・総会会場)
    筑波大学春日キャンパス情報メディアユニオン3階(ポスターセッション)
参加費:大会資料費 1000円

21日(土)一般報告
10時40分~11時20分:内田宏美「漢長安城未央宮出土の骨簽に関する一考察」
11時20分~12時00分:江介也「六朝期画像塼の編年と地域性について―紋様塼を中心に―」
13時00分~13時40分:徳留大輔「中国初期青銅時代の社会像のとらえ方に関する学説史的整理」
13時40分~14時20分:小林仁「初唐陶俑様式試論」
14時50分~15時30分:廣川守・今津節生・鳥越俊行・河野一隆・市元塁「X線CTスキャナを活用した殷周青銅器の構造解析」
15時30分~16時10分:徐光輝「高句麗壁画の浄土変について」
16時10分~16時50分:ポスターセッション
17時00分~17時30分:総会

22日(日)シンポジウム「装飾・図像へのまなざし」
10時40分~11時40分:記念講演 小南一郎「図像配置の意味―漢代墓葬画像を例として」
12時40分~13時10分:今村佳子「先史時代の図像とその解釈」
13時10分~13時40分:内田純子「殷周青銅器の装飾研究」
13時40分~14時10分:上野祥史「漢代図像資料と検討視角」
14時30分~15時00分:吉開将人「ドンソン系銅盂と漢系銅洗」
15時00分~15時30分:八木春生「隋時代菩薩造像にみられる装飾について」
15時40分~16時40分:討論会

2009年11月10日火曜日

卑弥呼と台与

仁藤敦史『卑弥呼と台与―倭国の女王たち』(山川出版社、2009年10月)

日本史リブレット人の001番。
邪馬台国畿内説の立場から、卑弥呼の王権について論じている。
倭人・卑弥呼と後漢・公孫氏・魏との外交関係を検討し、
特に公孫氏との関係を強く指摘。
また、鬼道と鏡、鉄資源の流通などから、
卑弥呼の王権や大人による「共立」背景について論じている。
そして、卑弥呼・台与の時代には、
王権を安定的に継承させるシステムが完成していなかったとする。

邪馬台国・卑弥呼については、限られた資料をもとに、
様々な議論が次々に提出されていて、終わる気配が無い。
手を出すまいと改めて固く心に誓った。

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11月13日追記
数日前に、纒向遺跡から建築(宮殿?)遺構が発見されたという報道があった。
邪馬台国畿内説への追い風になるのは間違いないが、
それでも完全に決まったわけではないのが、難しいところ。

2009年11月8日日曜日

五代の「中国」と平王

山崎覚士「五代の「中国」と平王」(宋代史研究会編『『宋代中国』の相対化』汲古書院、2009年7月)

五代期に特有の在り方を示す東・西・南・北平王に着目。
四平王は、華北諸政権の実効支配領域の境界付近勢力(節度使)に付与され、
「中国」の範囲を示した指標的官職であるとする。
そして、宋によって「天下」統一が果たされ、歴史的役割を終えたとする。
また、四平王のうち、南平王(荊南)は、現在では十国のうちの一つに
数えられているが、 五代・北宋初には十国に数えられておらず、
欧陽脩撰『五代史記』の成立によって、十国と規定されるようになったことを指摘。
宋朝の生み出した「五代十国」史観の相対化の必要性を述べる。

大変、興味深い論考。宋朝の前代史観が現在の歴史観をも規定していることは、
平田陽一郎「唐代兵制=府兵制の概念成立をめぐって―唐・李繁『鄴侯家伝』の史料的性格と位置づけを中心に―」(『史滴』147、2002年9月)も指摘している。
宋代以前を研究する上でも、宋代の研究が欠かせないことを改めて実感。

続々日宋貿易の研究

新編森克己著作集編集委員会編『新編森克己著作集3 続々日宋貿易の研究』(勉誠出版、2009年10月)

新編森克己著作集も3冊目。
次の『著作集4 増補日宋文化交流の諸問題』こそが本命なのだが、
一応、『著作集2 続日宋貿易』と3も読んでおくことにする。
なお、『著作集1 新訂日宋貿易の研究』は買いそびれたので、
近いうちに購入する予定。

で、感想なのだけど、海域アジア史について素人同然の目からみても、
なんだかとても古臭い。著作集2ではそんなに感じなかったんだけどなぁ……。
村井章介氏の解説が、問題点を端的に指摘している。

2009年11月7日土曜日

上代文学会秋季大会

上代文学会秋季大会シンポジウム
日時:11月14日(土)午後2時~5時30分
会場:日本女子大学 香雪館4階401教室

テーマ:仏教と上代文学
曾根正人「上代「仏教」の実態と研究者の「仏教」」
北條勝貴「神身離脱の内的世界―救済論としての神仏習合―」
増尾伸一郎「上代文学と東アジアの漢訳仏典」
司会 瀬間正之

大遣唐使展

平城遷都1300年記念 大遣唐使展
日程:2010年4月3日(土)~6月20日(日)
場所:奈良国立博物館
開館時間:午前9時30分~午後5時 *4月30日(金)より毎週金曜日は午後7時まで。
休館日:毎週月曜日 *5月3日(月・祝)は開館
観覧料金:一般1400円 高校・大学生1000円 小中学生500円

展示品(一部)
「国宝 聖観音菩薩立像」(飛鳥~奈良時代、薬師寺蔵)
「観音菩薩立像」(唐・神龍2年(706)、ペンシルバニア大学博物館蔵)
「国宝 刺繍釈迦如来説法図」(唐or飛鳥~奈良時代、奈良国立博物館蔵)
「国宝 錫杖頭(伝空海請来)」(唐代、善通寺蔵)
「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代、ボストン美術館蔵)
「国宝 伝教大師将来目録」(唐・貞元21年(805)、延暦寺蔵)

2009年11月6日金曜日

京都の猫

京都の猫は、なんとなく雅な感じ。
というのは、京都という言葉の雰囲気に惑わされているだけだろう。なんか見られてるなぁ。

戒律文化研究会

戒律文化研究会 第八回学術大会 シンポジウム・見学会
日時:11月8日(日)午前9時~午後5時頃
場所:唐招提寺(奈良市五条町)

午前:学術大会個別研究報告 9時受付 9時20分開会
西山明彦「道宣の著作に見られる戒律観」
船山徹「梵網経下巻先行説の再検討」
稲本泰生「鄮県阿育王塔考―その形態の来源と本生図の意味―」
真田尊光「金堂建立後の唐招提寺」
星山晋也「唐招提寺金堂本尊の台座・光背について」
松尾剛次「唐招提寺證玄五輪塔と西琳寺惣持五輪塔をめぐって」

午後:唐招提寺金堂落慶記念シンポジウム「金堂大修理の成果から」 13時30分開始
吉川聡「唐招提寺境内の変遷」
田中泉「金堂修理の建築史上の成果と知見」
米川裕治「金堂修理の考古学上の成果と知見」
奥健夫「金堂内の仏像修理の成果と知見」

境内見学会 15時30分~17時

参加費:会員無料、非会員1600円(拝観料600円+資料代1000円)
事前に戒律文化研究会事務局まで参加申し込み。

2009年10月31日土曜日

東アジア世界史研究センターシンポジウム

平成21年度 東アジア世界史研究センターシンポジウム
全体テーマ:古代東アジアの交流と留学生
日時:11月21日(土)10:00~17:00 、11月22日(日)10:00~17:30
場所:専修大学神田校舎1号館3階 302教室
募集人員:各日200名(申込者多数の場合は抽選とさせていただきます)

講演
11月21日
10:00~10:20 荒木敏夫「趣旨説明」
10:20~11:20 鈴木靖民「遣唐使研究と東アジア論」
11:30~12:30 濱田耕策「新羅の遣唐使と留学生」
13:30~14:30 酒寄雅志「渤海の遣唐使」
14:40~15:40 森公章「遣隋・遣唐留学者とその役割」
16:00~17:00 討論
司会・進行 荒木敏夫・飯尾秀幸
 
11月22日
10:00~10:20 矢野建一「趣旨説明」
10:20~11:20 王維坤「7・8世紀の長安の考古学」
11:30~12:30 李浩「新出土文献から見た唐代の中外文化交流」
13:30~14:30 土屋昌明「唐の道教をめぐる朝鮮と遣唐使」
14:40~15:40 田島公「遣隋使・遣唐使のもたらしたもの―様々な知識体系の将来―」
16:00~17:30 討論・総括討論
司会・進行 松原朗・土生田純之
 
往復はがきか電子メールで、
専修大学社会知性開発研究センター事務課に申し込み。
11月12日(木)必着

秋の猫


ノラなのにずいぶんふくよか。
リラックスしてるようです。

2009年10月29日木曜日

静嘉堂文庫 筆墨の美―水墨画展

静嘉堂文庫 筆墨の美―水墨画展 〔第2部〕山水・人物・花鳥
10月24日(土)~12月20日(日) 
前期展示:10月24日(土)~11月23日(月・祝) 
後期展示:11月26日(木)~12月20日(日) 
休館日 毎週月曜日(11月23日は開館)、11月24日(火)・25日(水) 
開館時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料 一般800円 大高生500円(一般・大高生は20名以上団体割引)

シンポジウム「筆墨―水墨画の本質に迫る―」
12月6日(日)午後1時30分~ (講堂にて 先着150名)
基調発表・コメンテーター 
小林忠「水墨画と墨絵」
発表・パネラー 
板倉聖哲「南宋院体山水画における筆と墨」
竹浪遠「明代水墨山水画の写実性と写意性」
小林優子「牧谿筆羅漢図と蜀山図」 
杉本欣久「渡辺崋山の技―筆と墨―」

列品解説 
10月31日(土)・11月28日(土) 午前11時~ 
11月19日(木)・12月17日(木) 午後2時~

講演会:はじめての漢籍

講演会:はじめての漢籍
日時:11月11日(水)
場所:東京大学総合図書館3階・大会議室

10:30 羽田正「開会挨拶」
10:45~11:45 大木康「漢籍とは?」
13:15~14:25 橋本秀美「初心者向け四部分類概説」
14:35~15:35 石川洋「東京大学文学部漢籍コーナーの漢籍について」
15:45~16:45 小寺敦「東京大学東洋文化研究所の漢籍について」

参加申し込み
参加を希望される方は下記の事項を明記し、メール(またはFAX、はがき)で申し込み。
・「はじめての漢籍申し込み」・氏名・所属・連絡先(メールアドレス、FAX番号、住所等)
定員(90名)に達し次第、受付終了。
<申し込み・問い合わせ先>東京大学東洋文化研究所図書室

2009年10月25日日曜日

うとうとのつもりが

うとうとするつもりで横になったら、
いつのまにか2時間も熟睡してしまった……。
寒い日の布団は抜け出すのが大変だ。

日本道教学会60周年記念大会

日本道教学会60周年記念大会

11月6日(金)60周年記念行事13:00~14:30
会場:東京大学本郷キャンパス・山上会館大会議室
公開座談会「日本道教学会の60年」
語り手:秋月觀暎・神楽岡昌俊・坂出祥伸・野口鐡郎・福井文雅・山田利明
司会:砂山稔・増尾伸一郎

11月7日(土)研究発表会
会場:東京大学本郷キャンパス・法文1号館25番教室

午前の部 10:00~11:50
小武海櫻子「同善社系知識人と慈善事業―教育を中心に―」
井ノ口哲也「後漢時代における『老子』思想の展開」
石井公成「聖徳太子伝承中のいわゆる「道教的」要素」

午後の部 13:00~15:30
水口拓寿「術数学の地位と術数文献の価値―四庫全書の子部術数類をめぐって―」
奈良行博「聖地の構造―洞天・道観・道壇から―」
小南一郎「帝から天へ―天の観念の形成―」
鄭正浩「華人社会における祭祀儀礼の形態とその象徴的意義―台湾とシンガポールの中元普度儀礼を事例として―」

総会 15:40~17:00
懇親会 17:30~19:30

中国古典社會における佛教の諸相

西脇常記『中国古典社會における佛教の諸相』(知泉書館、2009年10月)

第一部:佛教史書について
第二部:佛教徒・佛教信者
第三部:中央アジア出土の漢語文献

現在、第一部読了。
一「宗鑑『釈門正統』以前―天台宗史とその成立(一)」
二「宗鑑『釈門正統』について―天台宗史とその成立(二)」
三「読『佛祖統紀』」
四「『佛祖統紀』の作者、志磐の考え」
五「『佛祖統紀』テキストの変遷」
六「宋代における佛教史書」

天台宗史、『佛祖統紀』を中心に宋代の仏教史書について論じている。
『佛祖統紀』以前の『釈門正統』などが、天台宗史に留まっているのに対し、
『佛祖統紀』には、天台宗史であると同時に、中国宗教史としての側面も見られるとする。
また、『佛祖統紀』の執筆・刊行には、宋朝の現実政治と結びつくことで、
仏教の拡大を図る意思表示が込められていたとする。
宋代の仏教史書については、これまであまり気にしてこなかったので、
大変興味深かった。

第二部は「佛教徒の遺言」と仏教信者である楊億について論じている。
第三部は世界各地のトルファン文書について論じている。
近いうちに全部読み終えたい。

2009年10月24日土曜日

正倉院ガラスは何を語るか

由水常雄『正倉院ガラスは何を語るか―白琉璃碗に古代世界が見える―』(中公新書、2009年10月)

現在、正倉院に収蔵されている六つのガラス器の由来、製造法を探求。
六つのうち、東大寺大仏開眼のさいに奉献されたものは、わずかに一つのみで、
江戸、さらには明治期に収められたものもあることを指摘。
また、ガラス器の再現を通じ、製造法を明らかにし、
考古学の成果と合わせ、器の制作年代・制作場所を特定している。
正倉院への収蔵過程が結局よくわからないことが残念。
あと、伝天皇陵を天皇陵と断定し、論を展開している点は疑問が残る。

2009年10月22日木曜日

日韓訓読シンポジウム

日韓訓読シンポジウム
日時:2009年11月21日(土)13:00~18:00
会場:麗澤大学 廣池千九郎記念講堂 2階
参加費:無料
定員:100名 (先着順)

【プログラム】
開会挨拶:杉浦滋子 ・梅田博之
趣旨説明:藤本幸夫
基調講演:小林芳規「日本の訓点・訓読の源と古代韓国語との関係」

講演
月本雅幸「日本における仏典の訓点の実態と特質」
小助川貞次「東アジア学術交流史から見た漢籍訓読の問題」
佐藤進「江戸時代の訓読について」
李承宰「角筆口訣の解読方法と実際」
呉美寧「韓国口訣資料及び口訣研究の現況について」
司会:千葉庄寿
総合討論 (司会:藤本幸夫,千葉庄寿)

【申込方法】
FAXまたはE-mailで申込
「日・韓訓読シンポジウム参加希望」・氏名・連絡先住所・電話番号を記入の上,
下記までお申込みください。お電話での申込受付はしておりません。
なお,参加の可否については参加証の発送をもってご連絡させていただきます。

【申込・問い合わせ先】
麗澤大学 プラザ事務課 研究支援担当 TEL:04-7173-3761
FAX:04-7173-3767
E-mail:RR-Center@reitaku-u.ac.jp

東方学会第59回全国会員総会・シンポジウムⅡ

(財)東方学会第59回全国会員総会・シンポジウムⅡ
日時:11月6日(金)
会場:日本教育会館8階会議室

シンポジウムⅡ「六朝・隋唐文学に見るアジア―芸能・思想・物語の交錯」
1:30~1:40 責任者挨拶:戸倉英美
1:40~2:10 福田素子「中国鬼話・討債鬼故事の起源と伝播―漢訳仏典から日韓昔話まで―」
2:10~2:40 岡田充博「六朝唐代の小説に見える西域起源の説話について」
2:40~3:20 葛暁音「従日本呉楽“師子”和唐楽“蘇莫者”看西域楽的東渡和演変」
3:20~3:40 休憩
3:40~4:10 戸倉英美「『青海波』―李白と源氏が愛した舞曲―」
4:10~4:30 コメント:岩本篤志
4:30~4:50 コメント:礪波護
4:50~5:10 討論

黄正建氏特別公開講義

黄正建氏特別公開講義
日時:2009年10月24日(土),午後2時~5時
会場:明治大学駿河台校舎,リバティータワー3階1032教室

プログラム:
吉村武彦「はじめに―日本における律令研究―」
黄正建「唐宋史における天聖令」
服部一隆「日本における天聖令研究の現状」

主催:平成20年度文部科学省採択【組織的な大学院教育改革推進プログラム】「複眼的日本古代学研究の人材育成プログラム」(明治大学)

唐代史研究会秋期シンポジウム

唐代史研究会2009年度秋期シンポジウム
日時:2009年11月4日(水),午後1時より
会場:京大会館211号室

報告:
王小甫「中国中古的族群凝聚―以唐代為中心」
氣賀澤保規「中日学者中国古代史論壇(北京)」
金子修一「中国唐史学会第十届年会第二次会議曁唐史国際学術研討会(重慶)」
江川式部「第九届唐代文化国際学術研討会(台北)」

2009年10月20日火曜日

テンション

家に帰ったら、テンションあがる出来事が待っていた。
久しぶりに気合いが入った。
明日から、またがんばろう。
……とはいえ、これほどテンションがあがったわけではない。

宋代史談話会

第127回 宋代史談話会
日時:11月14日(土)午後2時~5時
場所:大阪市立大学法学部棟11F711C演習室

報告者
松本保宣(立命館大学文学部教授)仮題「唐代の上奏過程と『中書門下体制』」
安田真穂(関西外国語大學国際言語学部准教授)「中国文言小説にあらわれる嫉妬~その怪異性と愛情表現~」
※なお同日同所にて法制史料講読会(『名公書判清明集』講読会)も10:30amより開催。

2009年10月18日日曜日

あれよあれよという間に


今日は久しぶりに雑務を片付ける気になり、
午前中、あれこれ処理し、ついでに読みかけの史料も読みはじめた。
ところが、昼食を食べ終えたとたん、やるきがどこかに去ってしまった。
ちゃんと戻ってきてくれるのだろうか。どうも期待薄な気がする。

朝鮮史研究会46回大会

遅くなってしまったけれど、面白そうなので一応書き込みます。

朝鮮史研究会46回大会 創立50周年記念大会
統一テーマ「戦後日本の朝鮮史学を振り返る」

日時:2009年10月17日(土)・18日(日)
会場:東京経済大学・国分寺キャンパス・6号館3階F308教室
参加費 一般1,500円 学生1,000円(2日間)

【第1日】 10月17日(土)
講演 13:00~
吉野誠「戦後日本における朝鮮史研究と研究会の創設」
宮田節子「朝鮮史研究会のあゆみ -創初から1970年まで」
総会 16:00~ (会員のみ)
懇親会 18:00~ 於・6号館7階中会議室3  懇親会費一般4,000円 学生3,000円

【第2日】 10月18日(日)
報告 10:00~15:30
井上直樹「戦後日本の朝鮮古代史研究と末松保和・旗田巍」
長森美信「戦後日本における朝鮮中近世史研究」
洪宗郁「朝鮮近代史研究における「アジア的特質」の問題-梶村・安秉〓〔王+台〕論争を中心に」
小林知子「在日朝鮮人と同時代史としての朝鮮「現代史」研究-解放・分断下における「新しい朝鮮史への要求」を辿りながら」  
総合討論  15:30~17:30

内陸アジア史学会

内陸アジア史学会2009年度大会

日程:2009年11月14日(土)
会場:関西大学千里山キャンパス第1学舎1号館3階A301教室

研究発表(午後1時~2時40分):
赤木崇敏「十世紀敦煌の王統問題」
野田仁「対清外交文書に見えるカザフの爵位」

公開講演(午後3時~5時):
村岡倫「日本モンゴル共同調査ビチェース・プロジェクトの十五年」
川口琢司「ティムールの季節移動と首都建設」

2009年10月17日土曜日

オホーツクの古代史

菊池俊彦『オホーツクの古代史』(平凡社新書、2009年10月)

貞観14(640)年、北の彼方から長安に入貢した流鬼国、
そしてさらにその北に存在したとされる夜叉国。
二国の所在地はどこなのか。彼らは一体どのような人々なのか。
オホーツク海の古代文化に焦点を当てた初の概説書(多分)。
前提知識がなかったが、研究史・考古学の成果が
わかりやすく解説してあり、面白かった。
セイウチの牙を通じて環オホーツク海交易の姿が浮かび上がってくる。


なお、今週の「天体戦士サンレッド」(ヤングガンガン連載)に
オホーツク海出身のセイウチ型怪人が登場していたが、
これは単なる偶然だろう。

2009年10月16日金曜日

九州史学会大会東洋史部会

平成21年度九州史学会東洋史部会 
日程:12月13日(日)
場所:九州大学箱崎キャンパス法文系講義棟204番教室

9:00-11:30 
植松慎悟「漢帝国の統治構造と統治思想の展開―刺史・州牧の検討を中心として―」
小野裕子「博多周辺出土の墨書陶磁器について」
奥野新太郎「劉辰翁の評点と科挙」
白井康太「明末東南沿海の海商と海寇―泉州・漳州・潮州地域を中心に―」
福田愛子「南京国民政府期における言論の自由に関する一考察」

12:40-14:40 
安藤太郎「秦漢時代における郷里社会の変質と地方統治制度の推移―地方行政史上における武帝・昭帝期の再検討―」
佐藤賢「鮮卑拓跋氏の南下伝説と神獣」
箕浦永子「清代における宗族制度下の土地建物所有―蘇州洞庭東山王氏を中心として―」
土居智典「清末予備立憲時期における地方財政機関の改編」

15:00-16:30 
滝野正二郎「清代後期、四川省南部県における場市の設立と県衙門―『南部県档案』を材料として―」
益尾知佐子「中国「改革開放」の国際的契機」
川本芳昭「稲荷山古墳鉄剣銘文と漢・北魏・元の「内朝」」

史学会大会東洋史部会

史学会第107回大会東洋史部会
日時:2009年11月8日(日)午前9時~12時・午後1時~5時
会場:東京大学本郷キャンパス,法文1号館113番教室

水盛涼一「光緒年間初葉の税制改革」
小林亮介「清末の領域国家形成と「西康省」」
森川裕貴「五四前後における高一涵の思想形成」
渋谷由紀「「極東の真珠」の解体と戦後移民」
辻明日香「一四世紀エジプトにおけるコプト大迫害再考」
阿部尚史「一九世紀後半イラン西北地方有力者の二通の遺産目録」
【昼休】
石川博樹「北部エチオピアにおけるエンセーテ利用についての史的考察」
荒木圭子「第一次世界大戦後におけるアフリカ正教会の活動」
渡邉将智「政治空間よりみた後漢政治制度」
照内崇仁「後漢の私塾についての若干の考察」
北村一仁「仇池地区と仇池諸政権」
向 正樹「変貌する大食商人」
五味知子「明末清初の「姦通誣告」と江南社会」
角谷祐一「康煕朝後半期の「内務府商人」と中央行政」

東洋史研究会

東洋史研究会2009年度大会
日時:2009年11月3日(火),午前9時~
会場:京都大学文学部新館第3会議室(2階)
参加費:500円(資料・要旨代を含む)


[午前の部]
保科季子「秦漢時代における名数の移転」
橘  誠「一九一三年の露中宣言とモンゴルの政治的地位」
川合安「南朝の新興貴族」
岡村秀典「前漢鏡とその銘文」

[午後の部]
仁子寿晴「初期イスラーム哲学における二つの形而上学―哲学構築と発出論の論理構成―」
春田晴郎「アルシャク朝パルティア政治史上の諸問題」
小泉順子「シャム近代化論の再考―チャクリー改革期における対外関係史の視点から―」
臼井佐知子「中国清代社会における各構成体機能の地域比較―訴訟関係文書を資料として―」
小林善文「現代中国における陶行知教育思想の継承と展開」
森安孝夫「中央アジア出土古ウイグル手紙文書の書式研究・序説」

永青文庫に行く

神田川沿いで猫たちが日向ぼっこをしている中、
永青文庫の秋季展「黄庭堅・伏波神祠詩巻」に行ってきた。
ひとけもなく、ひっそりとした永青文庫。ゆっくり参観できた。
黄庭堅の伏波神祠詩巻がメイン。書道はよくわからないが、
のびやかで自由な書風は確かに面白い。高村光太郎の批評がまたいい。
所有印を見ると、明代のコレクター項元汴が20か所ほど印を押している。
それは押しすぎじゃないかなぁ。 

敦煌本『文選注』も展示していたので、じっくり観察。
他には三体石経の尚書部分の拓本や、
元・趙孟頫筆「漢汲黯伝」(『史記』巻120・汲黯伝)、
明・清の書、袁世凱の白玉印なども展示してあった。

図録はないが、『季刊 永青文庫』No.68が、特集号となっている。
見本を眺めていたら、堀江敏幸のエッセイ(「坂を見上げて」)が掲載されていた。
まさか永青文庫で堀江敏幸の文章に出会えるとは。速買い決定。他の記事もなかなかおもしろい。

ベトナム黎鄭政権の官僚機構

上田新也「ベトナム黎鄭政権の官僚機構―18世紀の鄭王府と差遣―」(『東洋学報』91-2、2009年9月)

18世紀のベトナム黎朝における権力二重構造(黎朝皇帝と鄭王)について分析。
黎朝前期の官僚体系を維持しつつ、鄭王府系組織が政治の実権を掌握。
黎朝系組織の形骸化が進行したのにともない、
黎朝の官職を帯びつつ、鄭王府へ差遣されるようになり、
黎朝の官職は散官化しつつあった。
しかし、王朝の正統性はあくまで黎朝に求められたため、
黎朝系官職は廃止されず、 差遣が活用され続けた。
「おわりに」では、黎鄭政権を日本の幕藩体制と比較する視座を提供している。
権力の二重構造は時代・地域が異なっても存在する問題であり、
とても興味深く、おおいに参考になった。

唐代詔勅文中の則天武后の評価について

金子修一「唐代詔勅文中の則天武后の評価について」(『東洋史研究』68-2、2009年9月)

唐代の詔勅中の歴代唐朝皇帝や則天武后の記述について検討。
中宗・睿宗朝までは、則天武后に対する皇帝の称号がなくなるものの、
武后に言及して、皇帝クラスとして扱い続けたが、
玄宗朝以降、武后に言及する詔勅は見られず、
則天武后の存在を否定する方向が明瞭となった。
儀礼・皇帝祭祀の実施に関わる詔勅・大赦文などを分析し、
唐朝の歴史意識や政治状況の解明に迫った論文。とても興味深く、参考になる。
官僚層の則天武后観にも変化はあったのだろうか。

三燕文化

飛鳥資料館では、今日10月16日より、
平成21年度秋期特別展「北方騎馬民族のかがやき 三燕文化の考古新発見」を開催。
日時:10月16日(金)~11月29日(日)*期間中無休
場所:飛鳥資料館 特別展示室時間:午前9時~午後4時半(入館は4時まで)
主催:奈良文化財研究所飛鳥資料館 遼寧省文物局後援:朝日新聞社
料金:一般260円(170円) 大学生130円(60円) 高校生以下無料 ( )は20名以上の団体

展示品:遼寧省出土三燕文化考古資料84点4C初頭から5C中葉まで
中国遼寧省西部を中心に勢力を誇った騎馬民族国家の3つの「燕」国の文化について、
日中共同研究の成果を紹介。
三燕文化考古資料やその影響を受けた日本の出土品もあわせて展示。

域外漢籍シンポジウム

文科省特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」企画特別シンポジウム    
東アジア漢籍交流シンポジウム in 京都―「域外漢籍」の研究価値を考える― 
主 催:文部科学省特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」文化交流部門調整班&「日本における中国古典文学の伝播とその展開に関する研究」班

日時:2009年11月14日(土曜日) 9:30開場 参加費無料
場所:同志社女子大学「寒梅館」6階大会議室

〈第1部 「域外漢籍研究」の定義とその成果〉
10:00~10:20 張伯偉(南京大学〔域外漢籍研究所長〕):「作為方法的漢文化圏」
10:20~10:40 金 程宇(南京大学):「海印寺雑板本『唐賢詩範』初探」

〈第2部 日本から見た域外漢籍研究〉
11:00~11:20 蔡 毅(南山大学):「補遺輯佚、索隠鈎沈―東亜漢籍研究的「互補」意義」
11:20~11:30 陳 チュウ[羽中](九州大学専門研究員):「『集注文選』の成立過程について」
13:00~13:20 副島 一郎(同志社大学):「中国文章論の受容と和文規範意識の形成」
13:20~13:40 陳捷(国文学研究資料館):「羅振玉所介紹的日本漢籍与其研究」

〈第3部 中国古代文学研究と域外漢籍〉
14:00~14:20 張健(香港中山大学):「日本詩文評類漢籍与中国文学批評研究」
14:20~14:40 胡 可先(浙江大学):「新出土唐代詩人墓誌研究」
14:40~15:00 王 水照(復旦大学):「中国宋代文学研究的現状与展望」

〈第4部 総合討論〉15:20~17:00 
司会 静永 健(九州大学)
報告言語:漢語、または日本語。
参加申し込み:10月31日(土)までに、下記の事務局に葉書でご連絡下さい。 
※閉会後、懇親会も予定しています(有料)
シンポジウム準備局(参加申し込み先)
〒812-8581 九州大学文学部中国文学研究室「域外漢籍シンポジウム」事務局宛

古典籍展観大入札会

平成21年度古典籍展観大入札会。
一般展観は、11月13日(金)10:00~18:00、11月14日(土)10:00~16:30。
会場は東京古書会館。

出品目録抄より漢籍・経典などを抜き出すと以下の通り。
●論語義疏十巻 梁・皇侃疏 室町末期写…五冊
●光明皇后御願経 中阿含経巻第十一 天平十二年五月一日記…一巻
●二月堂焼経 天平時代写…一幅
●絵因果経切 平安初期 報恩院本系 経文八行 彩色画入…一紙
●薬師寺魚養経 大般若波羅密多経巻第五百七十四 奈良時代写…一巻
●大般若波羅密多経巻第四百三 足利尊氏願経…一帖
●胎蔵界金剛界 灌頂作法次第 平安時代頼豪、安元二年明雲筆…二冊一巻
●奈良絵巻二十四孝 江戸前期写 金泥彩色…二巻
●武仙 中国歴代名将画巻 三十六名将図 極彩色絵巻…一巻
●韻府群玉 南北朝頃刊 五山版 三井家旧蔵…十冊
●直江版 文選 慶長十二年刊 古活字版 高木文庫・安田文庫旧蔵…三一冊
●百万塔並自心院陀羅尼 天平神護 景雲頃製…一基一巻
●二十四孝関係コレクション 寛永頃版二十四孝、対類二十四孝等約三十種…一括
●宝篋印陀羅尼経 宋太祖開宝八年刊 重要美術品認定…一巻
●広韻第一巻 元版 零巻…一冊
●宣和書画譜 嘉靖十九年序刊 宝玲文庫旧蔵…八冊
●山海経釈義 万暦四十七年跋刊 図七十五葉…八冊
●鄭道昭全碑 銀山荘旧蔵…六帖

杏雨書屋展示会

杏雨書屋では、来月より第53回特別展示会
「和漢の本草書―中世以前の写本と刊本―」を開催。
会期は、2009年11月9日(月)~11月13日(金)の午前10時~午後4時
11月14日(土)は午前10時~午後5時。
会場は、武田科学振興財団 杏雨書屋,2階展示室。

主な展示品は以下の通り。
龍谷大学図書館所蔵敦煌本『本草集注』
杏雨書屋所蔵敦煌秘笈『新修本草』
弘治本『本草品彙精要』など。


関係講演会:杏雨書屋第24回研究講演会
日時:2009年11月14日(土),午後1時~3時
会場:大阪リーガロイヤルホテル,2階「山楽の間」

岩本篤志(新潟大学)「敦煌と『新修本草』―なぜそこにあったのか―」
上山大峻(龍谷大学名誉教授)「敦煌本『本草集注』について」

申込み:電話,ファックス,葉書,Eメールなどで,以下に(11月12日まで)
電話:06-6300-6815 ファックス:06-6300-6034
葉書:532-8686大阪市淀川区十三本町2-17-85,武田科学振興財団 杏雨書屋

2009年10月15日木曜日

心象風景

やる気が湧いてきません……。

2009年10月14日水曜日

書道博物館の展覧会

書道博物館では、10月6日(火)から12月23日(水)まで、
中村不折コレクション 「顔真卿特集」を開催中。
30点ほどの顔真卿の書を展示している。

永青文庫の秋期展

永青文庫では、現在秋季展示の
「黄庭堅・伏波神祠詩巻~中国大書家の気に触れる~」を開催中。
期間は9月19日(土)~12月27日(日)。

主な展示品は以下の通り。
重要文化財 黄庭堅筆「伏波神祠詩巻」北宋時代・建中靖国元年(1101)
黄庭堅書「幽蘭賦 拓本」北宋時代(11~12世紀)
「敦煌本文選注」唐時代(7~8世紀)など。

五島美術館の次回展覧会

五島美術館では、10月24日(土曜)から11月29日(日曜)まで
「大東急記念文庫創立60周年記念特別展―伝えゆく典籍の至宝―」を開催。

奈良~江戸時代にかけての国宝・重要文化財30余点を
含む書物や絵画の名品約150点を展覧。
漢籍には、『史記』孝景本紀第十一(1073年写・国宝)や
『白氏文集』(鎌倉時代写・重要文化財)などがあるらしい。

講演会は以下の通り
10月31日(土)「文庫で出会った巨星たち」 岡崎久司氏(早稲田大学客員教授)
11月3日(祝)「書肆丹波屋理兵衛の生涯 出陳書『遊子方言』に因んで」 
中野三敏氏(九州大学名誉教授)
11月22日(日)「延慶本平家物語の世界」 佐伯真一氏(青山学院大学教授)

各日午後2時より(開場・受付は午後1時)於五島美術館別館講堂 
当日入館者聴講無料。椅子席100名先着順。午後1時より聴講整理券を発行。

幽霊と星空

先週はずっと、古本屋で購入した、
澤田瑞穂『修訂 中国の呪法』(平河出版社、1990年)
澤田瑞穂『修訂 鬼趣談義』(平河出版社、1990年)
澤田瑞穂『修訂 地獄変』(平河出版社、1991年)
を読んでいた。

中国の幽霊や地獄は、とっても人間臭い。
なんとなく乾いている感じ。
京都にいったばかりの友人が、
昨日、偶然にも子育て飴と小野篁の話をした。
日本が舞台になると、なんだかしっとりしていて薄気味悪い。


今日は、
福島久雄『孔子の見た星空―古典詩文の星を読む』(大修館書店、1997年)
を読み終えた。
歳差や暦などの関係で、現在の星空と中国史上の人物が見た星空が
異なることに注意し、 天体関係の漢詩文を再解釈している。
「北辰」が「北極星」ではないという指摘に目から鱗が落ちた。
天体関係の文章を解釈する際には注意していかないとなぁ。

2009年10月7日水曜日

橋と異人

相田洋『橋と異人―境界の中国中世史―』(研文出版、2009年9月)


『異人と市』に続く境界もの。
宿屋・茶館・橋といった境界領域、
無頼・侠女・用心棒といった異人(境界的人間)を取り上げる。
特に宿屋と無頼が印象深い。というより恐ろしい。
境界って何が起きても不思議じゃないんだなぁ。

2009年10月6日火曜日

中国の猫


中国河南省安陽県にて撮影

地方都市の猫はなんだか貧相。

2009年10月4日日曜日

論語

橋本秀美『『論語』―心の鏡』(岩波書店、2009年9月)

後漢の鄭玄・曹魏の何晏・梁の皇侃・南宋の朱熹など、
様々な時代の『論語』解釈を通じて読む『論語』。
『論語』の真意を特定することの困難さを述べ、
各時代でどのように読まれたかが重要であるとする。
おおいに参考になり、大変おもしろかった。
『論語』などの古典を諸史料の語句の出典として示す際には、
注意しなければいけないと自戒。

宜しくお願いします


これから、ちょくちょく更新していきたいと思います。