2010年8月28日土曜日

漢文と東アジア

金文京『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書、2010年8月)

日本のみならず、朝鮮や中国周辺諸民族の訓読現象について紹介し、
東アジアを、「漢字」文化圏ではなく、「漢文」文化圏として
捉えなおすことを提唱している。

第一章では、日本の訓読について通史的に述べ、
漢訳仏典が訓読のヒントになった可能性を指摘している。
第二章では、朝鮮半島の訓読について、かなり詳細に紹介し、
近年明らかになってきた朝鮮訓読と日本訓読の関係性を論じている。
また、契丹やウイグル、ヴェトナムの訓読現象を紹介し、
さらには現代中国語における訓読現象にも言及している。
第三章は変体漢文を取り上げている。

日本以外の地域の訓読現象を詳細に紹介していて興味深い。
契丹語まじりの漢詩は、はじめて見た。
また、新羅の変体漢文に言及する際に、
「中国南北朝時代の北朝系の漢文」との類似性を指摘している(198頁)。
蛇足ながら、注に引かれている小川環樹「稲荷山古墳の鉄剣銘と太安万侶の墓誌の漢文におけるKoreanismについて」(『小川環樹著作集』第五巻、筑摩書房、1997年)は、北朝の墓誌などにみえる変体漢文(鮮卑語の影響)について論じていて、もう少し注目されていい論文だと思う。

第62回日本中国学会大会(日本漢文)

第62回日本中国学会大会(日本漢文)

日時:2010年10月9日(土)・10日(日)
会場:広島大学文学部
諸会費:大会参加費2000円、昼食弁当代1000円、写真代1000円

第五部会 日本漢文 (B104教室)
10月9日(土)
10:00~10:30 丹羽博之「藤井竹外「芳野」詩の背景 ―元稹「行宮」詩と李氏朝鮮徐居正「皐蘭寺」詩―」
10:30~11:00 中丸貴史「漢文日記叙述と漢籍 ―摂関家の日記としての『後二条師通記』―」
11:00~11:30 河野貴美子「中国古典籍研究における日本伝存資料の意義 ―北京大学図書館蔵余嘉錫校『弘決外典鈔』をめぐって」
11:30~12:00 住吉朋彦「『千家詩選』と『新選集』―周防国清寺旧蔵本をめぐって―」
13:30~14:00 佐藤道生「平安時代に於ける『文選集注』の受容」
14:00~14:30 佐藤進「六臣注文選所引毛詩の訓読について」
14:30~15:30 戸川芳郎「「日本漢文」部会設立趣旨説明:日本漢文研究のことども」

10月10日(日)
09:30~10:00 郭穎「日本漢詩における「和臭」・「和習」・「和秀」―『東瀛詩選』を手掛かりに―」 10:00~10:30 高山大毅「『滄溟先生尺牘』の時代 ―書肆と古文辞末流―」
10:30~11:00 小池直「伊藤仁斎の学問論における朱子学批判の意義」
11:00~11:30 松井眞希子「海保青陵『老子國字解』について―徂徠學派における『老子』研究―」
11:30~12:00 有馬卓也「岡本韋庵の思想」
13:00~13:30 中村聡「『博物新編』―幕末明治初期に渡来した自然神学的科学書の正体―」
13:30~14:00 唐煒「西大寺本金光明最勝王経平安初期点における中国口語起源の訓読」
14:00~14:30 陶徳民「大正後期の「漢文直読」論をめぐる学問と政治 ―文化交渉学の視点による考察―」

さすが日本中国学会。三部門でこれだけの報告をそろえている。
哲学・思想にも、文学・言語にも、興味深い報告があるが、
個人的に一番関心あるのが日本漢文。かなり面白そうだなぁ。

第62回日本中国学会大会(文学・語学)

第62回日本中国学会大会(文学・語学)

日時:2010年10月9日(土)・10日(日)
会場:広島大学文学部
諸会費:大会参加費2000円、昼食弁当代1000円、写真代1000円

第三部会 文学・語学Ⅰ (B204教室)
10月9日(土)
10:00~10:30 浜村良久 ・水野實「『詩經』國風における歌謡型と脚韻規則の考察」
10:30~11:00 胡晋泉「「關雎」再考―『詩経』「關雎」篇における「再生産」の技法について―」
11:00~11:30 安藤信廣「北周趙王「道會寺碑文」の問題点 ―聖武天皇『雑集』中の「周趙王集」に基いて」
11:30~12:00 丸井憲「沈佺期・宋之問の「變格」五言律詩について ―張九齢・王維の五律との比較をもとに―」
13:30~14:00 長谷川 真史「元稹「楽府古題序」の矛盾 ―元稹の文学観における「古」と「新」―」
14:00~14:30 山崎 藍「井戸をめぐる―元稹悼亡詩「夢井」における「遶井」―」
14:30~15:00 原田愛「蘇軾「和陶詩」の継承と蘇轍」
15:00~15:30 荒木達雄「虎を見る目の変化 ―『醒世恒言』「大樹坡義虎送親」と『水滸伝』から―」
15:30~16:00 上原究一「『李卓吾先生批評西遊記』の版本について ―「広島本」の真価―」

10月10日(日)
09:30~10:00 大橋賢一「尤袤本『文選』李善注考 「善曰」に着目して」
10:00~10:30 栗山雅央「「三都賦」劉逵注の特質 ―晋代の辞賦注釈と紙―」
10:30~11:00 蕭涵珍「馬琴の『曲亭伝奇花釵児』にみる李漁の『玉搔頭伝奇』」
11:00~11:30 竹村則行「明清文学史から見た清・顧沅の『聖蹟図』」
11:30~12:00 小方伴子「段玉裁『説文解字注』における『国語』の引用テキストについて」
13:00~13:30 落合守和「順天府档案に見える供詞の言語について」
13:30~14:00 岩田和子「清末民初湖南における「私訪」故事説唱の流通について」
14:00~14:30 平田昌司「章炳麟の語彙・文体変化の一要因」
14:30~15:00 藤田一乘「日本から來たエスペラント」

第四部会 文学・語学Ⅱ(現代) (B253教室)
10月9日(土)
13:30~14:00 王暁白「戦時の「夢」に浮かぶ都市―張恨水のエッセー集『両都賦』への一考察」
14:00~14:30 城山拓也「戴望舒と夢想する言葉」
14:30~15:00 岸田憲也「郭沫若の詩題に用いられた「日本人民」「日本友人」語の考察 ―一九六〇年代前半の旧詩を中心に―」
15:00~15:30 湯山トミ子「解放の扉の前と後―二人の“蝦球”と消えた女性群像」
15:30~16:00 渡邊晴夫「孫犁の文体について ―その特徴と文革後の変化―」

第62回日本中国学会大会(哲学・思想)

第62回日本中国学会大会(哲学・思想)

日時:2010年10月9日(土)・10日(日)
会場:広島大学文学部
諸会費:大会参加費2000円、昼食弁当代1000円、写真代1000円

第一部会:哲学・思想Ⅰ (B251教室)
10月9日(土)
10:00~10:30 白雲飛「夢の中の死者と魂」
10:30~11:00 吉冨透「『楚辭』から見た上海博物館藏戰國楚竹書『三德』の構成とその内容」
11:00~11:30 青山大介「『呂氏春秋』と〈蓋廬〉―先秦末漢初における時代性と地域性に関する考察―」
11:30~12:00 多田伊織「六朝期の散逸医書『僧深方』の輯佚と復元」
13:30~14:00 城山陽宣「董仲舒対策の真偽説の再検討」
14:00~14:30 島田悠「西晉武帝の「無為の治」」
14:30~15:00 白高娃「劉向『列女伝』について―「孽嬖伝」を中心に」
15:00~15:30 南部英彦「劉向の公私観とその政治的背景」
15:30~16:00 大久保隆郎「浮屠と讖緯―華夷思想展開の一試論―」

10月10日(日)
09:30~10:00 髙田哲太郎「『管子』に於ける「道」の展開」
10:00~10:30 頴川智「通行本『老子』の「道」に見られる矛盾」
10:30~11:00 池田恭哉「『劉子』に見える劉昼の思想」
11:00~11:30 齊藤正高「「物理小識自序」の再檢討」
11:30~12:00 原信太郎・アレシャンドレ「劉宗周の本体工夫論」
13:00~13:30 安部力「『天学初函』における『職方外紀』の位置について ―イエズス会士が伝えたもの―」
13:30~14:00 播本崇史「明末天主教書における霊魂について ―その「行」に関する一考察―」
14:00~14:30 早坂俊廣「全祖望と鈔書の精神史」
14:30~15:00 水上雅晴「乾嘉の學と科擧」

第二部会:哲学・思想Ⅱ (B253教室)
10月10日(日)
10:00~10:30 高橋均「〔養老令・学令〕の「凡教授正業…論語鄭玄・何晏注」をめぐって ―日本に「論語鄭玄注」は伝わったのか―」
10:30~11:00 大兼健寛「『新五代史』と『蜀檮杌』 ―王蜀を主として」
11:00~11:30 関口順「東アジアにおける「礼」の特質と機能について ―「礼」認識と「礼」受容の困難さ―」

あまりにも報告者の数が多いので、
哲学・思想、文学・語学、日本漢学ごとに分けます。