2012年4月13日金曜日

東アジアの王権と宗教

小島毅編『アジア遊学151  東アジアの王権と宗教』(勉誠出版、2012年3月)

2009年度から2011年度まで行われた東京大学大学院人文社会系の演習プロジェクト「東アジアの王権と宗教」の成果の一部をまとめたもの。多分野交流をかかげていることもあり、執筆者は多彩。なかには王権とも宗教とも関係ない論文もあるけれど、全体的に概説に近く、読みやすかった。

目次は以下の通り。
近藤成一「中世日本の「王権」」
蓑輪顕量「日本における王法と仏法」
佐川英治「漢代の郊祀と都城の空間」
小島毅「儒教経学と王権」
六反田豊「朝鮮時代の君臣関係と王権」
本橋裕美「古代日本における祭祀と王権―斎宮制度の展開と王権」
趙秀全「古代天皇における孝徳―歴史書と物語文学を通じて」
河添房江「嵯峨朝・仁明朝の王権と東アジア」
横手裕「道教と唐宋王朝」
深沢克己「近世フランスの王権と宗教―比較の視点から」
加藤徹「近世日本における中国伝来音楽の諸相―明清楽を中心に」
小野泰教「清末士大夫の見た西洋議会制―いかにして理想の君民関係を築くか」
商兆琦「「生き返らせる」田中正造研究批判」
新野和暢「宗教団体法にみる国家と「宗教」」
板倉聖哲「「桃鳩」イメージの変容―王権の表象から平和の象徴へ」

個人的には最後の板倉論文が大変面白かった。
グラフィックデザイナーの田中一光の「ヒロシマ・アピールズ」(1988年作)というポスターで、描かれた白いハトの典拠が、徽宗の「桃鳩図」であることを指摘し、日本における桃鳩図の意義、ハトが示す意味を確認し、「ヒロシマ・アピールズ」に至る過程に迫っている。そして最後には、Chim↑Pomに言及して稿を終えている。まさか、アジア遊学を読んでて、Chim↑Pomに出くわすとは思わなかった。

第4回日中学者中国古代史論壇

第4回日中学者中国古代史論壇「中国新出資料学の展開」
日程:2012年5月25日(金)
会場:日本教育会館 (東京)

全体会 10:30-12:10 (701・702会議室) 
池田知久「日本の中国簡帛研究の課題と展望」
卜憲群「新世紀以来中国簡帛研究的基本状況」
谷中信一「新時代の疑古と釈古」
陳偉「関於秦文書制度的幾個問題」


分科会Ⅰ:先秦 13:00-16:05 (702会議室)  
池澤優「中国出土資料と宗教研究― 公盨と禹の治水神話を中心に」
湯浅邦弘「先秦兵学の展開」 
工藤元男「「日書」の史料的性格について」
小寺敦「地域・文化概念としての楚の成立―清華簡を手掛かりとして」
竹田健二「上博楚簡『李頌』の文献的性格」
劉国勝「由出土喪葬文書看戦国時期楚地貴族的葬制葬俗」 
王啓発「従道徳正義到政治正義―従張家山漢簡《蓋盧》看先秦時代兵家思想的一個側面」
李成市「平壌楽浪地区出土の『論語』竹簡」
コメント:宇野茂彦


分科会Ⅱ:秦漢 13:00-16:05 (701会議室) 大西克也「秦の文字統一」 
藤田勝久「里耶秦簡と出土資料学」
王 彦輝「出土秦漢戸籍簡的類型及登錄内容的演変」 
陳 松長「睡虎地秦簡中的“将陽亡”小考」
福田哲之「漢簡『蒼頡篇』研究」 
鄔 文玲「天長紀荘漢墓木牘《榬遂致謝孟書》的復原与研究」
名和敏光「馬王堆漢墓帛書『陰陽五行』乙篇の構造と思想」 
張 栄強「“使戸”与“延戸”―紀南松柏漢簡反映的蛮夷編戸問題」
コメント:佐藤進


分科会Ⅲ:魏晋南北朝~宋明 13:00-16:05 (703会議室)
高凱「従麻風病的伝播蠡測印度仏医対漢唐時期中医的影響―以簡帛《五十二病方》、《悪病大風方》与孫思邈《千金方》為例」
町田隆吉「魏晋・五胡十六国時代の河西出土文献」 
劉屹「徳蔵吐魯番雙語文書残片Ch/So 10334 (T I α)v的道教内容考釋」
葉煒「墓誌史料与中古武官研究」
陳峰「柳開事迹与宋初士林的豪横之氣」 
朱漢民「周敦頥的文化詮釋与湖湘文化建構」
肖永明 「対《論語》“今之学者為人”的詮釋与宋代儒学的内傾」
阿風「公私“文書”与明代民事訴訟書証探析―以徽州訴訟文書為中心」
コメント:池田温

総合討論  16:20-17:00 (701・702会議室)
司会:渡邉義浩、王啓発、氣賀澤保規、李炳青