2010年4月8日木曜日

名古屋中国古代史研究会報告集1

柴田昇編著『名古屋中国古代史研究会報告集1 血縁関係・老人・女性―中国古代「家族」の周辺』(名古屋中国古代史研究会、2010年3月)

収録論文は次の通り。
飯田祥子「同産小考―漢代の兄弟姉妹に関する整理」
仲山茂「甘粛省武威出土の王杖簡をめぐって―研究史の視点から」
柴田昇「劉向『列女伝』の世界像―前漢後期における秩序意識と性観念の一形態」
酒井恵子「唐宋変革期と「家族」―大澤正昭著『唐宋時代の家族・婚姻・女性―婦は強く』を読む」
張昀「春秋戦国時期的秦国土地制度探討―従軍事制度入手」

個人的に興味深かったのは、飯田論文。
漢代の「同産」の語義を探り、「同母兄弟」ではなく、
「同父兄弟」を意味する公的性質(刑罰・爵賞など)の強い語であり、
従兄弟などの親族や異父同母兄弟と区別するために用いられたとする。
しかし、後漢ごろより「同産」の語義がゆらぎはじめ、
南北朝時代には「同母兄弟」の意味で用いられるようになったとし、
その背景に親族認識や国家の戸口認識の変化が考えられるとする。

巧術


表参道のスパイラルガーデンで開催されていた
「巧術」展にいってきました。

ポスターに、
「ねえ、池内さん、人間の手技には限界がないんですよ」
とある通り、職人的な作品が展示してある。

全部で24点しかないため、30~40分程度で見終わるが、
驚嘆する作品がずらり。


受付わきの壁にそっと置かれている
須田悦弘の木彫りの「椿」。

グラスやガラス皿などを写真に撮って、
マンダラのように組み合わせた桑島秀樹「Horizontal」。

満田晴穂の金属製の昆虫。
女郎蜘蛛(「自在女郎蜘蛛」)と
累々と重ねられたスズメバチの死骸(「累累」)。
関節・針・蜘蛛の糸、全てが本物そっくり。
そして、本物よりもかっこいい。


そして、何といっても圧巻が、
高田安規子・政子「Mt.Fuji」。
富士山周辺の4枚の地図を線部分と文字のみ残して切り抜いた作品(約167×127㎝)。
簡単にいえば、等高線・道路・境界線のみで形成された地図。
作業工程を考えると気が遠くなる。

平面作品なのに、富士山の高さが浮かんでくるようだ。
それでいて、富士山とは全然別物のように感じてしまう。
真上から見ると、ガラスに銃弾を撃ち込んだようにも見えてくる。

会場にあった作品写真をおさめたファイルも面白い。
切り抜いた地図(ロンドン・ニューヨーク)のほかに、
角砂糖の椅子、木製の洗濯バサミのはしご、
足ふきマットに作ったミステリーサークルなどなど。
日ごろ目にするものが、見立ての効果で、
意外なものに変容する面白さ。


作品数は少なくても、十分楽しめました。
何といっても、これだけの技を集めて、
無料なのがすごい。