2010年7月31日土曜日

須田悦弘展

今年の夏は本当に暑くてきついですね。

と、そんなわけで、先日、銀座のギャラリー小柳で
開催されている須田悦弘展(本日19時終了)に行ってきました。

ギャラリーに入ると、そこはがらんどうで、
壁にチューリップや朝顔などが
ぽつんぽつんと数輪あるだけ。


この配置が、かっこいい。


花に近付いてみると、全て彩色した木彫り。
虫喰いの後や葉脈、おしべやめしべも全部彫りこまれている。

リアルなだけでなく、どことなく雰囲気のある花たち。
壁から茎が生え、花が咲く。この異質の組み合わせがとてもいい。


一輪だけ残して、他の花弁は摘み取られた朝顔。
枝の切り口は、まるでシャープなハサミで切り取られたかのよう。

チューリップや芍薬といった大きな花もいいけど、
壁の隅っこにひっそりと咲いている萩やつつじもいい。

そして、もっとかっこよかったのが、
ひっそりと受付の足元に生えていたどくだみ。


会場には、こっそりと雑草も置かれている。
展示案内には出ていないので、見落とす人も多いみたい。
以前、ある展覧会で、壁際に雑草が生えてる!と勘違いした清掃員に、
本当に掃除されてしまったことがあるそうです。
また、展示作品と気付かず、踏まれて壊れたことも何度もあるそうです。


展示作品は全部で13点(らしい)。全部見つけるのは、なかなか大変。
だんだん、四葉のクローバーを探す気分になってきました。

大倉集古館の展示とのコラボ(ただし、展示場に説明なし)も、
ちょくちょくあるみたい。
別の美術館で、もしかしたら、偶然出会えるかも。


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追記(2010年8月4日)

展示場で作品集『須田悦弘』(2010年7月)を
購入したことを書き忘れてました。1000部限定で、サイン入り。
これまでの須田氏の作品の数々を見ることができて嬉しい限りです。

『談藪』研究

何旭『『談藪』研究』(不二出版、2010年2月)

隋代に作られたが、宋代に散逸してしまった
『談藪』(南北朝時代を中心とした志人小説)の研究書。
撰者や内容、『世説新語』との関係や後世に与えた影響、
小説史上の位置などを分析した後、
逸文の106条の原文・訳文・注釈を付している。

2010年7月23日金曜日

北魏大乗の乱についての一考察

藤井政彦「北魏大乗の乱についての一考察―沙門法慶の背景をめぐって―」(『大谷大学史学論究』15、2010年3月)

従来、弥勒下生信仰やマニ教・ゾロアスター教などの影響が
指摘されてきた北魏の大乗の乱と首謀者の法慶について、
当時の仏教思潮、特に習禅者との関わりから分析している。

西北出土文献研究第8号

『西北出土文献研究』第8号(西北出土文献研究会、2010年5月)
【論説】
園田俊介「北涼沮渠氏と河西社会―北涼建国以前の沮渠氏を中心として―」
町田隆吉「4~5世紀吐魯番古墓壁画・紙画再論」
關尾史郎「「五胡」時代の符について―トゥルファン出土五胡文書分類試論(Ⅲ)―」
【ノート】
岩本篤志「杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」概観―その構成と研究史―」
片山章雄「大谷探検隊吐魯番将来《玄武関係文書》続考」
荒川正晴「ソウル,シルクロード博物館参観記」
【訳註】
佐藤貴保「西夏法令集『天盛禁令』符牌関連条文訳注(上)」

『西北出土文献研究』も8号目(特刊も含めれば10冊目)。
これだけ充実した内容の雑誌を毎年しっかり出しているのがすごい。

2010年7月22日木曜日

〈中国思想〉再発見

中国思想史研究者の溝口雄三氏が、
最近亡くなったことを新聞報道で知りました。
5月に以下の本が出たばっかりだったので驚きでした。

溝口雄三『〈中国思想〉再発見』(左右社、2010年5月)

別にいいやと思って買わずにいたのですが、
亡くなったと知り、ついつい購入してしまいました。

放送大学叢書10。放送大学のテキスト『中国の思想』を一部簡略化したもの。
前半では、中国における天・理・自然・公の概念について説明し、
日本との比較をしている。
後半は、宋学以後の思想史の流れを論じている。

2010年7月15日木曜日

第3回中国石刻合同研究会

第3回中国石刻合同研究会
日時:2010年7月24日(土)
会場:明治大学アカデミーコモン地階 博物館教室

報告
10:30~11:15 石野智大「西安碑林博物館蔵「茘非明達等四面造像題名」考」
11:15~12:00 石見清裕「ソグド人墓誌と北朝末期の華北」
13:00~13:45 徳泉さち「石碑の装飾意匠の変遷-穿に注目して-」
13:45~14:40 宮崎洋一「顔真卿撰書「八関斎会報徳記」について-伝世石刻の変化と享受の一例-」
14:30~15:15 兼平充明「近年の五胡-北魏初期の墓誌史料に関する研究動向-」
15:30~16:15 中村圭爾「買地券と墓誌の間」
16:15~17:00 沈慶昊「高麗朝鮮の墓碑と墓誌-その文体の歴史的な特徴-」
17:00~17:30 氣賀澤保規「新発見石刻「円仁法王寺舎利蔵誌」の紹介とその意義」
17:30~18:00 総合討論・質疑応答 コメント:高橋継男・氣賀澤保規

第11回入唐求法巡礼行記研究会

第11回入唐求法巡礼行記研究会
日時:2010年7月16日(金)16:30~19:20  
場所:國學院大學 常磐松ホール(渋谷キャンパス学術メディアセンター1階)
報告
酒寄雅志「入唐僧円仁に関する新出資料-中国法王寺釈迦舎利蔵誌の調査と検討-」
コメント:石見清裕・佐野光一・塩澤裕仁・鈴木靖民

2010年7月11日日曜日

新アジア仏教史07 中国Ⅱ隋唐

沖本克己編集委員・菅野博史編集協力『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』(佼成出版社、2010年6月)

アジア仏教史の新シリーズ。目次は以下の通り。
第一章「隋唐仏教とは何か」吉川忠夫
第二章「インド仏教の中国的変容」青木隆・奥野光賢・吉村誠
第三章「教学仏教の様相」林鳴宇・吉田叡禮
第四章「民衆仏教の系譜」斉藤隆信・西本照真
第五章「禅宗の生成と発展」小川隆
第六章「密教の伝播と浸透」岩崎日出男
第七章「士大夫の仏教受容」中嶋隆藏

第二章は地論・摂論・三論・成実・唯識、
第三章は天台宗・華厳宗、第四章は浄土教・三階教を扱っている。
素人の僕には、第二章・第三章のハードルが高かった……。
でも、当時の学派の状況などが窺えて参考になる。

2010年7月8日木曜日

季刊 日本思想史76

日本思想史懇話会編集『季刊 日本思想史』76(ぺりかん社、2010年6月)は、
「特集―植民地朝鮮における歴史編纂:「併合一〇〇年」からの照射」。

目次は次の通り。
金性玟「朝鮮史編修会の組織と運用」
尹海東「トランスナショナル・ヒストリーの可能性―韓国近代史を中心に」
磯前順一・金泰勲「ポストコロニアル批評と植民地朝鮮」
桂島宣弘「植民地朝鮮における歴史書編纂と近代歴史学―『朝鮮半島史』を中心に」
長志珠絵「『朝鮮史』史料採訪『復命書』を〈読む〉―『朝鮮史』編纂と帝国の空間」
沈煕燦「実証される植民地,蚕食する帝国―今西龍の朝鮮史研究とその軋み」
全成坤「『朝鮮史』と崔南善」
高吉嬉「〈在朝日本人二世〉旗田巍における内なる朝鮮」

朝鮮総督府による『朝鮮史』編纂事業を中心に、
植民地朝鮮における「実証的」歴史書編纂の問題点をえぐりだしている。

第39回中央アジア学フォーラム

第39回中央アジア学フォーラム
日時:2010年7月31日(土)13時~17時半
場所:大阪大学・豊中キャンパス文法経本館2階大会議室
中央ユーラシア学研究会と海域アジア史研究会の共催

報告
13:00~14:00 覚張隆史「安定同位体分析による家畜馬の長距離輸送の復元と海域アジア・中央ユーラシア研究への応用の可能性」
14:20~15:00 堤一昭「モンゴル帝国の基本構造─チンギス・カンからクビライ・カアンへ―」
15:00~15:20 入野恵理子「北魏のバイリンガル性─史料に見える「鮮卑語」─」
15:35~16:10 高橋文治「漢語文献が語るモンゴル支配」
16:10~16:40 齊藤茂雄・旗手瞳「突厥文字碑文と唐蕃会盟碑の歴史的重要性」
17:00~17:30 総合討論

2010年7月5日月曜日

中国社会文化学会2010年度大会

中国社会文化学会2010年度大会
日程:7月10日(土)・11日(日)
会場:東京大学文学部1番・2番大教室(法文2号館2階)
参加費(資料代)1000円 

7月10日(土)自由論題報告
セッション1 知の誕生プロセスへの視線 14:30~17:20 一番大教室 
平澤歩「修母致子説について―漢朝正統論から生まれた経典解釈―」
 コメンテーター:渡邉義浩
水口拓寿「宋明知識人による風水の「発見」について―朱熹を焦点とする検討―」
 コメンテーター:村松伸
大野広之「中国東北地区図書館蔵の満州文字対音表記資料にみられる版本異動についての一考察」
 コメンテーター:寺村政男

セッション2 清朝期官僚にとっての「西洋」 15:30~17:20 二番大教室
小野泰教「咸豊期郭嵩燾の軍事費対策―士大夫意識、西洋体験との関連から見た―」
 コメンテーター:佐々木揚
藤原敬士「「夷務」をつかさどるということ―18世紀中葉の広州における貿易制度の構築と貢品制度との関わりについて―」
 コメンテーター:山本英史
会員総会 17:30~18:00

7月11日(日) シンポジウム 中国史上におけるイデオロギーの役割
セッション1 大一統のイデオロギーとしての儒教 10:00~12:00
渡邉義浩「「古典中国」の形成と王莽」
小島毅「再編された古典―宋代儒教の理念―」
懇親昼食会 12:00~13:00 2番大教室 会費1,000円

セッション2 近現代の革命イデオロギーと大衆 13:00~15:30
緒形康「中国革命のイデオロギーは人間の安全保障を準備したのか?
山田賢「革命イデオロギーの遠い水源―清末の「救劫」思想をめぐって―」
金野純「毛沢東時代における大衆動員と革命イデオロギー」     
総括討論 15:30~16:30

陰陽道の発見

山下克明『陰陽道の発見』(NHKブックス、2010年6月)

表紙に岡野玲子の『陰陽師』があしらわれているけど、
従来の陰陽道・陰陽師像を再検討している。

陰陽五行説や術数の受容から、陰陽道の成立、
官僚そして呪術宗教家としての陰陽師、
陰陽寮の官職世襲化をめぐる賀茂氏と安部氏の対立や、
安部晴明伝説の成立過程などなど。

やはり漫画などの影響で式神とか呪術のイメージが強かったけど、
官僚としての陰陽師の姿が見えてきて面白かった。

2010年7月4日日曜日

国際敦煌プロジェクト

国際敦煌プロジェクト 研究シンポジウム
日程:7月12日(月)~13日(火)
場所:龍谷大学大宮キャンパス西黌2階大会議室

7月12日(月)13:00~16:20「IDPの現在の活動」
岡田至弘「IDP-Japan」 
Susan Whitfield「IDP KeyNote Lecture!(IDP基調講演)」 
Vic Swift, Susan Whitfield「New IDP-DB Demonstration(IDP-DB デモンストレーション)」 
石塚晴通「Yellow Corrections Added to the Pelliot chinois Manuscripts from Dunhuang(ぺリオ蒐集敦煌漢文文献に加えられた黄液訂正)」
赤尾栄慶「A Inevetigation of Shogozo Scrolls owned by the shosoin Treasure House(正倉院聖語蔵経巻の調査について)」

7月13日(火)9:10~12:30「大谷探検隊とIDP」
三谷真澄「龍谷大学と旅順博物館の非漢字資料―その意義と保存状況」 
橘堂晃一「契丹大蔵経とウイグル仏教」 
和田秀寿「六甲二楽荘における大谷光瑞師の将来展望」 
入澤崇「オーレル・スタインと大谷探検隊」 
Imre Galambos「British suspicions towards members of the second Otani」

13:00~17:00「史料のデジタル化と保存」
鞍田崇「ヘディン探検隊ガラス乾板記録のデジタルアーカイブ」 
江南和幸「Origin of the Difference in papermaking technologies between those transffered to the East and the West from the motherland China」 
坂本昭二「A Scientific Study of Li Bo’s (李柏) Documents in the Otani Collection」
河嶋壽一「3-D Digital Restoration of a Six-Leaves」 
森正和「彩色資料の計測・保存」

主催:龍谷大学 古典籍デジタルアーカイブ研究センター・大英図書館国際敦煌プロジェクト・龍谷大学アジア仏教文化研究センター・仏教文化研究所西域研究会・idp.afc.ryukoku.ac.jp

2010年7月3日土曜日

歴史評論723

『歴史評論』723(校倉書房、2010年7月)は、「特集/60年安保から半世紀」。
目次は次の通り。
渡辺治「安保闘争の戦後保守政治への刻印」
岡田一郎「日本社会党と安保闘争」
三宅明正「「六〇年安保」と労働者の運動」」
谷川道雄「戦後歴史学と「国民」」

普段、『歴史評論』は買ってないし、
「安保闘争」にそこまで関心があるわけでもない(全くないわけでもないけど)。
ただ、今回は興味を引くタイトルがあったので購入。
だが、しかし……。


なお、特集外の【歴史のひろば】は次の通り。
髙橋亮介「日韓中西洋古代史学界の交流と動向」
金悳洙「韓国における西洋古代史研究」
次号には晏紹祥「中国における西洋古代史研究」が載るらしい。
韓国・中国の西洋古代史の研究状況を知る機会は、中々ないので興味深い。