2012年12月31日月曜日

『『詩経』―歌の原始』

小南一郎『『詩経』―歌の原始』(岩波書店、2012年12月)

「書物誕生―あたらしい古典入門」シリーズの最新刊。シリーズ中唯一の五経。
第Ⅰ部:古代歌謡集の形成と伝承では、『詩経』の形成が小南流に論じられている。
第Ⅱ部:歌の力では、小序の理解をとらず、国風部分=民謡由来説にも違和感を示し、時代背景・歌い手の社会階層や時代の幅・歌の機能に注目しながら、詩を読解している。

目次は以下の通り。
第Ⅰ部:古代歌謡集の形成と伝承
第一章 詩経の形成
第二章 孔子と詩経
第三章 経典化した詩経とその注釈

第Ⅱ部:歌の力
第一章 宗廟歌謡の伝承―生民如何(民を生むこといかに)
第二章 農耕の日々―自古有年(古より年あり)
第三章 貴族と民衆たち―王事靡盬(王事 盬きことなし)
第四章 時代の混乱と言葉の力―天之方虐(天のまさに虐をなす)
第五章 孤独と悲しみ―我心匪石(わが心は石にあらず)

2012年12月26日水曜日

内陸アジア出土古文献研究会1月例会

内陸アジア出土古文献研究会1月例会
日時:2013年1月19日(土)午後1:30~5:00
会場:財団法人東洋文庫7階第1・2会議室

報告
吉田章人・岡田文弘「サンクトペテルブルク東洋学研究所蔵ウイグル・ソグド系仏経写本について」
1.阿含経系写本を中心として
2.西州交河縣龍朔二年(662)寫「妙法蓮華経巻第十」の性格をめぐって

林 韻柔「中国中世における僧侶出家の原因」

2012年12月23日日曜日

敦煌の民族と東西交流

栄新江著、高田時雄監訳、西村陽子訳『敦煌の民族と東西交流』(東方書店、2012年12月)

敦煌の歴史を東西交流・民族に軸を据えてフルカラーで紹介。概説書で扱われることが少ない吐蕃・帰義軍・ウイグル時代の敦煌統治・敦煌仏教や于闐との関係についても詳しい。敦煌が中国史の枠だけでとらえられない場所であることがよくわかる。

目次は以下の通り。
一、月氏 古代敦煌の白人種
二、玉門関と懸泉置 漢代の関城と宿駅
三、仏教東漸 敦煌の仏教都市空間
四、ソグド商胡と敦煌の胡人聚落
五、吐蕃の敦煌統治とチベット文化の貢献
六、帰義軍時期のシルクロード
七、ウイグルと敦煌
八、于闐と沙州

ちなみに、本書のなかには、監訳者あとがき等はなく、翻訳の経緯は不明。一見すると日本オリジナルに見えるが、東方書店のHPを見ると、柴剣紅主編の敦煌歴史文化絵巻シリーズの第一弾で、「中国における敦煌学の第一人者が多数のカラー図版とともに一般読者に向けて書き下ろし、高い評価を受けた「走近敦煌叢書」の日本語版。日中共同出版。シリーズ全3巻予定。」とあり、原書は『華戎交匯―敦煌民族与中西交通/走近敦煌叢書』(甘粛教育出版社、2008)だそうだ。本の中に刊行経緯や原書の記載が一切ないのはなぜなのだろうか。

汲古62

古典研究会編『汲古』62(汲古書院、2012年12月)

漢籍に関係するものは以下の通り。
渡辺滋「日本古代史料に見える「揚名」の語義―『孝経』の原義との関係」
長坂成行「篠屋宗礀と多福文庫旧蔵本」
成家徹郎「『漢書藝文志』“暦譜”の意味」
大塚紀弘「平安後期の入宋僧と北宋新訳仏典」
鶴成久章「陽明学の聖地に残された石刻―「天真精舎勒石」について」
田中有紀「『朱子語類』巻九十四訳注(十四)」

今号も内容が多岐にわたっていて、読みごたえがある。

2012年12月15日土曜日

白氏文集は〈もんじゅう〉か〈ぶんしゅう〉か

神鷹徳治『白氏文集は〈もんじゅう〉か〈ぶんしゅう〉か』(游学社、2012年11月)

題名の通り、白氏文集の読み方(「もんじゅう」or「ぶんしゅう」)をめぐる本。全103頁なのですぐに読めます。結論からいえば、明治20年代までは「ぶんしゅう」と読まれており、「もんじゅう」という読みは、明治30年代に誕生した新しい読み方にすぎない、というもの。なぜ、「もんじゅう」という読み方が誕生したのかも説明している。これを契機に「もんじゅう」なる読みが一掃されればよいのだが。

2012年12月6日木曜日

もうすぐ出る気になる本

備忘録代わりに、もうすぐ出るはずの気になる本を列挙。
なぜ年末年始にこれだけ次々に出るのだろうか。

小南一郎『詩経―歌の原始―』(岩波書店、2012年12月19日刊行予定)
栄新江著、高田時雄監訳、西村陽子訳『敦煌の民族と東西交流』(東方書店、2012年12月中旬刊行予定)
小島毅監修、 羽田正編『東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史』(東京大学出版会、2012年12月下旬刊行予定)
小島毅監修、早坂俊廣編『東アジア海域に漕ぎだす2 文化都市 寧波』(東京大学出版会、2013年1月下旬刊行予定)
荒川慎太郎・澤本光弘・高井康典行・渡辺健哉編『契丹[遼]と10~12世紀の東部ユーラシア』(勉誠出版、2013年1月刊行予定)

趣味の領域に近いものでは、
渡辺守邦『表紙裏の書誌学』(笠間書院、2012年下旬刊行予定)
がもっとも気になる。
古本屋や古典会とかで和書に触れると、
表紙裏に文字が見えることがよくある。
気になっても、解体して調べるわけにもいかず、
もやもやしたままで終わっていたのだけど、
その和書の表紙裏に利用された反古紙を対象にした本。

目次は以下の通り。
第一章 表紙裏反古の諸問題
第二章 ワークショップ報告「表紙裏から反古が出た」
第三章 表紙裏反古の保存法について 国立公文書館蔵の嵯峨本『史記』を中心に
第四章 表紙裏反古の諸問題・続考 東京大学附属図書館蔵『鴉鷺物語』の場合
追録 小山正文「寛永二十年版『黒谷上人語燈録』の表紙裏より抽出された宗存版」

2012年12月2日日曜日

第46回中央アジア学フォーラム

第46回中央アジア学フォーラム
日時:2012年12月22日(土)13:30~18:00頃
場所:大阪大学・豊中キャンパス・文学部本館2階・大会議室

報告内容:
大田黒綾奈「魏晋南北朝時代における「玉」と士人意識 ―玉石豚と随葬衣物疏を中心に―」
旗手瞳「吐蕃支配下の吐谷渾国(アシャ国)」
尾白悠紀「ミールザー・ハイダル Mīrzā Muḥammad Ḥaydar Dughlāt 著 『ターリーヒ・ラシーディー』 Tārīkh-i Rashīdī に見られるチベットに関する記述について」
鈴木宏節「南モンゴルにおける突厥関連遺跡の現状」

「漢委奴國王」金印研究の現在

公開研究会「漢委奴國王」金印研究の現在
日程:2012年12月15日(土)13:00~17:30
場所:明治大学駿河台キャンパス 12号館10階 2103教室

報告者
石川日出志「金印と弥生時代研究―問題提起にかえて―」
鈴木勉「「漢委奴國王」金印誕生時空論」
高倉洋彰「型式学と漢の印制からみた金印」
大塚紀宜「金印の詳細観察と中国古代印章との比較―特に駝鈕印について―」


なんといっても『「漢委奴国王」金印・誕生時空論』の著者である鈴木勉氏の報告が気になる。公開研究会全体では、金印について、どのような見解が示されるのだろうか。