2011年11月21日月曜日

艾未来2011

牧陽一「艾未来2011」(『埼玉大学紀要. 教養学部』47-1、2011年9月)

今年4月3日に突如身柄を拘束された中国の現代アーティスト艾未未のこれまでの軌跡を簡潔にまとめたもの。

1957年に詩人の艾青の子としてうまれ、文革期の迫害を経験。1979年から現代アートの活動に参加。アメリカ滞在をへて、中国に戻りアーティスト・建築家として活躍。北京五輪の鳥巣スタジアム(通称)を建設。その一方で、四川大地震の犠牲者の名簿を作成し、政府の圧力をうける。共産党を批判する作品も作成。ブログ・ツイッターなどを駆使するも、政府によって閉鎖される。そして、4月3日拘束され、一時行方不明に。6月22日に保釈されるが、現在も活動制限中。
現代アートという枠組みをはるかに超えた活動を行っている人物。

実は2009年に森美術館で開催された個展「アイ・ウェイウェイ 何に因って」に行ったのだけど、漢代の陶器を破壊するパフォーマンス、清代の家具を解体・再構築した作品(中国の形)などをみて、正直、あまりいい印象をうけなかった。歴史・文物の破壊行為なら、文革期に大々的に行われているし、なんだかなぁ、と思ってしまった。しかも再構成された木製の中国には「ちゃんと」台湾も含まれている。「鳥巣スタジアム」を建設していたこともあって、「愛国者」なんだなぁ、と思いこんでしまった。

ところが、今年の2月に、景徳鎮でつくらせた一億個のヒマワリの種という作品に触れる機会があり、これはすごいと思い、もういちどチェックしようかなと思っていたら、拘束されてしまった。
牧陽一氏の論文と最近刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト『アイ・ウェイウェイは語る』(みすず書房、2011年11月)で、改めてアイ・ウェイウェイについて勉強させてもらった。「愛国者」と思いこんで、しっかりチェックしてこなかった不覚を恥じるばかりである。

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追記:2011年11月25日(金)21時50分
なお、この論文はSUCRAからダウンロードできます。

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」

日時:2011年12月16日 (金) ~18日(日)10時~18時(18日は10時~12時)
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
 
12月16日(金)10:00~12:00、13:30~18:00
西原一幸「唐代楷書字体規範からみた『龍龕手鏡』」
池田証寿「漢字字体の実用例と字書記述」
高田智和「国研本大教王経の漢字字体」
紅林幸子「書法と書体」
岡墻裕剛「HNGにおける字種・字体の認識と異体処理」
斎木正直「HNG の利用を通して見た親鸞・明恵の字体」
賈智「『新訳華厳経音義私記』所引の楷書字書の体裁・様式及び出典について」

12月17日(土)10:00~12:00、13:30~18:00
赤尾榮慶「古写経の字すがた」
石塚晴通「字体規範と異体の歴史」(基調講演)
小助川貞次「敦煌漢文文献(漢籍)の性格とその漢字字体」
Imre Galambos「Huiyi characters seen in Dunhuang manuscripts(敦煌本に見える会意字)」
山田太造「日本史史料における翻刻データの作成支援と共有手法」
白井純「「落葉集小玉篇」の部首配属からみたキリシタン版の字体認識」

12月18日(日)10:00~12:00
笹原宏之「異体字・国字の出自と資料」
豊島正之「金属活字の製作に於ける異体字」

十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易

白玉冬「十世紀における九姓タタルとシルクロード貿易」(『史学雑誌』120-10、2011年10月)

従来、空白の時代とみなされがちであった10~11世紀のモンゴル高原の歴史を再考している。敦煌文書・アラビア語文献などをもとに、11世紀に敦煌からモンゴル高原中央部の九姓タタルの支配地を経由して契丹に到る交通ルートが存在していたことを指摘し、10世紀に敦煌と通交関係を持っていたタタルは九姓タタルに属していたとする。さらに九姓タタルがウイグル商人を通じてシルクロード貿易とつながっていたとする。