2010年10月4日月曜日

皇室の文庫

先日、三の丸尚蔵館で開催中の「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」に行ってきました。意外にも「書陵部の名品」がまとまった形で一般に展示されるのは初めてだそうです。

今回の特別展では、坂本龍馬直筆の「薩長同盟裏書」が
話題になっているらしいのですが、それ以外にも名品がずらり。
漢籍などは少ないですが、一級品が展示してあります。
たった一室なのだけど、龍馬効果のせいか、かなりの混雑と熱気。
いくつかのジャンルに分けて展示してあります。

まず最初は「古典と絵巻」。
トップバッターは、『日本書紀』の平安・鎌倉期の抄本。
そのうち巻2は北畠親房の伝授奥書がある南北朝期の抄本。
他には、『源氏物語』(三条西実隆等写・16世紀)、『古今和歌集』(寂恵写・1278年)、後深草院二条撰『とはすかたり』(江戸時代写・孤本)などなど。

お次は個人的にはメインの「古写経と漢籍」。
まずは、遣唐使船によって舶来された吉蔵撰『勝鬘寶屈』(684年写)。
続いて長屋王が発願して書写された『大般若波羅蜜多経』(712年写)。
そして、北宋版『御注孝経』(1023~1033年の間の刊行・孤本)。
狩谷棭齋が江戸の古書肆で入手したものらしい。
さらに金沢文庫本『群書治要』(鎌倉時代の抄本・1255年の奥書)。
ヲコト点(多分、清原家の訓点)もはっきり見えます。
この『群書治要』は、徳川家康の手をへて紅葉山文庫に入ったもの。

続いて「明治維新期の文書」が展示。
上に述べた「薩長同盟裏書」とか、「五箇条御誓文」(原本控)とか、
天皇の儀礼・行幸に関する公文書などが並んでます。

「貴族社会と日記」のコーナーには、
九条兼実の日記『玉葉』や、平信範の日記『平兵部記』などが、
「天皇と宸筆」のコーナーには、花園天皇の日記『花園院宸記』や『伏見天皇御集』、尾形光琳画「後水尾天皇御画像」などがあります。
『花園院宸記』は、花園上皇のえがいた行幸絵図を展示。描かれた牛や馬が味があっていい感じ。学問好きなのは知っていたけど、絵もうまかったとは少々驚きました。

他には仁徳天皇陵・百舌鳥陵墓参考地出土の
動物埴輪や家形埴輪なども置いてある。


さて、これまで長々と展示品を羅列してきましたが、
今回の展示品で最も興奮したのが、隅っこにある「修補の技」コーナー。
修補の説明のパネルがあり、その下に修補前と修補後の古文書が置いてある。

修補前の古文書(鎌倉後期らしい)をなんとなく見たら、
『説文』・『文心雕龍』・『漢書』・『拾遺記』という書名が!
どうやら、鎌倉期に作られた類書のようです。
『拾遺記』の内容を確認したら、『太平御覧』所引『拾遺記』と文章が一致しました。

まだ修補前なので、全体像はわかりませんが、
他にも漢籍を多数引用しているかもしれません。
さらには何か逸文があるかもしれません。
(もしかしたら、既に知られている類書なのかもしれませんが)
ぼろぼろの紙をめくってみたい、ガラス越しにそんな思いにかられてしまいました。


「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」は、
10月17日(日)まで三の丸尚蔵館で開催。
休館日:毎週月曜・金曜・10月12日(火)、開館時間:9時~16時15分
観覧料は無料です。