2010年8月5日木曜日

項羽

佐竹靖彦『項羽』(中央公論新社、2010年7月)

『劉邦』の続編に相当。
前著と同様、『史記』・『漢書』の作為性を指摘し、楚漢戦争の実像に迫ろうとする。
合理的根拠に基づく大胆な仮説が多く、読み物としても面白い。

某書店の中国史コーナーをくまなく探したけれど見つからず、
あきらめて帰ろうとした時、
ふと、時代小説コーナーにあるのではないかと思い、
確認したところ、平積みされていた。

出版社と表紙の雰囲気で小説扱いされちゃったんだろうなぁ。
でも、中身は本格的な伝記です。

書物を読み利用する歴史

バレンデ・テル・ハール著、丸山宏訳「書物を読み利用する歴史―新しい史料から―」(『東方学』120、2010年7月)

宗教書をもとに、明清期の非エリートの書物に対する
態度の一端を明らかにしようとしている。
取り上げられた宗教書は、龍華会(無為教)で作られた『七支因果』と
民衆叛乱の際に利用された『五公経』の二つ。

このうち、『五公経』については、
中国の古書サイト孔夫子を利用して、『五公経』の写本を検索し、
ヒットした古書店の地理的分布や数ページ分のスキャン画像をもとに、
『五公経』の写本が清・民国期広く流布していたとする。
斬新な手法で、なかなかまねできない。