2011年2月25日金曜日

『全経大意』と藤原頼長の学問

後藤昭雄「『全経大意』と藤原頼長の学問」(『成城国文学論集』33、2010年3月)

近年、大阪府河内長野市の金剛寺で発見された、十三種の経書の解題である『全経大意』(日本で撰述)の内容と、藤原頼長の学問を比較し、その類似性を指摘。史書の引用は『南史』・『漢書』・『史記』しかないのが少し残念。それにしても、日本(特に寺院)にはまだまだ面白そうな史料が眠っているのだなぁ。

2011年2月23日水曜日

関野貞資料と墳墓の世界

東京大学東洋文化研究所関野貞プロジェクト国際シンポジウム 「関野貞資料と墳墓の世界」
日時:3月2日(水)13:00~
場所:東京大学総合図書館三階大会議室

プログラム
王其亨 「関野貞調査と明陵」
青木信夫・徐蘇斌  「関野貞調査と清陵」
韓昇 「鮮卑族の系譜(墓葬のDNA鑑定 付:曹操一族の検討)」

2011年2月21日月曜日

近々出る本

今月末から来月にかけて、
ちょっと気になる本が出るのでメモ。

まず、臨川書店から、2月下旬(もう出てるかも)に、
曽布川 寛・吉田豊編『ソグド人の美術と言語』が出る。
A5判上製・320頁で、定価3,780円(本体3,600円)
目次は以下の通り
第1章 ソグド人とソグドの歴史(吉田豊)
第2章 ソグド人の壁画(影山悦子)
第3章 ソグド人の言語(吉田豊)
第4章 中国文化におけるソグドとその銀器(斉東方 *訳:古田真一)
第5章 中国出土ソグド石刻画像の図像学(曽布川寛)
あとがき (曽布川寛)


三月には汲古書院より、
愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター編
『曹操高陵の発見とその意義』が出るもよう。
A5判・170頁で、定価3150円。
目次は以下の通り
孫新民「国際シンポジウム『三国志 魏の世界』開催によせて」 
シンポジウム講演録
一 村上恭通「『三国志 魏の世界』開催にあたって―経緯と趣旨―」 
二 白雲翔「漢末・三国時代考古およびその新展開―北方曹魏を中心に―」 
三 潘偉斌「曹操高陵の発見と発掘および初歩研究」
四 郝本性「曹操高陵出土文物の研究―安陽高陵出土石牌刻銘にみる曹操のすがた―」 
五 張志清「漢代陵墓考古と曹操高陵
六 討 論 会
付録一 河南省文物考古研究所・安陽県文化局「河南安陽市西高穴曹操高陵」
付録二 曹操高陵に関する中国人研究者の見解について
付録三 曹操高陵発見前後の経緯

昨年11月27日(土)・28日(日)に開催された
シンポジウムの講演録らしい。はやいなぁ。


続いて京都大学学術出版会より、
橋本義則編『東アジア比較都城研究』
B5上製・360頁・税込 8,820円 三月初旬発売予定。

2011年2月18日金曜日

名だたる蔵書家、隠れたる蔵書家

佐藤道生編『名だたる蔵書家、隠れたる蔵書家』(慶應義塾大学出版会、2010年11月)

慶應義塾大学文学部に開設されている極東証券寄附講座「文献学の世界」の2009年度の講義内容をまとめたもの。

目次は以下の通り
松原秀一「在塾の諸文庫」
佐藤道生「藤原道長の漢籍蒐集」
住吉朋彦「藤原頼長の学問と蔵書」
佐々木孝浩「蔵書家大内政弘をめぐって」
川上新一郎「慶應義塾図書館渡辺刀水文庫について」
井上修一「マリー・アントワネットの伝記と資料」
高橋勇「「書物狂」リチャード・ヒーバーとその蔵書」
高宮利行「ブリットウェル・コート蔵書の構築とその後」
石川透「赤木文庫・横山重について」
松田隆美「Derek Brewer旧蔵「神話学」コレクション」

講義内容がもとになっているということで、人によって気合いにずいぶん差がある。「藤原道長の漢籍蒐集」や「藤原頼長の学問と蔵書」が目当てだったのだけど、その他の渡辺刀水、ヒーバーといった「隠れた蔵書家」の話もおもしろかった。

内陸アジア出土古文献研究会3月例会

内陸アジア出土古文献研究会3月例会
日時:2011年3月12日(土)15:00~18:00
場所:財団法人東洋文庫7F 第1・2会議室

報告
片山章雄「大谷文書中の3種9層の霊芝雲の問題」
速水大・十時淳一・吉田章人「東洋文庫にて整理確認済みのマイクロフィルム中の胡漢文書について」

2011年2月10日木曜日

文化庁芸術メディア祭

先日、国立新美術館で開催されている
平成22年度[第14回]文化庁メディア芸術祭に行ってきました。

とりあえず、初台のNTTコミュニケーションセンターで見たクワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》がアート部門の優秀賞に選ばれていて、嬉しくなった。

あと、マンガ部門の大賞が、岩明均『ヒストリエ』だったのもテンションあがった。最近、『アフターヌーン』読んでないけど、多分、あまり進んでないんだろうなぁ。早く新刊が読みたい。

休日に行ったせいか、かなりの人出で、作品を見るのも一苦労。アート部門とマンガ部門をじっくり見たので、エンターテイメント部門を見る時間が足りなくなってしまった……。残念。

そういえば、クワクボリョウタ《ニコダマ》も、エンターテイメント部門の審査委員会推薦作品になっていた。一人で2ジャンルでノミネートされるなんてすごいなぁ。

2011年2月9日水曜日

アジアが見た日本美術

東文研シンポジウム「アジアが見た日本美術」
日時:2月16日(水)
会場 東洋文化研究所第一会議室
報告
3時00分~3時25分 塚本麿充「皇帝の文物と北宋の社会―日本文物の交流からの視点」
3時25分~3時50分 板倉聖哲「15世紀寧波が見た東アジア絵画-金湜をめぐって」
3時50分~4時10分 質疑
4時10分~4時20分 休憩
4時20分~4時50分 頼毓芝「日本美術在中國: 從任伯年到吳昌碩」
4時50分~5時15分 大野公賀「豊子愷の「生活の芸術」論について」
5時15分~5時40分 質疑及び討論

第11回遼金西夏史研究会大会


第11回遼金西夏史研究会大会
日時:2011年3月19日(土)・20日(日)場所:大阪大学文学部豊中キャンパス

報告内容
(1)ミニシンポジウム「遼・金・西夏研究の現状と展望」 報告者:飯山知保・佐藤貴保・高井康典行

(2)研究報告
荒川慎太郎「2010年度内蒙古自治区文物考古研究所文献調査報告(西夏文文献編)」
田先千春「敦煌・トゥルファンの仏教絵画に用いられた基底材について」
藤野月子「中国における和蕃公主の降嫁について」
藤本匡「西夏法典中に見られる宗教規程について」
山内晋次「「東アジア史」再考 ──7~13世紀を中心に──」

磚画・壁画の環東アジア

国際ワークショップ:磚画・壁画の環東アジア

日時:2011年3月5日(土)午前10時~午後5時
会場:新潟大学五十嵐キャンパス総合教育研究棟D棟1階大会議室
内容
午前10時~ 趣旨説明:關尾史郎
午前10時20分~ 佐々木正治「四川農業画像磚から見る漢代墓葬画像の発展と系譜―四川と甘粛の比較から」
午前11時10分~ 三崎良章「甘粛の磚画と遼寧の壁画―墓主像の比較を中心として」
 昼休
午後1時~ 高橋秀樹「中国古代墓壁画に見られる西方的要素について―河西地域を中心として」
午後1時50分~ 内田宏美「画像資料に見る魏晋時代の武器―河西地域を中心として」
午後2時40分~ 荻美津夫「河西地域の磚画・壁画にみられる魏晋南北朝時代の楽器」
 休憩
午後3時45分~ 徐永大「講演:高句麗壁画に与えた遼寧壁画の影響について」
午後4時55分~ 閉会の挨拶

2011年2月7日月曜日

『集注文選』の成立過程について

陳翀「『集注文選』の成立過程について―平安の史料を手掛かりとして―」(『中国文学論集』38 、2009年12月)

昨年の「三菱が夢見た美術館」展に東洋文庫所蔵『集注文選』が出点されていたのだけど、図録の解説には、日本人によって作られたが撰者不明であるとあった。
この従来不明とされてきた国宝『集注文選』(旧抄本)の撰者を特定した論文。日本の古記録を丹念に見ていくことで、大江匡衡(952~1012)が一条天皇のために編纂したことを明らかにしている。

2011年2月6日日曜日

沈没船が教える世界史

ランドール・ササキ『沈没船が教える世界史』(メディアファクトリー新書、2010年12月)

水中考古学の概説書。欧米で盛んな学問であるため、アジアについてはちょっと薄め。ただ、第1章「大航海時代とカリブの海賊」、第2章「ヨーロッパを作った船たち」もおもしろい。キャプテン・キッドや「黒ひげ」の海賊船、アルマダ艦隊なども発見されているとは。

第3章は「沈没船が塗り替えるアジアの歴史」。泉州沈没船・新安沈没船にはあっさりふれるのみだが、日本の鷹島の元寇船についてはやや詳しく紹介している。ただ、元に関する記述が、やや古めかしいのが残念。
最も興味深かったのは、陳朝(大越・ヴェトナム)の陳興道が、元軍を撃退した白藤江の戦い跡から、戦いに用いた木杭が発見されたという記事。さらに現在、沈没船を探査中らしい。

水中考古学の魅力については第1章~第3章で思う存分伝わってきたのだが、現実をみせつけられるのが、第4章「沈没船発見マニュアル」と第5章「新しい真実を探して」。調査が難しいだけでなく、多額の費用もかかるし、保存処理も大変。しかも、民間業者による盗掘も多いし、開発で破壊されることもあるらしい。日本は行政的にも立ち遅れているようだ。

2011年2月5日土曜日

楊門女将「宜娘」考

松浦智子「楊門女将「宜娘」考―楊家将故事と播州楊氏―」(『東方学』121、2011年1月)

楊家将小説に登場する楊「宣娘」に着目し、その話柄の出自と形成過程を探っている。「宣娘」≒「宜娘」の考証を出発点に、元代の播州土司の楊氏の伝承との関連を指摘しています。

楊家将小説の形成に、まさか西南中国の播州楊氏が影響していたとは。また、播州の土司であった楊氏が、先祖を「楊家将」に仮託していたことも興味深かったです。楊家将小説の形成過程を追うことで、西南中国の土司の自己意識の変容過程も明らかにしていて、小説史であると同時に民族史の論文であるともいえます。とても面白くて勉強になりました。

2011年2月4日金曜日

図説書誌学

慶應義塾大学附属研究所斯道文庫編『図説 書誌学―古典籍を学ぶ―』(勉誠出版、2010年12月)

昨年11月29日(月)から12月4日(土)まで慶應義塾大学三田キャンパスで開催された「斯道文庫開設50年記念事業 書誌学展」の図録を出版したもの。

「Ⅰ書物との対話―書誌学研究の視点」と「Ⅱ斯道文庫の五十年―これまでとこれから」で構成されている。第Ⅰ部を読めば、書誌学の大まかな内容がわかる仕組み。コラムも充実しているし、フルカラーで図版がきれい。眺めているだけでも楽しめます。

2011年2月3日木曜日

崩壊する大学と「若手研究者問題」

崎山直樹「崩壊する大学と「若手研究者問題」―現状分析と展望―」(『歴史学研究』876、2011年2月)

近年、話題になっている若手研究者問題を正面から取り上げた時評。「Ⅰ 中期財政フレームの衝撃」と「Ⅱ 若手研究者問題の現在」の二部構成。

若手研究者問題に焦点をしぼったⅡでは、大学院生・非常勤講師・ポストドクターをとりあげ、1970年代~80年代にかけて発生した「オーバードクター問題」との違いも示しています。

自己責任論の立場をとる研究者も多いでしょうが、それはそれとして、的確な進路指導をするためにも、「歴史学領域における若手研究者の実態調査と情報共有は必須である」と思います。文中で紹介されていた日本社会学会のアンケート調査報告(2009年実施)は、かなり参考になります。

東方学121

『東方學』第121輯(東方學會、2011年1月)

学会・研究会のHPは、なかなか新刊情報を更新してくれないところが多いのですが、東方学会のHPは、すぐに東方学の新刊の目次をアップしてくれます。地味だけど嬉しいサービスです。

【論文】
池田雄一「中国古代の律令と習俗」
鈴木直美「「収帑諸相坐律令」撤廃考―文帝の即位事情と賜爵を中心にして―」
十川陽一「日唐における「散位」と「散官」」
徳永洋介「景迹と警跡―宋元時代の治安措置―」
福田素子「雑劇『崔府君断冤家債主』と討債鬼故事」
松浦智子「楊門女将「宜娘」考―楊家将故事と播州楊氏―」
荒木達雄「岡島冠山『太平記演義』に見る「水滸伝」の影響」
謝恵貞「中国新感覚派の誕生―劉吶鴎による横光利一作品の翻訳と模作創造―」

【翻訳】
黄正建著、河上麻由子訳「唐代衣食住行の研究と日本の資料」

平成22年度第29回東方学会賞発表
第60回全国会員総会講演・研究発表要旨

【座談会】
「先学を語る」―山本達郎博士―
  〔出席〕池田 温、池端雪浦、石沢良昭、辛島 昇、桃木至朗

【追悼文】
小島毅「溝口雄三教授追悼文」
戸川芳郎「溝口雄三君を悼む」
池田温「窪徳忠博士追悼文」
田辺和子「前田恵學先生を悼む」

2011年2月1日火曜日

墨宝&思わぬ収穫

先日、ちょっと、背伸びをして、根津美術館で開催中の特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」を見に行ってきました。
今回の展覧会では、主に13世紀以降の日中間の禅僧の往来の中から生み出された、禅僧の墨蹟や水墨画、茶碗などを展示しています。蘭渓道隆とか無学祖元とか虎関師錬といった有名人の墨蹟もあります。

……でも、やっぱり僕にはまだ早かったみたいです。一級品ばかりなのに、いまいちピンと来ず……。いつの日か墨蹟や水墨画の良さがわかるようになりたいものです。

他にも「仏教彫刻の魅力」、「古代中国の青銅器」、「鍋島と四季の草花」、「初春を祝う茶」が同時開催されています。このなかでは、ホールに展示してある北魏・北斉時代の仏像(山西省の天龍山石窟の仏像頭部など)に興味惹かれました。銘文がなかったのがちょっと残念。


と、そんなこんなで、ミュージアムショップに行くと、以下の書籍を発見。
根津美術館編集『鑑賞シリーズ11 中国の石仏 北斉仏の魅力』(根津美術館、2009年10月)、
常盤山文庫中国陶磁研究会『北斉の陶磁』(財団法人常盤山文庫©、2010年12月)

『中国の石仏』は、根津美術館所蔵の南北朝隋唐時代の石仏がカラー図版で紹介されています。さらに八木春生氏による「北斉時代の石仏」(45~80頁)、「作品解説」(81~89頁)、「コラム北斉の陶俑」(90~91頁)もあります。北斉時代の仏教美術をおさえるのにちょうどいい感じです。

『北斉の陶磁』は、近年、常盤山文庫が購入した北斉の陶磁のカラー図版・解説(41~58頁)と、矢島律子「北朝の白いやきもの」(27~40頁)、佐藤サアラ編「出土資料集」(128~59頁)が収録されています。「北朝の白いやきもの」は、北朝~隋の陶磁の変遷をまとめ、隋代に白磁が出現した背景に迫っています。これまた北朝の陶磁器をおさえるのにちょうどいい感じです。


というわけで、展覧会の方はいまいち味わいきれませんでしたが、根津美術館の建物自体がいい感じでしたし、ミュージアムショップで思わぬ収穫もあったので、行った甲斐がありました。

特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」
会期:2011年1月8日(土)~2月13日(日)
開館時間:10時~17時 休館日:月曜日
入館料:一般1200円、学生1000円