2010年9月14日火曜日

西嶋文庫蔵書目録

梅原郁・中田實編『西嶋文庫蔵書目録』(就実女子大学図書館、2001年3月)

故西嶋定生氏の蔵書目録。最近、ひょんなことから手に入れました。
西嶋氏の蔵書が、最後につとめた就実女子大学に
一括して寄贈されていたこと自体、この目録で始めて知りました。
しかも、研究書のみならず、趣味の本までまるまる全部。
総計15000冊。

就実女子大学に設置された西嶋文庫では、
西嶋氏が愛用していた机・椅子・文房具・書棚なども寄贈され、
生前の書斎を模した造りになっているらしい。

この目録も通常の分類と異なり、
西嶋文庫の書棚の配置情況を反映した分類。
そのため、検索の便はあまり芳しくない。
でも、その欠点を補ってあまりある面白さ。

いわゆる稀覯本は殆どないし、
研究書もそこまでおもしろいわけでもない。
では、何が面白いかといえば、やっぱり趣味の本。

友達の家に行って、本棚をチェックした時の感覚に頗る近い。
こんな本持ってんだ~、とか、
こんな小説読んでたんだ~、とか、そんな感じ。

解題に、病気療養中に釣りにはまっていたので、
釣りの本が多いと書いてあったけど、
確かに100冊近くある。やっぱり研究者って凝り性なんだなぁ。

小説コーナーをチェックしていたら、
井伏鱒二、司馬遼太郎、立原正秋、陳舜臣などにまじって、
筒井康隆『文学部唯野教授』が!!
しかも単行本(岩波書店、1990年)と
同時代ライブラリー(岩波書店、1992年)の両バージョンがそろってる。
もしかして、お気に入りだったのだろうか?
大学&文学理論ドタバタ小説と西嶋定生。
う~ん、結びつかない。

そして、もうひとつびっくりしたのが、
それほど多いとはいえない欧米小説の中に、
スタニワフ・レム著、沼野充義ほか訳『完全な真空』(図書刊行会、1989年)があったこと。『完全な真空』は、ポーランドのSF作家レムが書いた架空の書籍に対する書評集。まさか、こんな本を持っていたとは。
寄贈されただけなのか、それとも買って読んだのか。かなり気になる。

西嶋文庫には、寄贈された抜刷も保管されている。
最も多かったのは越智重明氏で、なんと94種。
次点が池田温氏の62種。
全部綺麗にとっておいた西嶋氏もすごいけど、
94種も贈った越智氏もすごい。

漢籍目録とかとはまた違った面白さ。
研究者の私生活・趣味の読書が見えてくる目録って
他にもないだろうか。

2010年度秋期東洋学講座

2010年度秋期東洋学講座「東洋文庫とアジア―その4―」
主催:財団法人東洋文庫
会場:三菱商事ビルディング3階会議室

10月18日(月)18時~20時
佐藤次高「日本人のイスラーム理解―5つのキーワード―」

11月8日(月)18時~20時
瀧下彩子「マンガ家たちの中国近代史―東洋文庫所蔵の漫画資料を読む―」

11月22日(月)18時~20時
平野健一郎「戦後日米間のなかの中国研究と東洋文庫」

聴講無料
申し込み方法:東洋文庫の東洋学講座のメールアドレス
またはファックスに事前申し込み。
(東洋文庫のHPをご参照ください)


今回の東洋学講座はなかなか面白そう。
東洋文庫所蔵の漫画資料ってどんなものなのだろうか。
11月22日の講演では、1960年代に大騒ぎになった
A・F財団問題にも触れるのだろうか。