2012年8月25日土曜日

屍者の帝国

伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』(河出書房新社、2012年8月)

「早熟の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、
盟友・円城塔に引き継がれ遂に完成」(帯より引用)。

フランケンシュタインの技術と
バベッジの解析機関が実用化された19世紀末、
世界は「屍者」で満たされていた。
英国諜報員ジョン・ワトソンは
英露のグレートゲーム真っ只中のアフガニスタン奥地に赴く。
あるロシア人率いる「屍者の王国」をめざして……。
これが長い冒険の始まりにすぎないことをワトソンは知らない。

生者と屍者と世界文学の登場人物が混ざり合い、
史実とifと作品世界の溶け込みあった幻想の19世紀。
『ディファレンス・エンジン』を彷彿させる
SF&歴史改変小説であるのは当然のこと、
世界をまたにかける冒険小説でもあり、
なおかつ魂・意識・生死を問う思索小説でもある。
本筋とはずれるが、様々な仕掛けを探るのも楽しい。

伊藤計劃は、プロローグにあたる部分を書き残し、
続きもプロットも殆ど残さないまま、34歳の若さで亡くなってしまった。
そのため、ほとんどが円城塔の単独執筆なのだが、
驚くほど伊藤計劃の『虐殺器官』・『ハーモニー』との
つながりを感じさせる。

痺れながら、一気に読んでしまった。

19世紀末の歴史改変小説は英米で盛んだけども、
大体の作品の舞台は、欧米にとどまっている。
それに対して『屍者の帝国』は、がっつり「アジア」が舞台。
さっそく、世界に向けて翻訳すべきじゃないだろうか。

中国前近代ジェンダー史ワークショップ

中国前近代ジェンダー史ワークショップ
<唐宋変革は中国のジェンダー構造をどう変えたか?―中国ジェンダー史教育の方向を探る>ワークショップ(その1)
日時:2012年9月5日(水)午後1:30~5:30
場所:東洋文庫2階講演室

プログラム
13:30~13:45 趣旨説明:小浜正子
13:45~14:30 金子修一「漢代の皇后に関する諸問題」
14:30~15:15 猪原達生「唐代における宦官の婚姻と家族形成について」
15:15~16:00 五味知子「明清時代の貞節と秩序」
16:15~16:30 コメント 岸本美緒
16:30~17:30 総合討論

当日参加も可。ただし、人数把握のために参加予定の方は、
kohama*chs.nihon-u.ac.jp(*→@に変換してください) に連絡のこと。