2013年1月30日水曜日

遼金西夏史研究会第13回大会

遼金西夏史研究会第13回大会
日程:2013年3月23日(土)・24日(日)
場所:大谷大学

3月23日(土) 特別企画 疑似漢字研究の現状と新展開
荒川慎太郎「故西田龍雄先生と西夏文字研究 −近年のご論考から」
聶鴻音「The Kitan and Jurchen in Tangut literatures, An Introduction on the Aurousseau and His Manuscript on the Chinese-Jurchen Vocabulary.(西夏語文献にみられる契丹語と女真語:オルソー(著)「『女真館訳語』手稿」への導論)」
吉池孝一「『慶陵』(1953年刊)の契丹語研究 ―その先駆的な部分について―」
武内康則「漢字音写された契丹語に関する諸問題」

3月24日(日)
黒田有誌「(仮題) 清代に於ける漢籍翻訳事業について」
佐藤貴保「西夏の官印に関する資料について ―日本・中国・ロシア所蔵のものを中心に―」
于磊「元代後期における江南知識人の動向について −余闕とその周辺の知識人を中心に−」
町田吉隆「契丹国(遼朝)時代の城郭都市と窯業生産の関係について」
岡本優紀「則天武后・玄宗期における奚・契丹の動向に関する一考察」

2月末により詳細な情報が遼金西夏史研究会のHPで出るそうです。

2013年1月29日火曜日

海から見た歴史

羽田正編・小島毅監修『東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史』(東京大学出版会、2013年1月)

共同研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成(にんぷろ)」のなかの「東アジア海域史研究会」が母体となって書かれた「東アジア海域」の概説書。分担執筆ではなく、真の意味での共著の形式をとっている。

目次は以下の通り。
プロローグ 海から見た歴史へのいざない
第I部 ひらかれた海 一二五〇―一三五〇年
一 時代の構図
二 海域交流の舞台背景と担い手たち
三 海商がおしひろげる海域交流――開放性の拡大
四 モンゴルの衝撃がもたらしたもの――開放のなかの閉鎖性
五 モノと技術の往来――すそ野の拡大と双方向性
第II部 せめぎあう海 一五〇〇―一六〇〇年
一 時代の構図
二 大倭寇時代――東アジア貿易秩序の変動
三 海商たちの時代
四 多様で混沌とした文化の展開
第III部 すみわける海 一七〇〇―一八〇〇年
一 時代の構図
二 海商たちと「近世国家」の“すみわけ”
三 交流と居留の圧縮と集中
四 海をまたぐモノと情報

それぞれの内容の衝撃度はそれほど大きくないけど、全体でみるととても新鮮。なんといっても読みやすい。『新しい世界史へ』の著者羽田氏が編者であることもあってか、同時代の別の地域(中国・朝鮮半島・日本列島・琉球諸島・東南アジアなど)が自然な形で並列的に扱われている。第Ⅰ部~第Ⅲ部の時代ごとの変化と、横の地域ごとの違いや共通点がすんなり入ってくる。

似た試みをユーラシア大陸(中国・チベット高原・モンゴル高原・中央アジアなど)でもできたら面白いのになぁ。

2013年1月18日金曜日

表紙裏の書誌学

渡辺守邦『表紙裏の書誌学』(笠間書院、2012年12月)

この題名を見たとき、すぐに連想したのが、戦後になって再発見された北村透谷の「楚囚の詩」(明治時代の書物の材料として使われていた)。確か紀田順一郎の小説で、その話を知った気がする。

本書は、近世初期の板本(1640~50年代頃まで)の表紙の補強材として使われた反故紙に、古活字本などが使用されていることに着目し、ワークショップや調査を通じて、表紙裏反故紙の活用を提唱している。

次々に貴重な反故紙が登場し、宝探しのような気分になる。綿密な調査で反故紙の書誌情報を特定していて、参考図版も鮮明。ただし、近世初期の板本自体が、すでに貴重書であることから、文物破壊との指摘があることも忘れてはいない。原状復帰を原則としているが、第三章で論じているように、原状復帰とも反故紙の別置とも異なる新しい保存法も模索している。


目次は以下の通り。
第一章 表紙裏反古の諸問題  *材料は『闕疑抄』
第二章 ワークショップ報告「表紙裏から反古が出た」
 *材料は『黒谷上人語燈録』・観世流の卯月本・『全九集』・『清水物語』
第三章 表紙裏反古の保存法について―国立公文書館蔵の嵯峨本『史記』を中心に
第四章 表紙裏反古の諸問題・続考 東京大学附属図書館蔵『鴉鷺物語』の場合
追録 小山正文「寛永二十年版『黒谷上人語燈録』の表紙裏より抽出された宗存版」

古活字本の漢籍・和書・仏教書が次々に出てきて飽きない。第一章で取り上げられた表紙屋の大福帳は、当時、出回っていた書籍の一端を示してくれて面白い。

読んでてついつい笑ってしまったのが、第二章の『全九集』。幸運にも本を解体することなく、反故紙の由来を明らかにでき、多大な成果が得られたにもかかわらず、実際の解体作業をせずに、解決してしまったので、会場の雰囲気がいま一つ盛り上がらなかったこと。
そして、その場の雰囲気を予想して準備した『清水物語』を、初参加の二人の女性に解体してもらったところ、「作業テーブルを囲んで輪ができ、周囲からアドバイスが飛び交ってその場の陽気なこと」。このワークショップの参加者は、研究者が多かったようなのだが、やはり宝探し的なわくわく感が、どこかにあったに違いない。

2013年1月16日水曜日

術数学国際シンポジウム2013

術数学国際シンポジウム2013
日時:2013年2月13日(水)13:30より
場所:人文科学研究所本館セミナー室1

プログラム
<研究発表>(13:30-15:00)
総合テーマ「易学研究の日本的展開」
14:00~14:40 近藤浩之「桃源『百衲襖』の魅力―『易学啓蒙通釈』『翼伝』の解釈と実践―」
14:50~15:30 水上雅晴「蘇東坡詩抄物に見る五山僧侶の経学―易説を中心に―」

休憩(15:30-15:50)

<シンポジウム>(15:50-18:00)
総合テーマ「近世社会の日中文化交流」
16:00~16:20 武田時昌「易占の数理構造とその問題圏―易占の日本的受容を中心に―」
16:20~17:10 呉偉明「中国から見た江戸期の学術文化」
17:20~18:00 総括討論会

第8回 TOKYO 漢籍 SEMINAR

第8回 TOKYO 漢籍 SEMINAR
日時:2013年3月19日(火)10時30分~16時
場所:学術総合センター 一橋講堂

清華の三巨頭―新しい中国学の始まり―
10:45~12:00 井波陵一「王国維-過去に希望の火花をかきたてる」
13:10~14:25 古勝隆一「陳寅恪-“教授の教授”その生き方」
14:40~15:55 池田巧「趙元任-見えざることばを描き出す」

参加定員:500名。要申込み。
申し込み先については、セミナーのHP参照。

時間があればぜひ聞きに行きたい。

2013年1月11日金曜日

契丹[遼]と10~12世紀の東ユーラシア

荒川慎太郎・澤本光弘・高井康典行・渡辺健哉編『契丹[遼]と10~12世紀の東ユーラシア』(勉誠出版、2013年1月)

勉誠出版のアジア遊学160。契丹研究の最前線が凝縮されていて魅力満載。契丹の多様な国際関係にはじまり、契丹の出版文化・仏教・官制・都城、契丹文字、考古成果、契丹滅亡後の契丹人とその記憶、などなどテーマは幅広く、さまざまな角度から契丹を知ることができる。

荒川論文が紹介しているロシアで見つかった契丹大字写本は、15000字前後と目されており、内容も仏典や漢語古典ではなく、契丹の史的事実に言及している可能性があるらしい。解読が進めば、契丹文字・契丹語・契丹史の研究が飛躍的に進むことは間違いない。さらにカラキタイ領域の遺跡から出土した可能性が高いことから、これまで空白だったカラキタイ(西遼)の研究が進展するかもしれない。

目次は以下の通り。
一:契丹[遼]とその国際関係
古松崇志「十~十二世紀における契丹の興亡とユーラシア東方の国際情勢」 
高井康典行「世界史の中で契丹[遼]史をいかに位置づけるか―いくつかの可能性」 
山崎覚士「五代十国史と契丹」 
毛利英介「澶淵の盟について―盟約から見る契丹と北宋の関係」
松井太「契丹とウイグルの関係」
【コラム】赤羽目匡由「契丹と渤海との関係」

二:契丹[遼]の社会・文化
磯部彰「遼帝国の出版文化と東アジア」
藤原崇人「草海の仏教王国―石刻・仏塔文物に見る契丹の仏教」
澤本光弘「『神宗皇帝即位使遼語録』の概要と成立過程」
武田和哉「契丹国(遼朝)の北面官制とその歴史的変質」
高橋学而「遼中京大定府の成立―管轄下の州県城から」
【コラム】弓場紀知「日本に伝わる契丹の陶磁器―契丹陶磁器の研究史的観点を中心にして」
【コラム】阿南ヴァージニア史代・渡辺健哉「遼南京の仏教文化雑記」 

三:契丹研究の新展開―近年の新出資料から
武内康則「最新の研究からわかる契丹文字の姿」
呉英喆「中国新出の契丹文字資料」 
荒川慎太郎「ロシア所蔵契丹大字写本冊子について」
【コラム】松川節「契丹文字の新資料」
白石典之「ゴビ砂漠における契丹系文化の遺跡」
臼杵勲「チントルゴイ城址と周辺遺跡」
董新林「遼祖陵陵園遺跡の考古学的新発見と研究」
【展覧会記録】市元塁「契丹の遺宝は何を伝えるか―草原の王朝契丹展の現場から」

四:その後の契丹[遼]
飯山知保「遼の〝漢人〟遺民のその後」 
松浦智子「明代小説にみえる契丹―楊家将演義から」 
水盛涼一「清人のみた契丹」 
【博物館紹介】石尾和仁「徳島県立鳥居龍蔵記念博物館」
【コラム】河内春人「フランス・シノロジーと契丹」 

六朝隋唐時代をめぐる仏教社会基層構造

科学研究費補助金成果報告シンポジウム「六朝隋唐時代をめぐる仏教社会基層構造」
日時:2013年1月13日(日)10時~17時
場所:明治大学駿河台キャンパス研究棟4階第1会議

第1部 10時~12時 華北各地の仏教と石刻文物の調査報告
江川式部:河北・山西の仏教遺跡と石刻文物の調査報告  
手島一真:河南・浙江の仏教石刻調査報告
櫻井智美:中国における蒙元時代(モンゴル時代)石刻研究の最前線

12時~13時 昼食休憩

第2部 13時~15時 研究報告
高瀬奈津子:唐代における潞州の位置―長治県梵境寺舎利銘をめぐって― 
肥田路美:四川地域唐代石窟摩崖の銘文について
松浦典弘:山西省の唐代の寺碑――山西現地調査の報告を兼ねて
15時~15時15分 休憩

第3部 15時15分~17時 研究報告・自由討論
高橋継男:「中国石刻関係図書目録」その後の最新資料状況
氣賀澤保規:「大般若経」刻経から見た房山石経事業の展開

新年

2013年も始まって、はや10日がすぎました。
去年はバタバタしていて更新も滞りがちでした。
見に行った展覧会も少なかったように思います。

と思って確認したら、意外にも39か所いってました。
ふりかえれば、
北京故宮博物院200選(清明上河図)
三井記念美術館の「茶会への招待」(初公開の白氏文集)、
契丹 草原の王朝展、
特別展 中国王朝の至宝
金沢文庫の「鎌倉興隆―金沢文庫とその時代」
などなど中国関係だけでも結構見ごたえありました。

そのほかの展覧会では、
根津美術館「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・漆画」、
松濤美術館「古道具、その行き先 坂田和實の40年」、
太田記念美術館「浮世絵猫百景」、
ワタリウム美術館「ひっくりかえる展」
などが印象に残ってます。

今年は何かと環境が変化する年になりそうなので、
無理せず、健康第一で、ぼちぼちやっていきたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。