2010年11月25日木曜日

冼星海伝小考

平居高志「冼星海伝小考―パリ遊学時代を中心として―」(『集刊東洋学』104、2010年10月)

中国において、国家作曲者の聶耳と並ぶ有名作曲家である
冼星海の遊学時代の事績を再検討している。
この論文で初めて冼星海を知りましたが、
中国では神格化が進んでしまい、自身の回想などに頼ってしまっていて、
正面から事績が再検討されていないようです。

パリ遊学時代の所属学校や師弟関係などを詳細に検討し、
「音楽歴をより華やかで権威あるものとする」回想の特徴を浮き彫りにしている。
その背景に共産党への入党が関係していた可能性を指摘している。

『続「訓読」論』

中村春作・市來津由彦・田尻祐一郎・前田勉編『続「訓読」論―東アジア漢文世界の形成―』(勉誠出版、2010年11月)

2008年に出た『「訓読」論―東アジア漢文世界と日本語』の続編で、
これまたにんぷろの成果。
第Ⅰ部:東アジアにおける「知」の体内化と「訓読」
第Ⅱ部:近世の「知」の形成と「訓読」―経典・聖諭・土着―
第Ⅲ部:「訓読」と近代の「知」の回廊―文学・翻訳・教育―
合計16本の論文が並ぶ。前回と違って、日本だけでなく、
朝鮮半島や満洲語も取り上げられている。

特に印象深かったものは、
中村春作「琉球における「漢文」読み―思想史的読解の試み―」と
川島優子「白話小説はどう読まれたか―江戸時代の音読、和訳、訓読をめぐって―」。
中村論文は、琉球における多層的な言語状況と変遷についてまとめている。
川島論文は、江戸後期の金瓶梅読書会が残した史料を用いて、
当時、どのように白話小説を読んでいたかを明らかにしている。