2010年12月31日金曜日

中国五代国家論

山崎覚士『中国五代国家論』(思文閣出版、2010年11月)

日本に殆ど存在しない五代十国時代の専門書。
第一部(天下のうち篇)と第二部(天下のそと篇)にわかれている。
目次は以下の通り。

序論「五代政治史研究の成果と課題」
第一部 天下のうち篇
第一章「五代の「中国」と平王」
第二章「五代「中国」の道制 ―後唐朝を中心に― 」
第三章「呉越国王と「真王」概念―五代天下の形成、其の一― 」
第四章「五代における「中国」と諸国の関係―五代天下の形成、其の二― 」

第二部 天下のそと篇
第五章「九世紀における東アジア海域と海商―徐公直と徐公祐―」
第六章「唐末杭州における都市勢力の形成と地域編成」
第七章「未完の海上国家―呉越国の試み―」
第八章「港湾都市、杭州―五代における都市、地域、海域―」
結論「五代天下のうちとそとの形成」

五代十国時代は、単なる分裂時代ではなく、
「五代天下秩序」ともいうべき世界秩序が形成されていたとする。
また、その秩序の形成要因として、
地域経済の発展と全国的商業流通の存在を指摘している。

呉越国に焦点をあてつつ、五代十国時代の天下観・世界秩序の問題に
迫っていて、大変参考になりました。

2010年12月30日木曜日

海を渡った騎馬文化

諫早直人『海を渡った騎馬文化―馬具からみた古代東北アジア―』(風響社、2010年11月)

風響社のブックレット《アジアを学ぼう》の⑰。
朝鮮半島・日本列島における馬・騎馬文化の受容について考察。
日本だけでなく、韓国の「騎馬民族説」にも言及した後、
慕容鮮卑・朝鮮三国・加耶・倭の馬具を比較して、
「騎馬民族説」の問題点を指摘し、
「新しい騎馬文化伝播モデル」を提示している。

慕容鮮卑の装飾騎馬文化が、なぜ東北アジア各地に
広まったのかについても言及し、東晋とは異なる独自の世界秩序を
可視的に表現しようとしたのではないかとする。

日本だけでなく、朝鮮半島・慕容鮮卑(特に前燕)にも
視野が及んでいて刺激的。
韓国にも「騎馬民族説」があるとは知らなかった。
しかも有力な仮説の一つになっているとは。

2010年12月27日月曜日

平成22年度國學院大學文化講演会

平成22年度國學院大學文化講演会
「円仁石刻と古代の日中文化交流―法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と史実―」
日時:2011年1月23日(日)9:30~
場所:渋谷キャンパス 120周年記念2号館1階2104教室
 *参加多数の場合は、2号館1階2101教室で同時中継。
資料代:500円

講演・報告
10:10~11:10 斉藤圓眞「日中文化交流史上の円仁と天台」
11:10~12:00 酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
13:00~13:50 田凱「法王寺舎利塔地下宮殿の発掘調査」
13:50~14:40 呂宏軍「嵩山の寺院・石刻と交通」
14:50~15:10 氣賀澤保規「隋唐の仏教と石刻」
15:10~15:30 肥田路美「舎利信仰と舎利塔・荘厳具」
15:40~16:00 石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
16:00~16:20 佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
16:40~18:30 討論

国学院大学エクステンション事業課に要申込。
申込締切:2011年1月13日(木)必着

2010年12月25日土曜日

契丹(遼)後期政権下の学僧と仏教

藤原崇人「契丹(遼)後期政権下の学僧と仏教―鮮演の事例を通して―」(『史林』93-6、2010年11月)

契丹(遼)の道宗期に活躍した僧侶の鮮演の事績について、
1986年に発見された「鮮演墓碑」を中心に考察。
契丹後期の学僧と遼皇帝・支配層との関係や、契丹と高麗間における仏教典籍(鮮演の著作)の流通形態の多様性について明らかにしている。

2010年12月21日火曜日

立教大学日本学研究所第41回研究会

立教大学日本学研究所第41回研究会
日時:2011年1月21日(金)17:00~
場所:立教大学池袋キャンパス7号館7202教室

報告
高陽「東アジアの須弥山図~敦煌本とハーバード本を中心に」
李銘敬「遼の非濁をめぐる」

2010年12月19日日曜日

中國古代の財政と國家

渡邊信一郎『中國古代の財政と國家』(汲古書院、2010年9月)

汲古叢書91。
漢代から唐後半期までの財政と国家構造について論じている。
第一部「漢代の財政と帝国」
第二部「魏晋南北朝期の財政と国家」
第三部「隋唐期の財政と帝国」
の三部構成のもと、序説+十六章(補論含む)となっている。

まずは第二部・第三部から読んでいるが、なかなか読み終わらない。
苦手意識とかなんとかいってる場合じゃないなぁ。しっかり読みこまねば。

ちょっとばかり

いろいろと懸案事項が片付き、
さぁ、研究だ! とならなきゃいけないのですが、
なんだか、ちょっとばかり、気合いがぬけちゃってます。
いや、ここまでじゃありませんが。

2010年12月18日土曜日

華竜の宮

上田早夕里『華竜の宮』(早川書房、2010年10月)

ハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊。このブログでは、これまで小説の類は紹介してこなかったので、書くか迷ったのですが、他に媒体もないので書いてみます。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。


先日見に行ったトランスフォーメーション展の影響で、なんだか無性にSF小説が読みたくなってしまい、いくつか立ち読みした中で、おもしろそうだと思って購入。

海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀が舞台。未曾有の混乱を乗り越えるため、積極的に生命操作技術を活用し、人体に応用していった結果、海に適応した海上民が誕生。陸上民と海上民の確執、各国家連合の思惑、そして再び大変動の兆しが……。

まさしく、「変身―変容」の世界。久しぶりにSF小説を読んだけど、引き込まれて、586頁を一気に読んでしまった。


で、今回の小説の舞台はアジア海域。日本政府の末端外交官が主人公なのだけど、中国系の人々も多数登場する。こちらもなかなか魅力的。ただ、SF小説の中の中国系政府は、たいてい非人道的に描かれているが、『華竜の宮』でもひどいことばかりやっている。プロローグで描かれる混乱期には、殺到した避難民を殺戮する人工知性体(殺戮知性体)を世界で初めて発明している。なんだかコードウェイナー・スミスのマンショニャッガー(=人間狩猟機)みたいな設定(なお、1950年代に書かれたためか、こちらはドイツ人が発明)。本編でも、中国が中心となっている〈汎アジア連合〉は、海上民の虐殺に乗り出している。

ここがどうも気にかかる。
SF小説は、未来を扱うことが多いのだけど、当然のことながら、小説が書かれた時期の国家イメージが反映されてしまう。多分、昔は中国が出てくることすらあまりなかったのではなかろうか。その昔、ドイツやソ連が荷っていた(であろう)SF小説中の役割を、今は中国が荷っているのかもしれない。欧米や日本で傾向が違うかもしれないし、そんなにSF小説読んでないから、実際のとこはわかりませんが。調べてみたら面白いかも。

ちなみに、日本政府は相変わらず、官僚主義な上に、汎アジア連合ではなく、欧米・太平洋連合の〈ネジェス〉に加入している。まぁ、これは現在の状況そのままですね。

2010年12月16日木曜日

オランダのアート&デザイン 新・言語

東京都現代美術館で開催中のトランスフォーメーション展のついでに見た
「オランダのアート&デザイン 新・言語」展。
全然期待してなかったのですが、なかなかよかったです。
「人とモノとの関係、そして人と人とのコミュニケーションを問いかける」
オランダのアーティスト/デザイナー4名を紹介する展覧会。
地下一階のみの展示で、ずいぶんこじんまりしている。

インパクトあったのが、マーティン・バースの家具。
                作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
生まれたての小鹿、または、よぼよぼの宇宙生物みたいな机。

                          作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
表面がゆがみまくっている衣装棚。

                作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
一分ごとに人が分針を消したり書いたりする時計。

正直、使い勝手はあんまりよくなさそうだけど、
なんだか楽しくなってくるデザイン。


続くマルタイン・エングルブレクトの作品(5点のインスタレーション)は、
人とのコミュニケーションをテーマにしたもの。
迷惑な電話セールスをけむにまく「迷惑電話撃退マニュアル」や、
隣人とのコミュニケーションを円滑(?)にすすめるための
グッズを販売する「ご近所ショップ」などなど、
ちょっとしたブラックユーモアが効いていて、かなり面白い。


トランスフォーメーション展とは一転して、
シンプルであっさり見ることができ、
ユーモアあふれる作品ばかりで純粋に楽しい。

ただ、ネックはお値段……。
こちらの展覧会だけだと、一般1100円・学生850円。
トランスフォーメーション展があれだけたくさん展示していて、
一般1300円・学生1000円となると、ちょっと割高な気がしないでもないです。
セット券(一般1800円・学生1400円)で入ったほうがいいかもしれません。


会期:2010年10月29日~2011年1月30日
休館日:月曜日、12月29日~1月1日、1月11日
開館時間:10時~18時

2010年12月15日水曜日

ヒトの進化七〇〇万年史

河合信和『ヒトの進化七〇〇万年史』(ちくま新書、2010年12月)

古人類学に関する著書が多数ある科学ジャーナリストによる
最新の人類学概説書。デニーソヴァ人の発見や、
ネアンデルタール人と現生人類の交雑の可能性など、
今年、報告された最新情報を取り込んでいて、ざっと人類史をみるのに便利。

なお、北京原人・ジャワ原人(両方とも学名はホモ・エレクトス)は、
「人類進化学的観点からは傍系にすぎない」として、殆ど触れられていない。

トランスフォーメーション

現在、東京都現代美術館で開催中の
トランスフォーメーション展に行ってきました。
テーマは「変身―変容」。
文化人類学者の中沢新一が共同プロデュースしてます。

この展覧会、前から知ってたのですが、
どうにも食指が動きませんでした。原因はポスター。
著名なアーティストであるマシュー・バーニーの作品が
ポスターになっているのですが、なんとなく苦手な雰囲気。
迷いに迷って、今回やっと見に行くことに。

参加アーティストは15カ国21組。
三階・一階・地下一階と展示スペースがかなり広く、
しかも映像作品が多いので、全部見るのに結構時間がかかります。
結果的に2時間半くらい滞在しました。

印象に残った作品は以下の通り。
マーカス・コーツ《ローカル・バード》:人間に鳥の鳴真似をさせて、
 映像の速度を上げることで本物の鳴き声っぽくみせる作品。
スプツニ子!の作品:生理の疑似体験マシーンや
 カラスとのコミュニケーションなど。
変容人類研究室(名前はうろ覚え):正式な出展作品ではなく、
 アーカイヴコーナーなのだけど、古今東西(旧石器時代から現在まで)の
 様々な「変身―変容」の事例をパネル形式で紹介している。
 映画・マンガ・浮世絵・祭祀・民族文化・壁画・ロボットなどなど。
 今回の展示で一番面白かったです。

個人的な感想をいうと、作品はいろいろあるのだけど、
どうにも全体的にグロテスクで雰囲気が暗い。
なんだかユーモアが足りないような気がしてしまった。

確かに、人間と何か(動植物・無機物)の融合、
人間から何かへの変容というテーマは、
昔から重たいもの、暗いものだと相場が決まっている。
そのことは、変容人類研究室の紹介を見てもよくわかる。

……ということは、今回の展示も昔ながらの枠組みを
超えてないということになりやしないだろうか。
それだったら、SF小説の方がぶっ飛んだ「変身―変容」たくさんあるし。
例えば、コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズとか、
日本では神林長平・北野勇作・大原まり子などなど。


ポスター見たときの直感に従っておけばよかったと反省。
ただ、同時開催の「オランダのアート&デザイン新・言語」が、
予想以上におもしろかったので、まぁ、行ってよかったです。
こちらの感想は後日。

トランスフォーメーション
会期:2010年10月29日~2011年1月30日
休館日:月曜日・12月29日~1月1日
開館時間:10時~18時
観覧料:一般1300円・学生1000円

2010年12月12日日曜日

北朝・隋代の無量寿・阿弥陀像銘

倉本尚徳「北朝・隋代の無量寿・阿弥陀像銘―特に『観無量寿経』との関係について―」(『仏教史学研究』52-2、2010年3月)

北朝・隋代の造像銘における無量寿・阿弥陀像銘の地域的・時代的相違を考察し、北斉時代から阿弥陀信仰が明確化することを指摘。
さらに北斉の阿弥陀像銘に『観無量寿経』に基づく表現が多く見えるとし、
阿弥陀信仰の普及には、太行山脈一帯で活躍した禅師の影響が大きいのではないかとする。

倉本氏は、近年、積極的に北朝時代の仏教石刻史料(造像銘など)を用いて、
仏教史研究をすすめている。造像銘には、高次元の仏教理解とはまた違った、
当時の庶民の仏教信仰の様子が反映されている。
今後、ますます造像銘などを用いた研究が盛んになってほしい。

2010年12月11日土曜日

唐代郷里制下における里正の治安維持活動

石野智大「唐代郷里制下における里正の治安維持活動」(『駿台史学』140、2010年8月)

唐代郷里制下の村落行政で、中心的役割を果たした里正に焦点をあて、
まず里正の別称(里長・里尹・里胥)を確認したうえで、
その治安維持活動の具体像に迫っている。

近年、中国では唐代の末端地方行政の研究が盛んに進められているのに対し、
日本では90年代以降、めっきり研究が減ってしまっている。
21世紀にはいって、史料や研究状況が変わってきているので、
研究が増えてもいいと思うのだけど。

池田学展「焦点」

現在、ミヅマアートギャラリーにて開催中の池田学展「焦点」に行ってきました。
ミヅマアートギャラリーは、飯田橋と市ヶ谷の間にあるギャラリー。
倉庫みたいなシンプルな外観。

今回、個展が開かれている池田学は、
壮大で緻密なペン画を生み出しているアーティスト。
「興亡史」(2006年 200cm×200cm)や「予兆」(2008年 190cm×340cm)
といったど迫力の大作で知られています。

今回の個展では、一転して22cm×27cmと小さな作品にチャレンジ。
壮大で緻密な世界はそのままに、ギュッと凝縮した感じ。

個展のタイトル「焦点」は、これまでの大作とは逆に、
「小さな部分にも焦点を当て、そこから外に広がっている世界を想像する」
ことからきているそうです。

個展の顔ともいえるポストカードに選ばれた作品は「Gate」。
荒れすさぶ海の中に、ぽつんと存在する堤防と、ぽっかりあいた穴。
そのなかには、高速道路を行きかう車、ビルの夜景。
この不思議な世界、一見しただけで引き込まれてしまう。
まさにコンセプトを体現した作品です。

作品は全部で20点。
いずれも日常的感覚からすこしずれた、
奇妙でちょっと不穏な世界が描かれている。
しかも、細部まで作りこまれていて、
たった22×27cmなのに、様々な発見・物語がある。

お気に入りは、Gate、擬態、Bait、海の階段、famer's tank。
他の作品に比べると地味だけど、Fall lineと波もいい感じ。
本筋とは関係ないが、絵のどこかに潜んでいる
著者の名前(学)を探すのも楽しい。

かなりおすすめです。

なお、今月、羽鳥書店より、初画集『池田学画集1』が出版されました。
1年以上かけて制作されたという「興亡史」・「予兆」などの大作や
最新作を含め45点収録されてます。
池田学展ではサイン本を購入できます。こちらもみていて飽きません。

池田学展「焦点」
MIZUMA ART GALLERY(神楽ビル2階) 
飯田橋徒歩8分・市ヶ谷徒歩5分
2010年12月8日(水)~2011年1月15日(土) 11時-19時
休廊日:日・月・祝日 冬季休廊12月26日~1月6日
無料

2010年12月9日木曜日

学習院大学東洋文化研究所主催講演会

学習院大学東洋文化研究所主催講演会
日時:2010年12月10日(金)18:00~20:00
会場:学習院大学・中央教育研究棟国際会議場(12F)
講演:王維坤「西安で発掘されたソクド人墓の最新研究」

2010年12月3日金曜日

新アジア仏教史05中央アジア

奈良康明・石井公成編集委員『新アジア仏教史05 中央アジア 文明・文化の交差点』(佼成出版社、2010年10月)

最初は買うか迷っていたのですが、目次をみてやはり購入。
西域南道・北道やトルファン・敦煌の仏教の状況、
仏教美術がまとめられていて、とても勉強になります。

目次は以下の通り。
第一章「インダス越えて―仏教の中央アジア」:山田明爾
第二章「東トルキスタンにおける仏教の受容とその展開」:橘堂晃一
第三章「中央アジアの仏教写本」:松田和信
第四章「出土資料が語る宗教文化―イラン語圏の仏教を中心に―」:吉田豊
第五章「中央アジアの仏教美術」:宮治昭
第六章「仏教信仰と社会」:蓮池利隆・山部能宜
第七章「敦煌―文献・文化・美術―」:沖本克己・川崎ミチコ・濱田瑞美

特に第三章「中央アジアの仏教写本」がおもしろかった。
20世紀における中央アジアの仏教写本の発見史を述べた後、
1996年の新発見仏教写本(1世紀頃・アフガンで発見)公表後、
様々な言語・文字・内容の写本が続々と出現している状況が記されています。
その原因はアフガン内戦からアメリカのアフガニスタン侵攻、
そして現在に至る混乱で、盗掘が横行したことにあるようです。
そのため、正確な出土地がわからないようですが、2003年と2006年には正式調査によって、バーミヤーンの石窟から仏教写本が発見されたそうです。
現在進行形で次々に新たな研究テーマが生れていく様子がうかがえます。

2010年12月2日木曜日

東アジアの兵器革命

久松崇『東アジアの兵器革命―十六世紀中国に渡った日本の鉄砲―』(吉川弘文館、2010年12月)

朝鮮の役を契機に日本から明朝に伝播した鉄砲を切り口として、
16~17世紀の東アジアにおける兵器革命を描いている。
16世紀明朝に普及していた火器から日本の火縄銃や新式火器への変容、
明朝における制度的限界と後金の積極的受容の様子が示されている。
日本人捕虜(日本降夷)が家丁などに編入されて、
楊応龍の乱やモンゴル・女真との戦いに参加し、
火器の普及に一役買っていたとは驚きました。
東アジアにおける人的移動・交流の研究としても見ることができると思います。

2010年12月1日水曜日

検証「前期旧石器遺跡発掘捏造事件」

松藤和人『検証「前期旧石器遺跡発掘捏造事件」』(雄山閣、2010年10月)

奥付を見ると、岡村道雄『旧石器遺跡捏造事件』(山川出版社、2010年11月)よりも前に出ている。う~ん、気付かなかった。
著者の松藤和人氏は、西日本に基盤を置く旧石器研究者。
藤村新一氏と関係が希薄だったことから、
発掘捏造事件を比較的冷静に叙述している。
その分、インパクトは弱い。
ただ、「前、中期旧石器問題調査研究特別委員会」における
東北大閥と明大閥の対立などの内幕を書いていて興味深い。
また、最後に前期旧石器遺跡と目されている
岩手県金取遺跡・島根県砂原遺跡を紹介しているが、
疑義が呈されている点にはさして触れていない。