2010年5月3日月曜日

星新一展


世田谷文学館で開催中の「星新一展」に行ってきました。

まぁ、実のところ、そんなに星新一作品を読んでいるわけではないし、
特に好きというわけでもないのですが、
最相葉月『星新一―一〇〇一話をつくった人』(新潮社、2007年3月)を
読んで以来、なんとなく気になる作家なわけです。

偶然、星新一の父親の星一(星製薬の創業者)が書いた
「親切第一」という揮毫を手に入れたこともあり、
作品よりも、星家の歴史みたいなものに興味がある感じ。
母方の祖父が人類学の草分けの小金井良精で、
祖母が森鷗外の妹というのも面白い。

というわけで、せっかくのゴールデンウィーク、
どこにも行かないのもなんなので、見に行ってきました。

星新一の子ども時代の日記や絵、お気に入りのぬいぐるみに帽子、
祖父の小金井良精が集めた根付や、
酒場で著名人に書いてもらったコースター裏のサインなどなど、
星新一の素顔が垣間見える遺品・愛用品から展示はスタート。

星製薬の看板や製品、星一の制服やパスポート・揮毫など、
星家にまつわるものも展示してある。
残念ながら小金井良精の遺品はなかった。
空襲で燃えてしまったものもあるだろうけど、
日記とか論文とか展示してほしかったなぁ。


星家の展示が終わると、いよいよSF作家星新一の登場。
星製薬の社長時代の日記や小説の構想、
息抜きで参加した「日本空飛ぶ円盤研究会」の資料、
『宝石』に作品を転載してくれた江戸川乱歩の推薦文などなど。

圧巻はショートショートの下書き。
便箋の裏に、細かくて汚い字がびっしりと書いてある。
解読を試みたものの、早々に断念。到底、なんだかわかりゃしない。
原稿に清書した字は特徴あるけど結構読みやすいのだけど。

アイディアをメモ書きした紙片もおもしろい。
「オレハ宇宙人ダと思いこみ 地球セイフクをおっぱじめる」
「ゼイムショニモチサラレタ フクノカミ」などなど。
本当に断片的だし、実際に作品になったかどうかはわからないけど、
なんだか面白くなりそうな設定。

一方で、創作の苦悩を書いたエッセイや講演(CDで試聴できる)もある。
研究とは違うのだけど、通じる部分もある感じ。
アイデアは「得られるものではなく、育てるものである。
雑多な平凡な思いつきを整理し、選択し手を加えることに
精神を集中してつづければ、なにか出てくるのは確実である」(図録50頁)
という部分なんかは、特に参考になった。


と、そんなこんなで、予想以上に楽しい展覧会でした。
昨年までNHKで放映された「星新一ショートショート」も
ついつい見てしまったので、結局二時間近く滞在。
充実の一日でした。

星新一展は世田谷文学館で6月27日まで開催中。
開館時間:午前10時~午後6時。
観覧料:一般700円 学生500円