2010年8月4日水曜日

鮮卑拓跋氏の南下伝説と神獣

佐藤賢「鮮卑拓跋氏の南下伝説と神獣」(『九州大学東洋史論集』38、2010年4月)

考古学・環境史の成果と文化人類学・神話学の知見を援用し、
鮮卑拓跋氏の「南下伝説の背後に潜む史実」の解明を試みている。
史料の殆どない時代の史実に、どのように迫って行くか、
様々な学問分野を取り込んでいて興味深く、参考になります。

中国貴族制と「封建」

渡邉義浩「中国貴族制と「封建」」(『東洋史研究』69-1、2010年6月)

中国の貴族制は「身分制として皇帝権力により組織された」とし、
なかでも両晋南北朝期の貴族制は、爵制を中心とした
「封建」という理念によって正統化されたとする。
そして、唐代に貴族の基準が、爵位ではなく官品に移行したことにより、
唐の貴族の自律性・世襲性が失われていくとする。

社会的身分としての貴族と国家的身分制としての貴族制とを
分離して考える必要性を指摘するなど、
様々な論点が提示されていて、とても刺激的。

貴族制の根本に位置付けられている爵制だが、
北朝の爵制は、まだはっきりしてない部分が多いので、
今後、研究を進めていく必要がありそう。