2010年3月31日水曜日

中国学のパースペクティブ

高津孝編訳『中国学のパースペクティブ―科挙・出版史・ジェンダー―』(勉誠出版、2010年4月)

帯には「宋代史を中心とした、欧米の最先端の学的成果」とある。
欧米の研究者が、近年、日本で発表した論考を翻訳している。

目次は次の通り
第一部:ポストモダン以降の中国研究
 トマス・リー「東アジアの教育、文化的遺産への視角」
第二部:中国古典世界と女性学
 ベヴァリー・ボスラー「帝政中国におけるジェンダー史資料」
 ベヴァリー・ボスラー「帝政中国におけるジェンダー史研究の方法論―朱熹の唐仲友告発事件を例として」
 ジョン・チェイフィー「宋代における垂簾聴政(皇后摂政)―権力・権威と女らしさ」
第三部:宮廷史研究
 ジョン・チェイフィー「宋代宗室(imperial clan)の政治的社会的変容」
 クリスチャン・ラムルー「宋代宮廷の風景―歴史著作と政治空間の創出(1022-1040)」
第四部:科挙研究の新展開
 ヒルデ・デ・ヴィールドト「南宋科挙の学術史」
 ヒルデ・デ・ヴィールドト「帝政中国の情報秩序における未開拓の側面―政府文書の普及と商業出版」
第五部:地域史と都市空間
 ピータ・ボル「地域史の勃興―南宋・元代の婺州における歴史、地理学と文化」
 クリスチアン・ペー「言葉による交通―唐宋代中国における、都市空間と、テキスト地理学の変容」
第六部:出版文化とチャイニーズネス
 ルシル・チア「中国の出版・書物文化における大変貌―初期スペイン領フィリピンにおける中国の書物と出版」
第七部:彫像の語る庶民文化
 アラン・アロー「湖南中央部の土着彫像についての分析的評論―神々、先祖、師への崇拝」

これだけまとまって近年の欧米の研究者の研究が紹介されるのは珍しい。
面白そうな論文がならんでいる。
まだ、あとがきの論文紹介しか読んでないけど、
読み応えありそう。

新・現代歴史学の名著

樺山紘一編著『新・現代歴史学の名著―普遍から多様へ―』(中公新書、2010年3月)

樺山紘一氏が編集した『現代歴史学の名著』(中公新書、1989年6月)の続編。
「はじめに」にのっている前著のラインナップを見てびっくり。
1989年に編纂されたとは到底思えない。60・70年代時点の「現代」な気がする。

で、今回のラインナップは以下の通り(評者・著者は省略)。
『中国の科学と文明』、『文明の生態史観』、『ワイマール文化』、
『近代世界システム』、『モンタイユー』、『チーズとうじ虫』、
『もうひとつの中世のために』、『オリエンタリズム』、
『無縁・公界・楽』&『日本中世の非農業民と天皇』、
『定本 想像の共同体』、『イングランド社会史』、『記憶の場』、
『ファロスの王国』、『帝国主義と工業化1415~1974』、
『歴史と啓蒙』、『1917年のロシア革命』、『敗北を抱きしめて』、
『近代移行期の人口と歴史』&『近代移行期の家族と歴史』

このなかで持っている本は、たったの5冊……。
前から読もうか迷っていた『チーズとうじ虫』、
『敗北を抱きしめて』は、読みたくなってきた。
近日中に古本屋に走ろう。

前著が日本と欧米に関する本しか取り上げていなかったのに対し、
今回はニーダムの『中国の科学と文明』とサイードの『オリエンタリズム』、
アンダーソンの『想像の共同体』などを紹介している。
とはいえ、偏りはいなめない。
あと、『文明の生態史観』をいま取り上げる意味がよくわからない。

まぁ、読者によって取り上げてほしい本が違って当然なので、
これはこれでいいのかもしれない。
日本史研究者やアジア史研究者が編纂したら、
また違ったラインナップになることは間違いない。
いろんな立場から、それぞれの『現代歴史学の名著』を
出してくれればいいのだけど。

六本木の猫道

六本木アートナイトの真の目玉プロジェクト
浅野耕平≪六本木の猫道≫

ガイドブックには以下のようにありました。
「街中に小さな幸せをふりまくという六本木の猫たちと、
モニターを通じて遊ぶことができるインタラクティブアートです。
……猫たちは街の5ヶ所にすんでいます。
……ヒントをもとに彼らを探しに行こう。」

ということで、探しに出かけました。
ヒントも何もガイドブックの地図に場所書いちゃってあるし……。

メイン会場の国立新美術館、東京ミッドタウン、六本木ヒルズは
もちろんのこと、喫茶店やTSUTAYAの店先にも置いてある。
まずは国立新美術館へ。

…… あれ、いない。 しばし待てど出てこない。

気を取り直して、別の場所へ。
いた! 
と思ったら走り去ってしまった……。

なんだか不完全燃焼のまま、わき道を歩いていると、
本物の六本木猫が登場。
気持ち良さそうにあくびしてます。

さ~、気合い入れて~。



ゆっくり休もう。

てな感じ。
この後も、出るわ出るわ、猫が4・5匹登場。
さすが、六本木の猫道。
画面上だけでなく、本物にも出会えるとは。

さてさて、このあと、無事全箇所回ることができました。
一番、戯れることができたのは、六本木ヒルズだったような気がします。
画面をさわったり、その前で手をふったりすると、中の猫が反応する。
明らかに録画なのに、確かに反応しているような動き。
う~ん、不思議だ。

猫と現代アート。
ありそうでなかったこの組み合わせ。
もっと増えたらいいのになぁ。