2012年10月31日水曜日

李白

金文京『李白―漂泊の詩人 その夢と現実』(岩波書店、2012年10月)

岩波書店の「書物誕生 あたらしい古典入門」シリーズの最新刊。このシリーズは、「書物誕生」のはずなのに、『論語』・『史記と漢書』・『老子』などとともに、陶淵明・杜甫・李白の三人の詩人がなぜか取り上げられている。

『杜甫』も『陶淵明』も、あまり他の概説書と変わり映えしない印象だったけど、『李白』は他書にない李白像が示されている。

第Ⅰ部では、李白の出自(胡商)、李白伝説、李白詩文集の形成を紹介。第Ⅱ部では、「山人」の視点から李白の漂泊の人生をとらえなおしている。功名への野望を抱き、地方官に無心し、道教にそまる李白。第Ⅱ部第五章では、「政治的感覚に欠如した頓珍漢な人間であった」ことを指摘している。第Ⅱ部第Ⅱ章での、胡商出身であるがゆえに、士人の儒教的行動様式にうとかったという指摘にも眼からウロコが落ちた。第Ⅰ部・第Ⅱ部ともに興味深く、一気に読んでしまった。

歴史学研究会創立80周年記念シンポジウム

歴史学研究会創立80周年記念シンポジウム
テーマ 歴史学のアクチュアリティ
日時:2012年12月15日(土)13時~18時
会場:明治大学リバティタワー1011教室

報告
長谷川貴彦「現代歴史学の挑戦―イギリスの経験から―」
岸本美緒「中国史研究におけるアクチュアリティとリアリティ」
安田常雄「方法としての同時代史」
村井章介「〈境界〉を考える」
栗田禎子「現代史とは何か」
コメント 浅田進史・藤野裕子

参加費500円

2012年10月23日火曜日

第23回書学書道史学会大会

第23回書学書道史学会大会
場所:別府大学(別府キャンパス)
日程:2012年11月17日(土)・18日(日)

17日 研究発表 32号館内500番教室
14:30~15:00 陳柏伩「筆力の構築〈骨〉〈筋〉〈肉〉の概念より―漢魏六朝唐の書論を中心に―」
15:00~15:30 福光由布「蘇軾詩における「草書未暇縁怱怱」に関する一考」
講演
15:40~16:50 胡平生「簡牘の偽物問題について」

18日 研究発表 メディア教育・研究センター内4Fメディアホール
09:00~09:30 川合尚子「張廷済の金石学―翁方綱・阮元との交友と影響―」
09:30~10:00 緑川明憲「大師流能書・藤木敦直伝記考証」
10:00~10:30 丸山果織「戦後日本の「前衛書」の展開―森田子龍の作品分析をとおして―」
10:40~11:10 尾川明穂「歴代書跡に対する董其昌の鑑定・評価基準―褚摹系「蘭亭序」に近似する一群の書跡の存在から―」
11:10~11:40 矢野千載「里耶秦代簡牘に見る秦代書法―多様な秦隷、簡牘上の小篆、楚簡との関わりを中心に―」
13:50~14:20 高木義隆「金章宗の所蔵印と痩金書」
14:20~14:50 横田恭三「前漢墓出土「告地書」考」

2012年10月12日金曜日

虚構ゆえの真実

ジョン・R・マクレー著、小川隆解説『虚構ゆえの真実―新中国禅宗史』(大蔵出版、2012年5月)

出版直後から、『虚構ゆえの真実』というタイトルに魅かれて、気になっていたのだけれど、禅宗史という慣れないジャンルであることから、敬遠してしまっていた。しかし、最近、わけあって、小川隆氏の唐代の禅宗に関する本を三冊読んだので、チャレンジしてみることに。冒頭で小川隆氏が、従来の禅宗理解とマクレー氏の著作の新しさ・課題を解説していて、入りやすい。

目次は以下の通り。
小川隆解説「破家散宅の書」
第一章「法系を見る―禅仏教についての新しい視座」
第二章「発端―菩提達摩と東山法門を区別しつつ接続する」
第三章「首都禅―朝廷の外護と禅のスタイル」
第四章「機縁問答の謎―誰が、何を、いつ、どこで?」
第五章「禅と資金調達の法―宋代における宗教的活力と制度的独占」
第六章「クライマックス・パラダイム―宋代禅における文化的両義性と自己修養の諸類型」

一見してわかるとおり、通常の仏教史とは全く違ったスタイルをとっている。従来の伝灯・法系を軸とした禅宗史を宋代に構築された「虚構」とみなし、その禅宗史像を白紙に戻して、原始禅(達摩・恵可)、初期禅(600~900頃)、中期禅(750~1000頃)の禅について考え直している。さらに、「虚構」と言って切り捨てるのではなく、「虚構」であるがゆえに重要であるとして、宋代の禅についても検討している。

ジャンル・時代は違えど、今、考えている問題と、方法論・問題意識の点で大いに参考になった。本書中で多くの課題・研究テーマを開拓しているが、マクレー氏は2011年10月に64歳で亡くなってしまったため、今後の発展を見ることはできない。非常に残念。

知日 特集猫

蘇静主編『知日・猫』(中信出版社、2012年8月)


中国で出版されている日本文化を知る雑誌『知日』。
8月に出た第5号では、日本の猫をクローズアップ。
日本文化を知るために、猫に着目するとはさすが。
しかも、中途半端な特集ではなく、全183頁中、158頁が猫。
(そのうち、藤子・F・不二雄博物館が24頁)
写真も豊富で眺めているだけで満足できる。
内容は、猫漫画、猫島(田代島)、猫カフェ、
荒木経惟とチロ、かご猫、駅長たまなどなど。

東方書店の9月のベスト10(中文書)では、
なんと堂々の第二位。やはり猫好きって多いんだなぁ。
ちなみに『知日』の第6号は、鉄道らしい。
中国人は、鉄道マニアをどうみているのだろうか。
ちょっと気になる。

2012年10月11日木曜日

2012年度佛教史学会学術大会

2012年度佛教史学術大会
日時:2012年11月17日(土)
場所:大谷大学一号館1213教室・1214教室

報告
【日本】10:00~12:00 1214教室
米澤実江子「袋中良定『摧邪輪抄書』について」
徳永健太郎「南北朝の戦争と将軍家御師職」
岩田文昭「近角常観研究の現状と課題」

【東洋】10:00~12:00 1213教室
横山剛「塞建陀羅造『入阿毘達磨論』成立考―『倶舎論』との先後関係をめぐって―」
倉本尚徳「北朝隋唐造像銘における天・浄土に関する用語の時代的変化―龍門石窟を中心に―」
藤井政彦「道宣における感通について」

【合同】13:00~15:00 1214教室
吉田隆英「分類と範疇―九品往生の源流―
河上麻由子「「大隋九眞郡寶安道場之碑文」について」
手島崇裕「平安中後期の僧侶の渡海にみる日中仏教交渉の展開」

【大会講演】15:10~16:40 1214教室
佐藤智水「中国北朝造像銘の調査・研究から見えるもの」


それにしても聞きたい報告がいくつもある。
河上氏の紹介する碑文は、確かベトナムにある隋代の碑。
どんな内容なのか気になる。

2012年10月8日月曜日

2012年度東南アジア考古学会大会

2012年度東南アジア考古学会大会
日時:2012年11月17日(土)、18日(日)
会場:17日(土)昭和女子大学・本部館3階大会議室
   18日(日)昭和女子大学・研究館7階 7L02
資料代:500円

東南アジア水中考古学最前線
プログラム
11月17日(土)
13:10~15:10 Dr. Eusebio Z. Dizon「1600年の沈没船、サン・ディエゴ号の調査」
15:10~15:20 休憩
15:20~16:20 林田憲三「蒙古襲来絵詞に描かれた元寇船―絵画研究と出土遺物による解釈」   
16:20~17:20 Randall J.佐々木「ベトナム・バクダン川の元寇遺跡の調査」

11月18日(日)
10:10~11:00 林原利明「日本における近年の水中考古学調査」
11:00~11:30 向井亙「タイ国における水中考古学調査」
12:30~13:30 会員総会
13:30~14:00 菊池誠一「ベトナムにおける水中考古学調査」
14:00~14:30 坂井隆「インドネシアにおける水中考古学調査」
14:30~15:00 石村智「パラオにおける水中考古学調査」
15:30~16:30 総合討論(司会:田中和彦)

以前、本ブログで紹介した『沈没船が教える世界史』の作者が報告するベトナムのバクダン(白藤)川の元寇遺跡の報告が気になって紹介。2009年の段階で、木杭が発見されていたが、その後どうなったのだろうか。

2012年10月4日木曜日

2012年度東洋史研究会大会

2012年度東洋史研究会大会
日時:2012年11月3日(祝)午前9時~午後5時
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)

発表題目
午前の部
戸川貴行「東晋南朝の建康における華林園について―「詔獄」を中心としてみた―」
石野一晴「曇陽大師の追憶―明末における士大夫と「宗教」―」
宮宅潔「秦代軍事制度の諸問題」
小島浩之「唐代の泛階と人事政策」

午後の部
新谷英治「二種の『キターブ・バフリエ』」
磯貝真澄「一九世紀後半ロシア帝国ヴォルガ・ウラル地域におけるイスラーム法実践―遺産分割案件の処理を事例として―」
徳永洋介「北宋時代の治安政策と盗賊重法」
武上真理子「漢訳西学書に見る知の往還―江南製造局訳『地学浅釈』を例として―」
足立啓二「二十世紀前期の諸論争を振り返って」

大会参加費(資料・要旨代含む)500円

2012年10月3日水曜日

2012年度内陸アジア史学会大会

2012年度内陸アジア史学会大会
日時:2012年11月4日(日)13:00~17:10
場所:北海道大学 札幌キャンパス 人文社会科学総合研究棟 

公開講演 人文社会科学総合研究棟409室
13:00~14:00 荒川正晴「前近代中央アジアの国家と交易 」

研究発表 14:15~17:10
長峰博之 「カーディル・アリー・ベグとその史書について―ジョチ・ウルス「内部史料」の史料的可能性とその歴史認識―」
高本康子「大陸における対「喇嘛教」活動―満洲国興安北省を中心に―」
秋山徹 「ロシア統治下におけるクルグズ首領層の権威―遊牧世界とイスラーム世界のあいだで―」

嶺南士氏の勢力形成をめぐって

川手翔生「嶺南士氏の勢力形成をめぐって」(『史観』167、2012年9月)

後漢末に嶺南に勢力をはった士燮について検討。
士燮の官歴・歴代の交趾刺史との関係を踏まえ、
彼が嶺南で勢力を拡張した要因を探る。

まず、なにより士燮で論文が出たことにびっくり。
日本では後藤均平氏(「士燮」『史苑』32‐1、1972年)以来とのこと。
在地豪族としての影響力が希薄だったとする点に
先行研究との大きな違いがある。

金輪王、封禅す

笠松哲「金輪王、封禅す―武后の君主権と封禅―」(『洛北史学』14、2012年6月)

唐高宗の封禅が、周辺民族との君臣関係を締約し、天下秩序を形成する会同儀礼であったことを示した前稿(「天下会同の儀礼―唐代封禅の会盟機能について」『古代文化』61‐1、2009年)に続き、武周の則天武后(天冊金輪聖神皇帝)の封禅の機能について検討。
武后の封禅儀礼の内容を確認したのち、封禅に至るまでの武后の尊号の変遷を追い、その尊号の意味を『大雲経』などによって示し、金輪王として武后が封禅に臨んだ意義を解明している。

講演会:東洋学・アジア研究の新たな地平を切り拓く

講演会:東洋学・アジア研究の新たな地平を切り拓く
日時:2012年12月8日(土)13:30~17:00
会場:東京大学法文1番大教室

講演
金文京「東アジア比較文学の構想」
川原秀城「17‐18世紀:西欧学術の東漸と中国・朝鮮・日本」

入場無料・申込不要