2010年4月25日日曜日

歌川国芳―奇と笑いの木版画

府中市美術館で開催中の「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展に
行ってきました。

これまで特に浮世絵には興味なかったのですが、
歌川国芳の「奇と笑い」に焦点を当てていて、
さらに裏テーマとして「猫」があると知り、
だんだん、行ってみたくなったわけです。

ポスターもいい感じ。


巨大な魚の上に、別の浮世絵から踊る猫を持ってきている。
「猫もがんばっています」とあるけど、踊ってるだけだしなぁ。

展示会場は、おおまかにわけて三部構成。
第一部「国芳画業の変遷」は、国芳の生涯をたどりつつ作品を展示。
彼の出世作「通俗水滸伝豪傑百八人一個」も見ることができる。
第二部「国芳の筆を楽しむ」は、肉筆や風景画から国芳の特色を見せる。
そして第三部「もう一つの真骨頂」では、
「奇と笑いと猫の画家」として、彼の戯画や猫作品を展示している。

第一部・第二部ともに面白かったのですが、
なんといっても第三部が一番でした。
三枚つながりの作品、例えば「鬼若丸と大緋鯉」や「宮本武蔵と巨鯨」などの
迫力もものすごかったけど、
動物を擬人化した「道外獣の雨やどり」や、
ひな人形が喧嘩していて、犬の張り子が止めに入る
「道外十二月 三月ひいなのいさかい」といった作品がとても楽しい。
人形だから顔色変えないままで喧嘩している。止めに入った張り子も笑顔のまま。
けっこう凄惨な場面のはずだけど、緊迫感がない。


そしてたくさんの猫たち。
美人画の猫たちもあくまで浮世絵なんだけど、なんだかリアル。



他にも猫を擬人化した「くつろぐ夏の猫美人たち」や、
「おぼろ月猫の盛り」(吉原の猫版)、「流行猫の曲手まり」もいい感じ。
着物の柄に鈴や小判やタコをあしらっていて、
細部まで遊び心がつまってる。

東海道五十三次にかけた「猫飼好五十三疋」は、
東海道の宿駅をもじって猫の仕草にあてている。
例えば、戸塚は「はつか」、藤沢は「ぶちさば」、
保土ヶ谷は「のどかい」大磯は「おもいぞ」といった感じ。

まぁ、少々無理なもじりもあるけど、描かれた猫はどれも愛嬌ある。
歌川国芳の猫好きが伝わる楽しい作品。

それにしても江戸時代って、
面白い作品が次々生まれた時代なんだなぁ、と改めて実感。

「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展は、
府中市美術館で5月9日まで開催中。
料金は、大人600円・学生300円とすこぶるお得。


『水滸伝』の衝撃

稲田篤信編『アジア遊学131 『水滸伝』の衝撃―東アジアにおける言語接触と文化受容』(勉誠出版、2010年3月)

『アジア遊学』の最新号は水滸伝特集。
「中国における成立と展開」・「東アジア言語文化圏の中で」・
「水滸伝と日本人」の三部構成。
目次は以下の通り。

○中国における成立と展開
佐竹靖彦「水滸伝の時代―江湖無頼の英雄から中華の英雄へ」 
佐藤晴彦「『水滸傳』は何時ごろできたのか?―異体字の観点からの試論」 
小松謙「水滸雑劇の世界―『水滸伝』成立以前の梁山泊物語」 
笠井直美「誰が小衙内を殺したか―『水滸伝』における「宣言としての暴力」の馴致」 
周以量「明清の水滸伝」 
劉岸偉「李卓吾は何故『水滸伝』を批評したのか」 
岩崎菜子「現代中国の伝統文化復興と蘇る『水滸伝』もの」 

○東アジア言語文化圏の中で
竹越孝「『語録解』と『水滸伝』」 
岡田袈裟男「異言語接触と『水滸伝』注解書群」 
小田切文洋「水滸語彙への関心と水滸辞書の成立」 
奥村佳代子「岡島冠山の唐話資料と『忠義水滸伝』―「水滸伝」読解に与えた見えない影響」 
稲田篤信「平賀中南―「水滸抄訳序」注解」 
中村綾「『水滸伝』和刻本と通俗本―『忠義水滸伝解』凡例と金聖歎本をめぐって」

○水滸伝と日本人
渡邉さやか「『本朝水滸伝』と弘前の祭礼」 
田中則雄「水滸伝と白話小説家たち」 
小澤笑理子「上田秋成と『水滸伝』一考察―魯智深で読む「樊噲」」 
井上啓治「京伝『忠臣水滸伝』と『水滸伝』三種」 
藤沢毅「栗杖亭鬼卵作『浪華侠夫伝』―枠組みと反体制としての「水滸伝」」
鈴木圭一「建久酔故傳」 
神田正行「『水滸伝』の続書と馬琴」 
黄智暉「曲亭馬琴における「翻案」と「続編」の問題―『水滸伝』と『水滸後伝』の受容をめぐって」 
石川秀巳「〈江戸の水滸伝〉としての『南総里見八犬伝』」 
佐藤悟「『傾城水滸伝』の衝撃」 
安田孝「露伴の翻案・翻訳」

どちらかといえば日本における『水滸伝』受容がメイン。
竹越孝「『語録解』と『水滸伝』」は、
朝鮮で作られた水滸伝語彙辞典を取り上げている。