2011年9月18日日曜日

モノが語る日本対外交易史

シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア著、河内春人訳『モノが語る日本対外交易史 七-一六世紀』(藤原書店、2011年7月)

序 章 ヨーロッパから見た東アジア世界
〈コラム序〉 多国間比較研究への展望
第一章 朝貢交易 7 ― 9世紀
〈コラム1〉 新羅物への憧憬
第二章 唐物への殺到 9 ― 12世紀
〈コラム2〉 東アジアの錬金術と日本の水銀
第三章 海を渡ったモノ
〈コラム3〉唐物への憧憬
第四章 自由貿易の高まり 12 ― 14世紀
〈コラム4〉 倭物に対する称賛
第五章 増大する輸出 14世紀後半 ― 16世紀
〈コラム5〉 東アジアを廻りまわる国際特産品 ―― 紙と扇
終章 唐物輸入から倭物輸出へ
解説 (鈴木靖民)

近年、モノからみた東アジア世界に注目が集まっていて、多くの成果が出てきている。本書はそのはるか昔の1988年にフランスで出版され、その後2006年に出た英語版を増補翻訳したもの。
朝貢貿易(遣唐使)の時代から遣明使の時代まで、日本対外交易(主に中国大陸)をモノを中心に平易に描いている。日本の対外貿易の傾向の変化だけでなく、輸出物が天然原料(金属・硫黄・木材)から高級工芸品(漆器・扇子・刀剣など)にかわっていくさまが描かれていて面白かった。特に刀剣の輸出が興味深い。

内陸アジア言語の研究26

『内陸アジア言語の研究』26(中央ユーラシア学研究会、2011年8月)

齊藤茂雄「突厥「阿史那感徳墓誌」訳注考―唐羈縻支配下における突厥集団の性格」
岩尾一史「古代チベット帝国支配下の敦煌における穀物倉会計―S.10647+Pelliot tibetain1111の検討を中心に」
西田祐子「『新唐書』回鶻伝の再検討―唐前半期の鉄勒研究に向けて」
松井大「古ウイグル語文献にみえる「寧戎」とベゼクリク」
趙振華著、中田裕子訳「唐代少府監鄭巖とそのソグド人祖先」

今号は唐代に関する論文が殆ど。いずれも大変興味深い。
齊藤論文は、墓誌を詳細に読み解いたうえで、
唐朝支配下の突厥遺民の様相について明らかにしている。
西田論文は、『新唐書』回鶻伝前半部(8世紀半ばまで)と先行記事とを詳細に比較し、回鶻伝前半部の編纂方針(先行記事の切り貼り)を明らかにし、編者に「鉄勒=ウイグル」という前提が存在したことを確認。『新唐書』回鶻伝前半部は、「歴史学的考察の根拠として用いることができない」とする。
趙論文は、墓誌を用いて、ソグド人でありながら、
漢姓(鄭)を名乗った鄭氏の存在を明らかにした。

2011年度史学会大会東洋史部会

2011年度史学会大会東洋史部会   日時:2011年11月6日(日)
場所:東京大学法文1号館113番教室
 

研究発表 午前の部 9:30~12:00
山下真吾「在イスタンブル写本コレクションにおける歴史書の位置づけ」

佐々木紳「1870年代オスマン帝国の憲政論議―『統一』(イッティハード)紙上の議論を中心に―」
片倉鎮郎「19世紀前半の英領インドにおけるブー・サイード朝代理人」

秋山徹「混成村落の創設にみる20世紀初頭のクルグズーロシア関係」
植田暁「1916年反乱におけるクルグズ―地域間比較の試み―」

研究発表  午後の部12:30~17:30
植松慎悟「王倚新と光武帝期の正統観について」

三田辰彦「東晋中葉の尊号問題―皇太妃号の議論を中心に―」
角山典幸「北魏洛陽城再考―金墉城の機能を中心として―」
江川式部「唐代の家廟―とくに唐後半期における立廟とその意義について―」
王博「唐・宋「軍礼」の構造とその変容」
小二田章「茶樹を抜いてはいけないか?―北宋期地方統治と治績記述の形成をめぐって―」 
伊藤一馬「南宋成立直後の陝西地域と中央政府」
陳永福「明末復社における人的結合とその活動」
豊岡康史「珠江河口の海賊問題と“ヨーロッパ人”(1780-1820)」
北村祐子「南京政府時期における南京市の土地登記事業」