2011年7月31日日曜日

外邦図

小林茂『外邦図―帝国日本のアジア地図』(中公新書、2011年7月)

第二次世界大戦終結まで、日本がアジア・太平洋地域について作成した「外邦図」の歴史についてまとめたもの。陸軍が中心となって、戦争・植民地支配のために、朝鮮・台湾・中国・東南アジアで作成されていく様子がえかがれている。

外邦図は、未だ積極的に活用されているとはいえないそうだが、環境史にとって意義ある資料であるとする。確かに口絵にのっている中国安徽省の空中写真をみると、ずいぶん景観が変化していることがわかる。また、広開土王碑との関係で有名な酒匂景信の手描き地図(洞溝周辺)にも言及している。前近代の遺構・遺跡を研究する際にも活用できそう。

韋昭研究

高橋康浩『韋昭研究』(汲古書院、2011年7月)

三国時代の呉に仕えた韋昭の専門書。
第一篇「学者としての韋昭」(4章構成)では、
『国語解』(『国語』の注釈)と『漢書音義』を中心に、
韋昭の学問の特徴を述べる。
鄭玄の学問との関係が興味深い。
後漢から三国期の学問状況がうかがえる。

第二篇「孫呉人士としての韋昭」(3章構成)では、
「博奕論」・「呉鼓吹曲」・『呉書』を取り上げ、
韋昭と呉政権、特に孫呉正統論との関係を述べている。
第二篇はやや特定の先行研究に
よりかかっているように感じてしまった。

2011年7月27日水曜日

これから出る(出回る?)本2

東洋文庫から2011年3月に
 東洋文庫中国古代地域史研究班編『水経注疏訳注(渭水編 下)』が出た模様。
書店にもそろそろ出回るのではなかろうか。
(もしかしたら、既に出回ってるかも)  
『水経注』渭水編の訳注だけでなく、
『水経注疏』関係の檔案を調査しているのもおもしろそう。


目次は以下の通り
序言  東洋文庫中国古代地域史研究班(太田幸男)
窪添慶文「魏晋南北朝時期の長安」
池田雄一「『水経注疏』関係檔案と同書稿本」 
池田雄一・多田狷介・石黒ひさ子・山元貴尚「傳斯年図書館所蔵『水経注疏』関係の檔案」
太田幸男「陳橋駅先生との会見記 附:陳橋駅先生『水経注』研究著作目録」
多田狷介「西安考古訪問記」
『水経注疏』訳注凡例 
『水経注疏』巻十九 渭水下 
『水経注疏』影印 
索引       

これから出る本

8月に勉誠出版から刊行されるアジア遊学 144は、
田村義也・松居竜五編「南方熊楠とアジア」。
これはおもしろそう。

巨人熊楠における古典・西欧近代学問・近代東アジアとの
関係・まなざしを解き明かしてくれそう。
目次を読むだけでわくわくしてくる。

目次は以下の通り
◆緒言
田村義也「南方熊楠の現在―資料刊行の進行と南方像の変遷」
◆座談会 
飯倉照平、小峯和明、奥山直司、田村義也(司会)「南方熊楠とアジア」
◆東アジア的「知」と学問
小峯和明「南方熊楠・東アジアへのまなざし」
武内善信「「都会っ子」としての南方熊楠 ―東アジア的「知」との邂逅」
飯倉照平「南方熊楠と中国書」
コラム 池田 宏「南方熊楠と漢籍―南方熊楠邸での漢籍調査に従事して」
高陽「南方熊楠の比較説話をめぐる書き込み―『太平広記』、『夷堅志』と『今昔物語集』とのかかわりを中心に」
 平川恵実子「『沙石集』と南方熊楠」
◆西欧近代学問との邂逅
小山騰「南方熊楠と英国の日本学」
田村義也「『ネイチャー』誌論考の中のアジア―南方熊楠の最初期英文論考」
志村真幸「『ノーツ・アンド・クエリーズ』誌掲載論文の中のアジア」
松居竜五「図書館の中のユーラシア大陸――南方熊楠「ロンドン抜書」における旅行書」
神田英昭「南方熊楠・土宜法龍とチベット―一八九三年~一八九四年における往復書簡を中心に」
奥山直司「南方熊楠と十九世紀ヨーロッパのインド学」
唐澤太輔「南方熊楠の夢の世界」
杉田英明「知識の泉としての『アラビアン・ナイト』― バートン版と南方熊楠」
増尾伸一郎「南方熊楠の比較説話研究とW・A・クラウストン―”Popular Tales and Fictions”の受容をめぐって」
◆近代東アジアへのまなざし
ブリジ・タンカ「アジアにおける普遍性―南方熊楠とベノイ・サルカル」
武上真理子「南方熊楠と孫文―交錯するアジアへのまなざし」
橋爪博幸「南方熊楠の朝鮮半島へのまなざし」
岸本昌也「在英日本人表誠金献納始末―日清戦争と南方熊楠」
千本英史「新聞「日本」と南方熊楠 附・全集未収録論考「神前女子不脱帽一件」」
◆熊楠の思想と生活
コラム 辻 晶子「南方熊楠の稚児論」
コラム 広川英一郎「南方熊楠とその門弟」
コラム 安田忠典「南方熊楠と温泉」
◆博物館紹介
田村義也「南方熊楠記念館/南方熊楠顕彰館―一次資料を所蔵・展示する二施設」
◆書籍紹介
松居竜五「新しい『南方熊楠大事典』から始まる新しい南方熊楠研究」

2011年7月23日土曜日

古代東アジアの道路と交通

鈴木靖民・荒井秀規編『古代東アジアの道路と交通』(勉誠出版、2011年7月)

2010年6月に國學院大学で開催された古代交通研究会大会のシンポジウムがもとになった論文集。四部構成で、日本・中国・東アジア諸国の古代の道路が検討されている。

鈴木靖民「序言 古代東アジアの道路と交通」 
第Ⅰ部 古代の直線道路・東アジアの視角
木下良「東アジアの古代道路―世界的視圏から」
武部健一「中国古代道路史概観」
張在明「中国陝西省富県における秦の直道遺跡の発掘」
小鹿野亮「入唐求道巡礼行記―山越えの軍用道・始皇帝の直道を歩く」
早川泉「秦の「直道」と道路構造」
 
第Ⅱ部 中国唐代の道路・交通
中大輔「北宋天聖令からみる唐の駅伝制」
永田英明「唐日伝馬制小考」   
塩沢裕仁「洛陽から四方に通じる大道とその遺跡」
河野保博「長安と洛陽を結ぶ二つの道―「臨泉駅」銘石刻を中心に」
荒川正晴「唐代の交通と商人の交易活動」
桜田真理絵「唐代の通行証―標準型・簡易型による区別」
 
第Ⅲ部 諸国の交流と道
小嶋芳孝「渤海の交通路」
山本孝文「古代韓半島の道路と国家」
澤本光弘「契丹(遼)の交通路と往来する人」
田中史生「海上のクロスロード―舟山群島と東アジア」
河内春人「古代国際交通における送使」
 
第Ⅳ部 古代日本の道と制度

中国語の歴史

大島正二『中国語の歴史―ことばの変遷・探究の歩み』(大修館書店、2011年7月)

あじあブックス072。
漢字があらわす形・音・義、
そして中国語文法の変遷とともに、
どのように研究されてきたかも紹介している。

第一章「漢字の〈形〉のはなし」では、
漢字の変遷・字書編纂、
第二章「漢字の〈音〉のはなし」では、
音韻学・韻書・中古音、
第三章「漢字の〈義〉のはなし」では、
義書(『爾雅』・『方言』・『釈名』)・語彙、
第四章「中国語の〈文法〉のはなし」では、
文法研究について取り上げている。

2011年7月17日日曜日

UP40-7

東京大学出版会が発行している『UP』は、
毎号読んでいるわけではないけれど、
山口晃「すずしろ日記」が連載されていることもあって、
時々読んでいる。

なにげなく手に取った今月の
『UP』40-7(通巻465号、2011年7月)は、
かなり読み応えがあった。目次の一部をあげます。

宮地正人「60年をよむ⑦[歴史学] 時代と理論」
川島真「[中国のフロンティア]1 アフリカの「保定村」物語―中国人農業移民」
駒込武「天皇機関説事件以後の学問空間」
中村高康「〈能力不安〉の時代」
池内恵「[「アラブの春」は夏を越えるか]1 中東の政変は「想定外」だったか―「カッサンドラの予言」を読み返す」
齊藤希史「[漢文ノート]19 悼亡」
山口晃「すずしろ日記 第76回」

なかでも一番おもしろかったのが、
川島真「アフリカの「保定村」物語」。
アフリカ(ザンビアなど)に行った出稼ぎ農民が、
現地に築いた移民村に関する「物語」の虚実。

2011年7月16日土曜日

三国志学会第六回大会

三国志学会 第六回大会
日時:2011年8月27日(土)
会場:京都大学人文科学研究所 大会議室

研究報告 (10:00~12:40)
佐々木正治 「曹操高陵発掘調査の最新成果と考古学的意義」
葉口英子 「日本のサブカルチャーにみる三国志の流用―近年のゲームやマンガを事例として―」
金文京「韓国発見の『三国志演義』テキスト二種について」

講演 (14:00~17:00)
金相燁「朝鮮王朝時代の三国志絵画について」
堀池信夫「鄭玄学の展開」

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会7月例会

東洋文庫・内陸アジア出土古文献研究会7月例会
日時:2011年7月23日(土) 午後2:00~5:00
場 所:財団法人東洋文庫7階 第2会議室
報告
西尾亜希子「チベット・新疆旅行談」
吉田豊「トルファン出土ソグド語文書断片の接合-Dx文書の整理によ せて-;(付)新出の江南マニ教絵画と敦煌漢文文献」

2011年7月9日土曜日

第4回中国石刻合同研究会

第4回 中国石刻合同研究会
日時: 2011年7月30日(土) 10時~18時
場所: 明治大学アカデミーコモン 地階 博物館教室
報告
10:10~10:50 梶山 智史「北朝の東清河崔氏に関する石刻史料」
10:50~11:30 小笠原 好彦「日本古代の墓誌」
11:30~12:10 橋本 栄一「北魏龍門造像記における書様式の生成について」
 休憩
13:00~14:00 毛陽光「新見流散唐代墓誌与唐史研究―以唐懿宗宰相楊収墓誌為中心」
14:00~14:40 村井 恭子「唐・南遷ウイグル抗争関連墓誌とその情況について」
14:40~15:20 古松 崇志「仏教石刻よりみた契丹燕京地方の塩政と商業」
15:40~16:20 渡辺 健哉「東北大学附属図書館蔵 常盤大定旧蔵拓本について」
16:20~17:00 堤 一昭「大阪大学所蔵石濱純太郎収集拓本の整理状況」

第42回中央アジア学フォーラム

第42回中央アジア学フォーラム

日時:2011年7月30日(土)13:30〜18:00
場所:大阪大学文学部本館1階・大会議室

報告
荒木陸「書評:Johan Elverskog, Our Great Qing. The Mongols, Buddhism and the State in Late Imperial China Honolulu, University of Hawaii Press. 2006」
石川禎仁「「転帖」の運用形態に見える帰義軍期敦煌の土地利用」
荒川正晴「トゥルファンの城邑問題について:科研調査報告を兼ねて」
白須浄真「シルクロードの古墳壁画の大シンフォニ--4~5世紀の来迎・昇天壁画の図像学(イコノグラフィー)-」

汲古59

なかなか思うように更新できませんでした。
なにかと三歩進んで二歩下がる感じですが、
今月もぼちぼちやっていきたいと思います。

古典研究会編『汲古』59号(汲古書院、2011年6月)
中国関係のみをあげます。
高木浩明「古活字版調査余録(二)―『後漢書』の刊行年時を考える」
小沢賢二「蔡邕『天文志』佚文に見られる渾天儀の構造―円周率の認識と渾天儀の造立」
塩卓悟「国立公文書館蔵『太平広記』諸版本の所蔵系統」
竹越孝「『一百条』系の漢語鈔本について」
池田恭哉「稿本『語石』について」

池田論文は、京都大学文学部中国哲学史研究室所管の『語石』鈔本について分析し、光緒27年の葉昌熾の脱稿後、宣統元年の『語石』刊行以前に、協力者によって増補・校訂が加えられたものとする。