2010年3月14日日曜日

ARTIST FILE 2010


国立新美術館が毎春開いている
アーティストファイルも今年で3回目。

この展覧会は、国立新美術館が注目すべき作家を選抜して紹介するもの。
特別なテーマ・年齢・表現方法など、一切制限がない。
そのため雑多な印象もあるし、ピンとこない場合も多いのだけど、
毎回、必ず面白い作家に出合える。

今回は、7名(国内6・海外1)の作家を紹介。
個人的には福田尚代と石田尚志がぴか一だった。


うらわ美術館の「オブジェの方へ」でも見た福田尚代の作品の中では、
名刺や手紙の文字部分を刺繍する「巡礼」シリーズが印象的だった。
思い出の字・名前といった消してはいけないような気がするものを、
あえて刺繍で消して、読めなくしてしまう。
その刺繍の色遣いがまた繊細。

刺繍した本を53冊並べた「苔の小路から雪の窪地へ」は、
全体の眺めもいいけど、一冊一冊覗き込むのが面白い。
『火星年代記』とか『マイ・ロスト・シティ』とか『西瓜糖の日々』とか
読んだことのある作品を見つけると、嬉しくなってしまう。


福田尚代の後は、ピンとくる作家がいなくて、
がっかりしながら、見て回っていたのだけれど、
最後の最後で見た石田尚志は、本当にかっこいいし、すごかった。

一筆入れるごとに写真撮影し、つなぎあわせて映像にする。
すると、絵が生きてるかのように動きだす。

「海坂の絵巻」・「色の波の絵巻」の躍動感。
波のように、生き物のようにうごめく「海の壁―生成する庭」。
窓から差し込む陽光とともに変化する「REFLECTION」。
再生と逆再生。

費やした時間と張り巡らされた計算を考えると、気が遠くなる。
これを見るためだけに、もう一度行ってもいい。
そう思わせる作品でした。