
国立新美術館が毎春開いている
アーティストファイルも今年で3回目。
この展覧会は、国立新美術館が注目すべき作家を選抜して紹介するもの。
特別なテーマ・年齢・表現方法など、一切制限がない。
そのため雑多な印象もあるし、ピンとこない場合も多いのだけど、
毎回、必ず面白い作家に出合える。
今回は、7名(国内6・海外1)の作家を紹介。
個人的には福田尚代と石田尚志がぴか一だった。
うらわ美術館の「オブジェの方へ」でも見た福田尚代の作品の中では、
名刺や手紙の文字部分を刺繍する「巡礼」シリーズが印象的だった。
思い出の字・名前といった消してはいけないような気がするものを、
あえて刺繍で消して、読めなくしてしまう。
その刺繍の色遣いがまた繊細。
刺繍した本を53冊並べた「苔の小路から雪の窪地へ」は、
全体の眺めもいいけど、一冊一冊覗き込むのが面白い。
『火星年代記』とか『マイ・ロスト・シティ』とか『西瓜糖の日々』とか
読んだことのある作品を見つけると、嬉しくなってしまう。
福田尚代の後は、ピンとくる作家がいなくて、
がっかりしながら、見て回っていたのだけれど、
最後の最後で見た石田尚志は、本当にかっこいいし、すごかった。
一筆入れるごとに写真撮影し、つなぎあわせて映像にする。
すると、絵が生きてるかのように動きだす。
「海坂の絵巻」・「色の波の絵巻」の躍動感。
波のように、生き物のようにうごめく「海の壁―生成する庭」。
窓から差し込む陽光とともに変化する「REFLECTION」。
再生と逆再生。
費やした時間と張り巡らされた計算を考えると、気が遠くなる。
これを見るためだけに、もう一度行ってもいい。
そう思わせる作品でした。