2011年10月6日木曜日

東日本大震災・原発事故と歴史学

『歴史学研究』884号(青木書店、2011年10月)は、
「緊急特集 東日本大震災・原発事故と歴史学」。

目次は以下の通り
平川新「東日本大震災と歴史の見方」
保立道久「地震・原発と歴史環境学―9世紀史研究の立場から」
矢田俊文「東日本大震災と前近代史研究」
北原糸子「災害にみる救援の歴史―災害社会史の可能性」
奥村弘「東日本大震災と歴史学―歴史研究者として何ができるのか」

史資料ネットワークから
佐藤大介「歴史遺産に未来を―東日本大震災後の歴史資料レスキュー活動」
白井哲哉「「茨城史料ネット」の資料救出活動―3・11から7・2へ」
阿部浩一「ふくしま歴史資料保存ネットワークの現況と課題」

論文
中嶋久人「原発と地域社会―福島第一原発事故の歴史的前提」
平田光司「マンハッタン計画の現在」
石山徳子「原子力発電と差別の再生産―ミネソタ州プレイリー・アイランド原子力発電所と先住民」
三宅明正「記録を創り,残すということ」
安村直己「言論の自由がメルトダウンするとき―原発事故をめぐる言説の政治経済学」
史料文献紹介(緊急特集関連)

史資料ネットワークの活動の意義も述べられている。佐藤大介氏は、史資料の保全に対し、被災者からの批判(そんなことしてる場合か!という批判)をうけるかもしれないと逡巡されるかもしれないが、「地域歴史遺産を保存し、それを未来に引き継ぐための被災地支援活動であることが理解されていれば、被災された方々は」活動に期待してくれるとする。
中嶋論文は、開沼博『「フクシマ」論―原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社、2011年6月)と内容が類似しているが、開沼書の刊行以前に執筆されている(脱稿後に読んだことを明記している)。

1923年の関東大震災直後、歴史学界が特集を組むなどの反応を示した様子がない(そもそも雑誌の編集後記で被災者に言及することすらしていない)ことに比べると、歴史学の在り方が大きく変化したことがわかる。