2010年9月30日木曜日

泥縄

まことにもって泥縄ですが、高橋智『書誌学のすすめ』を読んだ後になって、
漢籍版本の基礎知識を確認したいと思い、積読状態だった
陳国慶著・沢谷昭次訳『漢籍版本入門』(研文出版、1984年1月)を読みました。

原著は陳国慶『古籍版本浅説』(遼寧人民出版社、1957年)なので、
情報が古いところも多いのだけど、
沢谷氏の訳注と参考文献案内がそれを補ってくれます。

次は魏隠儒・王金雨著、波多野太郎・矢嶋美都子訳『漢籍版本のてびき』(東方書店、1987年5月)を読むつもり。とはいえ、これも20年以上前の訳書なのだけど。
ついでに米山寅太郎『図説中国印刷史』(汲古書院、2005年)も
見直してみようと思って、蔵書を探したのですが、
奥の下の方にあるようなので、今回はパス。

そういえば結構前に、長澤規矩也『古書のはなし―書誌学入門―』(冨山房、再訂1977年5月)も読んだのだけど、版本の基礎知識というのは、なかなか頭に残らない……。やはり読んだだけじゃ、知識が定着しないということなのだろうか(より根本的な記憶力の問題は置いときます)。

マニ教「宇宙図」

9月27日(月)の毎日新聞に、
「マニ教「宇宙図」国内に現存」
という記事とカラー図版が掲載されていました。

以下は、記事を一部引用。
「マニ教の宇宙観を描いたとみられる絵画が国内に存在することが
26日までに、京都大の吉田豊教授(文献言語学)らの調査で分かった。
「10層の天と8層の大地からなる」というマニ教の宇宙観の全体像が、
ほぼ完全な形で確認されたのは世界で初めて」

大きさは、縦137.1㎝、横56.6㎝。絹布に彩色。個人蔵。
元代頃に、江南地方の絵師が制作したらしいです。

森安孝夫「日本に現存するマニ教絵画の発見とその歴史的背景」(『内陸アジア史研究』25、2010年3月)には、日本国内で最近確認されたマニ教関係絵画が紹介されていますが、個人蔵や寺院蔵のものなど、まだまだ面白いものがたくさん眠っているんでしょうね。

書誌学のすすめ

高橋智『書誌学のすすめ―中国の愛書文化に学ぶ―』(東方書店、2010年9月)

第Ⅰ部「書誌学のすすめ」、第Ⅱ部「書物の生涯」、第Ⅲ部「書誌学の未来」。
第Ⅰ部・第Ⅱ部は、『東方』の連載記事(2003年1月~2004年12月、2006年6月~2008年1月)をまとめたもの。第Ⅲ部は書き下ろし。

体系的な書誌学の概説書というわけではなく、
書誌学に関する具体的な逸話を集積するなかで、
書誌学の魅力に迫っている。図版も多くて、よみやすい。
書誌学というと、型式論・年代比定のイメージが特に強かったけれど、
「書物」自体の流転の歴史を明らかにする学問でもあると実感。

なお、副題に「中国の愛書文化」とあるように、あくまで宋元以降の版本・写本がメインで、唐写本の流れをくむ日本の古写本(旧抄本)については、あまり触れていない。

2010年9月29日水曜日

東方学会第60回全国会員総会

東方学会第60回全国会員総会
日時:2010年11月6日(土)12:30~19:30
会場:芝蘭会館別館2階研修室1

講演会
12:40~13:40 根立研介「運慶と中国美術の受容」
13:50~14:50 池田雄一「中国古代における律令の形成と習俗」
研究発表
15:10~15:40 岩尾一史「古代チベット帝国の兵士とキャ制」
15:45~16:45 白井順「『小学』注再考―その思想研究の可能性を求めて―」
16:20~16:50 守川知子「シャー・イスマーイールとサファヴィー朝初期のシーア派信仰」
16:55~17:25 吉田ゆか子「バリ島仮面舞踊劇を担う者たちの現在―知識の習得過程を中心に―」

参加費:1000円、懇親会費:3000円

2010年9月27日月曜日

戦後日本人の中国像

馬場公彦『戦後日本人の中国像―日本敗戦から文化大革命・日中復交まで―』(新曜社、2010年9月)

日本敗戦から1972年の日中復交までに刊行された総合雑誌・論壇誌における
中国関係の記事をすべて抽出し(約2500本)、
戦後日本の知識人における中国像・叙述の変遷を丹念に分析している。

出てきた結果は、あまり新鮮味があるとはいえないが、
いままで漠然と認識していた戦後日本の中国叙述の変化について、
しっかりと肉付けしてくれて参考になる。

また、証言編として、総合雑誌などで積極的に
発言してきた人物のインタビューも載せている。
竹内実・野村浩一・岡部達味・本多勝一・小島麗逸・
中嶋嶺雄・加々美光行・津村喬などなど、立場は様々。
自伝的要素あり、自己批判あり、当時の日中関係の裏側ありで面白かった
個人的には、収録されなかった安藤彦太郎氏のインタビューが気になった。

2010年9月26日日曜日

斯道文庫開設50周年記念 書誌学展

斯道文庫開設50年記念事業『書誌学展』
日程:2010年11月29日(月)~12月4日(土)9時半~16時半
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 図書館旧館2F大会議室
入場無料。

斯道文庫の蔵書から日本・中国・朝鮮・ヴェトナムの古典籍およそ100点を展示。
[主な展示品]
四分律:天平12年(740)頃写本
物初賸語:南宋(13世紀)刊本
広韻:宋末元初(13世紀)刊本
南華経:明・万暦33年(1605)刊本
直齋書録解題:清・乾隆39年(1774)刊本

展示構成は第Ⅰ部「書物との対話」と第Ⅱ部「斯道文庫の五十年」。
展示会場には、動画による展示解説もあるらしい。
開催期間は短いけれど、時間があったら見に行きたい。


さらに、書誌学展最終日に記念講演とシンポジウムを開催。
「古典籍の探究-書誌学の世界-」
日時:2010年12月4日(土)13:00~15:30
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
[基調講演]13:00~
塩村耕「岩瀬文庫に教わったこと」
[シンポジウム]14:00~
井上進・大木康・真柳誠

2010年9月24日金曜日

これから出る本

あちこちの出版社から、来月・再来月あたりに
個人的に興味ある本が続々と出版されるようです。
忘れないようにメモしておかなきゃ。
なお、データ・内容紹介は出版社のHPや新聞などから抜粋しました。

湯沢質幸『増補改訂 古代日本人と外国語 東アジア異文化交流と言語世界』
出版社:勉誠出版  刊行日:2010年9月(予定)、
予価:2940円  頁数:304頁
[内容紹介]
古代日本人は、東アジアの人々と どのような言語で交流していたのか?
漢字・漢語との出会い、中国語をめぐる日本の学問のあり方新羅・渤海など周辺諸国との交流、円仁ら入唐僧の語学力など古代日本における異国言語との格闘の歴史を明らかにする。
『言語』から考える東アジア文化交流史

中村春作・市來津由彦・田尻祐一郎・前田勉編『続「訓読」論 東アジア 漢文世界の形成』
出版社:勉誠出版  刊行日: 2010年10月(予定)
予価:6300円  頁数:464頁
[内容紹介]
東アジアの「知」の成立を「訓読」から探る
東アジア漢文世界において漢文テキストは実際にどのような〈てだて〉で「読まれ」、そこでいったい何が生じたのか、そこから何が形成されたのか
「知」の伝播と体内化の過程を「訓読」論の視角から読み解くことで
東アジア漢文世界の成立を検証する。

新編森克己著作集編集委員会編『新編森克己著作集4 増補日宋文化交流の諸問題』
出版社:勉誠出版  刊行日:2010年10月(予定)
予価: 10500円  頁数:450頁

榎本渉『選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』
出版社:講談社(選書メチエ)  刊行日:2010年10月7日
予価:1680円

渡邉義浩『儒教と中国 「二千年の正統思想」の起源』
出版社:講談社(選書メチエ)  刊行日:2010年10月7日
予価:1680円

妹尾達彦『農業と遊牧の交わる都―北京の都市社会誌―』
出版社:刀水書房  刊行日:2010年中
予価1600円 

氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景―東アジアからの新視点―』
出版社:八木書店  刊行日:2010年11月(予定) 
予価:3,990円  頁数:304頁(予定)
[内容紹介]
1400年前の遣隋使を徹底検証!
統一王朝・隋に派遣した古代日本・朝鮮半島の事情とは?
国際環境や政治から風俗まで、図版を収録し紹介


さらに汲古書院からは、「寧波プロジェクト」(にんぷろ)成果の集大成として、
『東アジア海域叢書』全20巻が刊行されるらしい。
第一弾は、山本英史編『近世の海域世界と地方統治』(10月刊)、
第二弾は、井上徹編『海域交流と政治権力の対応』(12月刊)。
平均350頁で、予価は各7350円。各巻のタイトル・内容が知りたい。
全部買うつもりはないけど、なんだか面白そう。

ホームレス博士

水月昭道『ホームレス博士―派遣村・ブラック企業化する大学院―』(光文社新書、2010年9月)

『高学歴ワーキングプアー』(光文社新書、2007年)、
『アカデミア・サバイバル』(中公新書ラクレ、2009年)に続く新書第三弾。
本屋で立ち読み、45分ほどで読了しました。

『高学歴ワーキングプアー』と論調はほぼ同じ。
近年の動向(昨年の仕分け事業など)や、様々なエピソードを追加した感じ。
全国のポスドク・院生が一斉ストライキを起こしたら、
大学教育・研究は大変なことになるぞ、とあったが確かにそうかも。

やっぱり、『高学歴ワーキングプアー』の問題提起のインパクトに比べると、
第二弾・第三弾は正直言って微妙な感じ。

2010年9月15日水曜日

東アジア世界史研究センター研究会

平成22年度東アジア世界史研究センター研究会
日時:2010年9月25日14時~17時
場所:専修大学神田校舎1号館7階7A会議室

講演
中村裕一「贈尚衣奉御井真成を巡る二・三の問題―唐代の外国使節の授官と関連して―」

申し込み
電子メールで9月16日(木)まで。
詳細は東アジア世界史研究センターのHPをご参照ください。

一時期、流行った井真成。
最近はめっきり出番が減ってる模様。
久しぶりにお目にかかった気がします。

2010年9月14日火曜日

西嶋文庫蔵書目録

梅原郁・中田實編『西嶋文庫蔵書目録』(就実女子大学図書館、2001年3月)

故西嶋定生氏の蔵書目録。最近、ひょんなことから手に入れました。
西嶋氏の蔵書が、最後につとめた就実女子大学に
一括して寄贈されていたこと自体、この目録で始めて知りました。
しかも、研究書のみならず、趣味の本までまるまる全部。
総計15000冊。

就実女子大学に設置された西嶋文庫では、
西嶋氏が愛用していた机・椅子・文房具・書棚なども寄贈され、
生前の書斎を模した造りになっているらしい。

この目録も通常の分類と異なり、
西嶋文庫の書棚の配置情況を反映した分類。
そのため、検索の便はあまり芳しくない。
でも、その欠点を補ってあまりある面白さ。

いわゆる稀覯本は殆どないし、
研究書もそこまでおもしろいわけでもない。
では、何が面白いかといえば、やっぱり趣味の本。

友達の家に行って、本棚をチェックした時の感覚に頗る近い。
こんな本持ってんだ~、とか、
こんな小説読んでたんだ~、とか、そんな感じ。

解題に、病気療養中に釣りにはまっていたので、
釣りの本が多いと書いてあったけど、
確かに100冊近くある。やっぱり研究者って凝り性なんだなぁ。

小説コーナーをチェックしていたら、
井伏鱒二、司馬遼太郎、立原正秋、陳舜臣などにまじって、
筒井康隆『文学部唯野教授』が!!
しかも単行本(岩波書店、1990年)と
同時代ライブラリー(岩波書店、1992年)の両バージョンがそろってる。
もしかして、お気に入りだったのだろうか?
大学&文学理論ドタバタ小説と西嶋定生。
う~ん、結びつかない。

そして、もうひとつびっくりしたのが、
それほど多いとはいえない欧米小説の中に、
スタニワフ・レム著、沼野充義ほか訳『完全な真空』(図書刊行会、1989年)があったこと。『完全な真空』は、ポーランドのSF作家レムが書いた架空の書籍に対する書評集。まさか、こんな本を持っていたとは。
寄贈されただけなのか、それとも買って読んだのか。かなり気になる。

西嶋文庫には、寄贈された抜刷も保管されている。
最も多かったのは越智重明氏で、なんと94種。
次点が池田温氏の62種。
全部綺麗にとっておいた西嶋氏もすごいけど、
94種も贈った越智氏もすごい。

漢籍目録とかとはまた違った面白さ。
研究者の私生活・趣味の読書が見えてくる目録って
他にもないだろうか。

2010年度秋期東洋学講座

2010年度秋期東洋学講座「東洋文庫とアジア―その4―」
主催:財団法人東洋文庫
会場:三菱商事ビルディング3階会議室

10月18日(月)18時~20時
佐藤次高「日本人のイスラーム理解―5つのキーワード―」

11月8日(月)18時~20時
瀧下彩子「マンガ家たちの中国近代史―東洋文庫所蔵の漫画資料を読む―」

11月22日(月)18時~20時
平野健一郎「戦後日米間のなかの中国研究と東洋文庫」

聴講無料
申し込み方法:東洋文庫の東洋学講座のメールアドレス
またはファックスに事前申し込み。
(東洋文庫のHPをご参照ください)


今回の東洋学講座はなかなか面白そう。
東洋文庫所蔵の漫画資料ってどんなものなのだろうか。
11月22日の講演では、1960年代に大騒ぎになった
A・F財団問題にも触れるのだろうか。

2010年9月13日月曜日

平成22年度古典籍展観大入札会

平成22年度古典籍展観大入札会
日程:2010年11月12日(金)10時~18時、13日(土)10時~16時30分
会場:東京古書会館

去年初めて見に行った古典籍展観大入札会、
今年も見に行くつもりです。
現時点での目玉商品は以下の通り(東京古典会のHPより漢籍関係のみ抜粋)。

白氏文集断簡(興福寺切) 鎌倉中期頃写 伝後京極良経筆:一巻
大雲輪請雨経巻下 平安後期写 紺紙銀界金泥書写:一巻
和漢朗詠集 烏丸光広筆 宗達模様料紙:二冊
奈良絵巻 長恨歌 寛文延宝頃写 極彩色:三巻
五山版 五百家註音辯昌黎先生文集 唐・韓愈撰 南北朝時代刊:一五冊
五山版 韻府群玉 南北朝頃刊:一〇冊
大般若波羅蜜多経 巻第四百八十四 建中二年徐浩敬書写:一巻
宋槧本 弘明集 梁・僧祐遍 存巻一・十二・十四:三帖
韻府群玉 明・正統二年刊 田安徳川家旧蔵:二〇冊
鉅宋 広韻 南宋麻沙鎮劉仕隆刊本 初印本:五冊
資治通鑑綱目 宋・朱熹 明・成化九年序刊経廠本:三〇冊

2010年9月11日土曜日

『芸術界』総129期

迂闊にも中国でこんな雑誌が出ているとは知らなかった。


『芸術界』総129期 2010年8月号(芸術界雑誌社、2010年8月)。
英文タイトルは『LEAP』。

中国当代芸術双語双月刊、
すなわち、中国現代アートのバイリンガル雑誌(隔月刊)。
中国語と英語で中国現代アートをところせましと紹介している。
総頁数は216頁(フルカラー)で、読みごたえたっぷり。
展覧会の広告も多いけど、それもまたいい感じ。

張曉剛や徐震といった著名なアーティストから、
近年、売り出し中の若手アーティストまで網羅。
記事内容もインタビューや作品紹介、市場、展覧会レビューと盛りだくさん。                               (目次の一部)

なにより誌面がかっこいい。


以前、日本でもアジア太平洋地域の現代アートを紹介していた
バイリンガル雑誌(日本語・英語)の『ARTiT』があったけど、
今はウェブに移行してしまい、雑誌自体は出ていない。

それにしても129期ということは、ずいぶん前からあったはず。
なんで気付かなかったのだろうか。
それとも現代アート専門になったのは近年のことなのだろうか。

そう思って百度で検索してみたら、
2010年2月に現在の形になったとのこと。
ある意味できたてほやほや。
これから、バックナンバーを探してみよう。

2010年9月5日日曜日

三菱が夢見た美術館

現在、三菱一号館美術館で開催されている
「三菱一号館美術館開館記念展〈Ⅱ〉三菱が夢見た美術館―岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」を見に行ってきました。

岸田劉生《童女像(麗子花持てる)》がトップを飾る
現在配られているチラシを見る限り、全くもって興味わかないのだけど、


以前、配られていたらしいチラシを見ると、
途端に興味がわいてくる。


展覧会の構成は次の通り
序章「「丸の内美術館」計画:三菱による丸の内の近代化と文化」
第1章「三菱のコレクション:日本近代美術館」
第2章「岩崎家と文化:静嘉堂」
第3章「岩崎家と文化:東洋文庫」
第4章「人の中へ街の中へ:日本郵船と麒麟麦酒のデザイン」
第5章「三菱のコレクション:西洋近代絵画」
終章「世紀を超えて:三菱が夢見た美術館」

正直言って、目当ては第2章・第3章のみ。
静嘉堂、そして東洋文庫の名品を見ることができる。

三菱一号館美術館は、今年の四月に開館したばかり。
明治時代の三菱一号館を復元させた作り。
レンガ造りで見た目はものすごく歴史ありそう。
内部に入ってみると、美術館とは思えない狭さ。
でも、この狭さが鑑賞に心地よい。

最初は、序章・第1章は素通りしようかと思っていたのだけど、
見たら見たで結構いい感じ。図録のカバーデザインにもなっている
黒田清輝の《春の名残》がなかなかよかった。

で、いよいよ第2章。
岩崎彌之助・小彌太が収集した古典籍・美術品をおさめた静嘉堂。
その逸品が並んでいる。

まずはじめは、南宋前期刊『周礼』と南宋初期刊『李太白文集』。
陸心源の旧蔵書に由来する南宋版。もちろん両方とも重要文化財。
素人から見ても、かっこいい刷り上がり。
蔵書印も見てると面白い。パスパ文字(多分)のものや、
肖像画を描いた蔵書印(陸心源?)もある。

お次は、曜変天目(国宝)。
茶器には全くと言っていいほど興味ないのだけど、
この茶器は本当にすごかった。
12~13世紀の建窯産だけど、現代陶磁器も真っ青のデザイン。
黒茶碗の内側に青光りする斑点。偶然なのかもしれないけど、
時代を越えたデザインってこういうのを言うのではなかろうか。

あと、松永久秀が持っていた付藻茄子(九十九茄子)も展示してある。
参観中は、九十九茄子は松永久秀自害の時に壊されたはずだから別物だろう、
と勘違いして、じっくり見なかったのだけど、
よくよく思いだしたら、道連れに壊されたのは平蜘蛛だった。
図録の解説を見たら、久秀から信長にわたり、本能寺の変にも巻き込まれたが、
なんとか救われ、秀吉のもとへ。そして今度は大阪夏の陣に罹災。
損壊してしまったが、惜しんだ家康が焼け跡から破片を回収させて、
修復させたという。
いや~、激動の茶器だわ。


う~ん、こんな調子で紹介してたら、先に進まないですね。
では第3章「岩崎家と文化 東洋文庫」に。

もうここは、書名だけでも十分かもしれませんね。
国宝『毛詩』、国宝『文選集注』、
重要文化財『楽善録』、重要文化財『論語集解』。

『毛詩』と『論語集解』には、ヲコト点や半切・訓点が
書き込まれていて見ていて飽きない。
しかも『論語集解』は、ちょうど学而篇の冒頭
「子曰学而時習之不亦悦乎」が展示されているし。
うろ覚えのヲコト点の知識でも楽しめる。
今思ったのだけど、ヲコト点図をもっていけばさらに楽しめたかも。
持っていけばよかったなぁ……。

『ターヘル・アナトミア』と杉田玄白訳『解体新書』が
隣り合わせにおかれているのもなかなかの演出。

坂本龍馬熱にあやかって、海援隊が出版した和英対照発音ハンドブックの
『和英通韻以呂波便覧』も展示してある。

乾隆帝期の『平定準■[口+葛]爾方略(満文)』は、
満文が縦書きで左から右に表記するため、左開きになっている。
縦書き=右開きに慣れているので、違和感たっぷり。

あと16~18世紀の日本・アジア地図五点も見ていて飽きない。
他にも日本の古活字本や朝鮮本などなど、いろんなものがあります。
東洋文庫の名品をまとめてみる機会は、
そうそうないので、ほんっとに眼福でした。

第4章~終章は省略します。
最後の最後に三菱が丸の内を購入したころの風景画、
郡司卯之助「三菱ヶ原」が飾ってあります。
まるで野原。100年の月日の重さを感じます。


今回の展覧会の会期は、11月3日(水・祝)までで、休館日は月曜日です。
開館時間は、水・木・金は10時~20時、火・土・日は10時~18時。
当日券は、一般1300円、学生1000円です。
また、何回か展示替えがあります。
残念ながら曜変天目は今日(9月5日)までだそうです。

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追記:9月14日(火)21:20

『論語集解』を紹介する時に、学而篇の冒頭を掲げましたが、
ふと「なんか違うなぁ」と思って、よくよく見てみると、
「不亦説乎」とあるべき箇所が「不亦悦乎」となってました。
修正しなきゃ、と思ったのですが、念のため図録を見返すと、
やっぱり「不亦悦乎」となってます。
残念ながら、図録では左傍に書かれた注記まではよめず。
その場で気づけばよかった……。
旧抄本ゆえのことなのか、別の原因があるのか、
調べてないのでわかりませんが、とりあえずそのままにしておきます。

2010年9月2日木曜日

第21回中唐文学会大会

第21回中唐文学会大会

日時:2010年10月8日(金)14:00~
会場:広島市まちづくり市民交流プラザ北棟5階研修室A・B

報告
14:00~ 種村由季子「駱賓王における交遊の地縁性」
15:00~ 太田亨「静嘉堂文庫所蔵『唐柳先生文集』(宋版)の残巻について」
16:00~ 内田誠一「唐代詩人の影を追って―河南登封・山西永済・江西九江旧蹟調査報告―」
17:00~ 総会

第61回仏教史学会学術大会

第61回仏教史学会学術大会

日時:2010年10月23日(土)
会場:佛教大学

午前の部
[東洋部会] 研究発表(10:00~12:00)
福島重「元代華北における曹洞宗の展開」
山口周子「「雲馬王譚」の変容―Jatakaから『今昔物語』まで―」
山中行雄氏「タイ北部ランナー王国(1296-1558)で成立したパーリ語注釈書の重要性について―Vessantaradiipaniiを例として―」

[日本部会] 研究発表(10:00~12:00)
関山麻衣子「古代における神仏習合思想の形成―古代朝鮮仏教を手がかりに―」
松金直美氏「門主達如の下向・参向―近世東本願寺教団の社会的位置をめぐって―」
斎藤信行「真宗教団の体制内化―覚如・存覚を中心に―」

午後の部
[合同部会] 研究発表(13:00~15:00)
坂口太郎「知られざる僧伝研究者 島田乾三郎―その業績と蔵書をめぐって―」
小山貴子「中世後期の在地修験の動向」
池田昌広「「古記」所引『漢書』師古注について」

[記念講演](15:10~)
竺沙雅章「宋元版大蔵経再説―とくに契丹大蔵経をめぐって―」