2012年12月31日月曜日

『『詩経』―歌の原始』

小南一郎『『詩経』―歌の原始』(岩波書店、2012年12月)

「書物誕生―あたらしい古典入門」シリーズの最新刊。シリーズ中唯一の五経。
第Ⅰ部:古代歌謡集の形成と伝承では、『詩経』の形成が小南流に論じられている。
第Ⅱ部:歌の力では、小序の理解をとらず、国風部分=民謡由来説にも違和感を示し、時代背景・歌い手の社会階層や時代の幅・歌の機能に注目しながら、詩を読解している。

目次は以下の通り。
第Ⅰ部:古代歌謡集の形成と伝承
第一章 詩経の形成
第二章 孔子と詩経
第三章 経典化した詩経とその注釈

第Ⅱ部:歌の力
第一章 宗廟歌謡の伝承―生民如何(民を生むこといかに)
第二章 農耕の日々―自古有年(古より年あり)
第三章 貴族と民衆たち―王事靡盬(王事 盬きことなし)
第四章 時代の混乱と言葉の力―天之方虐(天のまさに虐をなす)
第五章 孤独と悲しみ―我心匪石(わが心は石にあらず)

2012年12月26日水曜日

内陸アジア出土古文献研究会1月例会

内陸アジア出土古文献研究会1月例会
日時:2013年1月19日(土)午後1:30~5:00
会場:財団法人東洋文庫7階第1・2会議室

報告
吉田章人・岡田文弘「サンクトペテルブルク東洋学研究所蔵ウイグル・ソグド系仏経写本について」
1.阿含経系写本を中心として
2.西州交河縣龍朔二年(662)寫「妙法蓮華経巻第十」の性格をめぐって

林 韻柔「中国中世における僧侶出家の原因」

2012年12月23日日曜日

敦煌の民族と東西交流

栄新江著、高田時雄監訳、西村陽子訳『敦煌の民族と東西交流』(東方書店、2012年12月)

敦煌の歴史を東西交流・民族に軸を据えてフルカラーで紹介。概説書で扱われることが少ない吐蕃・帰義軍・ウイグル時代の敦煌統治・敦煌仏教や于闐との関係についても詳しい。敦煌が中国史の枠だけでとらえられない場所であることがよくわかる。

目次は以下の通り。
一、月氏 古代敦煌の白人種
二、玉門関と懸泉置 漢代の関城と宿駅
三、仏教東漸 敦煌の仏教都市空間
四、ソグド商胡と敦煌の胡人聚落
五、吐蕃の敦煌統治とチベット文化の貢献
六、帰義軍時期のシルクロード
七、ウイグルと敦煌
八、于闐と沙州

ちなみに、本書のなかには、監訳者あとがき等はなく、翻訳の経緯は不明。一見すると日本オリジナルに見えるが、東方書店のHPを見ると、柴剣紅主編の敦煌歴史文化絵巻シリーズの第一弾で、「中国における敦煌学の第一人者が多数のカラー図版とともに一般読者に向けて書き下ろし、高い評価を受けた「走近敦煌叢書」の日本語版。日中共同出版。シリーズ全3巻予定。」とあり、原書は『華戎交匯―敦煌民族与中西交通/走近敦煌叢書』(甘粛教育出版社、2008)だそうだ。本の中に刊行経緯や原書の記載が一切ないのはなぜなのだろうか。

汲古62

古典研究会編『汲古』62(汲古書院、2012年12月)

漢籍に関係するものは以下の通り。
渡辺滋「日本古代史料に見える「揚名」の語義―『孝経』の原義との関係」
長坂成行「篠屋宗礀と多福文庫旧蔵本」
成家徹郎「『漢書藝文志』“暦譜”の意味」
大塚紀弘「平安後期の入宋僧と北宋新訳仏典」
鶴成久章「陽明学の聖地に残された石刻―「天真精舎勒石」について」
田中有紀「『朱子語類』巻九十四訳注(十四)」

今号も内容が多岐にわたっていて、読みごたえがある。

2012年12月15日土曜日

白氏文集は〈もんじゅう〉か〈ぶんしゅう〉か

神鷹徳治『白氏文集は〈もんじゅう〉か〈ぶんしゅう〉か』(游学社、2012年11月)

題名の通り、白氏文集の読み方(「もんじゅう」or「ぶんしゅう」)をめぐる本。全103頁なのですぐに読めます。結論からいえば、明治20年代までは「ぶんしゅう」と読まれており、「もんじゅう」という読みは、明治30年代に誕生した新しい読み方にすぎない、というもの。なぜ、「もんじゅう」という読み方が誕生したのかも説明している。これを契機に「もんじゅう」なる読みが一掃されればよいのだが。

2012年12月6日木曜日

もうすぐ出る気になる本

備忘録代わりに、もうすぐ出るはずの気になる本を列挙。
なぜ年末年始にこれだけ次々に出るのだろうか。

小南一郎『詩経―歌の原始―』(岩波書店、2012年12月19日刊行予定)
栄新江著、高田時雄監訳、西村陽子訳『敦煌の民族と東西交流』(東方書店、2012年12月中旬刊行予定)
小島毅監修、 羽田正編『東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史』(東京大学出版会、2012年12月下旬刊行予定)
小島毅監修、早坂俊廣編『東アジア海域に漕ぎだす2 文化都市 寧波』(東京大学出版会、2013年1月下旬刊行予定)
荒川慎太郎・澤本光弘・高井康典行・渡辺健哉編『契丹[遼]と10~12世紀の東部ユーラシア』(勉誠出版、2013年1月刊行予定)

趣味の領域に近いものでは、
渡辺守邦『表紙裏の書誌学』(笠間書院、2012年下旬刊行予定)
がもっとも気になる。
古本屋や古典会とかで和書に触れると、
表紙裏に文字が見えることがよくある。
気になっても、解体して調べるわけにもいかず、
もやもやしたままで終わっていたのだけど、
その和書の表紙裏に利用された反古紙を対象にした本。

目次は以下の通り。
第一章 表紙裏反古の諸問題
第二章 ワークショップ報告「表紙裏から反古が出た」
第三章 表紙裏反古の保存法について 国立公文書館蔵の嵯峨本『史記』を中心に
第四章 表紙裏反古の諸問題・続考 東京大学附属図書館蔵『鴉鷺物語』の場合
追録 小山正文「寛永二十年版『黒谷上人語燈録』の表紙裏より抽出された宗存版」

2012年12月2日日曜日

第46回中央アジア学フォーラム

第46回中央アジア学フォーラム
日時:2012年12月22日(土)13:30~18:00頃
場所:大阪大学・豊中キャンパス・文学部本館2階・大会議室

報告内容:
大田黒綾奈「魏晋南北朝時代における「玉」と士人意識 ―玉石豚と随葬衣物疏を中心に―」
旗手瞳「吐蕃支配下の吐谷渾国(アシャ国)」
尾白悠紀「ミールザー・ハイダル Mīrzā Muḥammad Ḥaydar Dughlāt 著 『ターリーヒ・ラシーディー』 Tārīkh-i Rashīdī に見られるチベットに関する記述について」
鈴木宏節「南モンゴルにおける突厥関連遺跡の現状」

「漢委奴國王」金印研究の現在

公開研究会「漢委奴國王」金印研究の現在
日程:2012年12月15日(土)13:00~17:30
場所:明治大学駿河台キャンパス 12号館10階 2103教室

報告者
石川日出志「金印と弥生時代研究―問題提起にかえて―」
鈴木勉「「漢委奴國王」金印誕生時空論」
高倉洋彰「型式学と漢の印制からみた金印」
大塚紀宜「金印の詳細観察と中国古代印章との比較―特に駝鈕印について―」


なんといっても『「漢委奴国王」金印・誕生時空論』の著者である鈴木勉氏の報告が気になる。公開研究会全体では、金印について、どのような見解が示されるのだろうか。

2012年11月29日木曜日

董啓章氏講演会「未来の考古学」

董啓章氏講演会 「未来の考古学」
日時:12月8日(土) 15:00~17:30
会場:東大文学部法文二号館2大教室
入場無料

司会:中島京子/コメンテーター:野崎歓
15:00~16:30 董啓章「未来の考古学―21世紀初の香港エクリチュール」
16:30~17:00 コメント野崎歓
17:00~17:20 参加者との質疑応答
17:30 閉会

今年、『地図集』が日本で出版された香港の作家、
董啓章氏の講演会。
『地図集』面白かったから、
気になるなぁ。

2012年11月28日水曜日

茶経 全訳注

布目潮渢『茶経 全訳注』(講談社学術文庫、2012年10月)

2001年8月に淡交社から出た『茶経詳解』の文庫化。新たに付された解説などはないため、淡交社版を持っている人には、買う意味がなさそう。
僕は淡交社版を持ってなかったので購入。『茶経詳解』は定価5000円強だし、そもそも絶版で手に入りにくく、古本価格も結構な値段なので、文庫で手に入るのは本当にありがたい。

語釈が詳細で、なにより多数挿入された図版がいい。イメージしにくい植物や茶器も、『中国高等植物図鑑』や実物写真などで具体的な形がわかる。

ちょうど、同じ月に熊倉功夫・程啓坤編『陸羽『茶経』の研究』(宮帯出版社、2012年10月)が出ている。偶然とはいえ面白い。ちなみに目次は以下の通り。
姚国坤「陸羽の人物と業績」
関剣平「『茶経』に関する発生学的研究」
沈冬梅「陸羽『茶経』の歴史的影響と意義」
余 悦「唐代陸羽『茶経』の経典化の過程について」
高橋忠彦「『茶経』の用字に関して」
程啓坤「唐代における茶葉の種類およびその加工に関する研究」
中村羊一郎「陸羽の『茶経』に見える地方の茶と現代東アジアの茶生産」
中村修也「古代日本における『茶経』の影響」
熊倉功夫「陸羽の『茶経』と岡倉天心の『茶の本』」
高橋忠彦 『茶経』原文と訓読

2012年11月25日日曜日

鎌倉興隆―金沢文庫とその時代

先日、神奈川県立金沢文庫で開催中の
「鎌倉興隆―金沢文庫とその時代―」に行ってきました。

この展覧会は、世界遺産登録推進 三館連携特別展「武家の古都・鎌倉」の一つ。他の二つは鎌倉八幡宮内の鎌倉国宝館(古都鎌倉と武家文化)と神奈川県立歴史博物館(再発見!鎌倉の中世)。一応、全部いったけれど、一番熱かった金沢文庫を紹介します。

今回の展覧会は三つのテーマで構成されている。
まずは、お目当ての「金沢文庫の世界」。
鈔本では、『白氏文集』、『文選集注』、『卜筮書』、『集七十二家相書』、『施氏孫子講義』などなど。『孫子講義』は北条顕時が書写したそうだ。ヲコト点や訓点がびっしり書き込まれている。やはり武家らしく、気合入れて兵法書を読んだのだろうなぁ。
宋版では、『読史管見』、『唐柳先生文集』、宋版残欠集(文苑英華や春秋後伝など)などなど。近年、館山で発見された『孫真人玉函方』(南宋版の元覆刻本らしい)も公開されていて驚いた。『玉函方』のほか『膏盲腧穴灸法』・『産育保慶集』も合綴されているらしい。佚書とされていた医書が同時に三冊見つかったことになる。きっと、まだまだ日本には佚書があるに違いないと思わせる。

もう一つのテーマは「北条氏権力の確立と金沢北条氏」。
金沢北条氏の肖像画や書状のほか、北条氏の政変を記した日記などが展示されている。ここでは、蛇体に囲まれた日本図(鎌倉時代)と、あまりにも図形化が過ぎて、もはや地図とは呼べない日本図(日蓮宗・戦国写本)に目を奪われた。唐土・新羅などにまじって羅刹国・龍及国(身人頭鳥)という謎の国も。右隅には蒙古国の記事があり、日本・高麗・唐土(南宋)でそれぞれ呼び名が異なるという指摘が見える。
そのほか、称名寺の僧侶と流罪唐人(元寇の捕虜)の漢詩のやりとりも興味深かった。漢詩というより、漢詩風筆談といった感じで、僧侶(多分、渡来僧)にあわせてほしいと訴えている。多分、兵士か下級官で、苦手な漢詩を一生懸命作ったんだろうなぁ、と想像してしまった。

予想以上に長くなったので、三つ目のテーマ「鎌倉仏教開花」は省略。

約300頁の三館合同の図録が1200円と超お得。
会期は12月2日(日)まで。開館時間は9時~16時半。
観覧料は600円。

2012年11月22日木曜日

江戸の読書会

前田勉『江戸の読書会―会読の思想史』(平凡社、2012年10月)

江戸時代に普及した議論する読書会=会読。
伊藤仁斎や荻生徂徠のもとで、儒学を学ぶためにはじまり、その相互コミュニケーション性・対等性・結社性の三原理ゆえに、身分社会との軋轢を経験しつつ、各地の私塾(蘭学・国学)・藩校に普及し、幕末・明治の精神・思想を準備したのだとする。

江戸時代の学問は講釈中心で、会読形式は蘭学(『解体新書』の翻訳)に始まったとばかり思っていたので、目からウロコが落ちることしきり。遊戯性を帯びていて、立身出世と直結しないからこそ、普及したという指摘も面白い。会読のエッセンスをなんとか授業に取り入れられないかなぁ。

2012年11月19日月曜日

日本中国考古学会2012年度総会・大会

日本中国考古学会2012年度総会・大会
日時:2012年12月15日(土)、16日(日)
会場:九州国立博物館 1階ミュージアムホール
参加費:大会資料費 1000円

スケジュール
12月15日(土)
一般発表
13:30~14:00 岸本泰緒子「出現期銅鏡の再検討」
14:00~14:30 古澤義久「新岩里出土青銅刀の年代について」
14:30~15:00 劉菲「敦煌莫高窟における中心塔から覆斗形天井への変遷について」

X線CTスキャナ紹介
15:30~16:00 今津節生「九博のX線CTスキャナによる文化財の研究」
16:00~17:00 X線CTスキャナ見学・ポスターセッション
総会17:00~18:00

 
12月16日(日)
テーマ発表 「中国古代青銅器研究の現在」
10:00~11:00 廣川守「X線CTスキャナによる商周青銅器製作技法に関する研究」
11:00~12:00飯塚義之・内田純子「中央研究院所蔵殷墟青銅器の冶金学的研究」
昼休み
13:00~13:40 鈴木舞「盤龍城青銅器の製作技術」
13:40~14:20 丹羽崇史「中国における湾曲羽口の基礎的検討」
14:20~15:00 角道 亮介「西周青銅器の使用方法に関する一考察」
15:00~15:40 岡村秀典・石谷慎「同型鏡・同印鏡論の提言―戦国鏡の制作と流通」
15:40~16:00 休憩、ポスターセッション
16:00~17:00 パネルディスカッション:中国古代青銅器をめぐる諸問題

ポスターセッション
掲示:12月15日(土)12:30~12月16日(日)17:00
質疑応答:12月15日(土)16:00~17:00
 12月16日(日)15:40~16:00
山本尭「長江中流域における殷代社会動態に関する考察」
大日方一郎「西周時代における副葬土器」
小林青樹・石川岳彦「中国北方青銅器文化における年代の再構築」
因幡聡美「雲岡石窟第三期諸窟に見られる複合龕に関する研究」

2012年11月13日火曜日

平成24年度九州史学会大会

九州史学会大会
日程:12月8日(土)9日(日)
場所:九州大学 箱崎文系キャンパス
参加費1500円

12月 8日(土)シンポジウム「戦跡からみたモンゴル襲来 ―東アジアから鷹島へ―」
法文系講義棟101番教室 (13:30より)
舩田善之「モンゴルの襄樊包囲戦とその軍事拠点」
尹龍爀「韓国における最近の三別抄遺跡調査と研究」
森平雅彦「甲戌 ・辛巳の役後における高麗対日警戒体制とその拠点」 
佐伯弘次「弘安の役と北部九州」
池田栄史「鷹島海底遺跡の発掘調査」

12月9日(日)<東洋史部会> 法文系講義棟204番教室  9:00開始
黒木修平「古代東アジアにおける麈尾の伝播について」
劉可維「唐代の賵賻制度について―唐喪葬令を中心として ―」
藤野月子「唐代和蕃公主考―降嫁に付随し て移動したヒトとモノ ―」
史習隽「明末士大夫の天主教受容について―徐光啓の交友ネットワークを中心に―」
郭陽「日本に伝わった鄭經関連の情報 ―『華夷変態』を中心に―」
川本芳昭「現代中国の民族問題と中国史研究について― 「少数民族」の理解をめぐって―」
三田辰彦「東晋南朝の儀注改定プロセス」
塩卓悟「唐宋代の肉食における性差」
内田直文「清代康煕朝の奏摺政治について」
小林聡「漢唐間の礼制・服制史における北朝の位置」

五胡十六国 新訂版

三崎良章『五胡十六国―中国史上の民族大移動 【新訂版】』(東方書店、2012年10月)

東方選書43。2002年に出た『五胡十六国』の新訂版。
文章の全面的な修正、研究の進展による内容の修正を施し、
第六章「「五胡」と漢族の融合」を新たに設けている。
表紙は遼寧省朝陽市袁台子壁画墓(前燕)の墓主像(漢族)と、
甘粛省酒泉市丁家閘五号墓(北涼か西涼)の農耕図(非漢族)。

2012年11月12日月曜日

シンポジウム「大青山一帯の北魏城趾遺跡」

シンポジウム「大青山一帯の北魏城趾遺跡」
日時:2012年12月8日(土)10時~16時
場所:東京大学本郷キャンパス 法文1号館315室

研究報告
10:00~10:40 佐川英治「都市としての北魏六鎮」
10:40~11:20 松下憲一「大青山南部北魏城址遺跡」
11:20~12:00 塩沢裕仁「大青山北麓の六鎮関連遺跡」

特別講演
13:00~14:00 黄暁芬「秦漢帝国北方辺境の歴史空間(仮)」
14:00~15:00 蘇哲「墳墓の図像資料から見た北魏平城時代の暮らし」

ディスカッション 15:10~16:00
大青山からみた北魏史

2012年10月31日水曜日

李白

金文京『李白―漂泊の詩人 その夢と現実』(岩波書店、2012年10月)

岩波書店の「書物誕生 あたらしい古典入門」シリーズの最新刊。このシリーズは、「書物誕生」のはずなのに、『論語』・『史記と漢書』・『老子』などとともに、陶淵明・杜甫・李白の三人の詩人がなぜか取り上げられている。

『杜甫』も『陶淵明』も、あまり他の概説書と変わり映えしない印象だったけど、『李白』は他書にない李白像が示されている。

第Ⅰ部では、李白の出自(胡商)、李白伝説、李白詩文集の形成を紹介。第Ⅱ部では、「山人」の視点から李白の漂泊の人生をとらえなおしている。功名への野望を抱き、地方官に無心し、道教にそまる李白。第Ⅱ部第五章では、「政治的感覚に欠如した頓珍漢な人間であった」ことを指摘している。第Ⅱ部第Ⅱ章での、胡商出身であるがゆえに、士人の儒教的行動様式にうとかったという指摘にも眼からウロコが落ちた。第Ⅰ部・第Ⅱ部ともに興味深く、一気に読んでしまった。

歴史学研究会創立80周年記念シンポジウム

歴史学研究会創立80周年記念シンポジウム
テーマ 歴史学のアクチュアリティ
日時:2012年12月15日(土)13時~18時
会場:明治大学リバティタワー1011教室

報告
長谷川貴彦「現代歴史学の挑戦―イギリスの経験から―」
岸本美緒「中国史研究におけるアクチュアリティとリアリティ」
安田常雄「方法としての同時代史」
村井章介「〈境界〉を考える」
栗田禎子「現代史とは何か」
コメント 浅田進史・藤野裕子

参加費500円

2012年10月23日火曜日

第23回書学書道史学会大会

第23回書学書道史学会大会
場所:別府大学(別府キャンパス)
日程:2012年11月17日(土)・18日(日)

17日 研究発表 32号館内500番教室
14:30~15:00 陳柏伩「筆力の構築〈骨〉〈筋〉〈肉〉の概念より―漢魏六朝唐の書論を中心に―」
15:00~15:30 福光由布「蘇軾詩における「草書未暇縁怱怱」に関する一考」
講演
15:40~16:50 胡平生「簡牘の偽物問題について」

18日 研究発表 メディア教育・研究センター内4Fメディアホール
09:00~09:30 川合尚子「張廷済の金石学―翁方綱・阮元との交友と影響―」
09:30~10:00 緑川明憲「大師流能書・藤木敦直伝記考証」
10:00~10:30 丸山果織「戦後日本の「前衛書」の展開―森田子龍の作品分析をとおして―」
10:40~11:10 尾川明穂「歴代書跡に対する董其昌の鑑定・評価基準―褚摹系「蘭亭序」に近似する一群の書跡の存在から―」
11:10~11:40 矢野千載「里耶秦代簡牘に見る秦代書法―多様な秦隷、簡牘上の小篆、楚簡との関わりを中心に―」
13:50~14:20 高木義隆「金章宗の所蔵印と痩金書」
14:20~14:50 横田恭三「前漢墓出土「告地書」考」

2012年10月12日金曜日

虚構ゆえの真実

ジョン・R・マクレー著、小川隆解説『虚構ゆえの真実―新中国禅宗史』(大蔵出版、2012年5月)

出版直後から、『虚構ゆえの真実』というタイトルに魅かれて、気になっていたのだけれど、禅宗史という慣れないジャンルであることから、敬遠してしまっていた。しかし、最近、わけあって、小川隆氏の唐代の禅宗に関する本を三冊読んだので、チャレンジしてみることに。冒頭で小川隆氏が、従来の禅宗理解とマクレー氏の著作の新しさ・課題を解説していて、入りやすい。

目次は以下の通り。
小川隆解説「破家散宅の書」
第一章「法系を見る―禅仏教についての新しい視座」
第二章「発端―菩提達摩と東山法門を区別しつつ接続する」
第三章「首都禅―朝廷の外護と禅のスタイル」
第四章「機縁問答の謎―誰が、何を、いつ、どこで?」
第五章「禅と資金調達の法―宋代における宗教的活力と制度的独占」
第六章「クライマックス・パラダイム―宋代禅における文化的両義性と自己修養の諸類型」

一見してわかるとおり、通常の仏教史とは全く違ったスタイルをとっている。従来の伝灯・法系を軸とした禅宗史を宋代に構築された「虚構」とみなし、その禅宗史像を白紙に戻して、原始禅(達摩・恵可)、初期禅(600~900頃)、中期禅(750~1000頃)の禅について考え直している。さらに、「虚構」と言って切り捨てるのではなく、「虚構」であるがゆえに重要であるとして、宋代の禅についても検討している。

ジャンル・時代は違えど、今、考えている問題と、方法論・問題意識の点で大いに参考になった。本書中で多くの課題・研究テーマを開拓しているが、マクレー氏は2011年10月に64歳で亡くなってしまったため、今後の発展を見ることはできない。非常に残念。

知日 特集猫

蘇静主編『知日・猫』(中信出版社、2012年8月)


中国で出版されている日本文化を知る雑誌『知日』。
8月に出た第5号では、日本の猫をクローズアップ。
日本文化を知るために、猫に着目するとはさすが。
しかも、中途半端な特集ではなく、全183頁中、158頁が猫。
(そのうち、藤子・F・不二雄博物館が24頁)
写真も豊富で眺めているだけで満足できる。
内容は、猫漫画、猫島(田代島)、猫カフェ、
荒木経惟とチロ、かご猫、駅長たまなどなど。

東方書店の9月のベスト10(中文書)では、
なんと堂々の第二位。やはり猫好きって多いんだなぁ。
ちなみに『知日』の第6号は、鉄道らしい。
中国人は、鉄道マニアをどうみているのだろうか。
ちょっと気になる。

2012年10月11日木曜日

2012年度佛教史学会学術大会

2012年度佛教史学術大会
日時:2012年11月17日(土)
場所:大谷大学一号館1213教室・1214教室

報告
【日本】10:00~12:00 1214教室
米澤実江子「袋中良定『摧邪輪抄書』について」
徳永健太郎「南北朝の戦争と将軍家御師職」
岩田文昭「近角常観研究の現状と課題」

【東洋】10:00~12:00 1213教室
横山剛「塞建陀羅造『入阿毘達磨論』成立考―『倶舎論』との先後関係をめぐって―」
倉本尚徳「北朝隋唐造像銘における天・浄土に関する用語の時代的変化―龍門石窟を中心に―」
藤井政彦「道宣における感通について」

【合同】13:00~15:00 1214教室
吉田隆英「分類と範疇―九品往生の源流―
河上麻由子「「大隋九眞郡寶安道場之碑文」について」
手島崇裕「平安中後期の僧侶の渡海にみる日中仏教交渉の展開」

【大会講演】15:10~16:40 1214教室
佐藤智水「中国北朝造像銘の調査・研究から見えるもの」


それにしても聞きたい報告がいくつもある。
河上氏の紹介する碑文は、確かベトナムにある隋代の碑。
どんな内容なのか気になる。

2012年10月8日月曜日

2012年度東南アジア考古学会大会

2012年度東南アジア考古学会大会
日時:2012年11月17日(土)、18日(日)
会場:17日(土)昭和女子大学・本部館3階大会議室
   18日(日)昭和女子大学・研究館7階 7L02
資料代:500円

東南アジア水中考古学最前線
プログラム
11月17日(土)
13:10~15:10 Dr. Eusebio Z. Dizon「1600年の沈没船、サン・ディエゴ号の調査」
15:10~15:20 休憩
15:20~16:20 林田憲三「蒙古襲来絵詞に描かれた元寇船―絵画研究と出土遺物による解釈」   
16:20~17:20 Randall J.佐々木「ベトナム・バクダン川の元寇遺跡の調査」

11月18日(日)
10:10~11:00 林原利明「日本における近年の水中考古学調査」
11:00~11:30 向井亙「タイ国における水中考古学調査」
12:30~13:30 会員総会
13:30~14:00 菊池誠一「ベトナムにおける水中考古学調査」
14:00~14:30 坂井隆「インドネシアにおける水中考古学調査」
14:30~15:00 石村智「パラオにおける水中考古学調査」
15:30~16:30 総合討論(司会:田中和彦)

以前、本ブログで紹介した『沈没船が教える世界史』の作者が報告するベトナムのバクダン(白藤)川の元寇遺跡の報告が気になって紹介。2009年の段階で、木杭が発見されていたが、その後どうなったのだろうか。

2012年10月4日木曜日

2012年度東洋史研究会大会

2012年度東洋史研究会大会
日時:2012年11月3日(祝)午前9時~午後5時
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)

発表題目
午前の部
戸川貴行「東晋南朝の建康における華林園について―「詔獄」を中心としてみた―」
石野一晴「曇陽大師の追憶―明末における士大夫と「宗教」―」
宮宅潔「秦代軍事制度の諸問題」
小島浩之「唐代の泛階と人事政策」

午後の部
新谷英治「二種の『キターブ・バフリエ』」
磯貝真澄「一九世紀後半ロシア帝国ヴォルガ・ウラル地域におけるイスラーム法実践―遺産分割案件の処理を事例として―」
徳永洋介「北宋時代の治安政策と盗賊重法」
武上真理子「漢訳西学書に見る知の往還―江南製造局訳『地学浅釈』を例として―」
足立啓二「二十世紀前期の諸論争を振り返って」

大会参加費(資料・要旨代含む)500円

2012年10月3日水曜日

2012年度内陸アジア史学会大会

2012年度内陸アジア史学会大会
日時:2012年11月4日(日)13:00~17:10
場所:北海道大学 札幌キャンパス 人文社会科学総合研究棟 

公開講演 人文社会科学総合研究棟409室
13:00~14:00 荒川正晴「前近代中央アジアの国家と交易 」

研究発表 14:15~17:10
長峰博之 「カーディル・アリー・ベグとその史書について―ジョチ・ウルス「内部史料」の史料的可能性とその歴史認識―」
高本康子「大陸における対「喇嘛教」活動―満洲国興安北省を中心に―」
秋山徹 「ロシア統治下におけるクルグズ首領層の権威―遊牧世界とイスラーム世界のあいだで―」

嶺南士氏の勢力形成をめぐって

川手翔生「嶺南士氏の勢力形成をめぐって」(『史観』167、2012年9月)

後漢末に嶺南に勢力をはった士燮について検討。
士燮の官歴・歴代の交趾刺史との関係を踏まえ、
彼が嶺南で勢力を拡張した要因を探る。

まず、なにより士燮で論文が出たことにびっくり。
日本では後藤均平氏(「士燮」『史苑』32‐1、1972年)以来とのこと。
在地豪族としての影響力が希薄だったとする点に
先行研究との大きな違いがある。

金輪王、封禅す

笠松哲「金輪王、封禅す―武后の君主権と封禅―」(『洛北史学』14、2012年6月)

唐高宗の封禅が、周辺民族との君臣関係を締約し、天下秩序を形成する会同儀礼であったことを示した前稿(「天下会同の儀礼―唐代封禅の会盟機能について」『古代文化』61‐1、2009年)に続き、武周の則天武后(天冊金輪聖神皇帝)の封禅の機能について検討。
武后の封禅儀礼の内容を確認したのち、封禅に至るまでの武后の尊号の変遷を追い、その尊号の意味を『大雲経』などによって示し、金輪王として武后が封禅に臨んだ意義を解明している。

講演会:東洋学・アジア研究の新たな地平を切り拓く

講演会:東洋学・アジア研究の新たな地平を切り拓く
日時:2012年12月8日(土)13:30~17:00
会場:東京大学法文1番大教室

講演
金文京「東アジア比較文学の構想」
川原秀城「17‐18世紀:西欧学術の東漸と中国・朝鮮・日本」

入場無料・申込不要

2012年9月30日日曜日

2012年度東北史学会

2012年度東北史学会
日時:2012年10月6日(土)・7日(日)
場所:岩手大学教育学部北桐ホール

10月6日 13:00~16:15
公開講演 震災と歴史学
保立道久「平安時代における奥州の規定性―九世紀陸奥海溝地震を切り口に―」
大門正克「「生存」を問い直す歴史学―震災後の現在と岩手県の戦後史との往還を通じて―」

10月7日 東洋史部会 9:30~ 場所:岩手大学教育学部E27教室
佐々木仁志「義帝約考」
中本圭亮「後漢順帝期の人事制度改革について」
見城光威「後晋政治史研究―出帝即位前史―」
深澤秀男「変法運動と光緒帝」

2012年9月20日木曜日

2012年度史学会大会

2012年度史学会大会
日時:11月10日(土)・11日(日)
場所:東京大学法文1号館・2号館

11月11日(日) 東洋史部会 法文1号館113番教室
研究発表 10:00~12:00
佐治奈通子「メフメト2世・バヤズィト2世期の鉱山地域に対するカーヌーンナーメの内容と分析」
齊藤茂雄「突厥第二可汗国の内部対立―古代チベット語文書「北方誌」にみえるブグチョル('Bug-chor)の検討から―」
岡田雅志「18世紀における中越境界地域の社会変容」
工藤裕子「オランダ領東インド・スマランにおける華人系銀行の諸形態―1900~1920年代を中心に―」

研究発表13:00~16:30
邉見統「高祖系列侯の政治的位置づけの変化をめぐって」
林美希「唐前半期の馬政と閑厩」
呉志宏「唐代左・右蔵庫の変遷と内庫との関係」
津坂貢政「書法にみる朱熹の美的価値基準とその淵源―福建道学系士人の題跋を素材に―」
中野耕太「高麗武人政権における軍事力掌握と政局の動向」
鈴木開「朝鮮丁卯胡乱考―後金との外交交渉の局面を中心に―」
河野正「朝鮮戦争時期、中国農村における戦時動員と軍隊生活」

2012年9月19日水曜日

東アジアをむすぶ漢籍文化

東アジアをむすぶ漢籍文化-敦煌から正倉院、そして金沢文庫へ-
日程:2012年11月2日(金)、3日(土) 10:00~16:30
場所:国立歴史民俗博物館講堂
定員:250名

11月2日(金)
10:30 基調報告「東アジアをむすぶ漢籍文化」
神鷹德治「敦煌と繋がる日本の漢籍」
許逸民「中国における漢籍出版の現状」
金卿東「朝鮮文献に見える『白氏文集』-「何処難忘酒」詩をめぐって」
コメンテーター:王勇
                               
13:00 第一部 「敦煌学一百年」
許建平「敦煌詩経写巻研究綜述」
影山輝國「『論語義疏』の声点について-敦煌本と日本鈔本」
コメンテーター:神鷹德治
                              
 14:30 第二部「歴博所蔵の漢籍をめぐって」
中尾健一郎「二つの『梅花無尽蔵』抄本」
汪春泓「『史記』と『漢書』の編纂をめぐる問題」
陳翀「上杉本『史記』について」
コメンテーター:土屋聡

11月3日(土)
10:00 第三部「日本の〈ふみくら〉と旧鈔本の世界」
大渕貴之「王羲之書「楽毅論」の「千載一遇」句について-正倉院御物光明皇后写本の原型を探る-」
陳尚君「『先秦漢魏晋南北朝詩』の増訂作業」
杜暁勤「金沢本『白氏文集』に見える詩歌分類の原型」
住吉朋彦「九条家本『白氏文集』巻十六残簡出現の意義」
コメンテーター:静永健

13:00 第四部「東アジアの文選学」
佐竹保子「九条家本『文選』について」
游志誠「『集注文選』研究」
傅剛「日本現存資料から読み解く『文選』の原形-写本から刻本への改編を考える」
コメンテーター:陳翀(広島大学)

14:15 第五部「聖教と漢籍-中世の知の実像に迫る」
盧盛江「空海『文鏡秘府論』の対属論研究について」
張伯偉「中国の禅思想と文学との関わり」
堀川貴司「五山僧の別集に見る偈頌と詩」
西岡芳文 「称名寺聖教類について」
福島金治「北条実時本『斉民要術』をめぐる京・鎌倉のひとびと」
コメンテーター:井原今朝男

申し込み方法
E-mailまたは往復ハガキにて「歴博国際シンポジウム11月2・3日参加希望」と明記の上、住所・氏名(ふりがな)・電話番号を記入し、下記まで申し込み。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117番地
国立歴史民俗博物館 研究協力課国際交流係
kokusai-e■ml.rekihaku.ac.jp ■を@に置き換えてください。

2012年9月5日水曜日

日本中国学会第64回大会

日本中国学会第64回大会
日時:2012年10月6日・7日
場所:大阪市立大学杉本キャンパス

研究発表プログラム
【哲学思想部会】(全学共通教育棟811教室)
10月6日(土)午前
10:00~10:30 高田哲太郎「呂氏春秋の天―統一理念の前提―」
10:35~11:05 工藤卓司「『史記』『淮南子』中の豫讓復讐物語」
11:10~11:40 影山輝國「皇侃と科段説」

10月6日(土)午後
13:30~14:00 福谷彬「宋学における「思孟学派」観の成立について」
14:05~14:35 青木洋司「呉棫の『尚書』解釈―『書裨傳』を中心として―」

10月7日(日)午前
09:30~10:00 大野裕司「陳元靚『上官拜命玉暦』について―宋代術數學(擇日術)の特色を探る―」
10:05~10:35 三澤三知夫「王畿の経書解釈について―『大象義述』を中心として―」
10:40~11:10 井澤耕一「南宋末、士大夫たちは「四書」を如何に読み解いたのか―上海図書館蔵『金匱要略方』の紙背文献に関する一考察―」

10月7日(日)午後
13:30~14:00 田中有紀「何瑭の形神二元論」
14:05~14:35 王晶「溝口雄三の知的実践―「日中・知の共同体」を通じて―」

【文学語学部会】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)午前
10:00~10:30 恩塚貴子「漢末魏初に於ける書牘体の変化―その内容と文体を中心に―」
10:35~11:05 戸高留美子「「魏都賦」における西晋王朝の正当性立証の過程について」
11:10~11:40 竹澤英輝「『文心雕龍』における劉勰の「神」の概念について」

10月6日(土)午後
13:30~14:00 谷口匡「柳宗元の「説」について」
14:05~14:35 長谷川真史「中唐における連昌宮の荒廃と元稹」

10月7日(日)午前
09:30~10:00 二宮美那子「園林の「小空間」―白居易詩文における私的空間の位置づけについて―」
10:05~10:35 谷口高志「愛好という病―中晩唐期における詩人たちの偏愛・偏好への志向」
10:40~11:10 林雪雲「蘇軾の妻妾に対する観念」

10月7日(日)午後
13:30~14:00 福田知可志「再婚をめぐる怪異譚―『夷堅志』「張夫人」の物語を中心に―」
14:05~14:35 李海「梁啓超の詩論と德富蘇峰」
14:40~15:10 平田昌司「京都市左京区における茅盾」
15:15~15:45 吉川龍生「映画『武訓伝』と孫瑜映画のファンタジー」
15:50~16:20 田中祐輔「中国の大学専攻日本語教科書の現代史―日本語教科書が包摂する「国語教育」に付与された教育思想的役割―」

【日本漢文部会】(全学共通教育棟811教室)
10月7日(日)午後
14:40~15:10 横山俊一郎「江戸時代後期における〈実務家〉としての儒者―瀬戸内諸藩における懐德堂学術の受容を中心として」
15:15~15:45 矢羽野隆男「幕末懷德堂の陵墓調査―最後の教授・並河寒泉の活動」

【COE成果報告】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)午後
14:40~15:10 佐藤進「21世紀COEプログラム「日本漢文学研究の世界的拠点の構築」とその継続事業」
15:15~15:45 吾妻重二「グローバルCOEプログラム「東アジア文化交渉学の教育研究拠点形成」(ICIS)の成果と展望」

【展示紹介】(基礎教育実験棟階段教室)
10月7日(日)午前
11:15~11:45 齋藤龍一「大阪市立美術館山口コレクション中国佛教・道教彫刻について」

【特別講演】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)16:00~17:00
王水照「宋代文学研究中的学理性建構―以文学与科学、家族、伝播、地域、党争之関係爲中心」

2012年9月4日火曜日

近代中国研究入門

岡本隆司・吉澤誠一郎編『近代中国研究入門』(東京大学出版会、2012年8月)

現在の中国近代史研究に対する強い危機意識のもと執筆された研究入門。「近代」の範囲は、おおまかにいって「一九世紀がはじまる前後から、中華人民共和国の成立あたり」までとする。研究論文・著書を網羅的に紹介する形はとっていない。また、論文の書き方マニュアルでもない。基礎史料や文献を紹介しつつ、歴史研究の姿勢・作法を説く形をとっている。

目次は以下の通り。
序章:研究の前提と現実(岡本隆司)
第一章:社会史(吉澤誠一郎)
第二章:法制史(西英昭)
第三章:経済史(村上衛)
第四章:外交史(岡本隆司)
第五章:政治史(石川禎浩)
第六章:文学史(齋藤希史)
第七章:思想史(村田雄二郎)
座談会:近代中国研究の現状と課題

耳に痛い、いや、胸をえぐるような指摘が随所になされていて、反省させられることしきり。資料状況に違いはあるものの、殆どが中国史全体にあてはまる指摘で、前近代史研究志望者にとっても必読文献ではなかろうか。

ちなみに第五章では、問題意識が希薄で、細かな事象精査にとどまっている研究を「隣家に子猫が生まれた」式の研究としている。この比喩は、スペンサーのエッセイに見え、明治日本経由で清末・民国初の中国で愛用された言い回しらしい。否定的な意味なのだけど、なんだか気に入ってしまった。ついつい自虐で使ってしまいそう。

座談会は、執筆者の本音と苦悩が垣間見えて、耳に痛い内容であるけれど、楽しみながら読めた。高所からの若手批判ではなく、現在の研究者をとりまく環境・圧力を踏まえつつ、普段いいにくいアドバイスをしている感じ。あと、現代中国研究者の近代史に対する姿勢に違和感を述べているのも印象的。

2012年9月1日土曜日

新発見の歐陽脩書簡について

東英寿「新発見の歐陽脩書簡について」(『九州大学中国学会報』50、2012年5月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(上)―九十六篇はなぜ忘却されてしまったのか」(『東方』376、2012年6月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(中)―いかにして発見は生まれたのか」(『東方』377、2012年7月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(下)―日本、中国における反響」(『東方』378、2012年8月)

冒頭の論文は、東英寿氏が発見した欧陽脩の書簡96篇の送り先と収蔵元について表にまとめて紹介したのち、特に4篇にしぼって内容を簡単に紹介したもの。蘇洵の文章に対する評価や、范仲淹の神道碑をめぐるやりとりなどが記されている。
『東方』の三本の文章は、発見の経緯と反響についてまとめたもの。日本では、こういう発見がまだまだあるはず。地味な書誌学調査の重要性がよくわかる。それにしてもマスコミの影響力の大きさにびっくり。

『日本中国学会報』64(2012年10月予定)に「歐陽脩の書簡九十六篇の発見について」という論文が掲載され、今年度中に『歐陽脩の新発見書簡九十六篇―歐陽脩全集の研究』(研文出版)を刊行するそうだ。

2012年8月29日水曜日

幕府のふみくら

長澤孝三『幕府のふみくら―内閣文庫のはなし』(吉川弘文館、2012年9月)

現在は国立公文書館内の機構改革によって、名称がなくなってしまった内閣文庫の歴史と仕事について、最後の内閣文庫長(2001年1月~3月)であった長澤孝三氏が紹介。

紅葉山文庫を筆頭に、現在までの内閣文庫の歴史をふりかえり、内閣文庫が持っているえりすぐりの国書・漢籍などを解説し、内閣文庫の日々の仕事を紹介している。随所に挿入される[余録]と題した思い出話も興味深い。

以前、とある内閣文庫本を調査したことがある。
すぐに原本閲覧ができて、とてもうれしかった。
今では個人撮影も認められているそうだ。
気になる漢籍がいくつかあるので、
時間をつくって、また見に行きたい。

なお、現在では、情報公開促進の流れによって、
「原本による閲覧」が大前提となり、
年齢制限の撤廃や個人撮影の許可がなされているが、
資料保存の観点から、長澤氏は若干の憂慮を示している。

2012年8月25日土曜日

屍者の帝国

伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』(河出書房新社、2012年8月)

「早熟の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、
盟友・円城塔に引き継がれ遂に完成」(帯より引用)。

フランケンシュタインの技術と
バベッジの解析機関が実用化された19世紀末、
世界は「屍者」で満たされていた。
英国諜報員ジョン・ワトソンは
英露のグレートゲーム真っ只中のアフガニスタン奥地に赴く。
あるロシア人率いる「屍者の王国」をめざして……。
これが長い冒険の始まりにすぎないことをワトソンは知らない。

生者と屍者と世界文学の登場人物が混ざり合い、
史実とifと作品世界の溶け込みあった幻想の19世紀。
『ディファレンス・エンジン』を彷彿させる
SF&歴史改変小説であるのは当然のこと、
世界をまたにかける冒険小説でもあり、
なおかつ魂・意識・生死を問う思索小説でもある。
本筋とはずれるが、様々な仕掛けを探るのも楽しい。

伊藤計劃は、プロローグにあたる部分を書き残し、
続きもプロットも殆ど残さないまま、34歳の若さで亡くなってしまった。
そのため、ほとんどが円城塔の単独執筆なのだが、
驚くほど伊藤計劃の『虐殺器官』・『ハーモニー』との
つながりを感じさせる。

痺れながら、一気に読んでしまった。

19世紀末の歴史改変小説は英米で盛んだけども、
大体の作品の舞台は、欧米にとどまっている。
それに対して『屍者の帝国』は、がっつり「アジア」が舞台。
さっそく、世界に向けて翻訳すべきじゃないだろうか。

中国前近代ジェンダー史ワークショップ

中国前近代ジェンダー史ワークショップ
<唐宋変革は中国のジェンダー構造をどう変えたか?―中国ジェンダー史教育の方向を探る>ワークショップ(その1)
日時:2012年9月5日(水)午後1:30~5:30
場所:東洋文庫2階講演室

プログラム
13:30~13:45 趣旨説明:小浜正子
13:45~14:30 金子修一「漢代の皇后に関する諸問題」
14:30~15:15 猪原達生「唐代における宦官の婚姻と家族形成について」
15:15~16:00 五味知子「明清時代の貞節と秩序」
16:15~16:30 コメント 岸本美緒
16:30~17:30 総合討論

当日参加も可。ただし、人数把握のために参加予定の方は、
kohama*chs.nihon-u.ac.jp(*→@に変換してください) に連絡のこと。

2012年8月23日木曜日

東方学会平成24年度秋季学術大会

東方学会平成24年度秋季学術大会
日時:2012年11月10日(土)12:30~17:50
会場:芝蘭会館別館

プログラム
講演会
12:40~13:40 戸倉英美「舞楽「蘭陵王」新考」
13:50~14:50 後藤昭雄「平安朝の願文―中国の願文を視野に入れて」

研究発表(第29回・30回東方学会賞受賞者)
15:00~15:30 田中靖彦「朱熹の歴史認識と三国時代」
15:35~16:05 仙石知子「毛宗崗本『三国志演義』における関羽の義」
16:10~16:40 江川式部「唐代の弔祭」
16:45~17:15 福田素子「落語「もう半分」から考える日本の討債鬼故事受容」

17:30~17:50 第31回東方学会賞贈呈式
                     

2012年8月19日日曜日

東洋学報

東洋文庫の『東洋学報』が第93巻第1号(2011年6月刊)から、
PDFでダウンロードできることを遅ればせながら知りました。
しかも、最新号がダウンロードできるなんて太っ腹。

ちなみに『東洋学報』94-1(2012年6月)の目次は以下の通り。
菊地大「曹操と殊礼」
岡部毅史「北魏前期の位階秩序について―爵と品の分析を中心に―」
小武海櫻子「同善社の慈善事業―合川会善堂慈善会の軌跡を中心に―」
関智英「袁殊と興亜建国運動―汪精衛政権成立前後の対日和平陣営の動き―」

菊地論文は曹操に与えられた殊礼の前例と意義を検討している。なかでも魏公・魏王時代の曹操に与えられた殊礼(後漢の東海王彊・前漢の梁王武に基づく)によって、皇位継承資格者になぞらえられたことを指摘し、漢魏禅譲の機運が形成されたとする。

唐代史研究会2012年夏期シンポジウム


唐代史研究会2012年夏期シンポジウム「「隋唐帝国」論―宗教・法制・国際関係」
日期:2012年8月20日(月)~22日(水)
会場:文部科学省共済組合箱根宿泊所 四季の湯強羅静雲荘

【スケジュール】
8月20日
14:00~15:30 福島恵「墓誌史料より見たソグド人の東方移住の経路について」
15:30~17:00 小幡みちる「唐代道教教団における礼的秩序」
17:00~18:00 総会


8月21日
10:00~12:00 河上麻由子「南北朝時代から隋代にかけての国際秩序―倭国の位置を中心に」
12:00~13:30 昼食
13:30~15:00 古畑徹「唐王朝は渤海をどのように位置づけていたか―中国「東北工程」における「冊封」の理解をめぐって」
15:00~16:30 辻正博「隋唐律令史における大業律令の位置づけ」

16:30~18:00 総合討論

2012年8月14日火曜日

カラマーゾフの妹

高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社、2012年8月)

帯の「あの世界文学の金字塔には真犯人がいる。」にひかれて購入。高野史緒のSF作品はいくつか読んでいたけれど、最近、新作でないなぁ、と思っていたら、まさかあのドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の続編を書いていたとは。

舞台は、『カラマーゾフの兄弟』の13年後の1887年。次男のイワンが郷里に未解決事件特別捜査官として、帰ってくるところからはじまる。『カラマーゾフの兄弟』の作中人物のその後とともに、再捜査がはじまるや、新たな事件が……。

一見、普通の続編&推理小説と思いきや、徐々に虚実ないまぜのロシアに。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』第二部の構想を大胆にアレンジした上で、あの名探偵やロシア文学の登場人物、実在の学者・作品も取り込み、いつの間にか舞台はスチームパンク風の世界に。まさしくSFと推理小説とロシア文学の融合。

実のところ、『カラマーゾフの兄弟』は未読だったのだけど、本書を読みおえて、すぐさま新潮文庫版を購入。一気読みしてしまった。高野氏は光文社文庫版に依拠しているのだが、新潮文庫版の翻訳でも特に矛盾箇所は生じていなかった。巧みに原作の隙をついて、意外な真犯人を導き出している。

『ディファレンス・エンジン』や、キム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』三部作、矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』などを思い起こした。今月出る予定の伊藤計劃&円城塔『屍者の帝国』も同種の作品のはず。もちろん、江戸川乱歩賞応募作ということもあって、スチームパンク的要素は少な目。SF好きなら、なんなく入り込めるし、そうでない方も楽しめるはず(多分)。まぁ、苦手な方も多いかも。

水戸黄門「漫遊」考

金文京『水戸黄門「漫遊」考』(講談社学術文庫、2012年8月)

「この紋所が目に入らぬか!」でおなじみの水戸黄門。
彼には、日本・中国・朝鮮に仲間がいた。
中国の包拯に劉知遠、朝鮮の暗行御史、北条時頼……。
黄門さまの「漫遊」の起源をめぐって、
古代から現代、ギリシャ・インド・中国・朝鮮・日本、
王の巡幸・芸能者・スパイ、
神話学・民俗学・歴史学・文学、
講談・小説・映画・テレビと「漫遊」し、
その行き着いた果てに明かされる意外な印籠の起源。

お隣の中国では、今でも黄門の仲間たち(特に清の皇帝)は元気だが、
日本では、ついに2011年にテレビドラマ『水戸黄門』が終焉を迎えた。
善意の権力者が民衆を救うという物語が、
フィクションであっても成立しない時代が来たのかもしれない。

もうすぐ出版されるはずの冲方丁の『水戸光圀』は、
一体、どんな水戸黄門を描くのだろうか。

なお、先日まで、ファン・ヒューリックの狄(ディー)判事シリーズを読んでいたのだけど、本書には取り上げられていなかったが、彼も水戸黄門の仲間であることは間違いない。

原書は、金海南名義で1999年に新人物往来社から刊行。
う~ん、知らなかった。

2012年8月11日土曜日

北・東北アジア地域交流史

姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』(有斐閣、2012年)

有斐閣の「新しい時代の大学テキストシリーズ」の有斐閣アルマの一冊。
「北・東北アジア地域」とは聞きなれない呼称だが、対象範囲は、環オホーツク海・環日本海圏、沿アムール圏、中央アジア圏と幅広い。「東アジア」・「東北アジア」といった呼称では、中華世界の「周辺地域」という印象を与えてしまいかねないため、「北・東北アジア地域」を用いるとする。

目次は以下の通り

序章「北・東北アジア地域の歴史と現代をどのように考えるか」(姫田光義)

第1部:シベリアの先住民族と環オホーツク海・環日本海交流圏
第1章「北・東北アジアの先住民族と環オホーツク海・環日本海交流圏」 (中村和之)
第2章「日本から見た環日本海交流圏」 (荒野泰典)

第2部:沿アムール河・ウスリー江交流圏の形成と現代
第3章「帝政期極東ロシア地域の諸民族の交流と生活」(サヴェリエフ イゴリ)
第4章「国境にまたがる民の20世紀―ロシア・ソ連朝鮮人のあゆみ」 (ユ ヒョヂョン)
第3部:モンゴルと中央アジアの交流圏の形成と現代
第5章「匈奴とモンゴルの交流圏 」(井上治)
第6章「モンゴル人にとって栄光の時代とは」 (今岡良子)
第7章「中央アジア交流圏が示すユーラシア像」 (梅村坦)

第4部:文化の移動と交流圏とをつなぐリンク
第8章「海の神様はどこまで広がったか」 (樋泉克夫)
第9章「間宮林蔵は北の大地で何を見たのか―清朝期の東北地域における「多民族的混交」の現実 」(王中忱)

東洋文庫ミュージアム企画展記念シンポジウム

東洋文庫ミュージアム企画展「ア!教科書で見たゾ」記念シンポジウム
日程:2012年8月18日(土)14時~17時
場所:東洋文庫2階講演室

講演
14時~14時30分:小川宏明「世界史は、ファンタジーワールドの物語か?!」
14時30分~15時:風間睦子「世界史教科書、図表のキャプションまで読み込め!」
15時10分~15時40分:岸本美緒「エ!これ見てないゾ?!世界史教科書の悩ましい図版選び」
15時40分~16時10分:桃木至朗「東南アジアと日本を「つなぐ」「くらべる」~新しい世界史の威力と魅力~」
16時20分~17時:パネルディスカッション

入場定員100名
事前申込制・抽選制(東洋文庫ミュージアム宛にはがきかメールにて申込み)
空席が出た場合、当日受付可。
参加費無料

国際学術シンポジウム「墓誌を通した魏晋南北朝史研究の新たな可能性」

国際学術シンポジウム「墓誌を通した魏晋南北朝史研究の新たな可能性」
日時:2012年9月16日(日)9:30~16:30
会場:日本女子大学目白キャンパス新泉山館大会議室
《午前の部》
9:40~10:30  佐川英治「南北朝新出墓誌の現地調査―南京・洛陽・西安・太原―」
10:30~11:30 王素「中國中古墓誌整理研究的新收穫―以大唐西市博物館新藏魏晉南北朝墓誌為中心―」(仮題)
11:30~11:50 質疑1

《午後の部》
13:00~14:00 張銘心「従墓誌的伝播所見漢文化的分流与合流―以魏晋南北朝為中心―」
14:00~15:00 李鴻賓「墓誌銘反映的關隴集団的摶成問題」(仮題)
15:00~15:20 質疑2
15:30~16:25 総合討論(司会:葭森健介、コメント:關尾史郎)

魏晋南北朝史研究会第12回大会

魏晉南北朝史研究会 第12回大会
日時:2012年9月15日(土)13時~
会場:日本女子大学目白キャンパス 新泉山館大会議室
 
   

研究報告
福原啓郎「西晉の張朗墓誌の総合的研究を目指して」
 コメンテーター 葭森健介
窪添慶文「北魏における弘農楊氏―楊播兄弟とその子息たち」
 コメンテーター 岡部毅史

学会報告
小尾孝夫「“第6届中国中古史青年学者聯誼会”参加報告」
阿部幸信「“第7回中国中古史青年学者国際会議”のご案内」

2012年7月26日木曜日

第45回中央アジア学フォーラム

第45回中央アジア学フォーラム
日時:2012年7月28日(土)13時半~18時
場所:大阪大学豊中キャンパス文法経本館2階大会議室

報告
眞島宣明「論著紹介:Rulers from the Steppe: State Formation on the Eurasian Periphery, Los Angeles: Southern California University, 1991 ―とくにDrompp論文を中心にして」
河上麻由子「梁職貢図に関する一考察 ―研究状況の紹介と今後の課題」
古川洋平「初期仏教における修行道の研究 ―「五蓋の除去」に注目して
中田裕子「「康子相墓誌」再考 ―趙振華著『洛陽古代銘刻文献研究』の紹介もかねて」

三国志学会第7回大会

三国志学会 第七回大会
日時:2012年9月8日(土)
会場:龍谷大学 大宮学舎東黌204教室
参加費:500円
報告 (10:10~15:45)
10:10~10:55 袴田郁一「吉川英治が見た「三国志」」
11:10~11:55 陳曦子「中国四大名著の日中マンガ比較研究 ─「三国演義」を中心に─」
―昼休み―
13:00~13:45 櫻木陽子「21世紀の京劇と三国志」
14:00~14:45 池田雅典「蔡邕の考えた"漢"」
15:00~15:45 竹内真彦「成就する桃園結義」
 講演 (16:00~17:30)
大上正美「司馬昭と竹林の七賢」

2012年7月24日火曜日

第5回中国石刻合同研究会

第5回 中国石刻合同研究会
日時: 2012年7月28日(土) 10時~18時
場所:明治大学リバティタワー 13階 1135教室

10:10~10:50 櫻井智美「モンゴル時代の岳瀆祭祀―石刻史料の検討より―」
10:50~11:30 橋本繁「六世紀新羅の石碑について」
11:30~12:10 福原啓郎「西晉の当利里社残碑の歴史的意義」
12:10~13:00 昼食・休憩
13:00~14:00 王其禕「2008-2012年新獲隋代墓誌銘整理報告―『隋代墓誌銘彙考』以後の新発見」
14:00~14:40 北村 一仁「北朝後期の河東地域に関する一考察―山西運城出土の造像碑記を利用して」
14:40~15:20 山下将司「北朝末・唐初間におけるソグド人軍府―ソグド人漢文墓誌より―」
15:20~15:40 休憩
15:40~16:20 松原朗「「姚合墓誌」と詩人姚合の伝記論的問題」
16:20~17:00 氣賀澤保規「「袮軍墓誌」と“日本”―新発見百済人祢氏墓誌の紹介」
17:00~17:50 集約と質疑応答:佐川 英治

2012年7月16日月曜日

史料からみる中国法史

石岡浩・川村康・七野敏光・中村正人『史料からみる中国法史』(法律文化社、2012年7月)

中国法史の入門書。教科書であることを意識しているので、前近代中国の法をわかりやすくまとめている。現代日本法との比較も興味深い。

「第1部 法と刑罰」では、律令体系と五刑の形成・変容をまとめていて、中国法史の全体像をつかむことができる。続く第2部から第4部は具体的事例をもとに個別の内容を解説している。
「第2部 法と裁判」では、裁判の構造、拷問、誤判への対処、法と道徳が抵触した場合にどのように対処したかなどを取り上げている。「第3部 刑事法」では、高齢者や年少者の扱い、自首、正当防衛など。「第4部 家族法」では、婚姻、離婚と再婚、家産の継承、養子。

いずれも身近なトピックで、現代日本法との違いや意外な共通点も示されていて、とても面白い。ヒューリックのディー(狄)判事シリーズを読んでいるところだったので、なおのこと楽しめた。法と道徳の問題や養子・家産の継承などは、中国史概説でも言及する箇所なので、とても参考になった。さっそく活かしていきたい。

2012年6月26日火曜日

東アジアの神仏と文学正典と『偽』なるものをめぐってPart.2

公開研究会「東アジアの神仏と文学正典と『偽』なるものをめぐって」Part.2
日時:2012年6月30日(土) 10時~
場所:奈良女子大学D120教室

午前の部 10:10~11:50
向村九音「卒河神社をめぐる諸言説の生成と変遷」
増尾伸一郎「朝鮮における仏典刊行と疑偽経典」

午後の部 13:30~16:20
谷口洋「中国近代にとって「偽書」とは何か―「擬古派」「釈古派」が見たもの、見なかったもの―」
山口真琴「偽書生成の源泉としての〈塔〉と〈虚空〉をめぐって」
小川豊生「海を渡る偽書―愛染法の生成と不空仮託書をめぐって―」

2012年6月22日金曜日

中国社会文化学会2012年度大会

中国社会文化学会2012年度大会
日時:2012年7月7日(土)・8日(日)
場所:東京大学文学部1番・2番大教室(法文2号館2階)

7月7日(土) 自由論題報告
第一会場(1番大教室) 13:00~17:00
独孤嬋覚「南斉王融の政治クーデターの背後原因に関する考察」
山崎藍「「遶牀」について―李白「長干行二首」其一の解釈と旋回儀礼」
梅村尚樹「宋代先賢祭祀の理論」
小二田章「『咸淳臨安志』の位置―地方志制作を視座として」
陳暁傑「陽明学・女性・聖人―良知説のパラドックス」

第二会場(2番大教室) 13:00~17:00
五味知子「清代地方官の女性観―公牘の分析を通して」
阿部由美子「『京話日報』から見る中華民国北京政府時期の北京旗人社会」
土田正「呉汝綸における異文化の選択的受容―その日本視察を中心に」
娜荷芽「蒙民厚生会の設立とその活動」
鈴木航「抗戦期中国における地方新聞の保護と統制―浙江省戦時新聞学会機関誌『戦時記者』をめぐって」

7月8日(日)
シンポジウム 東アジア古典教育のゆくえ
午前の部 10:00~12:15 1番大教室
 金文京「日韓の漢字・漢文教育」
 齋藤希史「古典学の位置―東京大学古典講習科を起点として」

午後の部 パネルディスカッション 13:30~17:00 1番大教室
岩月 純一「現代ベトナムにおける「漢字・漢文」教育の定位」
南潤珍「韓国のハングル古典教育」
藤原克己「古典教育に対する研究の功罪」
町泉寿郎「二松学舎大学における日本漢文研究の取り組み 」

2012年6月21日木曜日

東アジアの漢文訓読

青山学院大学日本文学会大会
日時:2012年6月30日(土)13:00~15:00)
場所:青山キャンパス930教室(9号館3階)
入場無料

講演
金文京「東アジアの漢文訓読」

2012年6月18日月曜日

震災・核災害の時代と歴史学

歴史学研究会編『震災・核災害の時代と歴史学』(青木書店、2012年5月)

『歴史学研究』2011年10月号の「緊急特集 東日本大震災・原発事故と歴史学」をもとに、書き下ろし原稿を加えた論文集。その後の研究の進展や事態の展開を反映して改稿されているので購入。

目次は以下の通り。*は新稿。
Ⅰ 東日本大震災と歴史学-災害と環境
平川新「東日本大震災と歴史の見方」
保立道久「地震・原発と歴史環境学―九世紀史研究の立場から」 
矢田俊文「東日本大震災と前近代史研究」
北原糸子「災害にみる救援の歴史―災害社会史の可能性」
小松裕「足尾銅山鉱毒事件の歴史的意義―足尾・水俣・福島をつないで考える」*

Ⅱ 原発と歴史学-「原子力」開発の近現代史
平田光司「マンハッタン計画の現在」
有馬哲夫「日本最初の原子力発電所の導入過程―イギリスエネルギー省文書「日本への原子力発電所の輸出」を中心に」*
加藤哲郎「占領下日本の「原子力」イメージ―原爆と原発にあこがれた両義的心性」*
中嶋久人「原発と地域社会―福島第一原発事故の歴史的前提」
石山徳子「原子力発電と差別の再生産―ミネソタ州プレイリー・アイランド原子力発電所と先住民」

Ⅲ 地域社会とメディア-震災「復興」における歴史学の役割
奥村弘「東日本大震災と歴史学―歴史研究者として何ができるのか」
岡田知弘「東日本大震災からの復興をめぐる二つの道―「惨事便乗型復興」か、「人間の復興か」」*
三宅明正「記録を創り、残すということ」
安村直己「言論の自由がメルトダウンするとき―原発事故をめぐる言説の政治経済学」
藤野裕子「関東大震災の朝鮮人虐殺と向きあう―災害時の公権力と共同性をめぐって」*

Ⅳ 史資料ネットワークによる取り組み
佐藤大介「被災地の歴史資料を守る―東日本大震災・宮城資料ネットの活動」
阿部浩一「福島県における歴史資料保存活動の現況と課題」
白井哲哉「茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク準備会(茨城史料ネット)の資料救出活動」
白水智「長野県栄村における文化財保全活動と保全の理念」*

Ⅴ 資料編
石井正敏「貞観十一年の震災と外寇」*
棚井仁「自治体史のなかの原発」*

Ⅵ 災害と歴史学 ブックガイド

災害・原発・復興・資料保存・資料編・ブックガイドと充実のラインナップ。不足している点としては、避難・移住の問題だろうか。原発事故による大規模避難・移住の先例としては、チェルノブイリ原発事故ぐらいなので、歴史学としては取り上げにくいのかもしれないけど、火山災害などで避難・移住をよぎなくされ、しかも帰還困難になった事例はけっこうあるはず。災害のみならず、侵略による避難・移住も視野にいれれば範囲はより広がるのでないだろうか。中国史でいえば、4~6世紀の東晋南朝における僑州郡県や、12~13世紀の南宋の事例が該当する。福島県いわき市に大熊町(仮の町)を置く構想もあるし、避難先・移住先における集団維持または解体を歴史学として取り上げることも可能なように思える。

艾未未読本

牧陽一編『艾未未読本』(集広舎、2012年5月)

2011年4月3日に北京国際空港で拘束され、
6月22日の保釈後も自宅軟禁状態が続いている
アーティスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)のこれまでの軌跡と
彼自身の言葉(インタビュー・文章)をまとめたもの。

目次は以下の通り。
牧陽一「艾未未二〇一一」
宮本真左美「艾未未概説」
牧陽一訳+解説、麻生晴一郎解説「艾未未のことば1《公民調査》」
牧陽一訳+解説、栗山明+堀川理沙解説「艾未未のことば2《芸術》」
宮本真左美訳「艾未未のことば3《建築》」
牧陽一訳+解説、石田留美子+ふるまいよしこ解説「艾未未のことば4《評論》」

艾未未のみならず、友人の栄栄と映里(写真家)や
左小祖咒(ロック歌手)も取り上げている。
艾未未の多様な活動と現在までの状況が
一目瞭然となる最適の読本。
現代中国に関心のある人は必読。

また、中国云々は置いといて、
現代アートに興味ある方も読んで損はない。
Chim↑Pom企画の「ひっくりかえる」展との、
見えないつながりを看取できるはず。

2012年6月15日金曜日

第16回六朝学術学会大会

第16回六朝学術学会大会
日時:2012年6月16日(土)13時10分~17時45分
会場:二松学舎大学・九段キャンパス・三号館
大会参加費:1,000円

研究発表 13:20〜15:00(各発表20分、質疑10分)
亀井有安「魏文帝の詩歌にみえる感情表現の特質―「腸」を中心に―」 
横山きのみ「皇甫謐の著作がえがき出す出処―『高士伝』『帝王世紀』の意義―」
池田恭哉「新王朝への態度―北斉滅亡時の士人たち―」 

特別講演 15:15〜15:55
戴燕「中国六朝文学研究的向及我的一点看法」  
記念講演 16:00〜17:00
妹尾達彦「江南文化の系譜―建康と洛陽」

2012年6月8日金曜日

東洋文庫と本の世界

2012年度春期東洋学講座
東洋文庫ミュージアムオープン記念講演会
「東洋文庫と本の世界」
会場:東洋文庫2階講演室
聴講無料・申し込み不要

6月11日(月)16時~18時
塚原東吾「オランダ語・日蘭関係史料による19世紀の古気候再現―東洋文庫に収蔵されるシーボルト史料を発端として」

6月20日(水)16時~18時
岩尾一史「チベットの文字の文化史」

6月29日(金)16時~18時
池田美佐子「エジプトにおける民主主義の系譜と議会文書」

2012年6月6日水曜日

陳寿の処世と『三国志』

田中靖彦「陳寿の処世と『三国志』」(『駒沢史学』76、2011年3月)

遅ればせながら最近読んだので紹介。
「正統」論に対する疑問をもとに、
陳寿撰『三国志』の三国観を検討している。

従来、正史『三国志』は、「曹魏正統論」を説きつつ、
ひそかに蜀漢を称揚しようとする含意が込められている
歴史書と理解されてきた。
確かにそうした傾向は存在しているが、その一方で、
『三国志』は、魏の「漢→魏」、蜀漢の「漢=蜀漢」、
呉の「漢→魏→呉」という主張をすべて記録しており、
三国いずれに対しても一定の合法性を認めている。
また、魏から晋への禅譲のみならず、
蜀漢・呉の投降に関する文書を採録することで、
「蜀→晋」、「呉→晋」という継承関係も示している。
すなわち、『三国志』は、三国すべてが晋に帰着したことを示した歴史書である。

『三国志』のみならず、分裂時代を扱った史書の性質を考える際には、正統性の問題を意識せざるをえないが、本論文によって、正統性にとらわれすぎるのも危険であることを実感した。

2012年6月5日火曜日

発見!お茶の水女子大学の広開土王碑拓本

第14回国際日本学シンポジウムセッションⅠ
発見!お茶の水女子大学の広開土王碑拓本
日時:2012年7月7日(土)13時~17時30分
場所:お茶の水女子大学本館3階306室
資料代500円

研究発表
武田幸男「広開土王碑の真意を求めて」
徐建新「広開土王碑拓本研究とお茶の水女子大学本の年代」
早乙女雅博「製作技法からみたお茶の水女子大学拓本の年代」
奥田環「東京女子高等師範学校の学術標本―教材としての広開土王碑拓本の背景―」

特別展示(11時~15時):本館1階103室にて広開土王碑拓本を展示

2012年5月27日日曜日

魏志倭人伝の謎を解く

渡邉義浩『魏志倭人伝の謎を解く―三国志から見る邪馬台国』(中公新書、2012年5月)

昨年、たてつづけに『三国志―演義から正史、そして史実へ』、『関羽―神になった「三国志」の英雄』、『曹操墓の真相』(監訳)を出した著者が、ついに邪馬台国にチャレンジ。

渡邉氏の「『三国志』東夷伝倭人の条に現れた世界観と国際関係」(『三国志研究』6、2011年)を下敷きに、『三国志』の世界観や編纂背景を踏まえて、倭人条に含まれた「理念」と「事実」をよりわけて、邪馬台国に迫ろうとしている。

最近、石野博信ら編『研究最前線邪馬台国―いま、何が、どこまで言えるのか』(朝日選書、2011年6月)、東潮『邪馬台国の考古学―魏志東夷伝が語る世界』(角川選書、2012年3月)、大塚初重『邪馬台国をとらえなおす』(講談社現代新書、2012年4月)などなど、やたら邪馬台国関連書が出版されている。纏向遺跡の発掘が影響しているのだろうなぁ。

「知」の欺瞞

アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン著、田崎春秋・大野克嗣・堀茂樹訳『「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用』(岩波現代文庫、2012年2月)

アメリカのカルチュラル・スタディーズ誌『ソーシャル・テクスト』にソーカルが投稿したパロディ論文「境界を侵犯すること―量子重力の変形解釈学に向けて」が掲載されてしまったことをきっかけに、いきすぎたポストモダン思想を批判する目的でフランスで出版された書籍。

ラカン、クリステヴァ、ボートリヤール、ドュルーズとガタリ、ヴィリリオなどの超著名な知識人の著述に見られる科学用語が、明白な濫用であることを指摘している。ここでいう濫用とは、①何の議論もなしに通常の文脈を完全に離れて使用すること、②論点と関係なく、めくらまし的に科学用語を並べたてること、である。「王様は裸だ!」と正面から述べた本という感じ。

増補 民族という虚構

小坂井敏晶『増補 民族という虚構』(ちくま学芸文庫、2011年5月)

先日紹介した『アジア遊学150 アジアの〈教養〉を考える』で
紹介されていたので購入。

〈民族〉の虚構性を改めて確認したのち、その虚構性を単純に否定するのではなく、社会がさまざまな虚構が存在することによって、はじめて機能することを指摘し、開かれた共同体概念をどのように構築すればいいかを考察している。

第三章虚構と現実に「虚構の成立と同時にその仕組みが隠蔽されることが、社会生活が機能するための不可欠な条件をなす。虚構であるにもかかわらず現実の力を発揮できると主張するのではない。虚構と現実との関係をこのように消極的に捉えるのではなく、反対に両者の間に根元的で分離不可能な関係をみなければならない」とあるが、いま考えている研究テーマと密接に関わってくる。

というか、なんでもっと早く読まなかったのだろうか。アンテナの感度が落ちているような気がして、ちょっとへこんでしまった。

2012年5月22日火曜日

風俗と時代観

岸本美緒『風俗と時代観―明清史論集1』(研文出版、2012年5月)

岸本氏の「肩の凝らない文章」を集めた論集。あとがきで「昼寝の友として気楽に読んでいただきたい」とあるが、むしろ、がっつり目を見開いて読んでしまった。講座モノや特集号の依頼で書いたものが多く、読みやすい文章で、かつ大変多くの示教を受けた。全編に補注がついていて、ところどころで「居直り」・「泥臭くても実感に即した議論」と述べているが、膨大な理論・実証の蓄積あっての言葉だから重みがある。

目次は以下の通り。
Ⅰ歴史変動と時代区分
時代区分論
時代区分論の現在
風俗と時代観
現代歴史学と「伝統社会」形成論
一八世紀の中国と世界

Ⅱ身分と風俗
明清時代の身分感覚
名刺の効用―明清時代における士大夫の交際
「老爺」と「相公」―呼称からみた地方社会の階層感覚

Ⅲ歴史の風
歴史の中の「風」
China-centered approach?
アジアからの諸視覚―「交錯」と「対話」

アジアの〈教養〉を考える

諸事情で、更新が滞ってしまいましたが、その間にいろいろ出ましたね。
思い出したものから、徐々に更新していきます。
まず一昨日読み終えたばかりのものから。

『アジア遊学150 アジアの〈教養〉を考える―学問のためのブックガイド』(勉誠出版、2012年5月)

アジア遊学150号記念ということで、
アジアの教養を考えるブックガイド。
「アジア」とあるけれど、基本的には東アジア。
東南アジアは多少あるけれど、
西アジアや南アジアはほとんどない。

執筆者は32人。一人三冊紹介して、合計93冊。
複数の評者がとりあげていたのが、
以前、このブログでも紹介した
金文京『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書、2010年)。
確かに読みやすくって奥が深い。
中国史ものでも、こういう新書がもっと出てほしいなぁ。

そのほか、読んでみたいと思う本が何冊もあった。
さっそく買いに走った本もある。
とりあえず、二人が推薦していた
川本邦衛『ベトナムの詩と歴史』(文藝春秋社、1967年)は
古本屋で探したい。

2012年5月7日月曜日

日本中国考古学会関東部会

日本中国考古学会関東部会 第148回例会


日時:2012年5月12日(土)16:00~18:00
会場:東京大学法文一号館114教室

報告
佐川英治 「従祖到天―中国古代都城空間の展開」

2012年4月27日金曜日

中国古代都城史科研報告会

科研・基盤研究(B)「最新の考古調査および礼制研究の成果を用いた中国古代都城史の新研究」プロジェクトの報告会
日時:2012年6月23日(土)14時~
会場:東京大学本郷キャンパス,法文1号館215室
報告
佐川英治「大青山一帯の北魏城址遺跡の調査から」
林俊雄「匈奴~突厥における集落・城塞の研究」

2012年4月20日金曜日

第61回東北中国学会

第61回中国東北学会
日程:2012年5月26日(土)・27日(日)
会場:26日東北大学マルチメディアホール
 27日鷹泉閣岩松旅館

大会プログラム
5月26日
研究発表会 13時~
塚本信也「「狂」の諸相」
須江隆「中国近世地域史研究史論―唐鄮県令王元暐事績伝承の事例を中心に」
公開講演 14時半~
三浦國雄「狩野文庫本『豫斎先生訓門人会読劄記』を読む」

5月27日 9時~
第一分科会【哲学・文学部会】
省略

第二分科会【史学】
永田拓治「後漢三国両晋期における「家伝」の流行」
宮崎聖明「宋代の「対移」について―地方官監察制度の実態」
藤本猛「宋代の転対・輪対制度」
清水浩一郎「北宋徽宗朝の「公相制」についての一考察」
水越知「南宋時代の善書と士人の宗教信仰」
土屋悠子「燕王府良医所から両京太医院へ」

2012年4月15日日曜日

韓国・朝鮮史の系譜

矢木毅『韓国・朝鮮史の系譜―民族意識・領域意識の変遷をたどる』(塙書房、2012年3月)

古朝鮮から現在に至る民族意識・領域意識の変遷について、
丹念に追跡して、分析している。
「韓」族が徐々に北進するとともに、
民族・領域概念が変容していく様子が明示され、
大変面白かった。
そのほかにも、渤海人や女真人の高句麗継承意識など、
現在の国境の枠にとらわれない姿勢に学ぶことが多かった。

2012年4月13日金曜日

東アジアの王権と宗教

小島毅編『アジア遊学151  東アジアの王権と宗教』(勉誠出版、2012年3月)

2009年度から2011年度まで行われた東京大学大学院人文社会系の演習プロジェクト「東アジアの王権と宗教」の成果の一部をまとめたもの。多分野交流をかかげていることもあり、執筆者は多彩。なかには王権とも宗教とも関係ない論文もあるけれど、全体的に概説に近く、読みやすかった。

目次は以下の通り。
近藤成一「中世日本の「王権」」
蓑輪顕量「日本における王法と仏法」
佐川英治「漢代の郊祀と都城の空間」
小島毅「儒教経学と王権」
六反田豊「朝鮮時代の君臣関係と王権」
本橋裕美「古代日本における祭祀と王権―斎宮制度の展開と王権」
趙秀全「古代天皇における孝徳―歴史書と物語文学を通じて」
河添房江「嵯峨朝・仁明朝の王権と東アジア」
横手裕「道教と唐宋王朝」
深沢克己「近世フランスの王権と宗教―比較の視点から」
加藤徹「近世日本における中国伝来音楽の諸相―明清楽を中心に」
小野泰教「清末士大夫の見た西洋議会制―いかにして理想の君民関係を築くか」
商兆琦「「生き返らせる」田中正造研究批判」
新野和暢「宗教団体法にみる国家と「宗教」」
板倉聖哲「「桃鳩」イメージの変容―王権の表象から平和の象徴へ」

個人的には最後の板倉論文が大変面白かった。
グラフィックデザイナーの田中一光の「ヒロシマ・アピールズ」(1988年作)というポスターで、描かれた白いハトの典拠が、徽宗の「桃鳩図」であることを指摘し、日本における桃鳩図の意義、ハトが示す意味を確認し、「ヒロシマ・アピールズ」に至る過程に迫っている。そして最後には、Chim↑Pomに言及して稿を終えている。まさか、アジア遊学を読んでて、Chim↑Pomに出くわすとは思わなかった。

第4回日中学者中国古代史論壇

第4回日中学者中国古代史論壇「中国新出資料学の展開」
日程:2012年5月25日(金)
会場:日本教育会館 (東京)

全体会 10:30-12:10 (701・702会議室) 
池田知久「日本の中国簡帛研究の課題と展望」
卜憲群「新世紀以来中国簡帛研究的基本状況」
谷中信一「新時代の疑古と釈古」
陳偉「関於秦文書制度的幾個問題」


分科会Ⅰ:先秦 13:00-16:05 (702会議室)  
池澤優「中国出土資料と宗教研究― 公盨と禹の治水神話を中心に」
湯浅邦弘「先秦兵学の展開」 
工藤元男「「日書」の史料的性格について」
小寺敦「地域・文化概念としての楚の成立―清華簡を手掛かりとして」
竹田健二「上博楚簡『李頌』の文献的性格」
劉国勝「由出土喪葬文書看戦国時期楚地貴族的葬制葬俗」 
王啓発「従道徳正義到政治正義―従張家山漢簡《蓋盧》看先秦時代兵家思想的一個側面」
李成市「平壌楽浪地区出土の『論語』竹簡」
コメント:宇野茂彦


分科会Ⅱ:秦漢 13:00-16:05 (701会議室) 大西克也「秦の文字統一」 
藤田勝久「里耶秦簡と出土資料学」
王 彦輝「出土秦漢戸籍簡的類型及登錄内容的演変」 
陳 松長「睡虎地秦簡中的“将陽亡”小考」
福田哲之「漢簡『蒼頡篇』研究」 
鄔 文玲「天長紀荘漢墓木牘《榬遂致謝孟書》的復原与研究」
名和敏光「馬王堆漢墓帛書『陰陽五行』乙篇の構造と思想」 
張 栄強「“使戸”与“延戸”―紀南松柏漢簡反映的蛮夷編戸問題」
コメント:佐藤進


分科会Ⅲ:魏晋南北朝~宋明 13:00-16:05 (703会議室)
高凱「従麻風病的伝播蠡測印度仏医対漢唐時期中医的影響―以簡帛《五十二病方》、《悪病大風方》与孫思邈《千金方》為例」
町田隆吉「魏晋・五胡十六国時代の河西出土文献」 
劉屹「徳蔵吐魯番雙語文書残片Ch/So 10334 (T I α)v的道教内容考釋」
葉煒「墓誌史料与中古武官研究」
陳峰「柳開事迹与宋初士林的豪横之氣」 
朱漢民「周敦頥的文化詮釋与湖湘文化建構」
肖永明 「対《論語》“今之学者為人”的詮釋与宋代儒学的内傾」
阿風「公私“文書”与明代民事訴訟書証探析―以徽州訴訟文書為中心」
コメント:池田温

総合討論  16:20-17:00 (701・702会議室)
司会:渡邉義浩、王啓発、氣賀澤保規、李炳青

2012年4月12日木曜日

第57回国際東方学者会議

第37回国際東方学者会議
日時:2012年5月25日(金)
場所:日本教育会館7階・8階

シンポジウム1:日中「願文」の比較
10:45-11:45 黄征「敦煌願文要論」
11:45-12:20 後藤昭雄「日本の願文の性格と研究状況
昼休み 
13:30-14:05 小峯和明「〈法会文芸〉としての願文―東アジアの視界」
14:05-14:40 阿部泰郎「中世日本の仏教儀礼における願文の位相―宗教テクストの核心としての願文」
14:40-15:15 荒見泰史「『俗講荘厳迴向文』と変文 」
休憩
15:35-16:00 コメント 石井公成
16:00-17:00 ディスカッション

シンポジウム2:学問のかたち―中国思想史の基礎
10:45-11:10 辛賢「漢代経学の相貌―宇宙論的「知」の形成」
11:10-11:35 吉川忠夫 「「家学」の周辺」
11:35-12:00 船山徹「梁代の学術仏教」
昼食
13:00-13:25 小島毅「宋代における経学と政治―王安石と朱熹の異同」
13:25-13:50 宮紀子「モンゴル時代の「知」の東西」
13:50-14:15 三浦秀一「模倣と自得―万暦三十八年実施の科挙から見た明代思想史の基層」
14:15-14:40 水上雅晴「清朝学術と幕府―移動・交流・発展」
休憩
15:00-15:25 廖肇亨「時代転換期における奉佛知識人の学問のありかた―明末清初と清末民初との比較」
15:25-15:50 平田昌司「士の声を聴く」
16:00-17:00 ディスカッション

シンポジウム3:「銀の時代の終焉」と東南アジア―1780年代~1850年代の貿易、貨幣制度、農業
10:45-11:45 Richard von「Monetary Demand and Silver Supply in19th-Century China (19世紀中国における貨幣需要と銀の供給) 」
昼食
13:00-13:40 李塔娜「The Gia Long Dip? Natural Disasters and the Economic Position of Nguyen Vietnam in Its First Two Decades (嘉隆期は停滞期か? 1800年から1820年阮朝ヴェトナムの自然災害と経済的地位) 」
13:40-14:20 菅谷成子「Economic Life in Spanish Manila in the Transitional Period, ca. 1780–1820 (変動期におけるスペイン領マニラの諸相――1780-1820年を中心に) 」
14:20-15:00 斎藤照子「Monetary Reforms in Konbaung Burma: 1800–1850s (コンバウン期ビルマにおける貨幣制度改革) 」
休憩
15:15-15:35 コメント 脇村孝平
15:35-15:55 コメント 藤田加代子
16:00-17:00 ディスカッション

シンポジウム4:天聖令と律令制比較研究Ⅱ―『新唐令拾遺』編纂をめざして
10:45-11:45 牛来穎「唐宋贓贖錢物與國家地方財政―以《天聖令》為中心的討論」
昼食
13:00-13:30 辻正博「流人と恩赦―唐律の流刑規定を中心として」
13:30-14:00 古瀬奈津子「宋令唐令の比較から見た皇帝権力の変質」
14:00-14:20 コメント・質疑応答
休憩
14:50-15:20 大高広和「日唐律令における帰化規定」
15:20-15:50 坂上康俊「均田制・班田収授制の比較研究と天聖令」
15:50-16:50 コメント・討論:丸山裕美子・武井紀子

シンポジウム5:大乗仏説・非仏説論再考―インド・中国・日本における事例をめぐって
省略

美術史部会:省略

2012年3月15日木曜日

アジア文化研究センター(CSAC) 第1回研究集会

アジア文化研究センター(CSAC) 第1回研究集会
「アジア研究における学術アーカイブの現状と発展」
日時:2012年3月27日(火) 13:00~17:00
場所:関西大学千里山キャンパス以文館4階セミナースペース

基調報告
二階堂善弘「アジア宗教研究におけるアーカイブの活用」
研究報告
佐藤仁史「近現代中国基層社会史研究とアーカイブ」
野村英登「中国古典アーカイブのエコシステムを考える」
山田崇仁「中国史学習におけるデジタルアーカイブの利用状況と問題点について」
師茂樹「日本宗教研究のためのデジタルアーカイブの現状」

2012年3月6日火曜日

SENDAI漢籍SEMINAR「東北大学における漢学」

SENDAI漢籍SEMINAR「東北大学における漢学」
日時:2012年3月9日(金)14時~17時
場所:東北大学百周年記念会館「川内萩ホール」会議室

演目
三浦秀一「古籍の帰還もしくは孝経の蒐集―武内義雄名誉教授旧蔵書と狩野文庫―」
討論者:宇佐美文理
齋藤智寛「ふみといしぶみの六祖慧能―常盤大定旧蔵拓本コレクションを中心として―」
討論者:古勝隆一

東北復興支援公開セミナーであるので、聴講無料・予約不要。
もうすぐ一年たつのですね。

2012年3月5日月曜日

明治期の古典流出

シンポジウム「等級的基準作製の観点から見た日本所在中国古籍鑑定研究」
日時:2012年3月14日(水)15時~17時
場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館第二会議室

講演
高田時雄「明治期の古典籍流出」

2012年3月1日木曜日

第44回中央アジア学フォーラム

第44回中央アジア学フォーラム日時:2012年3月31日(土)13時30分~18時
場所:大阪大学・豊中キャンパス 文法経本館2階大会議室

報告
武内紹人・岩尾一史・西田愛「ウルムチ・ミーラーン・敦煌調査報告(チベット班)」
舩田善之「チャガン・ノヤンの言語二通について ―モンゴル時代早期のモンゴル語直訳体碑文―」
山下将司 「第二可汗国滅亡後の唐領内における突厥遺衆について」

2012年2月29日水曜日

地図集

董啓章著、藤井省三・中島京子訳『地図集』(河出書房新社、2012年2月)

帯に「〈香港のボルヘス〉による想像の都市の物語」、「カルヴィーノの『見えない都市』みたい。中国語で書くカルヴィーノ、あるいはボルヘス?……中島京子(小説家)」と書いてあったので、いやいやそれは言い過ぎでしょ、って思いながらもついつい購入。

一読して、結構はまってしまった。確かに表題作はボルヘスやカルヴィーノを連想させる。少なくとも意識しているのは間違いない。ほかにもミロラド・パヴィッチ『ハザール事典』と手法は似ているような気がする。

香港の歴史と地理を踏まえ、
未来の地図研究者が紡ぎだす
虚実ないまぜの学術的(地図学?)叙述によって、
いつのまにか、幻想的な「もう一つの香港」に導かれている。

収録作品は、以下の通り。
「少年神農」
「永盛街興亡史」
「地図集」:理論篇・都市篇・街路篇・記号篇
「与作」

曹魏洛陽の宮城をめぐる近年の議論

向井佑介「曹魏洛陽の宮城をめぐる近年の議論」(『史林』95-1、2012年1月)

曹魏洛陽宮城の構造を扱った主要研究を整理し、
文献史料と考古学の調査成果をもとに、
それぞれの復元案の妥当性と問題点を検証したもの。

近年、曹魏洛陽城については、
①曹魏の南北宮≒後漢の南北宮
②曹魏の南北宮≒後漢の北宮
の二説あるが、向井氏は②説が妥当であるとする。

2012年2月22日水曜日

国際シンポジウム

国際シンポジウム:新発見百済人「祢氏墓誌」と7世紀東アジアと「日本」
日時:2月25日(土) 10時~17時
会場:明治大学駿河台キャンパス リバティタワー1階1011教室

プログラム
氣賀澤保規「百済人祢氏墓誌の全容とその意義・課題」
張全民(通訳:江川式部)「唐祢氏家族墓の考古発見と祢氏一族の初歩的考察」
12:15-13:00 休憩
王連龍(通訳:梶山智史)「 「祢軍墓誌」と百済そして「日本」」
田中俊明「百済・朝鮮史における祢氏の位置」
金子修一「唐朝治下の百済人の動向と新発見墓誌」
15:15-15:30 休憩
小林敏男「白村江以後の「日本」国号問題―「祢軍墓誌」の発見に寄せて」
集約と質疑応答  コメンテーター:榎本淳一、吉村武彦

中国出土資料学会平成23年度大会

中国出土資料学会平成23年度大会(第3回例会)
日時:2012年3月10日(土)13時~17時
場所:東京大学文学部法文1号館113番教室
参加費(資料代):500円

報告
柿沼陽平「孫呉貨幣経済の構造と特質」
下田誠「武霊王から恵文王へ―青銅兵器銘文からみた戦国趙の機構的改革の実践―」
谷中信一「『老子』経典化プロセス素描―郭店『老子』から北大簡『老子』まで―」

2012年2月14日火曜日

漢字の魔力

佐々木睦『漢字の魔力―漢字の国のアリス』(講談社選書メチエ、2012年2月)

アリス、いや愛麗絲を狂言回しとして、
摩訶不思議な漢字の世界を探検。
福をさかさまにした倒福・招財進宝の合体文字からはじまり、
名前の秘密、漢字占い、外国企業や地名の漢字表記、
惜字運動、漢字遊戯(図形遊戯詩)などなど、
漢字の妖しい魅力にどっぷり浸れる。

192頁の図61には、漢字に擬態する英字を取り上げているが、
これは明らかに現代アーティストの徐冰の作品(新英文書法)。
徐冰も取り上げてくれるかと思いきや、出てこなかった。残念。
新英文書法のほかにも、天書とかいろんな文字作品があるのだけどなぁ。

でも、215~216頁で、香港の「九龍皇帝」曾灶財を
取り上げていてビックリ。九龍皇帝はある日突然、
香港は先祖に賦与された土地なので、
すべて私のものだ!と考え、あらゆる場所に
「皇帝家」の系譜と支配地名を筆書してまわり、
そしていつしか現代アートとして認知された人物。
上の写真は、家にあったオークションカタログの一部。
『漢字の魔力』は、彼について、香港を「漢字帝国として捉えた際に、まぎれもない象徴であり、皇帝にふさわしかったと言えよう」と評価している。納得。

--------------------
追記:2012年2月14日21時10分
2011年4月20日~5月31日に、
香港で「九龍皇帝的文字楽園」という展覧会が
開かれていたそうです。知らなかった……。
300点を超える作品とともに皇帝の生涯をたどったようです。
http://www.designerhk.com/date/5574

2012年2月12日日曜日

茶会への招待

先日、三井記念美術館で開催中の
「茶会への招待―三井家の茶道具」
に行ってきました。

一月に引き続き、茶器関連の展覧会に
いってきたわけですが、別に茶器にはまったわけではありません。
今回のお目当ては、併設されている
「初公開―新町三井家の新寄贈品から」。
なんと金沢文庫本『白氏文集』巻23・巻38が
展示されているのです。

この両巻は、戦前に存在が確認されていたが、
戦後、所在不明になっていたもの。
今回、三井家より寄贈されたことによって、
世にでてきたというわけです。

ということで、『白氏文集』目当てでいってきました。
とはいえ、行ってみたら、やっぱり茶器も面白い。
展示室一の「茶の湯の名品」、展示室四の「茶事の取合せ」、
展示室五の「名碗抄」と、見応えたっぷり。
さすが三井家所蔵品。見た目も由来も楽しめるものばかり。

で、最後の展示室七にお目当ての『白氏文集』が。
展示ケースいっぱいつかって、なが~く展示している。
巻23は親族宛の手紙や祭文、巻38は官僚の任命書など。
博士家のヲコト点や校訂、反切・注釈などなど、
歴史を超えてきた知の重みを感じる。

白氏文集は旧抄本研究の蓄積が分厚いし、今後の研究が楽しみ。
白居易の長恨歌などの文学作品には、
旧抄本と刊本とで、文字の異同(意図的な改変もある)が、
結構あることが知られているが、
手紙や祭文、公的文書ではどうなのだろうか。

そして、もう一つ気になるのが、
今回三井記念美術館に何が寄贈されたのかということ。
展示パネルには、古典籍類とある。
もしかしたら、白氏文集以外にも旧抄本が
寄贈されているかも……。
今後の展開が気になります。


会期:2012年2月8日(水)~4月8日(日)
休館日:月曜日・2月26日(日)
開館時間:10時~17時
入館料:一般1000円、学生500円

2012年2月8日水曜日

日本における唐代官僚制研究

小島浩之「日本における唐代官僚制研究―官制構造と昇進システム(System)を中心として」(『中国史研究』20、2010年10月)

日本における唐代官僚制研究を
官制構造と官僚の昇進システムを中心にまとめたもの。
六典官制・貴族制との関わり(人的構成)・
職事官と散官・昇進システムについて
研究状況と課題を述べていて、とても参考になる。
また、引用文献リストを見ると、21世紀以降、
唐代官僚制研究が減少している様子がうかがえる。

『中国史研究』は、編集後記が毎号徐々に長くなっていて、
20号では16頁にも及んでいる。こちらも読みごたえある。

2012年2月4日土曜日

東方学123

『東方学』123(東方学会、2012年1月)

目次は以下の通り。
[論文]
三浦國雄「 『朱子語類』の読まれ方―新発田藩の一儒者の書き入れをめぐって」
新見まどか「唐代後半期における「華北東部藩鎮連合体」 」
山崎藍「死者を悼んで旋回する―元禛「夢井」における「遶井」の意味」
伊藤一馬「南宋成立期の中央政府と陝西地域―「宋西北辺境軍政文書」所見の赦書をめぐって」
伴俊典「江戸期における『水滸伝』全訳の成立」
蕭涵珍「笠亭仙果の『七つ組入子枕』にみる李漁の『十二楼』―「合影楼」を中心として」
福嶋亮太「進化の形成物としての白話―胡適の言語観およびコミュニケーション観の再検討」
青野道彦「僧残罪を犯した比丘尼の謹慎処分―パーリ律註釈文献を中心に」

[内外学会消息]
高田時雄「ロシア科学アカデミー東洋写本研究所と『東洋の文献遺産』誌など」
金子修一「中国留学と二つの学会」

[座談会]
「学問の思い出―池田温先生を囲んで」
〔出席〕 池田温、任大煕、大津透、金子修一、窪添慶文、小口彦太、坂上康俊、土肥義和

[追悼文]
小野山 節「有光教一先生の御功績と学恩を顧みて」
土田健次郎「楠山春樹先生を偲ぶ」


三浦論文では、「辺縁に生きた一儒者」のなまの思考の断片に触れられる。三浦氏が提唱する「書き入れ学」も大変面白そう。
山崎論文では、死者を悼んで墓・棺の周囲を廻る習俗に言及している。盆などのお墓参りの際に墓をぐるぐるまわるという友人の故郷の習俗を思い出した。
座談会も読みごたえあり。

2012年2月2日木曜日

遼金西夏史研究会第12回大会

遼金西夏史研究会第12回大会
日程:2012年3月24日(土)・25日(日)
場所:学習院大学中央研究棟 402教室

プログラム
2012年3月24日(土曜)
13時20分~14時30分 中田美絵「8世紀後半におけるユーラシア情勢と長安仏教界」
14時40分~17時10分
【ミニシンポジウム】「遼・金・西夏研究の現状と展望」
報告者:飯山知保・佐藤貴保・高井康典行

3月25日(日曜)
9時30分~10時40分 毛利英介「宋は兄で遼は弟なのか ―遼・宋擬制親族関係について―」
10時50分~12時00分 吉野正史「「耶律・蕭」と「移剌・石抹」の間 ―『金史・本紀』における契丹・奚人の姓の記述に関する考察―」
13時30分~14時40分 大西啓司「西夏に於けるシャーマンの活動 ―『天盛旧改新定禁令』を中心に―」
14時50分~15時25分 荒川慎太郎「ロシア東洋文献研究所所蔵西夏語文献 Tang. 46, inv. No. 156 再考(仮題)」

2012年1月31日火曜日

もうすぐ出る本

刊行が長いこと遅れていた八木書店の『遣隋使がみた風景』。
HPを見ると、表紙と目次がアップされている。
いよいよ出版される模様だ。

氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景―東アジアからの視点』
初版発行予定:2012年2月10日
予価3,990円(本体予価3,800円+税5%)

序章 氣賀澤保規「東アジアからみた遣隋使-概説と課題」
第Ⅰ部 遣隋使と国際関係
氣賀澤保規「『隋書』倭国伝からみた遣隋使」
金子修一「東アジアの国際関係と遣隋使」
田中俊明「朝鮮からみた遣隋使」
氣賀澤保規「アジア交流史からみた遣隋使-煬帝の二度の国際フェスティバルの狭間で」

第Ⅱ部 遣隋使とその時代の諸相
吉村武彦「推古朝と遣隋使」
川本芳昭「遣隋使の国書」
林部均「遣隋使と飛鳥の諸宮」
河内春人「遣隋使の「致書」国書と仏教」

第Ⅲ部 倭人と隋人がみた風景
氣賀澤保規「倭人がみた隋の風景」
鐘江宏之「隋人がみた倭の風景」
池田温「遣隋使のもたらした文物」
終章 氣賀澤保規「遣隋使の新たな地平へ-おわりに寄せて」

豪華なラインナップ。
煬帝の国際フェスティバルってなんだろう?

東アジア書誌学への招待 第二巻

大澤顕浩編著『東アジア書誌学への招待 第二巻』(東方書店、2011年12月)
『東アジア書誌学への招待』の第二巻。
第一巻が総論とすると、第二巻は地域・研究分野ごとの各論。
目次は以下の通り。

第四章 東アジアの文献―朝鮮本・満洲語文献・越南本・和刻本
石橋崇雄「清代満洲語文献の特徴と重要性」
吉田光男「朝鮮本の世界」
八尾隆生「ヴェトナムにおける漢喃(ハンノム)本の研究と収集の現状」
小秋元段「慶長年間における古活字版刊行の諸問題」

第五章 研究のための書誌学―思想・文学・歴史・地理
金文京「明代『三国志演義』テキストの特徴―中国国家図書館蔵二種の湯賓尹本『三国志伝』を例として」
笠井直美「白話小説・戯曲版本の分化と特徴」
永富青地「陽明学研究における文献学の意義―『王文成公全書』所収の「年譜」への挑戦」
林鳴宇「書誌学からみた仏書と儒書」
山本英史「中国地方文献の交際術―地方志、判牘、筆記」
中砂明徳「イエズス会の極東関係史料―「大発見の時代」とその後」
高柳信夫「ミル『自由論』における“individuality”概念の日本と中国への導入について―中村正直『自由之理』と厳復『群己権界論』の場合」

2012年1月24日火曜日

国際ワークショップ

日時:2012年2月19日(日),20日(月)

会場
2月19日:立正大学大崎キャンパス11号館第5会議室
2月20日:桜美林大学四谷キャンパス地下会議室

プログラム
2月19日「湖南出土魏晋簡牘をめぐる諸問題」
13:00~13:10 趣旨説明:關尾史郎
13:15~14:15 谷口建速「長沙走馬楼呉簡に見える「塩米」とその管理」
14:20~15:20 鷲尾祐子「走馬楼呉簡吏民簿から窺う世帯の状況」
15:20~15:40 休 憩
15:40~16:40 伊藤敏雄・永田拓治「■(林+阝)州晋簡初探―上計及び西晋武帝郡国吏勅戒等との関係を中心に―」
16:45~17:45 張榮強「再論孫呉簡中的戸籍文書」(中国語)
17:50~18:00 閉会の挨拶:窪添慶文

2月20日「出土資料からみた魏晋時代の河西」
10:00~10:10 趣旨説明:關尾史郎
10:15~11:15 市来弘志「高台駱駝城の歴史地理的位置」
11:20~12:20 町田隆吉「甘粛省高台県出土の漢語文書の基礎的整理―簡牘を中心に―」
12:20~13:20 昼休み
13:20~14:20 北村永「河西における魏晋墓の図像―漢代の伝統的モチーフを中心にして―」
14:25~15:25 渡部武「画像資料から見た河西地方の犂のタイプと犂耕技術」
15:25~15:45 休憩
15:45~16:45 宋馨「北魏平城時期的墓誌形成与河西的関係」(中国語)
16:50~17:00 閉会の挨拶:小林 聡

2012年1月20日金曜日

律令制研究入門

大津透編『律令制研究入門』(名著刊行会、2011年12月)

2010年8月に東方学会の英文紀要“Acta Asiatica”99号の
特集「律令制の比較研究」に掲載された5本の論文の日本語版に、
新たに若手研究者の論文3本、大津氏の論文2本を加えたもの。
目次は以下の通り。

第一部 律令制の意義
榎本淳一「「東アジア世界」における日本律令制」
坂上康俊「日唐律令官僚制の比較研究」
丸山裕美子「律令法の継受と文明化」
大隅清陽「律令と礼制の受容」

第二部 律令制分析の視角
武井紀子「律令と古代財政史研究」
吉永匡史「軍防令研究の新視点」
大高広和「律令継受の時代性 ―辺境防衛体制からみた―」

第三部 律令制研究史
大津透「律令制研究の流れと近年の律令制比較研究」
大津透「律令制研究の成果と展望」
大津透「北宋天聖令の公刊とその意義 ―日唐律令制比較研究の新段階―」


第一部は外国人研究者向けに、
日本の日唐律令研究の動向をまとめたもので、
概説的であるがゆえにわかりやすい。
第三部も律令制比較研究の研究史や
天聖令発見の意義をまとめていて参考になる。
第二部は若手研究者による最新の論考。

2012年1月17日火曜日

東アジア書誌学への招待第一巻

大澤顯浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻(東方書店、2011年12月)

学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。

序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」

第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」

第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」


執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。

陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。

2012年1月15日日曜日

贈与の歴史学

桜井英治『贈与の歴史学―儀礼と経済のあいだ』(中公新書、2011年11月)

目次は以下の通り。
第1章:贈与から税へ
第2章:贈与の強制力
第3章:贈与と経済
第4章:儀礼のコスモロジー

換金前提の贈物・目録交換による贈与の相殺・贈答品の流用など「世界的にも類を見ない極端に功利的な性質を帯びる」中世日本の贈与慣行。贈与とは何か、コミュニケーションとは何かを考えさせられる。理論的でありつつ、実例が豊富で読みやすく、かつ読み応えがある。

2012年1月10日火曜日

「清明上河図」と徽宗の時代

伊原弘編『「清明上河図」と徽宗の時代―そして輝きの残照』(勉誠出版、2012年1月)

いま話題の「清明上河図」を主題とした論集。
第一部では、「清明上河図」の分析とともに
徽宗の再検討も試みている。
第二部では、北宋の「清明上河図」以降に誕生した
様々な「清明上河図」を取り上げ、
風俗画の伝承と拡散について論じている。
第三部では、様々な時代の画巻から、
時代を読み解いている。

目次は以下の通り。
序文 
伊原弘「徽宗とその時代―本書導入の前論」

第1部 徽宗―都市と芸術の開拓者
清木場東「清明上河図の背景」
クリスチアン・デ・ペー「清明上河図と、北宋(960-1127)東都(開封)のテキスト地理学」
久保田和男「メディアとしての都城空間と張擇端『清明上河図』」
マギー・ビックフォード「芸術と政治」
パトリシア・イブリー「徽宗朝の開封の建築計画」
高津孝「清明上河図と蘇軾の芸術論」
小島毅「天を観て民に示す」
須江隆「『清明上河図』の時代の信心の世界」

第2部 清明上河図―風俗画の伝承と拡散
加藤繁「仇英筆清明上河図と云われる図巻に就いて」
板倉聖哲「張擇端「清明上河図巻」(北京故宮博物院)の絵画史的位置」
久保田和男「開封復元図(徽宗時代)と『清明上河図』」
鈴木陽一「張擇端「清明上河図」とその影響力」
王正華「晩明《清明上河図》考」
植松瑞希「乾隆帝と「清明上河図」」
内田欽三「東アジアにおける都市図と風俗画」
加藤玄「中世ウェストミンスター宮殿の壁画群」

第3部 描かれぬものと描かれたもの―継承される画巻に時代をみる
齋藤忠和「兵士と農民」
福田アジオ「画巻に民俗をよむ」  
伊原弘「画巻に時代をよむ」


「清明上河図」に描かれたものを詳細に分析した伊原弘編『「清明上河図」をよむ』(勉誠出版、2003年10月)とは違って、「清明上河図」が描かれた時代背景や「清明上河図」の意義について論じている。「清明上河図」を見に行く前に『「清明上河図」をよむ』を読み、見終わった後に本書を読むといいのかもしれない。

2012年1月6日金曜日

新年初展覧会

新年がやってまいりました。
昨年は色々あって、更新も滞りがちでしたし、
展覧会にもあまり行けませんでした。

と思って、改めて展覧会参観を数えてみたら37回。
多くはないけど、少なくもないですね。
どうやら、1月~3月に結構かせいでいたみたいです。
まぁ、無理せず、今年もマイペースで過ごしていきたいです。


というわけで、先日、新年初展覧会に行ってきました。
歌川国芳展や北京故宮博物院200選など候補があるなか、
いろいろ迷った末に、松屋銀座で開催中の

「上田宗箇 武将茶人の世界展」

に行ってきました。

選んだ理由は、昨年、マンガ『へうげもの』にはまったから。
上田宗箇は、上田左太郎として『へうげもの』に登場。
猛将であるとともに古田織部のよき弟子でもある人物。

もともと茶器には全く興味なかったのだけど、
『へうげもの』を読んで、最近少し興味が湧いてきたところ。
正直、あまり期待せずに見に行ったのだけど、
予想以上に面白かったです。

茶人としての上田宗箇のみならず、
武将としての側面も取り上げている。
展示会場前半には、上田宗箇の甲冑や陣羽織、
地図や文書なんかもおいてあって、
戦国ファンなら楽しめる内容。

後半になって、いよいよ茶器がメインになってくるのだけど、
安土桃山~江戸初の茶器の斬新なこと。
織部焼きに代表されるへしゃげた器に抽象的デザイン。
宗箇自作の武骨な茶器もかっこいい。
30分くらいのつもりが、1時間半も見てしまいました。

会期は1月16日(月)まで。会場時間は10:00~20:00。
入場料は1000円(学生700円)。


というわけで、今年もぼちぼち更新していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。