小島毅編『アジア遊学151 東アジアの王権と宗教』(勉誠出版、2012年3月)
2009年度から2011年度まで行われた東京大学大学院人文社会系の演習プロジェクト「東アジアの王権と宗教」の成果の一部をまとめたもの。多分野交流をかかげていることもあり、執筆者は多彩。なかには王権とも宗教とも関係ない論文もあるけれど、全体的に概説に近く、読みやすかった。
目次は以下の通り。
近藤成一「中世日本の「王権」」
蓑輪顕量「日本における王法と仏法」
佐川英治「漢代の郊祀と都城の空間」
小島毅「儒教経学と王権」
六反田豊「朝鮮時代の君臣関係と王権」
本橋裕美「古代日本における祭祀と王権―斎宮制度の展開と王権」
趙秀全「古代天皇における孝徳―歴史書と物語文学を通じて」
河添房江「嵯峨朝・仁明朝の王権と東アジア」
横手裕「道教と唐宋王朝」
深沢克己「近世フランスの王権と宗教―比較の視点から」
加藤徹「近世日本における中国伝来音楽の諸相―明清楽を中心に」
小野泰教「清末士大夫の見た西洋議会制―いかにして理想の君民関係を築くか」
商兆琦「「生き返らせる」田中正造研究批判」
新野和暢「宗教団体法にみる国家と「宗教」」
板倉聖哲「「桃鳩」イメージの変容―王権の表象から平和の象徴へ」
個人的には最後の板倉論文が大変面白かった。
グラフィックデザイナーの田中一光の「ヒロシマ・アピールズ」(1988年作)というポスターで、描かれた白いハトの典拠が、徽宗の「桃鳩図」であることを指摘し、日本における桃鳩図の意義、ハトが示す意味を確認し、「ヒロシマ・アピールズ」に至る過程に迫っている。そして最後には、Chim↑Pomに言及して稿を終えている。まさか、アジア遊学を読んでて、Chim↑Pomに出くわすとは思わなかった。
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