2012年10月31日水曜日

李白

金文京『李白―漂泊の詩人 その夢と現実』(岩波書店、2012年10月)

岩波書店の「書物誕生 あたらしい古典入門」シリーズの最新刊。このシリーズは、「書物誕生」のはずなのに、『論語』・『史記と漢書』・『老子』などとともに、陶淵明・杜甫・李白の三人の詩人がなぜか取り上げられている。

『杜甫』も『陶淵明』も、あまり他の概説書と変わり映えしない印象だったけど、『李白』は他書にない李白像が示されている。

第Ⅰ部では、李白の出自(胡商)、李白伝説、李白詩文集の形成を紹介。第Ⅱ部では、「山人」の視点から李白の漂泊の人生をとらえなおしている。功名への野望を抱き、地方官に無心し、道教にそまる李白。第Ⅱ部第五章では、「政治的感覚に欠如した頓珍漢な人間であった」ことを指摘している。第Ⅱ部第Ⅱ章での、胡商出身であるがゆえに、士人の儒教的行動様式にうとかったという指摘にも眼からウロコが落ちた。第Ⅰ部・第Ⅱ部ともに興味深く、一気に読んでしまった。

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