高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社、2012年8月)
帯の「あの世界文学の金字塔には真犯人がいる。」にひかれて購入。高野史緒のSF作品はいくつか読んでいたけれど、最近、新作でないなぁ、と思っていたら、まさかあのドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の続編を書いていたとは。
舞台は、『カラマーゾフの兄弟』の13年後の1887年。次男のイワンが郷里に未解決事件特別捜査官として、帰ってくるところからはじまる。『カラマーゾフの兄弟』の作中人物のその後とともに、再捜査がはじまるや、新たな事件が……。
一見、普通の続編&推理小説と思いきや、徐々に虚実ないまぜのロシアに。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』第二部の構想を大胆にアレンジした上で、あの名探偵やロシア文学の登場人物、実在の学者・作品も取り込み、いつの間にか舞台はスチームパンク風の世界に。まさしくSFと推理小説とロシア文学の融合。
実のところ、『カラマーゾフの兄弟』は未読だったのだけど、本書を読みおえて、すぐさま新潮文庫版を購入。一気読みしてしまった。高野氏は光文社文庫版に依拠しているのだが、新潮文庫版の翻訳でも特に矛盾箇所は生じていなかった。巧みに原作の隙をついて、意外な真犯人を導き出している。
『ディファレンス・エンジン』や、キム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』三部作、矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』などを思い起こした。今月出る予定の伊藤計劃&円城塔『屍者の帝国』も同種の作品のはず。もちろん、江戸川乱歩賞応募作ということもあって、スチームパンク的要素は少な目。SF好きなら、なんなく入り込めるし、そうでない方も楽しめるはず(多分)。まぁ、苦手な方も多いかも。
文豪はどんな感想を持つか??
返信削除ちょっと聞いてみたいなと思ってみたり。
かの有名な原作は読んでないですが、読んでみました。
ちょっと難しいけど、面白かった。
ただ、やっぱり原作を知っていた方が良いのかな。
ついでに他のサイトも色々見ましたが、評価はさまざまですね。
とりあえず、視点が違うけど面白い事を書いてある
サイトを見つけました。
http://www.birthday-energy.co.jp/
高野さんの人物評みたいですが、受賞は60年に一度
の絶好のタイミング、且つ、配偶者とのとんでもない関係が作用したとの事。
これからも期待できる作家さんみたいなので、期待しておきたいなと。