大澤顯浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻(東方書店、2011年12月)
学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。
序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」
第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」
第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」
執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。
陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。
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