2012年2月12日日曜日

茶会への招待

先日、三井記念美術館で開催中の
「茶会への招待―三井家の茶道具」
に行ってきました。

一月に引き続き、茶器関連の展覧会に
いってきたわけですが、別に茶器にはまったわけではありません。
今回のお目当ては、併設されている
「初公開―新町三井家の新寄贈品から」。
なんと金沢文庫本『白氏文集』巻23・巻38が
展示されているのです。

この両巻は、戦前に存在が確認されていたが、
戦後、所在不明になっていたもの。
今回、三井家より寄贈されたことによって、
世にでてきたというわけです。

ということで、『白氏文集』目当てでいってきました。
とはいえ、行ってみたら、やっぱり茶器も面白い。
展示室一の「茶の湯の名品」、展示室四の「茶事の取合せ」、
展示室五の「名碗抄」と、見応えたっぷり。
さすが三井家所蔵品。見た目も由来も楽しめるものばかり。

で、最後の展示室七にお目当ての『白氏文集』が。
展示ケースいっぱいつかって、なが~く展示している。
巻23は親族宛の手紙や祭文、巻38は官僚の任命書など。
博士家のヲコト点や校訂、反切・注釈などなど、
歴史を超えてきた知の重みを感じる。

白氏文集は旧抄本研究の蓄積が分厚いし、今後の研究が楽しみ。
白居易の長恨歌などの文学作品には、
旧抄本と刊本とで、文字の異同(意図的な改変もある)が、
結構あることが知られているが、
手紙や祭文、公的文書ではどうなのだろうか。

そして、もう一つ気になるのが、
今回三井記念美術館に何が寄贈されたのかということ。
展示パネルには、古典籍類とある。
もしかしたら、白氏文集以外にも旧抄本が
寄贈されているかも……。
今後の展開が気になります。


会期:2012年2月8日(水)~4月8日(日)
休館日:月曜日・2月26日(日)
開館時間:10時~17時
入館料:一般1000円、学生500円

2012年2月8日水曜日

日本における唐代官僚制研究

小島浩之「日本における唐代官僚制研究―官制構造と昇進システム(System)を中心として」(『中国史研究』20、2010年10月)

日本における唐代官僚制研究を
官制構造と官僚の昇進システムを中心にまとめたもの。
六典官制・貴族制との関わり(人的構成)・
職事官と散官・昇進システムについて
研究状況と課題を述べていて、とても参考になる。
また、引用文献リストを見ると、21世紀以降、
唐代官僚制研究が減少している様子がうかがえる。

『中国史研究』は、編集後記が毎号徐々に長くなっていて、
20号では16頁にも及んでいる。こちらも読みごたえある。

2012年2月4日土曜日

東方学123

『東方学』123(東方学会、2012年1月)

目次は以下の通り。
[論文]
三浦國雄「 『朱子語類』の読まれ方―新発田藩の一儒者の書き入れをめぐって」
新見まどか「唐代後半期における「華北東部藩鎮連合体」 」
山崎藍「死者を悼んで旋回する―元禛「夢井」における「遶井」の意味」
伊藤一馬「南宋成立期の中央政府と陝西地域―「宋西北辺境軍政文書」所見の赦書をめぐって」
伴俊典「江戸期における『水滸伝』全訳の成立」
蕭涵珍「笠亭仙果の『七つ組入子枕』にみる李漁の『十二楼』―「合影楼」を中心として」
福嶋亮太「進化の形成物としての白話―胡適の言語観およびコミュニケーション観の再検討」
青野道彦「僧残罪を犯した比丘尼の謹慎処分―パーリ律註釈文献を中心に」

[内外学会消息]
高田時雄「ロシア科学アカデミー東洋写本研究所と『東洋の文献遺産』誌など」
金子修一「中国留学と二つの学会」

[座談会]
「学問の思い出―池田温先生を囲んで」
〔出席〕 池田温、任大煕、大津透、金子修一、窪添慶文、小口彦太、坂上康俊、土肥義和

[追悼文]
小野山 節「有光教一先生の御功績と学恩を顧みて」
土田健次郎「楠山春樹先生を偲ぶ」


三浦論文では、「辺縁に生きた一儒者」のなまの思考の断片に触れられる。三浦氏が提唱する「書き入れ学」も大変面白そう。
山崎論文では、死者を悼んで墓・棺の周囲を廻る習俗に言及している。盆などのお墓参りの際に墓をぐるぐるまわるという友人の故郷の習俗を思い出した。
座談会も読みごたえあり。

2012年2月2日木曜日

遼金西夏史研究会第12回大会

遼金西夏史研究会第12回大会
日程:2012年3月24日(土)・25日(日)
場所:学習院大学中央研究棟 402教室

プログラム
2012年3月24日(土曜)
13時20分~14時30分 中田美絵「8世紀後半におけるユーラシア情勢と長安仏教界」
14時40分~17時10分
【ミニシンポジウム】「遼・金・西夏研究の現状と展望」
報告者:飯山知保・佐藤貴保・高井康典行

3月25日(日曜)
9時30分~10時40分 毛利英介「宋は兄で遼は弟なのか ―遼・宋擬制親族関係について―」
10時50分~12時00分 吉野正史「「耶律・蕭」と「移剌・石抹」の間 ―『金史・本紀』における契丹・奚人の姓の記述に関する考察―」
13時30分~14時40分 大西啓司「西夏に於けるシャーマンの活動 ―『天盛旧改新定禁令』を中心に―」
14時50分~15時25分 荒川慎太郎「ロシア東洋文献研究所所蔵西夏語文献 Tang. 46, inv. No. 156 再考(仮題)」

2012年1月31日火曜日

もうすぐ出る本

刊行が長いこと遅れていた八木書店の『遣隋使がみた風景』。
HPを見ると、表紙と目次がアップされている。
いよいよ出版される模様だ。

氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景―東アジアからの視点』
初版発行予定:2012年2月10日
予価3,990円(本体予価3,800円+税5%)

序章 氣賀澤保規「東アジアからみた遣隋使-概説と課題」
第Ⅰ部 遣隋使と国際関係
氣賀澤保規「『隋書』倭国伝からみた遣隋使」
金子修一「東アジアの国際関係と遣隋使」
田中俊明「朝鮮からみた遣隋使」
氣賀澤保規「アジア交流史からみた遣隋使-煬帝の二度の国際フェスティバルの狭間で」

第Ⅱ部 遣隋使とその時代の諸相
吉村武彦「推古朝と遣隋使」
川本芳昭「遣隋使の国書」
林部均「遣隋使と飛鳥の諸宮」
河内春人「遣隋使の「致書」国書と仏教」

第Ⅲ部 倭人と隋人がみた風景
氣賀澤保規「倭人がみた隋の風景」
鐘江宏之「隋人がみた倭の風景」
池田温「遣隋使のもたらした文物」
終章 氣賀澤保規「遣隋使の新たな地平へ-おわりに寄せて」

豪華なラインナップ。
煬帝の国際フェスティバルってなんだろう?

東アジア書誌学への招待 第二巻

大澤顕浩編著『東アジア書誌学への招待 第二巻』(東方書店、2011年12月)
『東アジア書誌学への招待』の第二巻。
第一巻が総論とすると、第二巻は地域・研究分野ごとの各論。
目次は以下の通り。

第四章 東アジアの文献―朝鮮本・満洲語文献・越南本・和刻本
石橋崇雄「清代満洲語文献の特徴と重要性」
吉田光男「朝鮮本の世界」
八尾隆生「ヴェトナムにおける漢喃(ハンノム)本の研究と収集の現状」
小秋元段「慶長年間における古活字版刊行の諸問題」

第五章 研究のための書誌学―思想・文学・歴史・地理
金文京「明代『三国志演義』テキストの特徴―中国国家図書館蔵二種の湯賓尹本『三国志伝』を例として」
笠井直美「白話小説・戯曲版本の分化と特徴」
永富青地「陽明学研究における文献学の意義―『王文成公全書』所収の「年譜」への挑戦」
林鳴宇「書誌学からみた仏書と儒書」
山本英史「中国地方文献の交際術―地方志、判牘、筆記」
中砂明徳「イエズス会の極東関係史料―「大発見の時代」とその後」
高柳信夫「ミル『自由論』における“individuality”概念の日本と中国への導入について―中村正直『自由之理』と厳復『群己権界論』の場合」

2012年1月24日火曜日

国際ワークショップ

日時:2012年2月19日(日),20日(月)

会場
2月19日:立正大学大崎キャンパス11号館第5会議室
2月20日:桜美林大学四谷キャンパス地下会議室

プログラム
2月19日「湖南出土魏晋簡牘をめぐる諸問題」
13:00~13:10 趣旨説明:關尾史郎
13:15~14:15 谷口建速「長沙走馬楼呉簡に見える「塩米」とその管理」
14:20~15:20 鷲尾祐子「走馬楼呉簡吏民簿から窺う世帯の状況」
15:20~15:40 休 憩
15:40~16:40 伊藤敏雄・永田拓治「■(林+阝)州晋簡初探―上計及び西晋武帝郡国吏勅戒等との関係を中心に―」
16:45~17:45 張榮強「再論孫呉簡中的戸籍文書」(中国語)
17:50~18:00 閉会の挨拶:窪添慶文

2月20日「出土資料からみた魏晋時代の河西」
10:00~10:10 趣旨説明:關尾史郎
10:15~11:15 市来弘志「高台駱駝城の歴史地理的位置」
11:20~12:20 町田隆吉「甘粛省高台県出土の漢語文書の基礎的整理―簡牘を中心に―」
12:20~13:20 昼休み
13:20~14:20 北村永「河西における魏晋墓の図像―漢代の伝統的モチーフを中心にして―」
14:25~15:25 渡部武「画像資料から見た河西地方の犂のタイプと犂耕技術」
15:25~15:45 休憩
15:45~16:45 宋馨「北魏平城時期的墓誌形成与河西的関係」(中国語)
16:50~17:00 閉会の挨拶:小林 聡

2012年1月20日金曜日

律令制研究入門

大津透編『律令制研究入門』(名著刊行会、2011年12月)

2010年8月に東方学会の英文紀要“Acta Asiatica”99号の
特集「律令制の比較研究」に掲載された5本の論文の日本語版に、
新たに若手研究者の論文3本、大津氏の論文2本を加えたもの。
目次は以下の通り。

第一部 律令制の意義
榎本淳一「「東アジア世界」における日本律令制」
坂上康俊「日唐律令官僚制の比較研究」
丸山裕美子「律令法の継受と文明化」
大隅清陽「律令と礼制の受容」

第二部 律令制分析の視角
武井紀子「律令と古代財政史研究」
吉永匡史「軍防令研究の新視点」
大高広和「律令継受の時代性 ―辺境防衛体制からみた―」

第三部 律令制研究史
大津透「律令制研究の流れと近年の律令制比較研究」
大津透「律令制研究の成果と展望」
大津透「北宋天聖令の公刊とその意義 ―日唐律令制比較研究の新段階―」


第一部は外国人研究者向けに、
日本の日唐律令研究の動向をまとめたもので、
概説的であるがゆえにわかりやすい。
第三部も律令制比較研究の研究史や
天聖令発見の意義をまとめていて参考になる。
第二部は若手研究者による最新の論考。

2012年1月17日火曜日

東アジア書誌学への招待第一巻

大澤顯浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻(東方書店、2011年12月)

学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。

序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」

第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」

第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」


執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。

陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。

2012年1月15日日曜日

贈与の歴史学

桜井英治『贈与の歴史学―儀礼と経済のあいだ』(中公新書、2011年11月)

目次は以下の通り。
第1章:贈与から税へ
第2章:贈与の強制力
第3章:贈与と経済
第4章:儀礼のコスモロジー

換金前提の贈物・目録交換による贈与の相殺・贈答品の流用など「世界的にも類を見ない極端に功利的な性質を帯びる」中世日本の贈与慣行。贈与とは何か、コミュニケーションとは何かを考えさせられる。理論的でありつつ、実例が豊富で読みやすく、かつ読み応えがある。