2010年10月24日日曜日

三国志研究第五号

『三国志研究』第五号(三国志学会、2010年9月)

目次は以下の通り。
【講演】
川合康三「身を焼く曹植」
【論考】
並木淳哉「蜀漢政権における権力構造の再検討」
髙橋康浩「韋昭「博奕論」と儒教的理念」
島田悠「孫呉滅亡後の三呉―西晋の三呉支配―」
上原究一「「漢兒」なる張飛―金末の張飛人気と「燕人」の来源―」
竹内真彦「青龍刀と赤兎馬―関羽像の「完成」過程―」
中川諭「黄正甫刊『三国志伝』三考」
後藤裕也「余象斗本『三国志演義』評語小考」
田村彩子「川劇三国戯「上方谷」をめぐって」
藤巻尚子「『太平記鈔』における三国志の受容―『太平記賢愚鈔』との比較を始点として―」
清岡美津夫「現代日本における三国要素の変容と浸透―アクセス集計を事例に―」
【文献目録】
朝山明彦「関帝信仰研究文献目録【和文編】」
【資料整理】
後藤裕也「余象斗本『三国志演義』評語翻刻」
【翻訳】
増田真意子「周澤雄著「文和乱武」―詐欺師的策謀家から有徳の大臣へ―」
【雑纂】
前川貫治「三国志迷いの旅(四)―安徽・江蘇の旅―」

歴史・文学・版本学・演劇・日本における三国志受容など、
様々なジャンルの論考があって、読み応えがある。
号を重ねるごとに、徐々に歴史分野の論考の割合が減っている気もするけど、
それはそれで、まぁ、いいのかもしれない。
(四号は東方学会の原稿が掲載されているので、歴史分野が多く見えるが、
論考だけを見ると、意外に歴史分野の割合は低い)

若干、気になったこととして、
資料整理の翻刻は、後藤論文の直後につけたほうが、効果的だったように思える。
あと、翻訳については、書誌情報・作者などに関する解題がついておらず、
掲載意義がよくわからなかった。

個人的には、清岡論文のサイトのアクセス集計から見る
現代日本の三国志受容の様相が興味深かった。
ゲームやアニメなどの三国志的要素を持った作品の流行・受容が、
三国志などの根源に関心を向ける動きにつながる様子は、
アクセス集計を見る限り確認できない、という結論は重要な指摘なようにも思える。
多分、実際にはゲームやアニメから、三国志そのものに興味を持つ人も出てくるだろうし、もともと興味ある人がゲームやアニメにも関心を持つこともあるだろうから、
一概にいえないだろうけど、必ずしもゲーム・アニメなどの流行が、
三国志人気につながるわけではない、というのは間違いないだろう。

三国志ですら、そうなのだから、
ましてやゲームもアニメもな~んにもない他の時代では……。

収録 アジア学の系譜

先日、古本屋にて、
『アジア』11-7(アジア評論社、1976年9月)を購入。
恥ずかしながら、初めて知った雑誌だったのだけど、
「収録/アジア学の系譜」と題して、
19人の「アジア学」の研究者のインタビューを掲載しており、
200円と格安だったこともあって買ってみた。

目次は次の通り。
岩村忍「「アジアの見方」を考える」
藤枝晃「「文字の文化史」に至るまで」
山本達郎「東南アジア史研究の諸問題」
貝塚茂樹「人間学としての中国研究」
前嶋信次「イスラム世界への視座」
竹内好「アジアへの関わりのエトス」
西田龍雄「言語学者がみたアジア」
今西錦司「生物の世界の精神」
日比野丈夫「中国史学としての華僑研究」
江上波夫「騎馬民族説の歴史観」
中村元「東洋人の思惟方法を考える」
市村真一「地域研究方法論の模索」
中尾佐助「アジアの自然環境と文化複合」
梅棹忠夫「「文明の生態史観」の背景」
川喜田二郎「村落調査方法論」
衛藤瀋吉「アジア現代史への開眼」
旗田巍「朝鮮史学を貫いたもの」
中根千枝「社会構造論的アジア観」
東畑精一「アジアの中の日本」
〈聞き手〉矢野暢

『アジア』で1974年から2年間にわたって連載された
「アジア学の系譜」をまとめたものらしい。そうそうたる面々。
インタビュアーの質問に権威臭(しかも若干誘導的)が感じられるが、
生い立ちや学問へのきっかけや形成過程を語っていて、なかなか面白い。

あちこちに、新日本製鉄・三井物産・サッポロビール・キリンビール・
日本鋼管・丸紅・三菱重工業・日本コロムビアなどの大企業が
広告を出しているのが、時代を感じる。

2010年10月21日木曜日

新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清

沖本克己編集委員・菅野博史編集協力『新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清 中国文化としての仏教』(佼成出版社、2010年9月)


アジア仏教史の新シリーズ。中国編第三弾(第一弾はまだ出てません)。
目次は以下の通り。
第一章「宋代の思想と文化」土田健次郎
第二章「元・明の仏教」野口善敬
第三章「仏教民間信仰の諸相」陳継東
第四章「日中交流史」西尾賢隆
第五章「仏教美術」肥田路美
第六章「中国仏教の現在」陳継東

本巻は宋以降の中国仏教をメインに扱っているが、
それだけではなく、日中交流史(唐後半~明)や仏教美術(魏晋~隋唐)、
宋代の道学と仏教の関係なども概説している。

正直、宋代以降の仏教については、全くと言っていいほど知識がない。
第二章はその点で参考になった。ただ、元イメージが古いのがちょっと残念。
第六章「中国仏教の現在」では、清末の仏教から、
民国期の仏教復興運動、文革期の弾圧を経て
現在に至る状況が紹介されていて興味深い。

2010年10月18日月曜日

平成22年九州史学会大会

平成22年九州史学会大会
日時:2010年12月11日・12日
場所:九州大学
参加費1500円

12月11日(土)13:30~ 九州大学法文系講義棟101
シンポジウム「蔵書目録―知の表象の世界」
岩崎義則「平戸藩主松浦静山の書物収集と情報交流―楽歳堂文庫蔵書目録の検討―」
大渕貴之「目録を読む難しさ―唐初の類書観を中心として―」
岡崎敦「西欧中世の書物と蔵書目録―方法論と諸成果―」
伊藤隆郎「アラビア語の蔵書目録と書籍目録―史料と研究の可能性―」

12月12日(日) 東洋史部会 九州大学法文系講義棟204 9時~
シンポジウム「モンゴル帝国の中国支配とその社会―石刻史料による成果と課題―」
森田憲司「中国近世石刻研究の課題 ―その材料と方法をめぐっての回顧― 」
井黒忍「水利碑から見た分地支配と社会―山西ジョチ家投下領の事例をもとに― 」
松田孝一「「答里真官人(ダーリタイ・オッチギン)位」の寧海州分地について」
村岡倫「石刻資料から見た探馬赤軍の歴史」

研究発表  
井上雄介「前漢武帝の封禅について」
塩田孝浩「前漢における刑罰について ―死刑の問題を中心として―」
植松慎悟「光武帝期の官制改革とその影響」
稲住哲朗「盧思道と隋 ―北斉系士人の正統観―」
堀地明「刑科題本と乾隆10年山西大同府天鎮県閙賑案」
和田英穂「台湾人の戦後処理 ―『戦犯』と『漢奸』を中心に―」
崔淑芬「中国における「SOS子ども村」の一考察―新疆ウイグル自治区「SOS子ども村」の事例から― 」
小林聡「五胡・北朝期における北族的服制の展開―河西・朝陽・大同の出土文物を主たる題材として―」

12月12日(日) 朝鮮学部会 法文系講義棟202 10時~
濱田耕策「劉仁願紀功碑の復元と碑の史料価値」
井上直樹「6世紀末・7世紀の東アジア情勢と高句麗の対倭外交」
赤羽目匡由「唐代越喜靺鞨の住地とその移動について」
安田純也「高麗時代の蔵経道場について」
川西裕也「朝鮮時代における差定文書の淵源と機能」
森平雅彦「朝鮮後期の漢江水運とその技術―「生態環境の朝鮮史」のための予備的考察―」
白井順「前間恭作の晩年―三木栄・岩井大慧・小倉進平との交流について―」
申英根「地域活性化政策による伝統祭の変容と地域社会のコンフリクト―韓国江原道の「江陵端午祭」を事例として―」

2010年10月17日日曜日

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム
「内陸アジア史研究の課題と展望」
日時:2010年11月13日(土)13:00~17:30
会場:早稲田大学小野記念講堂

基調講演 13:10~14:30
森安孝夫「モンゴル時代までの東部内陸アジア史:実証研究から世界史教育の現場へ」
堀川徹「モンゴル時代以降の西部内陸アジア史:実証研究の深化と展開の可能性」

パネル報告 14:45~16:00
林俊雄「考古学研究の20年:中央アジア・シベリア・モンゴル」
稲葉穣「モンゴル征服以前の西トルキスタン:テュルク・イラン・アラブのフロンティア」
森川哲雄「ポストモンゴル時代の北アジア研究について」
小松久男「近現代史研究の眺望と課題:イスラーム地域を中心に」
中見立夫「近現代モンゴル・チベット・中国東北研究の特質」

16:05~17:30 総合コメント 桃木至朗
16:50~17:30 討論 

2010年10月15日金曜日

僧侶と海商たちの東シナ海

榎本渉『選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』(講談社、2010年10月)

9世紀の遣唐使以後から、15世紀の遣明使までの
東シナ海における海域交流について、
僧侶と海商に焦点をあてて、その様態の変化を綴っている。

こんなにも色々な日本人僧がいたんだ、とびっくり。
詳細に紹介されている入宋僧の円爾と、
入元僧の龍山徳見については、この本ではじめて知った。

また、まず地道な個別実証の積み重ねの必要性を説く著者の姿勢に共感。

――――――――――――――――――――――――
追記:2010年10月17日22時25分

ゆえあって、杉山正明・北川誠一『世界の歴史9 大モンゴルの時代』(中央公論社、1997年8月)を読み直していたら、円爾弁円が2頁にわたって登場していた。はじめて知ったのではなく、単に覚えていなかっただけだったのか……。

2010年10月13日水曜日

日本仏教と高麗版大蔵経

特別陳列 「日本仏教と高麗版大蔵経-獅谷忍澂上人を中心として-」 日程: 2010年10月30日(土) ~11月6日(土) 10時~17時
場所:佛教大学宗教文化ミュージアム 第2研究成果展示室
入場料無料


シンポジウム 「日本仏教と高麗版大蔵経」
日時:2010年10月30日(土) 9時~17時
会場:宗教文化ミュージアム 宗教文化シアター
定員130名 事前申込不要・参加費無料

パネリスト
末木文美士・藤本幸夫・朴相国・永崎研宣・梶尾晋
馬場久幸・貝英幸・松永知海

2010年10月9日土曜日

2010年度東洋史研究会大会

2010年度東洋史研究会大会
日時:2010年11月3日(水・祝)9時~17時 
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)
大会参加費500円(資料・要旨代を含む)

発表題目
[午前の部]
中西竜也「スーフィズムとタオイズム―一九世紀中国西北部における対話―」
五味知子「「誣姦」の意味するもの―明末清初の判牘を中心に―」
丸橋充拓「唐開元軍事儀礼の源流」
原宗子「戦国秦漢期における樹木観の変遷」 

[午後の部]
上田裕之「洋銅から〔テン〕銅へ―清代辧銅制度の転換点をめぐって―」
近藤真美「『スブキーのファトワー集』に見るワクフ問題」
齋藤久美子「オスマン朝下アナトリア南東部におけるティマール制」
金文京「一七世紀後半日朝武器密貿易とその清朝への波及」
糟谷憲一「甲午改革期以後の朝鮮における権力構造について」
井上裕正「『海国図志』成立の背景」

2010年10月7日木曜日

戦国秦漢時代における王権と非農業民

柿沼陽平「戦国秦漢時代における王権と非農業民」(『史観』163、2010年9月)

戦国秦漢時代の非農業民に着目し、
なかでも「常人ならざる性質」を帯びた人々と王との類似性を確認した後、
「異界」である市場・山林叢沢や「異人」と王・皇帝との祭祀・財政を通じた
密接な関係性を明らかにし、戦国秦漢時代の王権の存立構造に迫っている。
貨幣史から、いよいよ皇帝権力へ。
紙幅の関係もあってか、ちょっと駆け足だった気もするけど、
次の展開が気になります。

第29回橿原考古学研究所公開講演会

第29回橿原考古学研究所公開講演会
日時:2010年11月3日(水・祝)
会場:奈良県橿原文化会館 大ホール
主 催:奈良県立橿原考古学研究所・(財)由良大和古代文化研究協会
入場先着 1280名(入場無料)

テーマ:『東アジアの王墓と桜井茶臼山古墳』
プログラム
10:10~11:10 豊岡卓之「桜井茶臼山古墳の調査成果と意義」
11:10~12:30 李恩碩「伽耶における三・四世紀の墳丘墓と王墓」
12:30~13:30 〈昼食休憩〉
13:30~13:50 平成22年度文化財保護功労者感謝状贈呈式 奈良県教育委員会
13:50~15:10 王巍 「曹操高陵の発見と中国の墳丘墓・王墓形成」
15:10~15:20 〈休  憩〉
15:20~16:40 フォーラム (コーディネーター:菅谷文則)