2010年10月24日日曜日

収録 アジア学の系譜

先日、古本屋にて、
『アジア』11-7(アジア評論社、1976年9月)を購入。
恥ずかしながら、初めて知った雑誌だったのだけど、
「収録/アジア学の系譜」と題して、
19人の「アジア学」の研究者のインタビューを掲載しており、
200円と格安だったこともあって買ってみた。

目次は次の通り。
岩村忍「「アジアの見方」を考える」
藤枝晃「「文字の文化史」に至るまで」
山本達郎「東南アジア史研究の諸問題」
貝塚茂樹「人間学としての中国研究」
前嶋信次「イスラム世界への視座」
竹内好「アジアへの関わりのエトス」
西田龍雄「言語学者がみたアジア」
今西錦司「生物の世界の精神」
日比野丈夫「中国史学としての華僑研究」
江上波夫「騎馬民族説の歴史観」
中村元「東洋人の思惟方法を考える」
市村真一「地域研究方法論の模索」
中尾佐助「アジアの自然環境と文化複合」
梅棹忠夫「「文明の生態史観」の背景」
川喜田二郎「村落調査方法論」
衛藤瀋吉「アジア現代史への開眼」
旗田巍「朝鮮史学を貫いたもの」
中根千枝「社会構造論的アジア観」
東畑精一「アジアの中の日本」
〈聞き手〉矢野暢

『アジア』で1974年から2年間にわたって連載された
「アジア学の系譜」をまとめたものらしい。そうそうたる面々。
インタビュアーの質問に権威臭(しかも若干誘導的)が感じられるが、
生い立ちや学問へのきっかけや形成過程を語っていて、なかなか面白い。

あちこちに、新日本製鉄・三井物産・サッポロビール・キリンビール・
日本鋼管・丸紅・三菱重工業・日本コロムビアなどの大企業が
広告を出しているのが、時代を感じる。

2010年10月21日木曜日

新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清

沖本克己編集委員・菅野博史編集協力『新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清 中国文化としての仏教』(佼成出版社、2010年9月)


アジア仏教史の新シリーズ。中国編第三弾(第一弾はまだ出てません)。
目次は以下の通り。
第一章「宋代の思想と文化」土田健次郎
第二章「元・明の仏教」野口善敬
第三章「仏教民間信仰の諸相」陳継東
第四章「日中交流史」西尾賢隆
第五章「仏教美術」肥田路美
第六章「中国仏教の現在」陳継東

本巻は宋以降の中国仏教をメインに扱っているが、
それだけではなく、日中交流史(唐後半~明)や仏教美術(魏晋~隋唐)、
宋代の道学と仏教の関係なども概説している。

正直、宋代以降の仏教については、全くと言っていいほど知識がない。
第二章はその点で参考になった。ただ、元イメージが古いのがちょっと残念。
第六章「中国仏教の現在」では、清末の仏教から、
民国期の仏教復興運動、文革期の弾圧を経て
現在に至る状況が紹介されていて興味深い。

2010年10月18日月曜日

平成22年九州史学会大会

平成22年九州史学会大会
日時:2010年12月11日・12日
場所:九州大学
参加費1500円

12月11日(土)13:30~ 九州大学法文系講義棟101
シンポジウム「蔵書目録―知の表象の世界」
岩崎義則「平戸藩主松浦静山の書物収集と情報交流―楽歳堂文庫蔵書目録の検討―」
大渕貴之「目録を読む難しさ―唐初の類書観を中心として―」
岡崎敦「西欧中世の書物と蔵書目録―方法論と諸成果―」
伊藤隆郎「アラビア語の蔵書目録と書籍目録―史料と研究の可能性―」

12月12日(日) 東洋史部会 九州大学法文系講義棟204 9時~
シンポジウム「モンゴル帝国の中国支配とその社会―石刻史料による成果と課題―」
森田憲司「中国近世石刻研究の課題 ―その材料と方法をめぐっての回顧― 」
井黒忍「水利碑から見た分地支配と社会―山西ジョチ家投下領の事例をもとに― 」
松田孝一「「答里真官人(ダーリタイ・オッチギン)位」の寧海州分地について」
村岡倫「石刻資料から見た探馬赤軍の歴史」

研究発表  
井上雄介「前漢武帝の封禅について」
塩田孝浩「前漢における刑罰について ―死刑の問題を中心として―」
植松慎悟「光武帝期の官制改革とその影響」
稲住哲朗「盧思道と隋 ―北斉系士人の正統観―」
堀地明「刑科題本と乾隆10年山西大同府天鎮県閙賑案」
和田英穂「台湾人の戦後処理 ―『戦犯』と『漢奸』を中心に―」
崔淑芬「中国における「SOS子ども村」の一考察―新疆ウイグル自治区「SOS子ども村」の事例から― 」
小林聡「五胡・北朝期における北族的服制の展開―河西・朝陽・大同の出土文物を主たる題材として―」

12月12日(日) 朝鮮学部会 法文系講義棟202 10時~
濱田耕策「劉仁願紀功碑の復元と碑の史料価値」
井上直樹「6世紀末・7世紀の東アジア情勢と高句麗の対倭外交」
赤羽目匡由「唐代越喜靺鞨の住地とその移動について」
安田純也「高麗時代の蔵経道場について」
川西裕也「朝鮮時代における差定文書の淵源と機能」
森平雅彦「朝鮮後期の漢江水運とその技術―「生態環境の朝鮮史」のための予備的考察―」
白井順「前間恭作の晩年―三木栄・岩井大慧・小倉進平との交流について―」
申英根「地域活性化政策による伝統祭の変容と地域社会のコンフリクト―韓国江原道の「江陵端午祭」を事例として―」

2010年10月17日日曜日

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム
「内陸アジア史研究の課題と展望」
日時:2010年11月13日(土)13:00~17:30
会場:早稲田大学小野記念講堂

基調講演 13:10~14:30
森安孝夫「モンゴル時代までの東部内陸アジア史:実証研究から世界史教育の現場へ」
堀川徹「モンゴル時代以降の西部内陸アジア史:実証研究の深化と展開の可能性」

パネル報告 14:45~16:00
林俊雄「考古学研究の20年:中央アジア・シベリア・モンゴル」
稲葉穣「モンゴル征服以前の西トルキスタン:テュルク・イラン・アラブのフロンティア」
森川哲雄「ポストモンゴル時代の北アジア研究について」
小松久男「近現代史研究の眺望と課題:イスラーム地域を中心に」
中見立夫「近現代モンゴル・チベット・中国東北研究の特質」

16:05~17:30 総合コメント 桃木至朗
16:50~17:30 討論 

2010年10月15日金曜日

僧侶と海商たちの東シナ海

榎本渉『選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』(講談社、2010年10月)

9世紀の遣唐使以後から、15世紀の遣明使までの
東シナ海における海域交流について、
僧侶と海商に焦点をあてて、その様態の変化を綴っている。

こんなにも色々な日本人僧がいたんだ、とびっくり。
詳細に紹介されている入宋僧の円爾と、
入元僧の龍山徳見については、この本ではじめて知った。

また、まず地道な個別実証の積み重ねの必要性を説く著者の姿勢に共感。

――――――――――――――――――――――――
追記:2010年10月17日22時25分

ゆえあって、杉山正明・北川誠一『世界の歴史9 大モンゴルの時代』(中央公論社、1997年8月)を読み直していたら、円爾弁円が2頁にわたって登場していた。はじめて知ったのではなく、単に覚えていなかっただけだったのか……。

2010年10月13日水曜日

日本仏教と高麗版大蔵経

特別陳列 「日本仏教と高麗版大蔵経-獅谷忍澂上人を中心として-」 日程: 2010年10月30日(土) ~11月6日(土) 10時~17時
場所:佛教大学宗教文化ミュージアム 第2研究成果展示室
入場料無料


シンポジウム 「日本仏教と高麗版大蔵経」
日時:2010年10月30日(土) 9時~17時
会場:宗教文化ミュージアム 宗教文化シアター
定員130名 事前申込不要・参加費無料

パネリスト
末木文美士・藤本幸夫・朴相国・永崎研宣・梶尾晋
馬場久幸・貝英幸・松永知海

2010年10月9日土曜日

2010年度東洋史研究会大会

2010年度東洋史研究会大会
日時:2010年11月3日(水・祝)9時~17時 
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)
大会参加費500円(資料・要旨代を含む)

発表題目
[午前の部]
中西竜也「スーフィズムとタオイズム―一九世紀中国西北部における対話―」
五味知子「「誣姦」の意味するもの―明末清初の判牘を中心に―」
丸橋充拓「唐開元軍事儀礼の源流」
原宗子「戦国秦漢期における樹木観の変遷」 

[午後の部]
上田裕之「洋銅から〔テン〕銅へ―清代辧銅制度の転換点をめぐって―」
近藤真美「『スブキーのファトワー集』に見るワクフ問題」
齋藤久美子「オスマン朝下アナトリア南東部におけるティマール制」
金文京「一七世紀後半日朝武器密貿易とその清朝への波及」
糟谷憲一「甲午改革期以後の朝鮮における権力構造について」
井上裕正「『海国図志』成立の背景」

2010年10月7日木曜日

戦国秦漢時代における王権と非農業民

柿沼陽平「戦国秦漢時代における王権と非農業民」(『史観』163、2010年9月)

戦国秦漢時代の非農業民に着目し、
なかでも「常人ならざる性質」を帯びた人々と王との類似性を確認した後、
「異界」である市場・山林叢沢や「異人」と王・皇帝との祭祀・財政を通じた
密接な関係性を明らかにし、戦国秦漢時代の王権の存立構造に迫っている。
貨幣史から、いよいよ皇帝権力へ。
紙幅の関係もあってか、ちょっと駆け足だった気もするけど、
次の展開が気になります。

第29回橿原考古学研究所公開講演会

第29回橿原考古学研究所公開講演会
日時:2010年11月3日(水・祝)
会場:奈良県橿原文化会館 大ホール
主 催:奈良県立橿原考古学研究所・(財)由良大和古代文化研究協会
入場先着 1280名(入場無料)

テーマ:『東アジアの王墓と桜井茶臼山古墳』
プログラム
10:10~11:10 豊岡卓之「桜井茶臼山古墳の調査成果と意義」
11:10~12:30 李恩碩「伽耶における三・四世紀の墳丘墓と王墓」
12:30~13:30 〈昼食休憩〉
13:30~13:50 平成22年度文化財保護功労者感謝状贈呈式 奈良県教育委員会
13:50~15:10 王巍 「曹操高陵の発見と中国の墳丘墓・王墓形成」
15:10~15:20 〈休  憩〉
15:20~16:40 フォーラム (コーディネーター:菅谷文則)

2010年10月4日月曜日

皇室の文庫

先日、三の丸尚蔵館で開催中の「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」に行ってきました。意外にも「書陵部の名品」がまとまった形で一般に展示されるのは初めてだそうです。

今回の特別展では、坂本龍馬直筆の「薩長同盟裏書」が
話題になっているらしいのですが、それ以外にも名品がずらり。
漢籍などは少ないですが、一級品が展示してあります。
たった一室なのだけど、龍馬効果のせいか、かなりの混雑と熱気。
いくつかのジャンルに分けて展示してあります。

まず最初は「古典と絵巻」。
トップバッターは、『日本書紀』の平安・鎌倉期の抄本。
そのうち巻2は北畠親房の伝授奥書がある南北朝期の抄本。
他には、『源氏物語』(三条西実隆等写・16世紀)、『古今和歌集』(寂恵写・1278年)、後深草院二条撰『とはすかたり』(江戸時代写・孤本)などなど。

お次は個人的にはメインの「古写経と漢籍」。
まずは、遣唐使船によって舶来された吉蔵撰『勝鬘寶屈』(684年写)。
続いて長屋王が発願して書写された『大般若波羅蜜多経』(712年写)。
そして、北宋版『御注孝経』(1023~1033年の間の刊行・孤本)。
狩谷棭齋が江戸の古書肆で入手したものらしい。
さらに金沢文庫本『群書治要』(鎌倉時代の抄本・1255年の奥書)。
ヲコト点(多分、清原家の訓点)もはっきり見えます。
この『群書治要』は、徳川家康の手をへて紅葉山文庫に入ったもの。

続いて「明治維新期の文書」が展示。
上に述べた「薩長同盟裏書」とか、「五箇条御誓文」(原本控)とか、
天皇の儀礼・行幸に関する公文書などが並んでます。

「貴族社会と日記」のコーナーには、
九条兼実の日記『玉葉』や、平信範の日記『平兵部記』などが、
「天皇と宸筆」のコーナーには、花園天皇の日記『花園院宸記』や『伏見天皇御集』、尾形光琳画「後水尾天皇御画像」などがあります。
『花園院宸記』は、花園上皇のえがいた行幸絵図を展示。描かれた牛や馬が味があっていい感じ。学問好きなのは知っていたけど、絵もうまかったとは少々驚きました。

他には仁徳天皇陵・百舌鳥陵墓参考地出土の
動物埴輪や家形埴輪なども置いてある。


さて、これまで長々と展示品を羅列してきましたが、
今回の展示品で最も興奮したのが、隅っこにある「修補の技」コーナー。
修補の説明のパネルがあり、その下に修補前と修補後の古文書が置いてある。

修補前の古文書(鎌倉後期らしい)をなんとなく見たら、
『説文』・『文心雕龍』・『漢書』・『拾遺記』という書名が!
どうやら、鎌倉期に作られた類書のようです。
『拾遺記』の内容を確認したら、『太平御覧』所引『拾遺記』と文章が一致しました。

まだ修補前なので、全体像はわかりませんが、
他にも漢籍を多数引用しているかもしれません。
さらには何か逸文があるかもしれません。
(もしかしたら、既に知られている類書なのかもしれませんが)
ぼろぼろの紙をめくってみたい、ガラス越しにそんな思いにかられてしまいました。


「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」は、
10月17日(日)まで三の丸尚蔵館で開催。
休館日:毎週月曜・金曜・10月12日(火)、開館時間:9時~16時15分
観覧料は無料です。