山崎覚士『中国五代国家論』(思文閣出版、2010年11月)
日本に殆ど存在しない五代十国時代の専門書。
第一部(天下のうち篇)と第二部(天下のそと篇)にわかれている。
目次は以下の通り。
序論「五代政治史研究の成果と課題」
第一部 天下のうち篇
第一章「五代の「中国」と平王」
第二章「五代「中国」の道制 ―後唐朝を中心に― 」
第三章「呉越国王と「真王」概念―五代天下の形成、其の一― 」
第四章「五代における「中国」と諸国の関係―五代天下の形成、其の二― 」
第二部 天下のそと篇
第五章「九世紀における東アジア海域と海商―徐公直と徐公祐―」
第六章「唐末杭州における都市勢力の形成と地域編成」
第七章「未完の海上国家―呉越国の試み―」
第八章「港湾都市、杭州―五代における都市、地域、海域―」
結論「五代天下のうちとそとの形成」
五代十国時代は、単なる分裂時代ではなく、
「五代天下秩序」ともいうべき世界秩序が形成されていたとする。
また、その秩序の形成要因として、
地域経済の発展と全国的商業流通の存在を指摘している。
呉越国に焦点をあてつつ、五代十国時代の天下観・世界秩序の問題に
迫っていて、大変参考になりました。
2010年12月30日木曜日
海を渡った騎馬文化
諫早直人『海を渡った騎馬文化―馬具からみた古代東北アジア―』(風響社、2010年11月)
風響社のブックレット《アジアを学ぼう》の⑰。
朝鮮半島・日本列島における馬・騎馬文化の受容について考察。
日本だけでなく、韓国の「騎馬民族説」にも言及した後、
慕容鮮卑・朝鮮三国・加耶・倭の馬具を比較して、
「騎馬民族説」の問題点を指摘し、
「新しい騎馬文化伝播モデル」を提示している。
慕容鮮卑の装飾騎馬文化が、なぜ東北アジア各地に
広まったのかについても言及し、東晋とは異なる独自の世界秩序を
可視的に表現しようとしたのではないかとする。
日本だけでなく、朝鮮半島・慕容鮮卑(特に前燕)にも
視野が及んでいて刺激的。
韓国にも「騎馬民族説」があるとは知らなかった。
しかも有力な仮説の一つになっているとは。
風響社のブックレット《アジアを学ぼう》の⑰。
朝鮮半島・日本列島における馬・騎馬文化の受容について考察。
日本だけでなく、韓国の「騎馬民族説」にも言及した後、
慕容鮮卑・朝鮮三国・加耶・倭の馬具を比較して、
「騎馬民族説」の問題点を指摘し、
「新しい騎馬文化伝播モデル」を提示している。
慕容鮮卑の装飾騎馬文化が、なぜ東北アジア各地に
広まったのかについても言及し、東晋とは異なる独自の世界秩序を
可視的に表現しようとしたのではないかとする。
日本だけでなく、朝鮮半島・慕容鮮卑(特に前燕)にも
視野が及んでいて刺激的。
韓国にも「騎馬民族説」があるとは知らなかった。
しかも有力な仮説の一つになっているとは。
2010年12月27日月曜日
平成22年度國學院大學文化講演会
平成22年度國學院大學文化講演会
「円仁石刻と古代の日中文化交流―法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と史実―」
日時:2011年1月23日(日)9:30~
場所:渋谷キャンパス 120周年記念2号館1階2104教室
*参加多数の場合は、2号館1階2101教室で同時中継。
資料代:500円
講演・報告
10:10~11:10 斉藤圓眞「日中文化交流史上の円仁と天台」
11:10~12:00 酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
13:00~13:50 田凱「法王寺舎利塔地下宮殿の発掘調査」
13:50~14:40 呂宏軍「嵩山の寺院・石刻と交通」
14:50~15:10 氣賀澤保規「隋唐の仏教と石刻」
15:10~15:30 肥田路美「舎利信仰と舎利塔・荘厳具」
15:40~16:00 石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
16:00~16:20 佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
16:40~18:30 討論
国学院大学エクステンション事業課に要申込。
申込締切:2011年1月13日(木)必着
「円仁石刻と古代の日中文化交流―法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と史実―」
日時:2011年1月23日(日)9:30~
場所:渋谷キャンパス 120周年記念2号館1階2104教室
*参加多数の場合は、2号館1階2101教室で同時中継。
資料代:500円
講演・報告
10:10~11:10 斉藤圓眞「日中文化交流史上の円仁と天台」
11:10~12:00 酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
13:00~13:50 田凱「法王寺舎利塔地下宮殿の発掘調査」
13:50~14:40 呂宏軍「嵩山の寺院・石刻と交通」
14:50~15:10 氣賀澤保規「隋唐の仏教と石刻」
15:10~15:30 肥田路美「舎利信仰と舎利塔・荘厳具」
15:40~16:00 石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
16:00~16:20 佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
16:40~18:30 討論
国学院大学エクステンション事業課に要申込。
申込締切:2011年1月13日(木)必着
2010年12月25日土曜日
契丹(遼)後期政権下の学僧と仏教
藤原崇人「契丹(遼)後期政権下の学僧と仏教―鮮演の事例を通して―」(『史林』93-6、2010年11月)
契丹(遼)の道宗期に活躍した僧侶の鮮演の事績について、
1986年に発見された「鮮演墓碑」を中心に考察。
契丹後期の学僧と遼皇帝・支配層との関係や、契丹と高麗間における仏教典籍(鮮演の著作)の流通形態の多様性について明らかにしている。
契丹(遼)の道宗期に活躍した僧侶の鮮演の事績について、
1986年に発見された「鮮演墓碑」を中心に考察。
契丹後期の学僧と遼皇帝・支配層との関係や、契丹と高麗間における仏教典籍(鮮演の著作)の流通形態の多様性について明らかにしている。
2010年12月21日火曜日
立教大学日本学研究所第41回研究会
立教大学日本学研究所第41回研究会
日時:2011年1月21日(金)17:00~
場所:立教大学池袋キャンパス7号館7202教室
報告
高陽「東アジアの須弥山図~敦煌本とハーバード本を中心に」
李銘敬「遼の非濁をめぐる」
日時:2011年1月21日(金)17:00~
場所:立教大学池袋キャンパス7号館7202教室
報告
高陽「東アジアの須弥山図~敦煌本とハーバード本を中心に」
李銘敬「遼の非濁をめぐる」
2010年12月19日日曜日
2010年12月18日土曜日
華竜の宮
上田早夕里『華竜の宮』(早川書房、2010年10月)
ハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊。このブログでは、これまで小説の類は紹介してこなかったので、書くか迷ったのですが、他に媒体もないので書いてみます。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。
先日見に行ったトランスフォーメーション展の影響で、なんだか無性にSF小説が読みたくなってしまい、いくつか立ち読みした中で、おもしろそうだと思って購入。
海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀が舞台。未曾有の混乱を乗り越えるため、積極的に生命操作技術を活用し、人体に応用していった結果、海に適応した海上民が誕生。陸上民と海上民の確執、各国家連合の思惑、そして再び大変動の兆しが……。
まさしく、「変身―変容」の世界。久しぶりにSF小説を読んだけど、引き込まれて、586頁を一気に読んでしまった。
で、今回の小説の舞台はアジア海域。日本政府の末端外交官が主人公なのだけど、中国系の人々も多数登場する。こちらもなかなか魅力的。ただ、SF小説の中の中国系政府は、たいてい非人道的に描かれているが、『華竜の宮』でもひどいことばかりやっている。プロローグで描かれる混乱期には、殺到した避難民を殺戮する人工知性体(殺戮知性体)を世界で初めて発明している。なんだかコードウェイナー・スミスのマンショニャッガー(=人間狩猟機)みたいな設定(なお、1950年代に書かれたためか、こちらはドイツ人が発明)。本編でも、中国が中心となっている〈汎アジア連合〉は、海上民の虐殺に乗り出している。
ここがどうも気にかかる。
SF小説は、未来を扱うことが多いのだけど、当然のことながら、小説が書かれた時期の国家イメージが反映されてしまう。多分、昔は中国が出てくることすらあまりなかったのではなかろうか。その昔、ドイツやソ連が荷っていた(であろう)SF小説中の役割を、今は中国が荷っているのかもしれない。欧米や日本で傾向が違うかもしれないし、そんなにSF小説読んでないから、実際のとこはわかりませんが。調べてみたら面白いかも。
ちなみに、日本政府は相変わらず、官僚主義な上に、汎アジア連合ではなく、欧米・太平洋連合の〈ネジェス〉に加入している。まぁ、これは現在の状況そのままですね。
ハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊。このブログでは、これまで小説の類は紹介してこなかったので、書くか迷ったのですが、他に媒体もないので書いてみます。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。
先日見に行ったトランスフォーメーション展の影響で、なんだか無性にSF小説が読みたくなってしまい、いくつか立ち読みした中で、おもしろそうだと思って購入。
海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀が舞台。未曾有の混乱を乗り越えるため、積極的に生命操作技術を活用し、人体に応用していった結果、海に適応した海上民が誕生。陸上民と海上民の確執、各国家連合の思惑、そして再び大変動の兆しが……。
まさしく、「変身―変容」の世界。久しぶりにSF小説を読んだけど、引き込まれて、586頁を一気に読んでしまった。
で、今回の小説の舞台はアジア海域。日本政府の末端外交官が主人公なのだけど、中国系の人々も多数登場する。こちらもなかなか魅力的。ただ、SF小説の中の中国系政府は、たいてい非人道的に描かれているが、『華竜の宮』でもひどいことばかりやっている。プロローグで描かれる混乱期には、殺到した避難民を殺戮する人工知性体(殺戮知性体)を世界で初めて発明している。なんだかコードウェイナー・スミスのマンショニャッガー(=人間狩猟機)みたいな設定(なお、1950年代に書かれたためか、こちらはドイツ人が発明)。本編でも、中国が中心となっている〈汎アジア連合〉は、海上民の虐殺に乗り出している。
ここがどうも気にかかる。
SF小説は、未来を扱うことが多いのだけど、当然のことながら、小説が書かれた時期の国家イメージが反映されてしまう。多分、昔は中国が出てくることすらあまりなかったのではなかろうか。その昔、ドイツやソ連が荷っていた(であろう)SF小説中の役割を、今は中国が荷っているのかもしれない。欧米や日本で傾向が違うかもしれないし、そんなにSF小説読んでないから、実際のとこはわかりませんが。調べてみたら面白いかも。
ちなみに、日本政府は相変わらず、官僚主義な上に、汎アジア連合ではなく、欧米・太平洋連合の〈ネジェス〉に加入している。まぁ、これは現在の状況そのままですね。
2010年12月16日木曜日
オランダのアート&デザイン 新・言語
東京都現代美術館で開催中のトランスフォーメーション展のついでに見た
「オランダのアート&デザイン 新・言語」展。
全然期待してなかったのですが、なかなかよかったです。
「人とモノとの関係、そして人と人とのコミュニケーションを問いかける」
オランダのアーティスト/デザイナー4名を紹介する展覧会。
地下一階のみの展示で、ずいぶんこじんまりしている。
インパクトあったのが、マーティン・バースの家具。
作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
生まれたての小鹿、または、よぼよぼの宇宙生物みたいな机。
作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
表面がゆがみまくっている衣装棚。
作家:マーティンバース CC/BY-NC-ND
一分ごとに人が分針を消したり書いたりする時計。
正直、使い勝手はあんまりよくなさそうだけど、
なんだか楽しくなってくるデザイン。
続くマルタイン・エングルブレクトの作品(5点のインスタレーション)は、
人とのコミュニケーションをテーマにしたもの。
迷惑な電話セールスをけむにまく「迷惑電話撃退マニュアル」や、
隣人とのコミュニケーションを円滑(?)にすすめるための
グッズを販売する「ご近所ショップ」などなど、
ちょっとしたブラックユーモアが効いていて、かなり面白い。
トランスフォーメーション展とは一転して、
シンプルであっさり見ることができ、
ユーモアあふれる作品ばかりで純粋に楽しい。
ただ、ネックはお値段……。
こちらの展覧会だけだと、一般1100円・学生850円。
トランスフォーメーション展があれだけたくさん展示していて、
一般1300円・学生1000円となると、ちょっと割高な気がしないでもないです。
セット券(一般1800円・学生1400円)で入ったほうがいいかもしれません。
会期:2010年10月29日~2011年1月30日
休館日:月曜日、12月29日~1月1日、1月11日
開館時間:10時~18時
「オランダのアート&デザイン 新・言語」展。
全然期待してなかったのですが、なかなかよかったです。

オランダのアーティスト/デザイナー4名を紹介する展覧会。
地下一階のみの展示で、ずいぶんこじんまりしている。
インパクトあったのが、マーティン・バースの家具。

生まれたての小鹿、または、よぼよぼの宇宙生物みたいな机。

表面がゆがみまくっている衣装棚。

一分ごとに人が分針を消したり書いたりする時計。
正直、使い勝手はあんまりよくなさそうだけど、
なんだか楽しくなってくるデザイン。
続くマルタイン・エングルブレクトの作品(5点のインスタレーション)は、
人とのコミュニケーションをテーマにしたもの。
迷惑な電話セールスをけむにまく「迷惑電話撃退マニュアル」や、
隣人とのコミュニケーションを円滑(?)にすすめるための
グッズを販売する「ご近所ショップ」などなど、
ちょっとしたブラックユーモアが効いていて、かなり面白い。
トランスフォーメーション展とは一転して、
シンプルであっさり見ることができ、
ユーモアあふれる作品ばかりで純粋に楽しい。
ただ、ネックはお値段……。
こちらの展覧会だけだと、一般1100円・学生850円。
トランスフォーメーション展があれだけたくさん展示していて、
一般1300円・学生1000円となると、ちょっと割高な気がしないでもないです。
セット券(一般1800円・学生1400円)で入ったほうがいいかもしれません。
会期:2010年10月29日~2011年1月30日
休館日:月曜日、12月29日~1月1日、1月11日
開館時間:10時~18時
2010年12月15日水曜日
ヒトの進化七〇〇万年史
河合信和『ヒトの進化七〇〇万年史』(ちくま新書、2010年12月)
古人類学に関する著書が多数ある科学ジャーナリストによる
最新の人類学概説書。デニーソヴァ人の発見や、
ネアンデルタール人と現生人類の交雑の可能性など、
今年、報告された最新情報を取り込んでいて、ざっと人類史をみるのに便利。
なお、北京原人・ジャワ原人(両方とも学名はホモ・エレクトス)は、
「人類進化学的観点からは傍系にすぎない」として、殆ど触れられていない。
古人類学に関する著書が多数ある科学ジャーナリストによる
最新の人類学概説書。デニーソヴァ人の発見や、
ネアンデルタール人と現生人類の交雑の可能性など、
今年、報告された最新情報を取り込んでいて、ざっと人類史をみるのに便利。
なお、北京原人・ジャワ原人(両方とも学名はホモ・エレクトス)は、
「人類進化学的観点からは傍系にすぎない」として、殆ど触れられていない。
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