2011年12月14日水曜日

あがり

約1年ぶりにSF小説を紹介します。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。

松崎有理『あがり』(東京創元社、2011年9月)

創元日本SF叢書01。第一回創元SF短編賞受賞作品。でも、手に取った理由は、受賞作だからではなく、「大学の研究室は、今日もSFの舞台に。」という帯を見たから。仙台とおぼしき北の街の総合大学が舞台。理系研究室の日常とちょっとしたSFが面白い。石黒達昌をソフトにした感じ。

なかでも「三年以内に一本も論文を書かない研究者は即、退職せよ」という「研究活動推進振興法第二条」、通称「出すか出されるか法」が制定されているという設定が秀逸。論文執筆の苦悩がより深刻なものとなっていて、物語が生まれてくる。

ぜひ、同じ世界観の小説を書き続けてほしい。作者が理系であることから、生命科学研究所・数学科・理学部などが主な舞台となっているけど、今後は文系バージョンも読んでみたい。