2010年10月31日日曜日

第108回史学会大会

第108回史学会大会
日程:11月6日(土)・7日(日)
場所:東京大学法文1号館・2号館

11月6日(土)13:00~ 法文2号館1番大教室
公開シンポジウム「越境する歴史学と歴史認識」
桜井万里子「グローバル化時代の歴史認識―古代ギリシア人の自己認識という視座から考える」
古畑徹「渤海国をめぐる日中韓の歴史認識」
野村眞理「二つの顔を持つ国―第二次世界大戦後オーストリアの歴史認識問題」
永島広紀「日本の朝鮮統治と「整理/保存」される古蹟・旧慣・史料」
コメント:村井章介・吉澤誠一郎・加藤陽子
討論

11月7日(日) *日本史部会は中国史関係を中心に列挙
日本史部会<第1会場>  法文2号館1番大教室
[古代]9:30~12:00
須原祥二「中臣鎌足のつくった「令」について」
河野保博「日唐厩牧令の比較からみる日本古代交通体系の特質」
志村佳名子「日本古代の朝参制度と上日の意義」
[中世]13:00~17:00
オラー・チャバ「遣明使節の貿易活動と中国の牙行・商人――「信票」の導入とその背景をめぐって」
屋良健一郎「琉球王国辞令書の様式変化に関する考察」

日本史部会<第2会場>  法文2号館2番大教室
[近世]10:00~12:00
鴨頭俊宏「漂着異国人の移送情報をとおして見る寛政年間の幕藩体制―中国人太平洋岸漂着と朝鮮人日本海沿岸漂着の対比から」

東洋史部会 法文1号館113番教室 9:30~17:00
曺貞恩「中国医療伝道協会と清末社会―福建の医療宣教師ホイットニーの事例から」
宮古文尋「翁同龢の免職帰郷と戊戌政変―変法運動と外国人の処遇問題」
佐野実「明治日本における外国公債引受・発行の過程について―郵伝部公債と横浜正金銀行」
上出徳太郎「清末、省制時期の新疆における伊犂将軍」
橘誠「ボグド・ハーン政権におけるチンギス・ハーンの表象―八白宮のフレー移転計画をめぐって」
 昼休み 12:00~13:00
麻田雅文「中東鉄道の敷設決定過程再考―ロシアはなぜ「満洲」に鉄道を敷いたのか」
守田まどか「16世紀イスタンブルにおける街区とイマームへの寄進―『ワクフ調査台帳』の分析を中心に」
会田大輔「令狐徳棻等撰『周書』の北周像の形成―隋唐初の諸史史料との比較を通じて」
福永善隆「内朝の形成―宮中諸官の変遷を中心として」
藤野月子「和蕃公主の降嫁における儀礼について」
林美希「唐代前期における北衙禁軍の展開と宮廷政変」
鄭東俊「古代東アジアにおける律令の伝播と変容についての試論―高句麗・百済律令における所謂「泰始律令継受説」をめぐって」
辻大和「17世紀初頭朝鮮の対外貿易と明朝の干渉」

2010年10月24日日曜日

三国志研究第五号

『三国志研究』第五号(三国志学会、2010年9月)

目次は以下の通り。
【講演】
川合康三「身を焼く曹植」
【論考】
並木淳哉「蜀漢政権における権力構造の再検討」
髙橋康浩「韋昭「博奕論」と儒教的理念」
島田悠「孫呉滅亡後の三呉―西晋の三呉支配―」
上原究一「「漢兒」なる張飛―金末の張飛人気と「燕人」の来源―」
竹内真彦「青龍刀と赤兎馬―関羽像の「完成」過程―」
中川諭「黄正甫刊『三国志伝』三考」
後藤裕也「余象斗本『三国志演義』評語小考」
田村彩子「川劇三国戯「上方谷」をめぐって」
藤巻尚子「『太平記鈔』における三国志の受容―『太平記賢愚鈔』との比較を始点として―」
清岡美津夫「現代日本における三国要素の変容と浸透―アクセス集計を事例に―」
【文献目録】
朝山明彦「関帝信仰研究文献目録【和文編】」
【資料整理】
後藤裕也「余象斗本『三国志演義』評語翻刻」
【翻訳】
増田真意子「周澤雄著「文和乱武」―詐欺師的策謀家から有徳の大臣へ―」
【雑纂】
前川貫治「三国志迷いの旅(四)―安徽・江蘇の旅―」

歴史・文学・版本学・演劇・日本における三国志受容など、
様々なジャンルの論考があって、読み応えがある。
号を重ねるごとに、徐々に歴史分野の論考の割合が減っている気もするけど、
それはそれで、まぁ、いいのかもしれない。
(四号は東方学会の原稿が掲載されているので、歴史分野が多く見えるが、
論考だけを見ると、意外に歴史分野の割合は低い)

若干、気になったこととして、
資料整理の翻刻は、後藤論文の直後につけたほうが、効果的だったように思える。
あと、翻訳については、書誌情報・作者などに関する解題がついておらず、
掲載意義がよくわからなかった。

個人的には、清岡論文のサイトのアクセス集計から見る
現代日本の三国志受容の様相が興味深かった。
ゲームやアニメなどの三国志的要素を持った作品の流行・受容が、
三国志などの根源に関心を向ける動きにつながる様子は、
アクセス集計を見る限り確認できない、という結論は重要な指摘なようにも思える。
多分、実際にはゲームやアニメから、三国志そのものに興味を持つ人も出てくるだろうし、もともと興味ある人がゲームやアニメにも関心を持つこともあるだろうから、
一概にいえないだろうけど、必ずしもゲーム・アニメなどの流行が、
三国志人気につながるわけではない、というのは間違いないだろう。

三国志ですら、そうなのだから、
ましてやゲームもアニメもな~んにもない他の時代では……。

収録 アジア学の系譜

先日、古本屋にて、
『アジア』11-7(アジア評論社、1976年9月)を購入。
恥ずかしながら、初めて知った雑誌だったのだけど、
「収録/アジア学の系譜」と題して、
19人の「アジア学」の研究者のインタビューを掲載しており、
200円と格安だったこともあって買ってみた。

目次は次の通り。
岩村忍「「アジアの見方」を考える」
藤枝晃「「文字の文化史」に至るまで」
山本達郎「東南アジア史研究の諸問題」
貝塚茂樹「人間学としての中国研究」
前嶋信次「イスラム世界への視座」
竹内好「アジアへの関わりのエトス」
西田龍雄「言語学者がみたアジア」
今西錦司「生物の世界の精神」
日比野丈夫「中国史学としての華僑研究」
江上波夫「騎馬民族説の歴史観」
中村元「東洋人の思惟方法を考える」
市村真一「地域研究方法論の模索」
中尾佐助「アジアの自然環境と文化複合」
梅棹忠夫「「文明の生態史観」の背景」
川喜田二郎「村落調査方法論」
衛藤瀋吉「アジア現代史への開眼」
旗田巍「朝鮮史学を貫いたもの」
中根千枝「社会構造論的アジア観」
東畑精一「アジアの中の日本」
〈聞き手〉矢野暢

『アジア』で1974年から2年間にわたって連載された
「アジア学の系譜」をまとめたものらしい。そうそうたる面々。
インタビュアーの質問に権威臭(しかも若干誘導的)が感じられるが、
生い立ちや学問へのきっかけや形成過程を語っていて、なかなか面白い。

あちこちに、新日本製鉄・三井物産・サッポロビール・キリンビール・
日本鋼管・丸紅・三菱重工業・日本コロムビアなどの大企業が
広告を出しているのが、時代を感じる。

2010年10月21日木曜日

新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清

沖本克己編集委員・菅野博史編集協力『新アジア仏教史08 中国Ⅲ 宋元明清 中国文化としての仏教』(佼成出版社、2010年9月)


アジア仏教史の新シリーズ。中国編第三弾(第一弾はまだ出てません)。
目次は以下の通り。
第一章「宋代の思想と文化」土田健次郎
第二章「元・明の仏教」野口善敬
第三章「仏教民間信仰の諸相」陳継東
第四章「日中交流史」西尾賢隆
第五章「仏教美術」肥田路美
第六章「中国仏教の現在」陳継東

本巻は宋以降の中国仏教をメインに扱っているが、
それだけではなく、日中交流史(唐後半~明)や仏教美術(魏晋~隋唐)、
宋代の道学と仏教の関係なども概説している。

正直、宋代以降の仏教については、全くと言っていいほど知識がない。
第二章はその点で参考になった。ただ、元イメージが古いのがちょっと残念。
第六章「中国仏教の現在」では、清末の仏教から、
民国期の仏教復興運動、文革期の弾圧を経て
現在に至る状況が紹介されていて興味深い。

2010年10月18日月曜日

平成22年九州史学会大会

平成22年九州史学会大会
日時:2010年12月11日・12日
場所:九州大学
参加費1500円

12月11日(土)13:30~ 九州大学法文系講義棟101
シンポジウム「蔵書目録―知の表象の世界」
岩崎義則「平戸藩主松浦静山の書物収集と情報交流―楽歳堂文庫蔵書目録の検討―」
大渕貴之「目録を読む難しさ―唐初の類書観を中心として―」
岡崎敦「西欧中世の書物と蔵書目録―方法論と諸成果―」
伊藤隆郎「アラビア語の蔵書目録と書籍目録―史料と研究の可能性―」

12月12日(日) 東洋史部会 九州大学法文系講義棟204 9時~
シンポジウム「モンゴル帝国の中国支配とその社会―石刻史料による成果と課題―」
森田憲司「中国近世石刻研究の課題 ―その材料と方法をめぐっての回顧― 」
井黒忍「水利碑から見た分地支配と社会―山西ジョチ家投下領の事例をもとに― 」
松田孝一「「答里真官人(ダーリタイ・オッチギン)位」の寧海州分地について」
村岡倫「石刻資料から見た探馬赤軍の歴史」

研究発表  
井上雄介「前漢武帝の封禅について」
塩田孝浩「前漢における刑罰について ―死刑の問題を中心として―」
植松慎悟「光武帝期の官制改革とその影響」
稲住哲朗「盧思道と隋 ―北斉系士人の正統観―」
堀地明「刑科題本と乾隆10年山西大同府天鎮県閙賑案」
和田英穂「台湾人の戦後処理 ―『戦犯』と『漢奸』を中心に―」
崔淑芬「中国における「SOS子ども村」の一考察―新疆ウイグル自治区「SOS子ども村」の事例から― 」
小林聡「五胡・北朝期における北族的服制の展開―河西・朝陽・大同の出土文物を主たる題材として―」

12月12日(日) 朝鮮学部会 法文系講義棟202 10時~
濱田耕策「劉仁願紀功碑の復元と碑の史料価値」
井上直樹「6世紀末・7世紀の東アジア情勢と高句麗の対倭外交」
赤羽目匡由「唐代越喜靺鞨の住地とその移動について」
安田純也「高麗時代の蔵経道場について」
川西裕也「朝鮮時代における差定文書の淵源と機能」
森平雅彦「朝鮮後期の漢江水運とその技術―「生態環境の朝鮮史」のための予備的考察―」
白井順「前間恭作の晩年―三木栄・岩井大慧・小倉進平との交流について―」
申英根「地域活性化政策による伝統祭の変容と地域社会のコンフリクト―韓国江原道の「江陵端午祭」を事例として―」

2010年10月17日日曜日

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム

内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム
「内陸アジア史研究の課題と展望」
日時:2010年11月13日(土)13:00~17:30
会場:早稲田大学小野記念講堂

基調講演 13:10~14:30
森安孝夫「モンゴル時代までの東部内陸アジア史:実証研究から世界史教育の現場へ」
堀川徹「モンゴル時代以降の西部内陸アジア史:実証研究の深化と展開の可能性」

パネル報告 14:45~16:00
林俊雄「考古学研究の20年:中央アジア・シベリア・モンゴル」
稲葉穣「モンゴル征服以前の西トルキスタン:テュルク・イラン・アラブのフロンティア」
森川哲雄「ポストモンゴル時代の北アジア研究について」
小松久男「近現代史研究の眺望と課題:イスラーム地域を中心に」
中見立夫「近現代モンゴル・チベット・中国東北研究の特質」

16:05~17:30 総合コメント 桃木至朗
16:50~17:30 討論 

2010年10月15日金曜日

僧侶と海商たちの東シナ海

榎本渉『選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』(講談社、2010年10月)

9世紀の遣唐使以後から、15世紀の遣明使までの
東シナ海における海域交流について、
僧侶と海商に焦点をあてて、その様態の変化を綴っている。

こんなにも色々な日本人僧がいたんだ、とびっくり。
詳細に紹介されている入宋僧の円爾と、
入元僧の龍山徳見については、この本ではじめて知った。

また、まず地道な個別実証の積み重ねの必要性を説く著者の姿勢に共感。

――――――――――――――――――――――――
追記:2010年10月17日22時25分

ゆえあって、杉山正明・北川誠一『世界の歴史9 大モンゴルの時代』(中央公論社、1997年8月)を読み直していたら、円爾弁円が2頁にわたって登場していた。はじめて知ったのではなく、単に覚えていなかっただけだったのか……。

2010年10月13日水曜日

日本仏教と高麗版大蔵経

特別陳列 「日本仏教と高麗版大蔵経-獅谷忍澂上人を中心として-」 日程: 2010年10月30日(土) ~11月6日(土) 10時~17時
場所:佛教大学宗教文化ミュージアム 第2研究成果展示室
入場料無料


シンポジウム 「日本仏教と高麗版大蔵経」
日時:2010年10月30日(土) 9時~17時
会場:宗教文化ミュージアム 宗教文化シアター
定員130名 事前申込不要・参加費無料

パネリスト
末木文美士・藤本幸夫・朴相国・永崎研宣・梶尾晋
馬場久幸・貝英幸・松永知海

2010年10月9日土曜日

2010年度東洋史研究会大会

2010年度東洋史研究会大会
日時:2010年11月3日(水・祝)9時~17時 
会場:京都大学文学部新館第三講義室(二階)
大会参加費500円(資料・要旨代を含む)

発表題目
[午前の部]
中西竜也「スーフィズムとタオイズム―一九世紀中国西北部における対話―」
五味知子「「誣姦」の意味するもの―明末清初の判牘を中心に―」
丸橋充拓「唐開元軍事儀礼の源流」
原宗子「戦国秦漢期における樹木観の変遷」 

[午後の部]
上田裕之「洋銅から〔テン〕銅へ―清代辧銅制度の転換点をめぐって―」
近藤真美「『スブキーのファトワー集』に見るワクフ問題」
齋藤久美子「オスマン朝下アナトリア南東部におけるティマール制」
金文京「一七世紀後半日朝武器密貿易とその清朝への波及」
糟谷憲一「甲午改革期以後の朝鮮における権力構造について」
井上裕正「『海国図志』成立の背景」

2010年10月7日木曜日

戦国秦漢時代における王権と非農業民

柿沼陽平「戦国秦漢時代における王権と非農業民」(『史観』163、2010年9月)

戦国秦漢時代の非農業民に着目し、
なかでも「常人ならざる性質」を帯びた人々と王との類似性を確認した後、
「異界」である市場・山林叢沢や「異人」と王・皇帝との祭祀・財政を通じた
密接な関係性を明らかにし、戦国秦漢時代の王権の存立構造に迫っている。
貨幣史から、いよいよ皇帝権力へ。
紙幅の関係もあってか、ちょっと駆け足だった気もするけど、
次の展開が気になります。

第29回橿原考古学研究所公開講演会

第29回橿原考古学研究所公開講演会
日時:2010年11月3日(水・祝)
会場:奈良県橿原文化会館 大ホール
主 催:奈良県立橿原考古学研究所・(財)由良大和古代文化研究協会
入場先着 1280名(入場無料)

テーマ:『東アジアの王墓と桜井茶臼山古墳』
プログラム
10:10~11:10 豊岡卓之「桜井茶臼山古墳の調査成果と意義」
11:10~12:30 李恩碩「伽耶における三・四世紀の墳丘墓と王墓」
12:30~13:30 〈昼食休憩〉
13:30~13:50 平成22年度文化財保護功労者感謝状贈呈式 奈良県教育委員会
13:50~15:10 王巍 「曹操高陵の発見と中国の墳丘墓・王墓形成」
15:10~15:20 〈休  憩〉
15:20~16:40 フォーラム (コーディネーター:菅谷文則)

2010年10月4日月曜日

皇室の文庫

先日、三の丸尚蔵館で開催中の「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」に行ってきました。意外にも「書陵部の名品」がまとまった形で一般に展示されるのは初めてだそうです。

今回の特別展では、坂本龍馬直筆の「薩長同盟裏書」が
話題になっているらしいのですが、それ以外にも名品がずらり。
漢籍などは少ないですが、一級品が展示してあります。
たった一室なのだけど、龍馬効果のせいか、かなりの混雑と熱気。
いくつかのジャンルに分けて展示してあります。

まず最初は「古典と絵巻」。
トップバッターは、『日本書紀』の平安・鎌倉期の抄本。
そのうち巻2は北畠親房の伝授奥書がある南北朝期の抄本。
他には、『源氏物語』(三条西実隆等写・16世紀)、『古今和歌集』(寂恵写・1278年)、後深草院二条撰『とはすかたり』(江戸時代写・孤本)などなど。

お次は個人的にはメインの「古写経と漢籍」。
まずは、遣唐使船によって舶来された吉蔵撰『勝鬘寶屈』(684年写)。
続いて長屋王が発願して書写された『大般若波羅蜜多経』(712年写)。
そして、北宋版『御注孝経』(1023~1033年の間の刊行・孤本)。
狩谷棭齋が江戸の古書肆で入手したものらしい。
さらに金沢文庫本『群書治要』(鎌倉時代の抄本・1255年の奥書)。
ヲコト点(多分、清原家の訓点)もはっきり見えます。
この『群書治要』は、徳川家康の手をへて紅葉山文庫に入ったもの。

続いて「明治維新期の文書」が展示。
上に述べた「薩長同盟裏書」とか、「五箇条御誓文」(原本控)とか、
天皇の儀礼・行幸に関する公文書などが並んでます。

「貴族社会と日記」のコーナーには、
九条兼実の日記『玉葉』や、平信範の日記『平兵部記』などが、
「天皇と宸筆」のコーナーには、花園天皇の日記『花園院宸記』や『伏見天皇御集』、尾形光琳画「後水尾天皇御画像」などがあります。
『花園院宸記』は、花園上皇のえがいた行幸絵図を展示。描かれた牛や馬が味があっていい感じ。学問好きなのは知っていたけど、絵もうまかったとは少々驚きました。

他には仁徳天皇陵・百舌鳥陵墓参考地出土の
動物埴輪や家形埴輪なども置いてある。


さて、これまで長々と展示品を羅列してきましたが、
今回の展示品で最も興奮したのが、隅っこにある「修補の技」コーナー。
修補の説明のパネルがあり、その下に修補前と修補後の古文書が置いてある。

修補前の古文書(鎌倉後期らしい)をなんとなく見たら、
『説文』・『文心雕龍』・『漢書』・『拾遺記』という書名が!
どうやら、鎌倉期に作られた類書のようです。
『拾遺記』の内容を確認したら、『太平御覧』所引『拾遺記』と文章が一致しました。

まだ修補前なので、全体像はわかりませんが、
他にも漢籍を多数引用しているかもしれません。
さらには何か逸文があるかもしれません。
(もしかしたら、既に知られている類書なのかもしれませんが)
ぼろぼろの紙をめくってみたい、ガラス越しにそんな思いにかられてしまいました。


「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」は、
10月17日(日)まで三の丸尚蔵館で開催。
休館日:毎週月曜・金曜・10月12日(火)、開館時間:9時~16時15分
観覧料は無料です。

2010年10月3日日曜日

第103回訓点語学会研究発表会

第103回 訓点語学会研究発表会
日時:2010年10月17日(日)
場所:東京大学山上会館

報告 午前11時~
ジスク マシュー「古代日本語の書記表現における漢字の意味的影響―「のす」と「載」の関係を中心に―」
ゼイ 真慧「漢字とその訓読みとの対応関係についての一考察―「常用漢字表」所載漢字と平安時代の漢字との比較から―」

午後1時半~
平井吾門「倭訓栞の成立過程について ―語釈の発展を中心に―」
藤本灯「三巻本『色葉字類抄』に収録された人名について―「名字部」を中心に―」
千葉軒士「キリシタン・ローマ字文献の撥音表記について」
松尾譲兒「『今昔物語集』と訓読資料」
柳原恵津子「『後二条師通記』における使用語彙の一側面―各年毎の新出語彙という観点から―」

屠本『十六国春秋』考

梶山智史「屠本『十六国春秋』考―明代における五胡十六国史研究の一斑―」(『史学雑誌』119-7、2010年7月)

清代以降、偽書扱いされてきた[明]屠喬孫本『十六国春秋』の成立過程を解明。
清版では削除されている序文を確認するため、
中国・日本に所蔵されている明版『十六国春秋』の調査を行った結果、
序文の収録状況に違いがあることを発見。
その序文の内容から、『十六国春秋』に関わる学術ネットワークの存在を指摘。
また、屠喬孫らが、崔鴻撰『十六国春秋』が散逸していたことを認識しており、
「当時存在した十六国史に関するあらゆる史料を駆使して、『十六国春秋』の
原貌を復元」することを意図していたとする。
さらに、編纂者以外の序文に、屠喬孫らが崔鴻撰『十六国春秋』を発見・補訂した、
と勘違いしているものが複数あることを指摘し、
編纂者の序文が脱落していった結果、清代に偽書説が流布したとする。

版本調査・目録学・地方志を駆使した論文で、とても刺激的。
明代の出版史・学術史については、文学・思想を中心に研究が進められているが、
史書に着目した研究は、まだまだ未開拓といっていいはず。
また、十六国時代をめぐる学術史ということでも興味深い。

2010年10月2日土曜日

漢字・七つの物語

松岡榮志『漢字・七つの物語―中国の文字改革一〇〇年―』(三省堂、2010年9月)

民国期から現在までの漢字改革運動(漢字廃止論・簡体字化)の流れを詳細に解説。第六章「漢字とコンピュータ」では、漢字のコード化について紹介。

簡体字化したことの一般的な意義はさておき、
学術論文や校注などでは、なるべく繁体字(旧字)を使ってほしいなぁ、
と思います。せめて、論文中の引用史料は繁体字にしてもらえないだろうか……。
まぁ、僕自身、引用史料には「原文になるべく近い繁体字を用いる」という
あいまいなルールでやっているので、人のこと言えませんが。

でも、簡体字しか使っちゃいけないとなると、
例えば、乾隆帝の避諱のため「暦」を「歴」に改めた、
という文章の意味が通じなくなってしまうんですよね(簡体字だと両方「历」)。
やっぱり、これはちょっとまずいような気がします。

日本の新字体・旧字体問題も含めて、
なかなか解答の見えない問題です。

第61回日本道教学会大会

第61回日本道教学会大会
日時:2010年11月13日(土)
会場:関西大学千里山キャンパス第一校舎5号館6階E601~603

報告
[午前の部] 10:00~11:50
二ノ宮聡「旧北京の碧霞元君信仰―妙峰山娘娘廟会を中心に―」
王晧月「道教の斎法儀礼における命魔の観念」
鈴木健郎「白玉蟾と道教聖地」
[午後の部] 13:00~14:10
田村俊郎「両晋南北朝時代における観音の偽経とその展開―『高王観世音経』を中心に―」
坂出祥伸「江戸時代中期の山口貫道著『養神延命録』について」

国際シンポジウム「道教研究の新側面―周縁からのアプローチ―」14:30~17:00
増尾伸一郎「日本からの視点」
鄭在書「韓国からの視点」
大西和彦「ベトナムからの視点」

2010年10月1日金曜日

猫率の低下

称猫庵を名乗っているにも関わらず、
猫率の低下が甚だしい……。
秋になったことだし、これから猫との遭遇率もあがるはず。
ということで、特に意味は無いけど猫写真。