渡辺浩『日本政治思想史[十七~十九世紀]』(東京大学出版会、2010年2月)
「本書は、この主題に関心はあるがその専門の研究者ではない、
その意味で「一般」の読者のために、十七・十八・十九世紀の
簡略な通史を提供することをめざして書いた」(474頁)
と述べている通り、『東アジアの王権と思想』の著者が
「一般」向けに書いた17~19世紀の広くて深い思想史概説。
儒学の説明(第1章)からはじまり、
福沢諭吉・中江兆民(第21・22章)で終わる序章+22章構成。
順をおって読むだけで、江戸~明治初の思想史の流れがスムーズに入ってくる。
江戸思想史に欠かせない儒学・朱子学の解説もとってもわかりやすくて親切。
徳川政治体制(御威光)、儒学の摂取、
伊藤仁斎・新井白石・荻生徂徠・安藤昌益・本居宣長・海保清陵などの思想家、
江戸時代の「御百姓」・「日本」・「西洋」・「性」、とテーマも幅広くて面白い。
幕末の「開国」問題・「文明開化」など、漠然と持っていた明治維新イメージを
さらりと変えてくれるのも楽しい。