2010年8月31日火曜日

李公子の謎

佐藤文俊『李公子の謎―明の終末から現在まで―』(汲古書院、2010年8月)

李自成に仕えたとされる李巌の実在・非実在をめぐる論争について、
明末の史料から現在の最新研究までを網羅。
非実在説で決まりかなぁ、と思っていたら、
近年、新たな族譜の発見で、再び実在説が強くなっているらしい。
郭沫若による政治利用(影射史学)も興味深い。

李巌論争に関する日本の研究が殆ど登場しないけど、
日本の研究者は、李巌の実在・非実在に興味なかったのかな。

博物学と書物の東アジア

高津孝『博物学と書物の東アジア―薩摩・琉球と海域交流―』(榕樹書林、2010年8月)

琉球弧叢書23。琉球と薩摩の博物学(本草学・鳥学)、
琉球の書物・文化、薩摩の文化の三つのテーマで、
東アジア社会(江戸・清・琉球)の文化交流・連動性を描いている。
第一部「博物学の海域交流」の「一、『琉球産物志』から『質問本草』」や
「二、中国伝統医学と琉球」、第二部「書物と文化の海域交流」の
「一、琉球の出版文化」、「二、近世琉球の書物文化」などが特に興味深かった。

付録の「がじゅまる通信」No.64も面白い。
榮野川敦「一九九三年の琉球関係漢籍調査と琉球版『論語集註』の確定」は、
高津孝氏との漢籍調査のいきさつや思い出を語っている。
また、武石和実「博物学・本草学の本」は、古書市などに出回った
琉球関係の博物学の和本について紹介している。