歴史学研究会編『歴史学のアクチュアリティ』(東京大学出版会、2013年5月)
昨年12月15日に開催された歴史学研究会創立80周年シンポジウムの書籍化。「アクチュアリティ」は、辞書的には「現実(性)・実在、事実・写実性」といった意味だが、帯に「現代の課題にいかに応えるか」とあるように、本書中では「現在的問題へのコミットメントの問題」といった感じでとらえられている。
目次は以下の通り。
第Ⅰ部:歴史学のアクチュアリティ―創立八〇年シンポジウムから
岸本美緒「中国史研究におけるアクチュアリティとリアリティ」
長谷川貴彦「現代歴史学の挑戦―イギリスの経験」
安田常雄「方法としての同時代史」
村井章介「<境界>を考える」
栗田禎子「現代史とは何か」
浅田進史「歴史学のアクチュアリティと向き合う」
藤野裕子「歴史学をめぐる承認―隔離―忘却―ジェンダー史を事例として」
松沢裕作「歴史学のアクチュアリティに関する一つの暫定的立場」
第Ⅱ部:討議 歴史学のアクチュアリティ
討議1「社会史研究と現代歴史学」
討議2「社会主義圏の崩壊・ポスト冷戦と現代歴史学」
討議3「新自由主義時代と歴史学の将来」
シンポジウムには行けなかったけど、本になったら購入しようとおもっていた企画。期待にたがわず面白かった。若手研究者問題(浅田論文)・ジェンダー史(藤野論文)も取り上げられている。
まえがきと松沢論文で指摘されているように、「アクチュアリティ」のとらえ方をめぐって、岸本論文と栗田論文では大きく異なっている。どの立場をとるかは、人それぞれだろうが、僕自身は岸本論文・松沢論文に共感した。
歴史学のアクチュアリティを考えるためには、60年代の学生運動、安保闘争、1950年代の国民的歴史学運動、戦前の平泉澄、「満蒙史研究」などなど、様々な立場で「現在的問題」に正面から取り組んでき過去の歴史学・歴史家との比較が欠かせないように思えた。