鈴木靖民編『円仁と石刻の史料学―法王寺釈迦舎利蔵誌』(高志書院、2011年11月)
昨年、一部で話題になった「法王寺釈迦舎利蔵誌」をメインで取り上げた論集が出た。2011年1月23日に国学院大学文化講演会「円仁石刻と古代の日中文化交流」をもとにまとめたもの。まさか論集にするとは。
目次は以下の通り。
齊藤圓真「日中文化交流史上の円仁と天台」
第1部:石刻の史料学
酒寄雅志「法王寺釈迦舎利蔵誌の史料性と解釈」
〈コラム〉波戸岡旭「「釈迦舎利蔵誌」の文構成と修辞」
田中史生「法王寺石刻「釈迦舎利蔵誌」の調査」
〈コラム〉佐野光一「円仁石刻の書風」
石見清裕「唐代石刻の避諱と空格」
〈コラム〉高丹丹「唐代石刻と史書」
葛継勇「円仁石刻をめぐる諸問題」
裴建平「石刻の真偽の鑑定分析と登封法王寺「円仁石刻」の制作時期」
〈コラム〉「フト(浮屠/浮図)について」
第2部:法王寺と円仁
呂宏軍「隋唐時代嵩山の寺院・石刻と交通」
〈コラム〉金子修一「嵩山の封禅」
趙振華「唐代武宗廃仏の物証と中日僧侶の護法活動」
〈コラム〉笹生衛「円仁と『佛頂尊勝陀羅尼経』、そして古代日本の滅罪信仰」
田凱「法王寺二号塔地下宮殿およびその関連問題」
〈コラム〉阿南ヴァージニア史代「「円仁日記―七日間の沈黙」考」
肥田路美「仏舎利の荘厳具と迦陵頻伽盒」
塩沢裕仁「東都洛陽と鄭州を結ぶ道筋」
〈コラム〉宇都宮美生「唐宋の山陽瀆と汴河」
佐藤長門「入唐僧の情報ネットワーク」
〈コラム〉河野保博「円仁の同行者たち」
鈴木靖民「円仁石刻の史料性と法王寺の沿革」
唐代説(中国人研究者)もあるけれど、鈴木氏の総論では、二通とも明清期の模刻だが、原文は唐代のものという結論をひとまず出している。
日本史研究者は、制作時期の特定に積極的だけど、中国史研究者(日本人)は、一人も制作時期に言及しておらず、消極的なのが印象的。