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2012年11月25日日曜日

鎌倉興隆―金沢文庫とその時代

先日、神奈川県立金沢文庫で開催中の
「鎌倉興隆―金沢文庫とその時代―」に行ってきました。

この展覧会は、世界遺産登録推進 三館連携特別展「武家の古都・鎌倉」の一つ。他の二つは鎌倉八幡宮内の鎌倉国宝館(古都鎌倉と武家文化)と神奈川県立歴史博物館(再発見!鎌倉の中世)。一応、全部いったけれど、一番熱かった金沢文庫を紹介します。

今回の展覧会は三つのテーマで構成されている。
まずは、お目当ての「金沢文庫の世界」。
鈔本では、『白氏文集』、『文選集注』、『卜筮書』、『集七十二家相書』、『施氏孫子講義』などなど。『孫子講義』は北条顕時が書写したそうだ。ヲコト点や訓点がびっしり書き込まれている。やはり武家らしく、気合入れて兵法書を読んだのだろうなぁ。
宋版では、『読史管見』、『唐柳先生文集』、宋版残欠集(文苑英華や春秋後伝など)などなど。近年、館山で発見された『孫真人玉函方』(南宋版の元覆刻本らしい)も公開されていて驚いた。『玉函方』のほか『膏盲腧穴灸法』・『産育保慶集』も合綴されているらしい。佚書とされていた医書が同時に三冊見つかったことになる。きっと、まだまだ日本には佚書があるに違いないと思わせる。

もう一つのテーマは「北条氏権力の確立と金沢北条氏」。
金沢北条氏の肖像画や書状のほか、北条氏の政変を記した日記などが展示されている。ここでは、蛇体に囲まれた日本図(鎌倉時代)と、あまりにも図形化が過ぎて、もはや地図とは呼べない日本図(日蓮宗・戦国写本)に目を奪われた。唐土・新羅などにまじって羅刹国・龍及国(身人頭鳥)という謎の国も。右隅には蒙古国の記事があり、日本・高麗・唐土(南宋)でそれぞれ呼び名が異なるという指摘が見える。
そのほか、称名寺の僧侶と流罪唐人(元寇の捕虜)の漢詩のやりとりも興味深かった。漢詩というより、漢詩風筆談といった感じで、僧侶(多分、渡来僧)にあわせてほしいと訴えている。多分、兵士か下級官で、苦手な漢詩を一生懸命作ったんだろうなぁ、と想像してしまった。

予想以上に長くなったので、三つ目のテーマ「鎌倉仏教開花」は省略。

約300頁の三館合同の図録が1200円と超お得。
会期は12月2日(日)まで。開館時間は9時~16時半。
観覧料は600円。

2012年2月12日日曜日

茶会への招待

先日、三井記念美術館で開催中の
「茶会への招待―三井家の茶道具」
に行ってきました。

一月に引き続き、茶器関連の展覧会に
いってきたわけですが、別に茶器にはまったわけではありません。
今回のお目当ては、併設されている
「初公開―新町三井家の新寄贈品から」。
なんと金沢文庫本『白氏文集』巻23・巻38が
展示されているのです。

この両巻は、戦前に存在が確認されていたが、
戦後、所在不明になっていたもの。
今回、三井家より寄贈されたことによって、
世にでてきたというわけです。

ということで、『白氏文集』目当てでいってきました。
とはいえ、行ってみたら、やっぱり茶器も面白い。
展示室一の「茶の湯の名品」、展示室四の「茶事の取合せ」、
展示室五の「名碗抄」と、見応えたっぷり。
さすが三井家所蔵品。見た目も由来も楽しめるものばかり。

で、最後の展示室七にお目当ての『白氏文集』が。
展示ケースいっぱいつかって、なが~く展示している。
巻23は親族宛の手紙や祭文、巻38は官僚の任命書など。
博士家のヲコト点や校訂、反切・注釈などなど、
歴史を超えてきた知の重みを感じる。

白氏文集は旧抄本研究の蓄積が分厚いし、今後の研究が楽しみ。
白居易の長恨歌などの文学作品には、
旧抄本と刊本とで、文字の異同(意図的な改変もある)が、
結構あることが知られているが、
手紙や祭文、公的文書ではどうなのだろうか。

そして、もう一つ気になるのが、
今回三井記念美術館に何が寄贈されたのかということ。
展示パネルには、古典籍類とある。
もしかしたら、白氏文集以外にも旧抄本が
寄贈されているかも……。
今後の展開が気になります。


会期:2012年2月8日(水)~4月8日(日)
休館日:月曜日・2月26日(日)
開館時間:10時~17時
入館料:一般1000円、学生500円

2012年1月6日金曜日

新年初展覧会

新年がやってまいりました。
昨年は色々あって、更新も滞りがちでしたし、
展覧会にもあまり行けませんでした。

と思って、改めて展覧会参観を数えてみたら37回。
多くはないけど、少なくもないですね。
どうやら、1月~3月に結構かせいでいたみたいです。
まぁ、無理せず、今年もマイペースで過ごしていきたいです。


というわけで、先日、新年初展覧会に行ってきました。
歌川国芳展や北京故宮博物院200選など候補があるなか、
いろいろ迷った末に、松屋銀座で開催中の

「上田宗箇 武将茶人の世界展」

に行ってきました。

選んだ理由は、昨年、マンガ『へうげもの』にはまったから。
上田宗箇は、上田左太郎として『へうげもの』に登場。
猛将であるとともに古田織部のよき弟子でもある人物。

もともと茶器には全く興味なかったのだけど、
『へうげもの』を読んで、最近少し興味が湧いてきたところ。
正直、あまり期待せずに見に行ったのだけど、
予想以上に面白かったです。

茶人としての上田宗箇のみならず、
武将としての側面も取り上げている。
展示会場前半には、上田宗箇の甲冑や陣羽織、
地図や文書なんかもおいてあって、
戦国ファンなら楽しめる内容。

後半になって、いよいよ茶器がメインになってくるのだけど、
安土桃山~江戸初の茶器の斬新なこと。
織部焼きに代表されるへしゃげた器に抽象的デザイン。
宗箇自作の武骨な茶器もかっこいい。
30分くらいのつもりが、1時間半も見てしまいました。

会期は1月16日(月)まで。会場時間は10:00~20:00。
入場料は1000円(学生700円)。


というわけで、今年もぼちぼち更新していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

2011年11月5日土曜日

東洋文庫ミュージアム&東京人

先日、東洋文庫ミュージアムに行ってきました。
展示内容は既にブログで紹介したので省略しますが、
ものすごく楽しめる内容でした。
東洋文庫のすごさを改めて体感しました。

入場料(一般880円・大学生680円)を
高いとみるかどうかは微妙なところですが、
あっというまに時間がすぎてしまうし、
写真OK(一部除く)なことを考えると、
まあまあなんじゃないでしょうか。
国宝『史記』も、モリソン文庫の威容も撮り放題です。


東洋文庫とミュージアムの魅力は、
このブログの拙い文章よりも、
『東京人』2011年12月号通巻303(都市出版、2011年12月)を読むと伝わってきます。

『東京人』12月号は、特集「東洋文庫の世界」。
目次は以下の通り。
ドナルド・キーン「初めて触れた、江戸期の『百合若大臣野守鏡』に興奮しました」
張競「文字と書物の旅をめぐる綺想」
堀江敏幸「あやしうこそ、ものぐるほしけれ―東洋文庫の午後」
樺山紘一・亀山郁夫・池内恵・斯波義信・牧野元紀「座談会 「アジアの世紀」の今だから、「東洋の知恵」を見直そう。」
ウッドハウス暎子「G・E・モリソンの実像」
森まゆみ「岩崎久彌が見た夢」
槇原稔「日本人のアイデンティティーを、東洋文庫で育ててほしい」
野嶋剛「内藤湖南をめぐる中国美術品流入のネットワーク」
研究者に聞く「この一冊からはじまった」
森本公誠「『アラビア語文献目録補遺』 時宜を得たアラビア語文献蒐集に感謝」
石澤良昭「『インドシナとインドネシアのインド化した国々』 セデスの不朽の名著」
坪井善明「越南『欽定大南会典事例』の礼部 「邦交」や「柔遠」に入れ込んだ日々」
木奥恵三「非日常の空間へ誘うミュージアム 建築も、すごい」

他にも『史記』・『東方見聞録』・『諸国瀧廻り』・『アヘン戦争図』などの鮮明な写真も掲載しています。

2011年2月1日火曜日

墨宝&思わぬ収穫

先日、ちょっと、背伸びをして、根津美術館で開催中の特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」を見に行ってきました。
今回の展覧会では、主に13世紀以降の日中間の禅僧の往来の中から生み出された、禅僧の墨蹟や水墨画、茶碗などを展示しています。蘭渓道隆とか無学祖元とか虎関師錬といった有名人の墨蹟もあります。

……でも、やっぱり僕にはまだ早かったみたいです。一級品ばかりなのに、いまいちピンと来ず……。いつの日か墨蹟や水墨画の良さがわかるようになりたいものです。

他にも「仏教彫刻の魅力」、「古代中国の青銅器」、「鍋島と四季の草花」、「初春を祝う茶」が同時開催されています。このなかでは、ホールに展示してある北魏・北斉時代の仏像(山西省の天龍山石窟の仏像頭部など)に興味惹かれました。銘文がなかったのがちょっと残念。


と、そんなこんなで、ミュージアムショップに行くと、以下の書籍を発見。
根津美術館編集『鑑賞シリーズ11 中国の石仏 北斉仏の魅力』(根津美術館、2009年10月)、
常盤山文庫中国陶磁研究会『北斉の陶磁』(財団法人常盤山文庫©、2010年12月)

『中国の石仏』は、根津美術館所蔵の南北朝隋唐時代の石仏がカラー図版で紹介されています。さらに八木春生氏による「北斉時代の石仏」(45~80頁)、「作品解説」(81~89頁)、「コラム北斉の陶俑」(90~91頁)もあります。北斉時代の仏教美術をおさえるのにちょうどいい感じです。

『北斉の陶磁』は、近年、常盤山文庫が購入した北斉の陶磁のカラー図版・解説(41~58頁)と、矢島律子「北朝の白いやきもの」(27~40頁)、佐藤サアラ編「出土資料集」(128~59頁)が収録されています。「北朝の白いやきもの」は、北朝~隋の陶磁の変遷をまとめ、隋代に白磁が出現した背景に迫っています。これまた北朝の陶磁器をおさえるのにちょうどいい感じです。


というわけで、展覧会の方はいまいち味わいきれませんでしたが、根津美術館の建物自体がいい感じでしたし、ミュージアムショップで思わぬ収穫もあったので、行った甲斐がありました。

特別展「墨宝 常盤山文庫名品展」
会期:2011年1月8日(土)~2月13日(日)
開館時間:10時~17時 休館日:月曜日
入館料:一般1200円、学生1000円

2010年10月4日月曜日

皇室の文庫

先日、三の丸尚蔵館で開催中の「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」に行ってきました。意外にも「書陵部の名品」がまとまった形で一般に展示されるのは初めてだそうです。

今回の特別展では、坂本龍馬直筆の「薩長同盟裏書」が
話題になっているらしいのですが、それ以外にも名品がずらり。
漢籍などは少ないですが、一級品が展示してあります。
たった一室なのだけど、龍馬効果のせいか、かなりの混雑と熱気。
いくつかのジャンルに分けて展示してあります。

まず最初は「古典と絵巻」。
トップバッターは、『日本書紀』の平安・鎌倉期の抄本。
そのうち巻2は北畠親房の伝授奥書がある南北朝期の抄本。
他には、『源氏物語』(三条西実隆等写・16世紀)、『古今和歌集』(寂恵写・1278年)、後深草院二条撰『とはすかたり』(江戸時代写・孤本)などなど。

お次は個人的にはメインの「古写経と漢籍」。
まずは、遣唐使船によって舶来された吉蔵撰『勝鬘寶屈』(684年写)。
続いて長屋王が発願して書写された『大般若波羅蜜多経』(712年写)。
そして、北宋版『御注孝経』(1023~1033年の間の刊行・孤本)。
狩谷棭齋が江戸の古書肆で入手したものらしい。
さらに金沢文庫本『群書治要』(鎌倉時代の抄本・1255年の奥書)。
ヲコト点(多分、清原家の訓点)もはっきり見えます。
この『群書治要』は、徳川家康の手をへて紅葉山文庫に入ったもの。

続いて「明治維新期の文書」が展示。
上に述べた「薩長同盟裏書」とか、「五箇条御誓文」(原本控)とか、
天皇の儀礼・行幸に関する公文書などが並んでます。

「貴族社会と日記」のコーナーには、
九条兼実の日記『玉葉』や、平信範の日記『平兵部記』などが、
「天皇と宸筆」のコーナーには、花園天皇の日記『花園院宸記』や『伏見天皇御集』、尾形光琳画「後水尾天皇御画像」などがあります。
『花園院宸記』は、花園上皇のえがいた行幸絵図を展示。描かれた牛や馬が味があっていい感じ。学問好きなのは知っていたけど、絵もうまかったとは少々驚きました。

他には仁徳天皇陵・百舌鳥陵墓参考地出土の
動物埴輪や家形埴輪なども置いてある。


さて、これまで長々と展示品を羅列してきましたが、
今回の展示品で最も興奮したのが、隅っこにある「修補の技」コーナー。
修補の説明のパネルがあり、その下に修補前と修補後の古文書が置いてある。

修補前の古文書(鎌倉後期らしい)をなんとなく見たら、
『説文』・『文心雕龍』・『漢書』・『拾遺記』という書名が!
どうやら、鎌倉期に作られた類書のようです。
『拾遺記』の内容を確認したら、『太平御覧』所引『拾遺記』と文章が一致しました。

まだ修補前なので、全体像はわかりませんが、
他にも漢籍を多数引用しているかもしれません。
さらには何か逸文があるかもしれません。
(もしかしたら、既に知られている類書なのかもしれませんが)
ぼろぼろの紙をめくってみたい、ガラス越しにそんな思いにかられてしまいました。


「特別展 皇室の文庫 書陵部の名品」は、
10月17日(日)まで三の丸尚蔵館で開催。
休館日:毎週月曜・金曜・10月12日(火)、開館時間:9時~16時15分
観覧料は無料です。

2010年9月5日日曜日

三菱が夢見た美術館

現在、三菱一号館美術館で開催されている
「三菱一号館美術館開館記念展〈Ⅱ〉三菱が夢見た美術館―岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」を見に行ってきました。

岸田劉生《童女像(麗子花持てる)》がトップを飾る
現在配られているチラシを見る限り、全くもって興味わかないのだけど、


以前、配られていたらしいチラシを見ると、
途端に興味がわいてくる。


展覧会の構成は次の通り
序章「「丸の内美術館」計画:三菱による丸の内の近代化と文化」
第1章「三菱のコレクション:日本近代美術館」
第2章「岩崎家と文化:静嘉堂」
第3章「岩崎家と文化:東洋文庫」
第4章「人の中へ街の中へ:日本郵船と麒麟麦酒のデザイン」
第5章「三菱のコレクション:西洋近代絵画」
終章「世紀を超えて:三菱が夢見た美術館」

正直言って、目当ては第2章・第3章のみ。
静嘉堂、そして東洋文庫の名品を見ることができる。

三菱一号館美術館は、今年の四月に開館したばかり。
明治時代の三菱一号館を復元させた作り。
レンガ造りで見た目はものすごく歴史ありそう。
内部に入ってみると、美術館とは思えない狭さ。
でも、この狭さが鑑賞に心地よい。

最初は、序章・第1章は素通りしようかと思っていたのだけど、
見たら見たで結構いい感じ。図録のカバーデザインにもなっている
黒田清輝の《春の名残》がなかなかよかった。

で、いよいよ第2章。
岩崎彌之助・小彌太が収集した古典籍・美術品をおさめた静嘉堂。
その逸品が並んでいる。

まずはじめは、南宋前期刊『周礼』と南宋初期刊『李太白文集』。
陸心源の旧蔵書に由来する南宋版。もちろん両方とも重要文化財。
素人から見ても、かっこいい刷り上がり。
蔵書印も見てると面白い。パスパ文字(多分)のものや、
肖像画を描いた蔵書印(陸心源?)もある。

お次は、曜変天目(国宝)。
茶器には全くと言っていいほど興味ないのだけど、
この茶器は本当にすごかった。
12~13世紀の建窯産だけど、現代陶磁器も真っ青のデザイン。
黒茶碗の内側に青光りする斑点。偶然なのかもしれないけど、
時代を越えたデザインってこういうのを言うのではなかろうか。

あと、松永久秀が持っていた付藻茄子(九十九茄子)も展示してある。
参観中は、九十九茄子は松永久秀自害の時に壊されたはずだから別物だろう、
と勘違いして、じっくり見なかったのだけど、
よくよく思いだしたら、道連れに壊されたのは平蜘蛛だった。
図録の解説を見たら、久秀から信長にわたり、本能寺の変にも巻き込まれたが、
なんとか救われ、秀吉のもとへ。そして今度は大阪夏の陣に罹災。
損壊してしまったが、惜しんだ家康が焼け跡から破片を回収させて、
修復させたという。
いや~、激動の茶器だわ。


う~ん、こんな調子で紹介してたら、先に進まないですね。
では第3章「岩崎家と文化 東洋文庫」に。

もうここは、書名だけでも十分かもしれませんね。
国宝『毛詩』、国宝『文選集注』、
重要文化財『楽善録』、重要文化財『論語集解』。

『毛詩』と『論語集解』には、ヲコト点や半切・訓点が
書き込まれていて見ていて飽きない。
しかも『論語集解』は、ちょうど学而篇の冒頭
「子曰学而時習之不亦悦乎」が展示されているし。
うろ覚えのヲコト点の知識でも楽しめる。
今思ったのだけど、ヲコト点図をもっていけばさらに楽しめたかも。
持っていけばよかったなぁ……。

『ターヘル・アナトミア』と杉田玄白訳『解体新書』が
隣り合わせにおかれているのもなかなかの演出。

坂本龍馬熱にあやかって、海援隊が出版した和英対照発音ハンドブックの
『和英通韻以呂波便覧』も展示してある。

乾隆帝期の『平定準■[口+葛]爾方略(満文)』は、
満文が縦書きで左から右に表記するため、左開きになっている。
縦書き=右開きに慣れているので、違和感たっぷり。

あと16~18世紀の日本・アジア地図五点も見ていて飽きない。
他にも日本の古活字本や朝鮮本などなど、いろんなものがあります。
東洋文庫の名品をまとめてみる機会は、
そうそうないので、ほんっとに眼福でした。

第4章~終章は省略します。
最後の最後に三菱が丸の内を購入したころの風景画、
郡司卯之助「三菱ヶ原」が飾ってあります。
まるで野原。100年の月日の重さを感じます。


今回の展覧会の会期は、11月3日(水・祝)までで、休館日は月曜日です。
開館時間は、水・木・金は10時~20時、火・土・日は10時~18時。
当日券は、一般1300円、学生1000円です。
また、何回か展示替えがあります。
残念ながら曜変天目は今日(9月5日)までだそうです。

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追記:9月14日(火)21:20

『論語集解』を紹介する時に、学而篇の冒頭を掲げましたが、
ふと「なんか違うなぁ」と思って、よくよく見てみると、
「不亦説乎」とあるべき箇所が「不亦悦乎」となってました。
修正しなきゃ、と思ったのですが、念のため図録を見返すと、
やっぱり「不亦悦乎」となってます。
残念ながら、図録では左傍に書かれた注記まではよめず。
その場で気づけばよかった……。
旧抄本ゆえのことなのか、別の原因があるのか、
調べてないのでわかりませんが、とりあえずそのままにしておきます。

2010年8月14日土曜日

誕生! 中国文明



東京国立博物館で開催中の「誕生! 中国文明」展に行ってきました。
中国・河南省で出土した文物を展示しているこの展覧会、
ポスターのひよこはさておき、なかなか見応えあります。


第一部は「王朝の誕生」
「夏」王朝から漢代までの文物を展示。
図版などによく登場する「夏」の動物紋飾板が最初の展示物。
その他、周の玉覆面やら、春秋・鄭の九鼎やら、前漢の金縷玉衣やら、
権力に関するもの(威信財の類)が多数展示してある。


第二部は「技の誕生」
「暮らし」・「飲食の器」・「アクセサリー」の三つのテーマ。
時代の変化の説明がないので、ちょっとわかりにくいかも。

第二部で一番面白かったのが、後漢の明器。
七層楼閣(番犬・荷物を運ぶ人付き)や水鳥・魚の遊ぶ池、
蝉のバーベキュー、動物の解体シーン(骨をしゃぶる犬付き)など、
当時の豪族の生活が浮かびあがる明器がずらり。

蝉なんかじゃなくて、もっといいもの明器にすればいいのに、
と思ったけれど、やっぱり再生の象徴たる蝉がよかったのだろうか。
それとも墓主が蝉好きだったのかな。

「アクセサリー」では、戦国時代のトンボ玉やら、
北朝時代の貴石金製指輪が興味深かった。


第三部は「美の誕生」
テーマは「神仙の世界」・「仏の世界」・「人と動物」・「書画の源流」の四つ。
後漢の青銅製(金メッキ)動物は、一角の麒麟が丸みがあっていい感じ。
後漢の胡人俑は猪木もびっくりのアゴ。
唐代になるとずいぶんリアルな感じで、造形がかなり異なる。
技術的な問題だけでなく、胡人の浸透具合が違ったからだろうなぁ。

「書画の源流」は、正直そんなにぱっとしないけど、
西晋の「徐義墓誌」、唐の「楊国忠進鋌」(銀板)あたりはじっくり拝見。
南北朝時代の彩色画像磚や、唐代の山水図瓶なんかは初めて見た。


今回の展覧会は、一級品ばかりがきている、
というわけではないのだけど、面白いものが結構きてます。
図録もなかなかいい感じ。

9月5日(日)まで東京国立博物館平成館で開催。

2010年5月3日月曜日

星新一展


世田谷文学館で開催中の「星新一展」に行ってきました。

まぁ、実のところ、そんなに星新一作品を読んでいるわけではないし、
特に好きというわけでもないのですが、
最相葉月『星新一―一〇〇一話をつくった人』(新潮社、2007年3月)を
読んで以来、なんとなく気になる作家なわけです。

偶然、星新一の父親の星一(星製薬の創業者)が書いた
「親切第一」という揮毫を手に入れたこともあり、
作品よりも、星家の歴史みたいなものに興味がある感じ。
母方の祖父が人類学の草分けの小金井良精で、
祖母が森鷗外の妹というのも面白い。

というわけで、せっかくのゴールデンウィーク、
どこにも行かないのもなんなので、見に行ってきました。

星新一の子ども時代の日記や絵、お気に入りのぬいぐるみに帽子、
祖父の小金井良精が集めた根付や、
酒場で著名人に書いてもらったコースター裏のサインなどなど、
星新一の素顔が垣間見える遺品・愛用品から展示はスタート。

星製薬の看板や製品、星一の制服やパスポート・揮毫など、
星家にまつわるものも展示してある。
残念ながら小金井良精の遺品はなかった。
空襲で燃えてしまったものもあるだろうけど、
日記とか論文とか展示してほしかったなぁ。


星家の展示が終わると、いよいよSF作家星新一の登場。
星製薬の社長時代の日記や小説の構想、
息抜きで参加した「日本空飛ぶ円盤研究会」の資料、
『宝石』に作品を転載してくれた江戸川乱歩の推薦文などなど。

圧巻はショートショートの下書き。
便箋の裏に、細かくて汚い字がびっしりと書いてある。
解読を試みたものの、早々に断念。到底、なんだかわかりゃしない。
原稿に清書した字は特徴あるけど結構読みやすいのだけど。

アイディアをメモ書きした紙片もおもしろい。
「オレハ宇宙人ダと思いこみ 地球セイフクをおっぱじめる」
「ゼイムショニモチサラレタ フクノカミ」などなど。
本当に断片的だし、実際に作品になったかどうかはわからないけど、
なんだか面白くなりそうな設定。

一方で、創作の苦悩を書いたエッセイや講演(CDで試聴できる)もある。
研究とは違うのだけど、通じる部分もある感じ。
アイデアは「得られるものではなく、育てるものである。
雑多な平凡な思いつきを整理し、選択し手を加えることに
精神を集中してつづければ、なにか出てくるのは確実である」(図録50頁)
という部分なんかは、特に参考になった。


と、そんなこんなで、予想以上に楽しい展覧会でした。
昨年までNHKで放映された「星新一ショートショート」も
ついつい見てしまったので、結局二時間近く滞在。
充実の一日でした。

星新一展は世田谷文学館で6月27日まで開催中。
開館時間:午前10時~午後6時。
観覧料:一般700円 学生500円

2010年4月25日日曜日

歌川国芳―奇と笑いの木版画

府中市美術館で開催中の「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展に
行ってきました。

これまで特に浮世絵には興味なかったのですが、
歌川国芳の「奇と笑い」に焦点を当てていて、
さらに裏テーマとして「猫」があると知り、
だんだん、行ってみたくなったわけです。

ポスターもいい感じ。


巨大な魚の上に、別の浮世絵から踊る猫を持ってきている。
「猫もがんばっています」とあるけど、踊ってるだけだしなぁ。

展示会場は、おおまかにわけて三部構成。
第一部「国芳画業の変遷」は、国芳の生涯をたどりつつ作品を展示。
彼の出世作「通俗水滸伝豪傑百八人一個」も見ることができる。
第二部「国芳の筆を楽しむ」は、肉筆や風景画から国芳の特色を見せる。
そして第三部「もう一つの真骨頂」では、
「奇と笑いと猫の画家」として、彼の戯画や猫作品を展示している。

第一部・第二部ともに面白かったのですが、
なんといっても第三部が一番でした。
三枚つながりの作品、例えば「鬼若丸と大緋鯉」や「宮本武蔵と巨鯨」などの
迫力もものすごかったけど、
動物を擬人化した「道外獣の雨やどり」や、
ひな人形が喧嘩していて、犬の張り子が止めに入る
「道外十二月 三月ひいなのいさかい」といった作品がとても楽しい。
人形だから顔色変えないままで喧嘩している。止めに入った張り子も笑顔のまま。
けっこう凄惨な場面のはずだけど、緊迫感がない。


そしてたくさんの猫たち。
美人画の猫たちもあくまで浮世絵なんだけど、なんだかリアル。



他にも猫を擬人化した「くつろぐ夏の猫美人たち」や、
「おぼろ月猫の盛り」(吉原の猫版)、「流行猫の曲手まり」もいい感じ。
着物の柄に鈴や小判やタコをあしらっていて、
細部まで遊び心がつまってる。

東海道五十三次にかけた「猫飼好五十三疋」は、
東海道の宿駅をもじって猫の仕草にあてている。
例えば、戸塚は「はつか」、藤沢は「ぶちさば」、
保土ヶ谷は「のどかい」大磯は「おもいぞ」といった感じ。

まぁ、少々無理なもじりもあるけど、描かれた猫はどれも愛嬌ある。
歌川国芳の猫好きが伝わる楽しい作品。

それにしても江戸時代って、
面白い作品が次々生まれた時代なんだなぁ、と改めて実感。

「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展は、
府中市美術館で5月9日まで開催中。
料金は、大人600円・学生300円とすこぶるお得。


2010年3月19日金曜日

チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展


江戸東京博物館で開催中の
「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」に行ってきました。

図録には、
後援:中国大使館
協力:中国・内モンゴル博物院、日本航空
企画制作:東映
とあります。


内モンゴル博物院所蔵の文物が中心。
チンギスハーンと銘打っているものの、
東胡(戦国時代)、匈奴(漢代)、鮮卑(魏晋南北朝)、
突厥(唐)、契丹(遼)の文物が、全体の約4割と充実している。
匈奴・鮮卑の金製・銅製の動物をモチーフにした装飾品や、
晋が鮮卑にあたえた金印・銀印、
遼の陳国公主墓出土の黄金のマスクなどなど。

一方、チンギス・ハーン時代や元代の文物は、全体の25%程度。
伝チンギス・ハーンの鞍とか、監国公主の印鑑とか、
至元通行宝鈔紙幣とか、景教徒の墓誌などが面白かった。
ただし、あくまで内モンゴル博物院所蔵文物が中心なので、
元朝の陶磁器などは、殆ど出ていない。

残りは、あまり紹介されることのない、明清時代のモンゴルの文物。
印鑑とか服飾とか日用品とか。
駒が動物ばかりの、清代のモンゴル将棋(シャタル)が気になった。
ルールは、チェスと中国将棋の特徴を兼ね備えているらしい。


解説文が中文を日文に直訳したような感じで、どうもしっくりこなかった。
会場に掲げてあったモンゴル帝国の地図も、地名が全て簡体字表記になってるし。
文物はまあまあのものが来てるのに、ちょっとなんだかなぁ。

2010年3月13日土曜日

2010年国際稀覯本フェア


2010年国際稀覯本フェアに行ってきました。
今年は、3月11日(木)・12日(金)・13日(土)の三日間、
六本木一丁目の泉ガーデンギャラリーで開催されてます。

以前見に行った古典籍展観大入札会が面白かったので、
今回も無料の美術館として活用しようという魂胆です。

参加店は国内外あわせて31。
和書・漢籍・洋書がずらっと勢ぞろい。
結局、3時間近く滞在してしまいました。
以下に印象深かったものをいくつかあげます。

葛飾北斎が書いた中国の地図「唐土鳥瞰図」。
238万円もするから、到底買えないのだけど、
ポスターでもいいのでほしいと思った。
図面の3分の2近くが華南・華中で、南方から北方を見ている感じ。
都市名よりも山や川が目立っている。

17世紀頃にオランダで描かれた日本の風景画。
情報だけをもとに想像で描いているから、
なんだか人や建物の雰囲気が清っぽくておもしろい。
カタログに掲載されていないため、正確な名前がわかりません。残念。

赤瀬川原平が千円札裁判(千円札の精密な模造品を印刷したら、逮捕され裁判となった)中の1969年に作った大日本零円札(本物)も売っていた。
額面はゼロ円なのに、価格は126000円。

経典ばかりだったけれど、
浜田徳海蒐集敦煌文書も結構出てた。


どれもこれも値段は高くて手が出ないけれど、
見ていてあきないものばかり。
ちなみに、多分一番安かったのは、
満洲の絵葉書で、一枚100円~500円。
その次ぐらいが、大正・昭和時期の著者不明漢詩箋の1000円。
もしかしたら、その中に掘り出し物があるかもしれない、
と思って探してみたけど、ピンと来るものは特にありませんでした。
ま、そりゃそうですね。

2009年11月22日日曜日

「伝えゆく典籍の至宝」参観

五島美術館で11月29日まで開催されている
「伝えゆく典籍の至宝」を見に行ってきました。

漢籍以外、あまり興味ないので、すぐに見終わるかなぁ、
なんて思って行ったのだけど、想定外の面白さでした。
さすが五島美術館。

まず興味をひかれたのが、「金光明最勝王経」。
奈良時代の写本なのだけど、
平安時代のヲコト点(多分、博士家系統)がつけられている。
写本の作成年代と読まれた時期が違っているのが興味深い。

また、平安時代後期に作られた類書(『幼学指南鈔』)や、
『伊呂波字類抄』・『和妙類聚抄』などの古辞書の写本も面白かった。

もちろん、金沢文庫本『白氏文集』・『論語集解』・駿河版『群書治要』・
秀頼版『帝鑑図札』などなど、漢籍も非常に充実してました。
なかでも古典籍展観大入札会で手に取った直江版『文選』が、
ケースの中で鎮座しているのを見た時は妙に嬉しかったです。


でも、一番印象的だったのは、
藤原頼長の手跋のある『因明論疏』。
頼長は、政治家として、そして保元の乱の
中心人物として有名だけど、
ものすごい読書家としても名高い。
でも、彼の字はマジックペンで書いた
みたいで、お世辞にも名筆とはいえない。
なんだか親近感を覚えた。
解説には、悪筆をむしろ顕示していた、とある。
ますます、いいなぁ。


と、そんなこんなであっというまに時間が過ぎてしまい、
庭園を散歩する時間はおろか、
江戸期の写本・刊本をゆっくりみる時間もなくなってしまいました……。残念。 写真は、行く途中で見かけた日向ぼっこする猫。
満足そうにぬくそうな顔をしている。

2009年11月19日木曜日

古典籍展観大入札会見学

平成21年度古典籍展観大入札会に行ってきた。
合計2000点以上の古典籍が所狭しと並んでいて、見ていて飽きない。
しかも手にとってじっくり見ることができるというのがすごい。
つい勢いで『古典籍展観大入札会目録』も購入してしまった。

色々あるなか、特に取り上げたいものが二点。

ひとつは、直江版文選(目録番号672)。
目録の説明によると、慶長12年(1607)刊、古活字版。
高木文庫・安田文庫旧蔵。
直江兼続が京都の要法寺へ依頼して開版。
元の黄土色表紙に紅色原題簽を有する。

直江版を手に取るのはもちろん、見るのもはじめて。
書誌学の知識は全くないけれど、ながめてるだけで面白い。
気になったのが、表紙に文書の裏紙を使用していること。
おそらく、ただの廃棄文書だとは思うけど、
もし、万一、直江兼続が紙を用意してたら、おもしろいのに…と妄想してみる。
でも、中身を確認するのはとてつもなく難しそうだ。

もうひとつ取り上げたいのが、
目録番号1223の安南国書幅(安南国から日本にあてた書状)。
目録には「副都堂福義侯阮粛 日本国国王座下」 光興十四年(天正十九年) 
新出資料 従来知られている、徳川家康宛慶長六年安南書は、
本状の形式・文言を踏襲したものと思われる、とある。

天正十九年は1591年。すなわち秀吉の時代。
かりにこの資料が本物なら、中近世の対外史にとって、
結構重要な資料だと思われる。 中身はうろ覚えだが、
日本国国王と象や贈答品をめぐるやりとりが書かれていた気がする。
そもそも、この日本国国王って誰なのだろうか。
かなり気になる。

2009年10月16日金曜日

永青文庫に行く

神田川沿いで猫たちが日向ぼっこをしている中、
永青文庫の秋季展「黄庭堅・伏波神祠詩巻」に行ってきた。
ひとけもなく、ひっそりとした永青文庫。ゆっくり参観できた。
黄庭堅の伏波神祠詩巻がメイン。書道はよくわからないが、
のびやかで自由な書風は確かに面白い。高村光太郎の批評がまたいい。
所有印を見ると、明代のコレクター項元汴が20か所ほど印を押している。
それは押しすぎじゃないかなぁ。 

敦煌本『文選注』も展示していたので、じっくり観察。
他には三体石経の尚書部分の拓本や、
元・趙孟頫筆「漢汲黯伝」(『史記』巻120・汲黯伝)、
明・清の書、袁世凱の白玉印なども展示してあった。

図録はないが、『季刊 永青文庫』No.68が、特集号となっている。
見本を眺めていたら、堀江敏幸のエッセイ(「坂を見上げて」)が掲載されていた。
まさか永青文庫で堀江敏幸の文章に出会えるとは。速買い決定。他の記事もなかなかおもしろい。