2012年1月31日火曜日

もうすぐ出る本

刊行が長いこと遅れていた八木書店の『遣隋使がみた風景』。
HPを見ると、表紙と目次がアップされている。
いよいよ出版される模様だ。

氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景―東アジアからの視点』
初版発行予定:2012年2月10日
予価3,990円(本体予価3,800円+税5%)

序章 氣賀澤保規「東アジアからみた遣隋使-概説と課題」
第Ⅰ部 遣隋使と国際関係
氣賀澤保規「『隋書』倭国伝からみた遣隋使」
金子修一「東アジアの国際関係と遣隋使」
田中俊明「朝鮮からみた遣隋使」
氣賀澤保規「アジア交流史からみた遣隋使-煬帝の二度の国際フェスティバルの狭間で」

第Ⅱ部 遣隋使とその時代の諸相
吉村武彦「推古朝と遣隋使」
川本芳昭「遣隋使の国書」
林部均「遣隋使と飛鳥の諸宮」
河内春人「遣隋使の「致書」国書と仏教」

第Ⅲ部 倭人と隋人がみた風景
氣賀澤保規「倭人がみた隋の風景」
鐘江宏之「隋人がみた倭の風景」
池田温「遣隋使のもたらした文物」
終章 氣賀澤保規「遣隋使の新たな地平へ-おわりに寄せて」

豪華なラインナップ。
煬帝の国際フェスティバルってなんだろう?

東アジア書誌学への招待 第二巻

大澤顕浩編著『東アジア書誌学への招待 第二巻』(東方書店、2011年12月)
『東アジア書誌学への招待』の第二巻。
第一巻が総論とすると、第二巻は地域・研究分野ごとの各論。
目次は以下の通り。

第四章 東アジアの文献―朝鮮本・満洲語文献・越南本・和刻本
石橋崇雄「清代満洲語文献の特徴と重要性」
吉田光男「朝鮮本の世界」
八尾隆生「ヴェトナムにおける漢喃(ハンノム)本の研究と収集の現状」
小秋元段「慶長年間における古活字版刊行の諸問題」

第五章 研究のための書誌学―思想・文学・歴史・地理
金文京「明代『三国志演義』テキストの特徴―中国国家図書館蔵二種の湯賓尹本『三国志伝』を例として」
笠井直美「白話小説・戯曲版本の分化と特徴」
永富青地「陽明学研究における文献学の意義―『王文成公全書』所収の「年譜」への挑戦」
林鳴宇「書誌学からみた仏書と儒書」
山本英史「中国地方文献の交際術―地方志、判牘、筆記」
中砂明徳「イエズス会の極東関係史料―「大発見の時代」とその後」
高柳信夫「ミル『自由論』における“individuality”概念の日本と中国への導入について―中村正直『自由之理』と厳復『群己権界論』の場合」

2012年1月24日火曜日

国際ワークショップ

日時:2012年2月19日(日),20日(月)

会場
2月19日:立正大学大崎キャンパス11号館第5会議室
2月20日:桜美林大学四谷キャンパス地下会議室

プログラム
2月19日「湖南出土魏晋簡牘をめぐる諸問題」
13:00~13:10 趣旨説明:關尾史郎
13:15~14:15 谷口建速「長沙走馬楼呉簡に見える「塩米」とその管理」
14:20~15:20 鷲尾祐子「走馬楼呉簡吏民簿から窺う世帯の状況」
15:20~15:40 休 憩
15:40~16:40 伊藤敏雄・永田拓治「■(林+阝)州晋簡初探―上計及び西晋武帝郡国吏勅戒等との関係を中心に―」
16:45~17:45 張榮強「再論孫呉簡中的戸籍文書」(中国語)
17:50~18:00 閉会の挨拶:窪添慶文

2月20日「出土資料からみた魏晋時代の河西」
10:00~10:10 趣旨説明:關尾史郎
10:15~11:15 市来弘志「高台駱駝城の歴史地理的位置」
11:20~12:20 町田隆吉「甘粛省高台県出土の漢語文書の基礎的整理―簡牘を中心に―」
12:20~13:20 昼休み
13:20~14:20 北村永「河西における魏晋墓の図像―漢代の伝統的モチーフを中心にして―」
14:25~15:25 渡部武「画像資料から見た河西地方の犂のタイプと犂耕技術」
15:25~15:45 休憩
15:45~16:45 宋馨「北魏平城時期的墓誌形成与河西的関係」(中国語)
16:50~17:00 閉会の挨拶:小林 聡

2012年1月20日金曜日

律令制研究入門

大津透編『律令制研究入門』(名著刊行会、2011年12月)

2010年8月に東方学会の英文紀要“Acta Asiatica”99号の
特集「律令制の比較研究」に掲載された5本の論文の日本語版に、
新たに若手研究者の論文3本、大津氏の論文2本を加えたもの。
目次は以下の通り。

第一部 律令制の意義
榎本淳一「「東アジア世界」における日本律令制」
坂上康俊「日唐律令官僚制の比較研究」
丸山裕美子「律令法の継受と文明化」
大隅清陽「律令と礼制の受容」

第二部 律令制分析の視角
武井紀子「律令と古代財政史研究」
吉永匡史「軍防令研究の新視点」
大高広和「律令継受の時代性 ―辺境防衛体制からみた―」

第三部 律令制研究史
大津透「律令制研究の流れと近年の律令制比較研究」
大津透「律令制研究の成果と展望」
大津透「北宋天聖令の公刊とその意義 ―日唐律令制比較研究の新段階―」


第一部は外国人研究者向けに、
日本の日唐律令研究の動向をまとめたもので、
概説的であるがゆえにわかりやすい。
第三部も律令制比較研究の研究史や
天聖令発見の意義をまとめていて参考になる。
第二部は若手研究者による最新の論考。

2012年1月17日火曜日

東アジア書誌学への招待第一巻

大澤顯浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻(東方書店、2011年12月)

学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。

序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」

第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」

第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」


執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。

陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。

2012年1月15日日曜日

贈与の歴史学

桜井英治『贈与の歴史学―儀礼と経済のあいだ』(中公新書、2011年11月)

目次は以下の通り。
第1章:贈与から税へ
第2章:贈与の強制力
第3章:贈与と経済
第4章:儀礼のコスモロジー

換金前提の贈物・目録交換による贈与の相殺・贈答品の流用など「世界的にも類を見ない極端に功利的な性質を帯びる」中世日本の贈与慣行。贈与とは何か、コミュニケーションとは何かを考えさせられる。理論的でありつつ、実例が豊富で読みやすく、かつ読み応えがある。

2012年1月10日火曜日

「清明上河図」と徽宗の時代

伊原弘編『「清明上河図」と徽宗の時代―そして輝きの残照』(勉誠出版、2012年1月)

いま話題の「清明上河図」を主題とした論集。
第一部では、「清明上河図」の分析とともに
徽宗の再検討も試みている。
第二部では、北宋の「清明上河図」以降に誕生した
様々な「清明上河図」を取り上げ、
風俗画の伝承と拡散について論じている。
第三部では、様々な時代の画巻から、
時代を読み解いている。

目次は以下の通り。
序文 
伊原弘「徽宗とその時代―本書導入の前論」

第1部 徽宗―都市と芸術の開拓者
清木場東「清明上河図の背景」
クリスチアン・デ・ペー「清明上河図と、北宋(960-1127)東都(開封)のテキスト地理学」
久保田和男「メディアとしての都城空間と張擇端『清明上河図』」
マギー・ビックフォード「芸術と政治」
パトリシア・イブリー「徽宗朝の開封の建築計画」
高津孝「清明上河図と蘇軾の芸術論」
小島毅「天を観て民に示す」
須江隆「『清明上河図』の時代の信心の世界」

第2部 清明上河図―風俗画の伝承と拡散
加藤繁「仇英筆清明上河図と云われる図巻に就いて」
板倉聖哲「張擇端「清明上河図巻」(北京故宮博物院)の絵画史的位置」
久保田和男「開封復元図(徽宗時代)と『清明上河図』」
鈴木陽一「張擇端「清明上河図」とその影響力」
王正華「晩明《清明上河図》考」
植松瑞希「乾隆帝と「清明上河図」」
内田欽三「東アジアにおける都市図と風俗画」
加藤玄「中世ウェストミンスター宮殿の壁画群」

第3部 描かれぬものと描かれたもの―継承される画巻に時代をみる
齋藤忠和「兵士と農民」
福田アジオ「画巻に民俗をよむ」  
伊原弘「画巻に時代をよむ」


「清明上河図」に描かれたものを詳細に分析した伊原弘編『「清明上河図」をよむ』(勉誠出版、2003年10月)とは違って、「清明上河図」が描かれた時代背景や「清明上河図」の意義について論じている。「清明上河図」を見に行く前に『「清明上河図」をよむ』を読み、見終わった後に本書を読むといいのかもしれない。

2012年1月6日金曜日

新年初展覧会

新年がやってまいりました。
昨年は色々あって、更新も滞りがちでしたし、
展覧会にもあまり行けませんでした。

と思って、改めて展覧会参観を数えてみたら37回。
多くはないけど、少なくもないですね。
どうやら、1月~3月に結構かせいでいたみたいです。
まぁ、無理せず、今年もマイペースで過ごしていきたいです。


というわけで、先日、新年初展覧会に行ってきました。
歌川国芳展や北京故宮博物院200選など候補があるなか、
いろいろ迷った末に、松屋銀座で開催中の

「上田宗箇 武将茶人の世界展」

に行ってきました。

選んだ理由は、昨年、マンガ『へうげもの』にはまったから。
上田宗箇は、上田左太郎として『へうげもの』に登場。
猛将であるとともに古田織部のよき弟子でもある人物。

もともと茶器には全く興味なかったのだけど、
『へうげもの』を読んで、最近少し興味が湧いてきたところ。
正直、あまり期待せずに見に行ったのだけど、
予想以上に面白かったです。

茶人としての上田宗箇のみならず、
武将としての側面も取り上げている。
展示会場前半には、上田宗箇の甲冑や陣羽織、
地図や文書なんかもおいてあって、
戦国ファンなら楽しめる内容。

後半になって、いよいよ茶器がメインになってくるのだけど、
安土桃山~江戸初の茶器の斬新なこと。
織部焼きに代表されるへしゃげた器に抽象的デザイン。
宗箇自作の武骨な茶器もかっこいい。
30分くらいのつもりが、1時間半も見てしまいました。

会期は1月16日(月)まで。会場時間は10:00~20:00。
入場料は1000円(学生700円)。


というわけで、今年もぼちぼち更新していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。