日時:2012年2月19日(日),20日(月)
会場
2月19日:立正大学大崎キャンパス11号館第5会議室
2月20日:桜美林大学四谷キャンパス地下会議室
プログラム
2月19日「湖南出土魏晋簡牘をめぐる諸問題」
13:00~13:10 趣旨説明:關尾史郎
13:15~14:15 谷口建速「長沙走馬楼呉簡に見える「塩米」とその管理」
14:20~15:20 鷲尾祐子「走馬楼呉簡吏民簿から窺う世帯の状況」
15:20~15:40 休 憩
15:40~16:40 伊藤敏雄・永田拓治「■(林+阝)州晋簡初探―上計及び西晋武帝郡国吏勅戒等との関係を中心に―」
16:45~17:45 張榮強「再論孫呉簡中的戸籍文書」(中国語)
17:50~18:00 閉会の挨拶:窪添慶文
2月20日「出土資料からみた魏晋時代の河西」
10:00~10:10 趣旨説明:關尾史郎
10:15~11:15 市来弘志「高台駱駝城の歴史地理的位置」
11:20~12:20 町田隆吉「甘粛省高台県出土の漢語文書の基礎的整理―簡牘を中心に―」
12:20~13:20 昼休み
13:20~14:20 北村永「河西における魏晋墓の図像―漢代の伝統的モチーフを中心にして―」
14:25~15:25 渡部武「画像資料から見た河西地方の犂のタイプと犂耕技術」
15:25~15:45 休憩
15:45~16:45 宋馨「北魏平城時期的墓誌形成与河西的関係」(中国語)
16:50~17:00 閉会の挨拶:小林 聡
2012年1月24日火曜日
2012年1月20日金曜日
律令制研究入門
大津透編『律令制研究入門』(名著刊行会、2011年12月)
2010年8月に東方学会の英文紀要“Acta Asiatica”99号の
特集「律令制の比較研究」に掲載された5本の論文の日本語版に、
新たに若手研究者の論文3本、大津氏の論文2本を加えたもの。
目次は以下の通り。
第一部 律令制の意義
榎本淳一「「東アジア世界」における日本律令制」
坂上康俊「日唐律令官僚制の比較研究」
丸山裕美子「律令法の継受と文明化」
大隅清陽「律令と礼制の受容」
第二部 律令制分析の視角
武井紀子「律令と古代財政史研究」
吉永匡史「軍防令研究の新視点」
大高広和「律令継受の時代性 ―辺境防衛体制からみた―」
第三部 律令制研究史
大津透「律令制研究の流れと近年の律令制比較研究」
大津透「律令制研究の成果と展望」
大津透「北宋天聖令の公刊とその意義 ―日唐律令制比較研究の新段階―」
第一部は外国人研究者向けに、
日本の日唐律令研究の動向をまとめたもので、
概説的であるがゆえにわかりやすい。
第三部も律令制比較研究の研究史や
天聖令発見の意義をまとめていて参考になる。
第二部は若手研究者による最新の論考。
2010年8月に東方学会の英文紀要“Acta Asiatica”99号の
特集「律令制の比較研究」に掲載された5本の論文の日本語版に、
新たに若手研究者の論文3本、大津氏の論文2本を加えたもの。
目次は以下の通り。
第一部 律令制の意義
榎本淳一「「東アジア世界」における日本律令制」
坂上康俊「日唐律令官僚制の比較研究」
丸山裕美子「律令法の継受と文明化」
大隅清陽「律令と礼制の受容」
第二部 律令制分析の視角
武井紀子「律令と古代財政史研究」
吉永匡史「軍防令研究の新視点」
大高広和「律令継受の時代性 ―辺境防衛体制からみた―」
第三部 律令制研究史
大津透「律令制研究の流れと近年の律令制比較研究」
大津透「律令制研究の成果と展望」
大津透「北宋天聖令の公刊とその意義 ―日唐律令制比較研究の新段階―」
第一部は外国人研究者向けに、
日本の日唐律令研究の動向をまとめたもので、
概説的であるがゆえにわかりやすい。
第三部も律令制比較研究の研究史や
天聖令発見の意義をまとめていて参考になる。
第二部は若手研究者による最新の論考。
2012年1月17日火曜日
東アジア書誌学への招待第一巻
大澤顯浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻(東方書店、2011年12月)
学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。
序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」
第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」
第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」
執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。
陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。
学習院大学東洋文化研究叢書。
2004年度の旧学習院所蔵漢籍調査プロジェクトの
発足以来行われてきた講演を中心にまとめたもの。
目次は以下の通り。
序章 東アジアへの一視角
大澤顯浩「漢籍を学ぶということ―文明のアウラ―」
第一章 書籍の調査と鑑定
陳先行「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」
陳正宏「中国古籍版本学新探―版下作成から試印まで―」
高津孝「和刻本漢籍の多様性」
王瑞来「漢籍の版本調査と鑑定について―その常識と非常識―」
第二章 海を渡った書籍―書物流動史
安平秋「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」
周振鶴「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」
高橋智「古籍流通の文化史」
陳捷「近代における日中間の古典籍の移動について」
土屋紀義「図書館で漢籍はどのように収集されたか―国立国会図書館の場合―」
第三章 学習院大学コレクションの世界
大澤顯浩「旧学習院所蔵漢籍について」
坂田充「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」
松野敏之「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」
村松弘一「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから―」
執筆者の間で「漢籍」の定義が違っているが、
それだけ多様なものであるということで仕方ないのであろう。
個人的には陳正宏・周振鶴・陳捷・松野敏之氏の論文が興味深かった。
陳論文は、上海図書館に所蔵されている沈善登編『豫恕堂叢書』(未刊行)の版下本・試印本(全21種25冊)をもとに、版下の作成から試印までの工程や発生したトラブル(工賃問題)などを紹介したもの。
周論文は、『唐船貨物改帳』・『舶載書目』・『唐船輸出入品数量一覧』などをもとに、清代における日本への漢籍輸出について、計量的に分析したもの。
陳捷論文は、明治時代から辛亥革命前後までの日中間の古典籍移動についてまとめたもの。中国人蔵書家による漢籍購入や中国からの漢籍流出(陸心源蔵書・亡命者による売却など)を取り上げ、古典籍の移動が経済・社会・政治などの変化を如実に反映していることを指摘。
松野論文は、学習院所蔵の『焚書』等がたどった軌跡を追跡している。
2012年1月15日日曜日
2012年1月10日火曜日
「清明上河図」と徽宗の時代
伊原弘編『「清明上河図」と徽宗の時代―そして輝きの残照』(勉誠出版、2012年1月)
いま話題の「清明上河図」を主題とした論集。
第一部では、「清明上河図」の分析とともに
徽宗の再検討も試みている。
第二部では、北宋の「清明上河図」以降に誕生した
様々な「清明上河図」を取り上げ、
風俗画の伝承と拡散について論じている。
第三部では、様々な時代の画巻から、
時代を読み解いている。
目次は以下の通り。
序文
伊原弘「徽宗とその時代―本書導入の前論」
第1部 徽宗―都市と芸術の開拓者
清木場東「清明上河図の背景」
クリスチアン・デ・ペー「清明上河図と、北宋(960-1127)東都(開封)のテキスト地理学」
久保田和男「メディアとしての都城空間と張擇端『清明上河図』」
マギー・ビックフォード「芸術と政治」
パトリシア・イブリー「徽宗朝の開封の建築計画」
高津孝「清明上河図と蘇軾の芸術論」
小島毅「天を観て民に示す」
須江隆「『清明上河図』の時代の信心の世界」
第2部 清明上河図―風俗画の伝承と拡散
加藤繁「仇英筆清明上河図と云われる図巻に就いて」
板倉聖哲「張擇端「清明上河図巻」(北京故宮博物院)の絵画史的位置」
久保田和男「開封復元図(徽宗時代)と『清明上河図』」
鈴木陽一「張擇端「清明上河図」とその影響力」
王正華「晩明《清明上河図》考」
植松瑞希「乾隆帝と「清明上河図」」
内田欽三「東アジアにおける都市図と風俗画」
加藤玄「中世ウェストミンスター宮殿の壁画群」
第3部 描かれぬものと描かれたもの―継承される画巻に時代をみる
齋藤忠和「兵士と農民」
福田アジオ「画巻に民俗をよむ」
伊原弘「画巻に時代をよむ」
「清明上河図」に描かれたものを詳細に分析した伊原弘編『「清明上河図」をよむ』(勉誠出版、2003年10月)とは違って、「清明上河図」が描かれた時代背景や「清明上河図」の意義について論じている。「清明上河図」を見に行く前に『「清明上河図」をよむ』を読み、見終わった後に本書を読むといいのかもしれない。
いま話題の「清明上河図」を主題とした論集。
第一部では、「清明上河図」の分析とともに
徽宗の再検討も試みている。
第二部では、北宋の「清明上河図」以降に誕生した
様々な「清明上河図」を取り上げ、
風俗画の伝承と拡散について論じている。
第三部では、様々な時代の画巻から、
時代を読み解いている。
目次は以下の通り。
序文
伊原弘「徽宗とその時代―本書導入の前論」
第1部 徽宗―都市と芸術の開拓者
清木場東「清明上河図の背景」
クリスチアン・デ・ペー「清明上河図と、北宋(960-1127)東都(開封)のテキスト地理学」
久保田和男「メディアとしての都城空間と張擇端『清明上河図』」
マギー・ビックフォード「芸術と政治」
パトリシア・イブリー「徽宗朝の開封の建築計画」
高津孝「清明上河図と蘇軾の芸術論」
小島毅「天を観て民に示す」
須江隆「『清明上河図』の時代の信心の世界」
第2部 清明上河図―風俗画の伝承と拡散
加藤繁「仇英筆清明上河図と云われる図巻に就いて」
板倉聖哲「張擇端「清明上河図巻」(北京故宮博物院)の絵画史的位置」
久保田和男「開封復元図(徽宗時代)と『清明上河図』」
鈴木陽一「張擇端「清明上河図」とその影響力」
王正華「晩明《清明上河図》考」
植松瑞希「乾隆帝と「清明上河図」」
内田欽三「東アジアにおける都市図と風俗画」
加藤玄「中世ウェストミンスター宮殿の壁画群」
第3部 描かれぬものと描かれたもの―継承される画巻に時代をみる
齋藤忠和「兵士と農民」
福田アジオ「画巻に民俗をよむ」
伊原弘「画巻に時代をよむ」
「清明上河図」に描かれたものを詳細に分析した伊原弘編『「清明上河図」をよむ』(勉誠出版、2003年10月)とは違って、「清明上河図」が描かれた時代背景や「清明上河図」の意義について論じている。「清明上河図」を見に行く前に『「清明上河図」をよむ』を読み、見終わった後に本書を読むといいのかもしれない。
2012年1月6日金曜日
新年初展覧会
新年がやってまいりました。
昨年は色々あって、更新も滞りがちでしたし、
展覧会にもあまり行けませんでした。
と思って、改めて展覧会参観を数えてみたら37回。
多くはないけど、少なくもないですね。
どうやら、1月~3月に結構かせいでいたみたいです。
まぁ、無理せず、今年もマイペースで過ごしていきたいです。
というわけで、先日、新年初展覧会に行ってきました。
歌川国芳展や北京故宮博物院200選など候補があるなか、
いろいろ迷った末に、松屋銀座で開催中の
「上田宗箇 武将茶人の世界展」
に行ってきました。
選んだ理由は、昨年、マンガ『へうげもの』にはまったから。
上田宗箇は、上田左太郎として『へうげもの』に登場。
猛将であるとともに古田織部のよき弟子でもある人物。
もともと茶器には全く興味なかったのだけど、
『へうげもの』を読んで、最近少し興味が湧いてきたところ。
正直、あまり期待せずに見に行ったのだけど、
予想以上に面白かったです。
茶人としての上田宗箇のみならず、
武将としての側面も取り上げている。
展示会場前半には、上田宗箇の甲冑や陣羽織、
地図や文書なんかもおいてあって、
戦国ファンなら楽しめる内容。
後半になって、いよいよ茶器がメインになってくるのだけど、
安土桃山~江戸初の茶器の斬新なこと。
織部焼きに代表されるへしゃげた器に抽象的デザイン。
宗箇自作の武骨な茶器もかっこいい。
30分くらいのつもりが、1時間半も見てしまいました。
会期は1月16日(月)まで。会場時間は10:00~20:00。
入場料は1000円(学生700円)。
というわけで、今年もぼちぼち更新していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
昨年は色々あって、更新も滞りがちでしたし、
展覧会にもあまり行けませんでした。
と思って、改めて展覧会参観を数えてみたら37回。
多くはないけど、少なくもないですね。
どうやら、1月~3月に結構かせいでいたみたいです。
まぁ、無理せず、今年もマイペースで過ごしていきたいです。
というわけで、先日、新年初展覧会に行ってきました。
歌川国芳展や北京故宮博物院200選など候補があるなか、
いろいろ迷った末に、松屋銀座で開催中の
「上田宗箇 武将茶人の世界展」

選んだ理由は、昨年、マンガ『へうげもの』にはまったから。
上田宗箇は、上田左太郎として『へうげもの』に登場。
猛将であるとともに古田織部のよき弟子でもある人物。
もともと茶器には全く興味なかったのだけど、
『へうげもの』を読んで、最近少し興味が湧いてきたところ。
正直、あまり期待せずに見に行ったのだけど、
予想以上に面白かったです。
茶人としての上田宗箇のみならず、
武将としての側面も取り上げている。
展示会場前半には、上田宗箇の甲冑や陣羽織、
地図や文書なんかもおいてあって、
戦国ファンなら楽しめる内容。
後半になって、いよいよ茶器がメインになってくるのだけど、
安土桃山~江戸初の茶器の斬新なこと。
織部焼きに代表されるへしゃげた器に抽象的デザイン。
宗箇自作の武骨な茶器もかっこいい。
30分くらいのつもりが、1時間半も見てしまいました。
会期は1月16日(月)まで。会場時間は10:00~20:00。
入場料は1000円(学生700円)。
というわけで、今年もぼちぼち更新していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
2011年12月28日水曜日
ソグドからウイグルへ
森安孝夫編『ソグドからウイグルへ―シルクロード東部の民族と文化の交流―』(汲古書院、2011年12月)
森安孝夫氏の平成17~20年度科学研究費補助金基盤研究Aによって得られた成果のうち、ソグド・ウイグル関連の研究論文とシルクロード東部地域の現地調査記録をまとめたもの。
目次は以下の通り。
第1部:ソグド篇
森安孝夫「日本におけるシルクロード上のソグド人研究の回顧と近年の動向(増補版)」
荒川正晴「唐代天山東部州府の典とソグド人」
石見清裕「西安出土北周「史君墓誌」漢文部分訳注・考察」
吉田豊「附論:西安出土北周「史君墓誌」ソグド語部分訳注」
山下将司「北朝時代後期における長安政権とソグド人―西安出土「北周・康業墓誌」の考察―」
福島恵「「安元寿墓誌」(唐・光宅元年)訳注」
森部豊「増補:7~8世紀の北アジア世界と安史の乱」
石見清裕「唐の内陸アジア系移住民対象規定とその変遷」
第2部:ウイグル篇
石附玲「唐前半期の農牧接壌地帯におけるウイグル民族―東ウイグル可汗国前史―」
田中峰人「甘州ウイグル政権の左右翼体制」
笠井幸代「古ウイグル語仏典奥書―その起源と発展―」
森安孝夫「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(後編)」
第3部:行動記録篇
はしがき
2005年度 山西北部・オルドス・寧夏・西安調査 行動記録
2006年度 内モンゴル・寧夏・陝西・甘粛調査 行動記録
2007年度 東部天山~敦煌調査 行動記録
2007年度 山西調査 行動記録
2007年度 オルドス・内モンゴル調査 行動記録
2008年度 山西・内モンゴル調査 行動記録
第1部・第2部そろって力作ぞろい。とても勉強になる。第1部では、石刻史料(ソグド人墓誌)の増加によって、研究状況が変わる様を改めて感じさせられる。第2部では、石附・田中論文が興味深かった。
しかし、なんといっても圧巻は第3部。約200頁(429頁~630頁)に及ぶ膨大な行動記録(元の原稿は、この4倍近くあったらしい)。調査範囲も広い広い。この調査についていくのは大変だ。遺跡や遺物の記録のみならず、移動ルート・景観・植生・気温など細かい情報も記している。
また、行動記録の合間に多数の小コラムが付いていて、見過ごせない情報がつまっている。例えば2007年度東部天山~敦煌調査の8月22日の項目には、【ベゼクリク出土漢文碑文に刻まれたソグド語銘とルーン文字銘】というコラムがあり、唐代後期の漢文碑文2通(既に報告済)にソグド文字ソグド語とルーン文字古代トルコ語の追刻があることが指摘されている。
なお、この行動記録では、各地の博物館・研究機関に所蔵される出土文物については、ソグド・ウイグルなどに関わるもの以外は省略してしまっている。う~ん、残念。
森安孝夫氏の平成17~20年度科学研究費補助金基盤研究Aによって得られた成果のうち、ソグド・ウイグル関連の研究論文とシルクロード東部地域の現地調査記録をまとめたもの。
目次は以下の通り。
第1部:ソグド篇
森安孝夫「日本におけるシルクロード上のソグド人研究の回顧と近年の動向(増補版)」
荒川正晴「唐代天山東部州府の典とソグド人」
石見清裕「西安出土北周「史君墓誌」漢文部分訳注・考察」
吉田豊「附論:西安出土北周「史君墓誌」ソグド語部分訳注」
山下将司「北朝時代後期における長安政権とソグド人―西安出土「北周・康業墓誌」の考察―」
福島恵「「安元寿墓誌」(唐・光宅元年)訳注」
森部豊「増補:7~8世紀の北アジア世界と安史の乱」
石見清裕「唐の内陸アジア系移住民対象規定とその変遷」
第2部:ウイグル篇
石附玲「唐前半期の農牧接壌地帯におけるウイグル民族―東ウイグル可汗国前史―」
田中峰人「甘州ウイグル政権の左右翼体制」
笠井幸代「古ウイグル語仏典奥書―その起源と発展―」
森安孝夫「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(後編)」
第3部:行動記録篇
はしがき
2005年度 山西北部・オルドス・寧夏・西安調査 行動記録
2006年度 内モンゴル・寧夏・陝西・甘粛調査 行動記録
2007年度 東部天山~敦煌調査 行動記録
2007年度 山西調査 行動記録
2007年度 オルドス・内モンゴル調査 行動記録
2008年度 山西・内モンゴル調査 行動記録
第1部・第2部そろって力作ぞろい。とても勉強になる。第1部では、石刻史料(ソグド人墓誌)の増加によって、研究状況が変わる様を改めて感じさせられる。第2部では、石附・田中論文が興味深かった。
しかし、なんといっても圧巻は第3部。約200頁(429頁~630頁)に及ぶ膨大な行動記録(元の原稿は、この4倍近くあったらしい)。調査範囲も広い広い。この調査についていくのは大変だ。遺跡や遺物の記録のみならず、移動ルート・景観・植生・気温など細かい情報も記している。
また、行動記録の合間に多数の小コラムが付いていて、見過ごせない情報がつまっている。例えば2007年度東部天山~敦煌調査の8月22日の項目には、【ベゼクリク出土漢文碑文に刻まれたソグド語銘とルーン文字銘】というコラムがあり、唐代後期の漢文碑文2通(既に報告済)にソグド文字ソグド語とルーン文字古代トルコ語の追刻があることが指摘されている。
なお、この行動記録では、各地の博物館・研究機関に所蔵される出土文物については、ソグド・ウイグルなどに関わるもの以外は省略してしまっている。う~ん、残念。
2011年12月26日月曜日
唐宋の変革と官僚制
礪波護『唐宋の変革と官僚制』(中公文庫、2011年12月)
礪波護『唐代政治社会史研究』(同朋舎出版、1986年)の第一部「唐宋の変革と使職」に、一般向けに書いた三篇を足したもの。『唐代の行政機構と官僚』(中公文庫、1998年)に先行する論攷。
目次は以下の通り。
Ⅰ
「「安史の乱」前後の唐」
「黄巣と馮道」
「五代・北宋の中国―国都・開封の頃」
Ⅱ
「三司使の成立について―唐宋の変革と使職」
「中世貴族制の崩壊と辟召制―牛李の党争を手がかりに」
「唐代使院の僚佐と辟召制」
Ⅲ
「唐末五代の変革と官僚制」
Ⅱ・Ⅲの諸論文の初出は、1960年代であって、既に50年近くがたっているのだけども、未だに古びていない。「三司使の成立について」が、卒業論文をもとにしているとは驚き以外のなにものでもない。
礪波護『唐代政治社会史研究』(同朋舎出版、1986年)の第一部「唐宋の変革と使職」に、一般向けに書いた三篇を足したもの。『唐代の行政機構と官僚』(中公文庫、1998年)に先行する論攷。
目次は以下の通り。
Ⅰ
「「安史の乱」前後の唐」
「黄巣と馮道」
「五代・北宋の中国―国都・開封の頃」
Ⅱ
「三司使の成立について―唐宋の変革と使職」
「中世貴族制の崩壊と辟召制―牛李の党争を手がかりに」
「唐代使院の僚佐と辟召制」
Ⅲ
「唐末五代の変革と官僚制」
Ⅱ・Ⅲの諸論文の初出は、1960年代であって、既に50年近くがたっているのだけども、未だに古びていない。「三司使の成立について」が、卒業論文をもとにしているとは驚き以外のなにものでもない。
2011年12月20日火曜日
汲古60
古典研究会編『汲古』60(汲古書院、2011年12月)
今号の『汲古』は、築島裕先生追悼号。訓点研究の第一人者であることは知っていたが、まさか切符マニアだったとは。複数の追悼文でそのことに触れられている。よっぽどすごかったんだなぁ。
その他にいくつか論考が載っているが、中村裕一「唐初の「祠令」と大業「祠令」」が興味深い。『汲古』としては異例なほど長文(17頁)。中村氏の『中国古代の年中行事 第四冊 冬』(汲古書院、2011年8月)のあとがき末尾で、「再校をしている途中で唐「祠令」は大業「祠令」を継受していることに気がついた」と述べていたが、それを論文化したもの。
今号の『汲古』は、築島裕先生追悼号。訓点研究の第一人者であることは知っていたが、まさか切符マニアだったとは。複数の追悼文でそのことに触れられている。よっぽどすごかったんだなぁ。
その他にいくつか論考が載っているが、中村裕一「唐初の「祠令」と大業「祠令」」が興味深い。『汲古』としては異例なほど長文(17頁)。中村氏の『中国古代の年中行事 第四冊 冬』(汲古書院、2011年8月)のあとがき末尾で、「再校をしている途中で唐「祠令」は大業「祠令」を継受していることに気がついた」と述べていたが、それを論文化したもの。
2011年12月14日水曜日
あがり
約1年ぶりにSF小説を紹介します。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。
松崎有理『あがり』(東京創元社、2011年9月)
創元日本SF叢書01。第一回創元SF短編賞受賞作品。でも、手に取った理由は、受賞作だからではなく、「大学の研究室は、今日もSFの舞台に。」という帯を見たから。仙台とおぼしき北の街の総合大学が舞台。理系研究室の日常とちょっとしたSFが面白い。石黒達昌をソフトにした感じ。
なかでも「三年以内に一本も論文を書かない研究者は即、退職せよ」という「研究活動推進振興法第二条」、通称「出すか出されるか法」が制定されているという設定が秀逸。論文執筆の苦悩がより深刻なものとなっていて、物語が生まれてくる。
ぜひ、同じ世界観の小説を書き続けてほしい。作者が理系であることから、生命科学研究所・数学科・理学部などが主な舞台となっているけど、今後は文系バージョンも読んでみたい。
松崎有理『あがり』(東京創元社、2011年9月)
創元日本SF叢書01。第一回創元SF短編賞受賞作品。でも、手に取った理由は、受賞作だからではなく、「大学の研究室は、今日もSFの舞台に。」という帯を見たから。仙台とおぼしき北の街の総合大学が舞台。理系研究室の日常とちょっとしたSFが面白い。石黒達昌をソフトにした感じ。
なかでも「三年以内に一本も論文を書かない研究者は即、退職せよ」という「研究活動推進振興法第二条」、通称「出すか出されるか法」が制定されているという設定が秀逸。論文執筆の苦悩がより深刻なものとなっていて、物語が生まれてくる。
ぜひ、同じ世界観の小説を書き続けてほしい。作者が理系であることから、生命科学研究所・数学科・理学部などが主な舞台となっているけど、今後は文系バージョンも読んでみたい。
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