森安孝夫編『ソグドからウイグルへ―シルクロード東部の民族と文化の交流―』(汲古書院、2011年12月)
森安孝夫氏の平成17~20年度科学研究費補助金基盤研究Aによって得られた成果のうち、ソグド・ウイグル関連の研究論文とシルクロード東部地域の現地調査記録をまとめたもの。
目次は以下の通り。
第1部:ソグド篇
森安孝夫「日本におけるシルクロード上のソグド人研究の回顧と近年の動向(増補版)」
荒川正晴「唐代天山東部州府の典とソグド人」
石見清裕「西安出土北周「史君墓誌」漢文部分訳注・考察」
吉田豊「附論:西安出土北周「史君墓誌」ソグド語部分訳注」
山下将司「北朝時代後期における長安政権とソグド人―西安出土「北周・康業墓誌」の考察―」
福島恵「「安元寿墓誌」(唐・光宅元年)訳注」
森部豊「増補:7~8世紀の北アジア世界と安史の乱」
石見清裕「唐の内陸アジア系移住民対象規定とその変遷」
第2部:ウイグル篇
石附玲「唐前半期の農牧接壌地帯におけるウイグル民族―東ウイグル可汗国前史―」
田中峰人「甘州ウイグル政権の左右翼体制」
笠井幸代「古ウイグル語仏典奥書―その起源と発展―」
森安孝夫「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(後編)」
第3部:行動記録篇
はしがき
2005年度 山西北部・オルドス・寧夏・西安調査 行動記録
2006年度 内モンゴル・寧夏・陝西・甘粛調査 行動記録
2007年度 東部天山~敦煌調査 行動記録
2007年度 山西調査 行動記録
2007年度 オルドス・内モンゴル調査 行動記録
2008年度 山西・内モンゴル調査 行動記録
第1部・第2部そろって力作ぞろい。とても勉強になる。第1部では、石刻史料(ソグド人墓誌)の増加によって、研究状況が変わる様を改めて感じさせられる。第2部では、石附・田中論文が興味深かった。
しかし、なんといっても圧巻は第3部。約200頁(429頁~630頁)に及ぶ膨大な行動記録(元の原稿は、この4倍近くあったらしい)。調査範囲も広い広い。この調査についていくのは大変だ。遺跡や遺物の記録のみならず、移動ルート・景観・植生・気温など細かい情報も記している。
また、行動記録の合間に多数の小コラムが付いていて、見過ごせない情報がつまっている。例えば2007年度東部天山~敦煌調査の8月22日の項目には、【ベゼクリク出土漢文碑文に刻まれたソグド語銘とルーン文字銘】というコラムがあり、唐代後期の漢文碑文2通(既に報告済)にソグド文字ソグド語とルーン文字古代トルコ語の追刻があることが指摘されている。
なお、この行動記録では、各地の博物館・研究機関に所蔵される出土文物については、ソグド・ウイグルなどに関わるもの以外は省略してしまっている。う~ん、残念。
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