2011年12月14日水曜日

あがり

約1年ぶりにSF小説を紹介します。SF小説に興味ない方は飛ばしてください。

松崎有理『あがり』(東京創元社、2011年9月)

創元日本SF叢書01。第一回創元SF短編賞受賞作品。でも、手に取った理由は、受賞作だからではなく、「大学の研究室は、今日もSFの舞台に。」という帯を見たから。仙台とおぼしき北の街の総合大学が舞台。理系研究室の日常とちょっとしたSFが面白い。石黒達昌をソフトにした感じ。

なかでも「三年以内に一本も論文を書かない研究者は即、退職せよ」という「研究活動推進振興法第二条」、通称「出すか出されるか法」が制定されているという設定が秀逸。論文執筆の苦悩がより深刻なものとなっていて、物語が生まれてくる。

ぜひ、同じ世界観の小説を書き続けてほしい。作者が理系であることから、生命科学研究所・数学科・理学部などが主な舞台となっているけど、今後は文系バージョンも読んでみたい。

2011年12月13日火曜日

梁職貢図と倭

国際シンポジウム (國學院大學文学部共同研究)
「梁職貢図と倭―5~6世紀の東ユーラシア世界―」
日時:2012年1月21日(土)10:00~17:30
会場:國學院大學渋谷キャンパス百周年記念2号館2階2202教室

講演
王素「梁職貢図と西域」
李成市「梁職貢図の朝鮮諸国」
金子修一「中国南朝と東南諸国」
新川登亀男「梁職貢図と仏教」
廣瀬憲雄「中国王朝と倭と東部ユーラシア」
コメント:石見清裕・片山章雄・河上麻由子・赤羽目匡由
司会:佐藤長門・鈴木靖民

記憶の歴史学

金子拓『記憶の歴史学―史料に見る戦国』(講談社選書メチエ、2011年12月)

戦国時代を舞台に、「記憶」をキーワードとして、過去の出来事と史料の関係、史料から生み出される歴史について考察。日記・覚書・文書などを使って、些細な事件(信長の賀茂競馬見物や細川ガラシャの死など)を取り上げ、人間または人間集団に記憶されたできごとが、どのように歴史となっていくかに迫っている。特に第五章「覚書と記憶」で扱われている上杉家・佐竹家の「集合的記憶」の問題は、大いに参考になった。

中国化する日本

與那覇潤『中国化する日本―日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春秋、2011年11月)

タイトルと装丁と出版社を見て、手に取ることすらしてなかったのだけど、先日、本屋でなんとなく気になって少し立ち読みしたところ、なかなか面白そうなので購入。

歴史(人類の進歩)は宋代に終わっていた、という衝撃の第一章を皮切りに、中世から現代までの日本史を「中国化」・「再江戸化」で再構築している。最新の学説・定説・学界の常識(筆者が言うほど学界の常識になってないものも結構あるけど)を踏まえて、ここまで斬新な日本史・世界史解釈を展開できるとは。あちこちに見える左右両方に対する皮肉や揶揄も面白い。

違う文脈で書かれた研究を自分の都合のいいように切り貼りしただけという批判も成り立ちうるだろうけど、そもそも通史というのは、そういうものだし、これだけ面白いものに仕上がっていればいいような気がする。

2011年12月6日火曜日

久しく

そういえば猫写真を久しくアップしてませんでした。
最後にアップしたのは3月……。
あっというまに12月になってしまいました。

中国史の名君と宰相

宮崎市定著、礪波護編『中国史の名君と宰相』(中公文庫、2011年11月)

構成は文庫オリジナル。
Ⅰ大帝と名君、Ⅱ乱世の宰相
Ⅲ資本家と地方官、Ⅳ儒家と文人
の四部構成。

このうち、Ⅰ全篇(秦の始皇帝・漢の武帝・隋の煬帝・清の康熙帝・清の雍正帝)、Ⅱの李斯、Ⅳの孔子は、もともと『世界伝記大事典 日本・朝鮮・中国編』(ぽるぷ出版、1978年)に収録されていたもので、事典に執筆した文章であったため、『宮崎市定全集』に採用されなかったもの。事典の項目とはいえ、5頁以上もあって、読み応えがある。

古代日本とユーラシア

京都大学文学研究科・文学部公開講演会
「古代日本とユーラシア-ユーラシア文明の越境と架橋にむけて-」

日時:2011年12月17日(土)13時00分~17時30分
場所:京都大学法経本館第7教室

講演プログラム
井谷鋼造「ユーラシアの歴史をつなぐ刻銘文資料」
岡内三眞「シルクロード沿線の都市」
橋本義則「東アジア比較都城史研究の試み-日本から東アジアへ、そして再び日本へ-」
吉川真司「ユーラシアの変動と日本の律令制度」

2011年12月2日金曜日

第10回ザ・グレイトブッダ・シンポジウム

第10回ザ・グレイトブッダ・シンポジウム
日程:2011年12月10日(土)・11日(日)
会場:東大寺総合文化センター内 金鐘ホール 
入場:無料

大会テーマ  「華厳文化の潮流」
12月10日(土) 13:00~16:30
基調講演    
木村清孝「インド華厳から日本華厳へ」
シンポジウム 
木村清孝・伊藤瑞叡・吉津宜英

12月11日(日) 10:00~16:30
研究報告 
小林 圓照「アジアを駆け巡る善財童子―『入法界品』の思想と文化―」
堀伸一郎「『大方広仏華厳経』の梵語原典とその題名―中央アジア出土梵本断簡の研究に基づいて―」
ジラール・フレデリック「禅竹の『六輪一露之記』に於ける志玉の華厳観」
朴亨國「新羅華厳宗における造像概念―浮石寺から仏国寺・石窟庵―」
長岡龍作「蓮華蔵世界と観音―習合思想を手がかりに―」
吉川太一郎「遼代華厳教学の一考察―鮮演の断惑説を中心として―」


事前申込制で、11月30日までに
はがき、FAXで東大寺図書館まで
お申し込みくださいとのことです。
期限過ぎてからの紹介ですみません。

ザ・グレイトブッタ・シンポジウムという名前にひかれて紹介。もう10回もやっているのに知らなかった……。

2011年11月30日水曜日

平成23年度九州史学会大会

平成23年度九州史学会大会
日程:2011年12月10日(土)・11日(日)
会場:九州大学法文系講義棟

12月10日(土)シンポジウム 法文系講義棟101
「倭の五王は何を学んだか―東アジア世界と倭の変容」

12月11日
日本史部会 法文系講義棟102

東洋史部会 法文系講義棟204

朝鮮学部会 法文系講義棟202

イスラム文明学部会 法文系講義棟302
「特別企画:アジア文化研究会・若手ユーラシア研究会の時代」

報告タイトルが多いので、
詳細は九州史学会HPをご覧ください。

新しい世界史へ

羽田正『新しい世界史へ―地球市民のための構想』(岩波新書、2011年11月)

現代にふさわしい世界史を模索する試み。
目次は以下の通り
序章:歴史の力
第一章:世界史の歴史をたどる
第二章:いまの世界史のどこが問題か?
第三章:新しい世界史への道
第四章:新しい世界史の構想
終章:近代知の刷新

第一章で日本における「世界史」の成立過程を確認し、第二章で現行「世界史」の問題点を指摘(日本でのみ通用・現状追認・ヨーロッパ中心史観)。さらに第三章で、現在試みられている「新しい世界史」の有効性と問題点に言及。中心史観(ヨーロッパ・イスラーム・中国・中央ユーラシアなど)からの脱却を唱える。そして、第四章で羽田氏の「新しい世界史」の構想を示す。

第一章~第三章は、「世界史」の抱えている問題が浮かび上がってきて、大変面白い。特に第三章で、中国中心史観に対して、中央ユーラシアから見直そうという動きが出ているが、「逆に、中央ユーラシアを世界史の中心に置き、中央ユーラシアが世界史を作ったと唱えては、せっかくの提言が台無しである」という指摘に共感。

ただ、第四章の「新しい世界史」構想は、僕の頭が従来の「世界史」に染まっているせいもあって、いまいちピンとこなかった。ぜひ、この構想に基づいた新しい「世界史」概説書を読んでみたい。