2012年9月5日水曜日

日本中国学会第64回大会

日本中国学会第64回大会
日時:2012年10月6日・7日
場所:大阪市立大学杉本キャンパス

研究発表プログラム
【哲学思想部会】(全学共通教育棟811教室)
10月6日(土)午前
10:00~10:30 高田哲太郎「呂氏春秋の天―統一理念の前提―」
10:35~11:05 工藤卓司「『史記』『淮南子』中の豫讓復讐物語」
11:10~11:40 影山輝國「皇侃と科段説」

10月6日(土)午後
13:30~14:00 福谷彬「宋学における「思孟学派」観の成立について」
14:05~14:35 青木洋司「呉棫の『尚書』解釈―『書裨傳』を中心として―」

10月7日(日)午前
09:30~10:00 大野裕司「陳元靚『上官拜命玉暦』について―宋代術數學(擇日術)の特色を探る―」
10:05~10:35 三澤三知夫「王畿の経書解釈について―『大象義述』を中心として―」
10:40~11:10 井澤耕一「南宋末、士大夫たちは「四書」を如何に読み解いたのか―上海図書館蔵『金匱要略方』の紙背文献に関する一考察―」

10月7日(日)午後
13:30~14:00 田中有紀「何瑭の形神二元論」
14:05~14:35 王晶「溝口雄三の知的実践―「日中・知の共同体」を通じて―」

【文学語学部会】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)午前
10:00~10:30 恩塚貴子「漢末魏初に於ける書牘体の変化―その内容と文体を中心に―」
10:35~11:05 戸高留美子「「魏都賦」における西晋王朝の正当性立証の過程について」
11:10~11:40 竹澤英輝「『文心雕龍』における劉勰の「神」の概念について」

10月6日(土)午後
13:30~14:00 谷口匡「柳宗元の「説」について」
14:05~14:35 長谷川真史「中唐における連昌宮の荒廃と元稹」

10月7日(日)午前
09:30~10:00 二宮美那子「園林の「小空間」―白居易詩文における私的空間の位置づけについて―」
10:05~10:35 谷口高志「愛好という病―中晩唐期における詩人たちの偏愛・偏好への志向」
10:40~11:10 林雪雲「蘇軾の妻妾に対する観念」

10月7日(日)午後
13:30~14:00 福田知可志「再婚をめぐる怪異譚―『夷堅志』「張夫人」の物語を中心に―」
14:05~14:35 李海「梁啓超の詩論と德富蘇峰」
14:40~15:10 平田昌司「京都市左京区における茅盾」
15:15~15:45 吉川龍生「映画『武訓伝』と孫瑜映画のファンタジー」
15:50~16:20 田中祐輔「中国の大学専攻日本語教科書の現代史―日本語教科書が包摂する「国語教育」に付与された教育思想的役割―」

【日本漢文部会】(全学共通教育棟811教室)
10月7日(日)午後
14:40~15:10 横山俊一郎「江戸時代後期における〈実務家〉としての儒者―瀬戸内諸藩における懐德堂学術の受容を中心として」
15:15~15:45 矢羽野隆男「幕末懷德堂の陵墓調査―最後の教授・並河寒泉の活動」

【COE成果報告】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)午後
14:40~15:10 佐藤進「21世紀COEプログラム「日本漢文学研究の世界的拠点の構築」とその継続事業」
15:15~15:45 吾妻重二「グローバルCOEプログラム「東アジア文化交渉学の教育研究拠点形成」(ICIS)の成果と展望」

【展示紹介】(基礎教育実験棟階段教室)
10月7日(日)午前
11:15~11:45 齋藤龍一「大阪市立美術館山口コレクション中国佛教・道教彫刻について」

【特別講演】(基礎教育実験棟階段教室)
10月6日(土)16:00~17:00
王水照「宋代文学研究中的学理性建構―以文学与科学、家族、伝播、地域、党争之関係爲中心」

2012年9月4日火曜日

近代中国研究入門

岡本隆司・吉澤誠一郎編『近代中国研究入門』(東京大学出版会、2012年8月)

現在の中国近代史研究に対する強い危機意識のもと執筆された研究入門。「近代」の範囲は、おおまかにいって「一九世紀がはじまる前後から、中華人民共和国の成立あたり」までとする。研究論文・著書を網羅的に紹介する形はとっていない。また、論文の書き方マニュアルでもない。基礎史料や文献を紹介しつつ、歴史研究の姿勢・作法を説く形をとっている。

目次は以下の通り。
序章:研究の前提と現実(岡本隆司)
第一章:社会史(吉澤誠一郎)
第二章:法制史(西英昭)
第三章:経済史(村上衛)
第四章:外交史(岡本隆司)
第五章:政治史(石川禎浩)
第六章:文学史(齋藤希史)
第七章:思想史(村田雄二郎)
座談会:近代中国研究の現状と課題

耳に痛い、いや、胸をえぐるような指摘が随所になされていて、反省させられることしきり。資料状況に違いはあるものの、殆どが中国史全体にあてはまる指摘で、前近代史研究志望者にとっても必読文献ではなかろうか。

ちなみに第五章では、問題意識が希薄で、細かな事象精査にとどまっている研究を「隣家に子猫が生まれた」式の研究としている。この比喩は、スペンサーのエッセイに見え、明治日本経由で清末・民国初の中国で愛用された言い回しらしい。否定的な意味なのだけど、なんだか気に入ってしまった。ついつい自虐で使ってしまいそう。

座談会は、執筆者の本音と苦悩が垣間見えて、耳に痛い内容であるけれど、楽しみながら読めた。高所からの若手批判ではなく、現在の研究者をとりまく環境・圧力を踏まえつつ、普段いいにくいアドバイスをしている感じ。あと、現代中国研究者の近代史に対する姿勢に違和感を述べているのも印象的。

2012年9月1日土曜日

新発見の歐陽脩書簡について

東英寿「新発見の歐陽脩書簡について」(『九州大学中国学会報』50、2012年5月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(上)―九十六篇はなぜ忘却されてしまったのか」(『東方』376、2012年6月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(中)―いかにして発見は生まれたのか」(『東方』377、2012年7月)
東英寿「歐陽脩の書簡九十六篇発見記(下)―日本、中国における反響」(『東方』378、2012年8月)

冒頭の論文は、東英寿氏が発見した欧陽脩の書簡96篇の送り先と収蔵元について表にまとめて紹介したのち、特に4篇にしぼって内容を簡単に紹介したもの。蘇洵の文章に対する評価や、范仲淹の神道碑をめぐるやりとりなどが記されている。
『東方』の三本の文章は、発見の経緯と反響についてまとめたもの。日本では、こういう発見がまだまだあるはず。地味な書誌学調査の重要性がよくわかる。それにしてもマスコミの影響力の大きさにびっくり。

『日本中国学会報』64(2012年10月予定)に「歐陽脩の書簡九十六篇の発見について」という論文が掲載され、今年度中に『歐陽脩の新発見書簡九十六篇―歐陽脩全集の研究』(研文出版)を刊行するそうだ。

2012年8月29日水曜日

幕府のふみくら

長澤孝三『幕府のふみくら―内閣文庫のはなし』(吉川弘文館、2012年9月)

現在は国立公文書館内の機構改革によって、名称がなくなってしまった内閣文庫の歴史と仕事について、最後の内閣文庫長(2001年1月~3月)であった長澤孝三氏が紹介。

紅葉山文庫を筆頭に、現在までの内閣文庫の歴史をふりかえり、内閣文庫が持っているえりすぐりの国書・漢籍などを解説し、内閣文庫の日々の仕事を紹介している。随所に挿入される[余録]と題した思い出話も興味深い。

以前、とある内閣文庫本を調査したことがある。
すぐに原本閲覧ができて、とてもうれしかった。
今では個人撮影も認められているそうだ。
気になる漢籍がいくつかあるので、
時間をつくって、また見に行きたい。

なお、現在では、情報公開促進の流れによって、
「原本による閲覧」が大前提となり、
年齢制限の撤廃や個人撮影の許可がなされているが、
資料保存の観点から、長澤氏は若干の憂慮を示している。

2012年8月25日土曜日

屍者の帝国

伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』(河出書房新社、2012年8月)

「早熟の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、
盟友・円城塔に引き継がれ遂に完成」(帯より引用)。

フランケンシュタインの技術と
バベッジの解析機関が実用化された19世紀末、
世界は「屍者」で満たされていた。
英国諜報員ジョン・ワトソンは
英露のグレートゲーム真っ只中のアフガニスタン奥地に赴く。
あるロシア人率いる「屍者の王国」をめざして……。
これが長い冒険の始まりにすぎないことをワトソンは知らない。

生者と屍者と世界文学の登場人物が混ざり合い、
史実とifと作品世界の溶け込みあった幻想の19世紀。
『ディファレンス・エンジン』を彷彿させる
SF&歴史改変小説であるのは当然のこと、
世界をまたにかける冒険小説でもあり、
なおかつ魂・意識・生死を問う思索小説でもある。
本筋とはずれるが、様々な仕掛けを探るのも楽しい。

伊藤計劃は、プロローグにあたる部分を書き残し、
続きもプロットも殆ど残さないまま、34歳の若さで亡くなってしまった。
そのため、ほとんどが円城塔の単独執筆なのだが、
驚くほど伊藤計劃の『虐殺器官』・『ハーモニー』との
つながりを感じさせる。

痺れながら、一気に読んでしまった。

19世紀末の歴史改変小説は英米で盛んだけども、
大体の作品の舞台は、欧米にとどまっている。
それに対して『屍者の帝国』は、がっつり「アジア」が舞台。
さっそく、世界に向けて翻訳すべきじゃないだろうか。

中国前近代ジェンダー史ワークショップ

中国前近代ジェンダー史ワークショップ
<唐宋変革は中国のジェンダー構造をどう変えたか?―中国ジェンダー史教育の方向を探る>ワークショップ(その1)
日時:2012年9月5日(水)午後1:30~5:30
場所:東洋文庫2階講演室

プログラム
13:30~13:45 趣旨説明:小浜正子
13:45~14:30 金子修一「漢代の皇后に関する諸問題」
14:30~15:15 猪原達生「唐代における宦官の婚姻と家族形成について」
15:15~16:00 五味知子「明清時代の貞節と秩序」
16:15~16:30 コメント 岸本美緒
16:30~17:30 総合討論

当日参加も可。ただし、人数把握のために参加予定の方は、
kohama*chs.nihon-u.ac.jp(*→@に変換してください) に連絡のこと。

2012年8月23日木曜日

東方学会平成24年度秋季学術大会

東方学会平成24年度秋季学術大会
日時:2012年11月10日(土)12:30~17:50
会場:芝蘭会館別館

プログラム
講演会
12:40~13:40 戸倉英美「舞楽「蘭陵王」新考」
13:50~14:50 後藤昭雄「平安朝の願文―中国の願文を視野に入れて」

研究発表(第29回・30回東方学会賞受賞者)
15:00~15:30 田中靖彦「朱熹の歴史認識と三国時代」
15:35~16:05 仙石知子「毛宗崗本『三国志演義』における関羽の義」
16:10~16:40 江川式部「唐代の弔祭」
16:45~17:15 福田素子「落語「もう半分」から考える日本の討債鬼故事受容」

17:30~17:50 第31回東方学会賞贈呈式
                     

2012年8月19日日曜日

東洋学報

東洋文庫の『東洋学報』が第93巻第1号(2011年6月刊)から、
PDFでダウンロードできることを遅ればせながら知りました。
しかも、最新号がダウンロードできるなんて太っ腹。

ちなみに『東洋学報』94-1(2012年6月)の目次は以下の通り。
菊地大「曹操と殊礼」
岡部毅史「北魏前期の位階秩序について―爵と品の分析を中心に―」
小武海櫻子「同善社の慈善事業―合川会善堂慈善会の軌跡を中心に―」
関智英「袁殊と興亜建国運動―汪精衛政権成立前後の対日和平陣営の動き―」

菊地論文は曹操に与えられた殊礼の前例と意義を検討している。なかでも魏公・魏王時代の曹操に与えられた殊礼(後漢の東海王彊・前漢の梁王武に基づく)によって、皇位継承資格者になぞらえられたことを指摘し、漢魏禅譲の機運が形成されたとする。

唐代史研究会2012年夏期シンポジウム


唐代史研究会2012年夏期シンポジウム「「隋唐帝国」論―宗教・法制・国際関係」
日期:2012年8月20日(月)~22日(水)
会場:文部科学省共済組合箱根宿泊所 四季の湯強羅静雲荘

【スケジュール】
8月20日
14:00~15:30 福島恵「墓誌史料より見たソグド人の東方移住の経路について」
15:30~17:00 小幡みちる「唐代道教教団における礼的秩序」
17:00~18:00 総会


8月21日
10:00~12:00 河上麻由子「南北朝時代から隋代にかけての国際秩序―倭国の位置を中心に」
12:00~13:30 昼食
13:30~15:00 古畑徹「唐王朝は渤海をどのように位置づけていたか―中国「東北工程」における「冊封」の理解をめぐって」
15:00~16:30 辻正博「隋唐律令史における大業律令の位置づけ」

16:30~18:00 総合討論

2012年8月14日火曜日

カラマーゾフの妹

高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社、2012年8月)

帯の「あの世界文学の金字塔には真犯人がいる。」にひかれて購入。高野史緒のSF作品はいくつか読んでいたけれど、最近、新作でないなぁ、と思っていたら、まさかあのドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の続編を書いていたとは。

舞台は、『カラマーゾフの兄弟』の13年後の1887年。次男のイワンが郷里に未解決事件特別捜査官として、帰ってくるところからはじまる。『カラマーゾフの兄弟』の作中人物のその後とともに、再捜査がはじまるや、新たな事件が……。

一見、普通の続編&推理小説と思いきや、徐々に虚実ないまぜのロシアに。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』第二部の構想を大胆にアレンジした上で、あの名探偵やロシア文学の登場人物、実在の学者・作品も取り込み、いつの間にか舞台はスチームパンク風の世界に。まさしくSFと推理小説とロシア文学の融合。

実のところ、『カラマーゾフの兄弟』は未読だったのだけど、本書を読みおえて、すぐさま新潮文庫版を購入。一気読みしてしまった。高野氏は光文社文庫版に依拠しているのだが、新潮文庫版の翻訳でも特に矛盾箇所は生じていなかった。巧みに原作の隙をついて、意外な真犯人を導き出している。

『ディファレンス・エンジン』や、キム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』三部作、矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』などを思い起こした。今月出る予定の伊藤計劃&円城塔『屍者の帝国』も同種の作品のはず。もちろん、江戸川乱歩賞応募作ということもあって、スチームパンク的要素は少な目。SF好きなら、なんなく入り込めるし、そうでない方も楽しめるはず(多分)。まぁ、苦手な方も多いかも。